おすすめ記事

eラーニング動画の作り方 企画から撮影・編集まで〔絵コンテサンプル付〕

〔SCSK株式会社〕事例:業界の常識を覆し、「働き方改革」に成功した3つの要因

約半数が失敗!?簡単にはいかない「働き方改革」推進

働き方改革を推進する企業は年々増加傾向にありますが、取り組みの成果をうまく挙げられずにいる企業も少なからず出てきているようです。デロイトトーマツコンサルティングが20176月~7月に実施した調査によると、働き方改革の効果の実感について、全体の約半数の企業は、効果を感じられない、もしくは、効果を測れないと回答しています。[1]

働き方改革の成功と失敗を分ける要因は何でしょうか、成功する企業はどこが違うのでしょうか。

この記事では、「第1回 働きやすく生産性の高い企業・職場表彰」大企業部門・最優秀賞(厚生労働大臣賞)の受賞ほか、数々の機関からその取り組みを高く評価されているSCSK株式会社の事例を取り上げ、わずか3年間で全社平均残業時間を月30時間から18時間16分に、有給休暇取得率を66.7%から97.8%にまで改善した働き方改革の軌跡をなぞり、成功の要因を探っていきたいと思います。

[1] デロイトトーマツコンサルティング『働き方改革の実態調査2017~Future of Workを見据えて~』調査結果<https://www2.deloitte.com/jp/ja/pages/human-capital/articles/hcm/workstyle-survey2017-result.html>


1. 「夜遅くまでいる社員」「休まない社員」が「良い社員」?
“業界の常識”に経営トップが感じた危機感

1-1. 「この労働環境はありえない。インテリジェンスとはかけ離れている」

2011年10月、住商情報システム(SCS)とCSKの2社が経営統合し、システム開発やITインフラ構築を主業務とするSCSK株式会社(以下、SCSK)が誕生しました。当時は同業他社と同様に、残業や休日出勤が多く長時間労働が常態化し、生産性も決して高いとは言えない状況にあったといいます。

また、優秀な社員に業務が集中して仕事を抱え込んでしまう、子育てや介護との両立は難しいため離職者も後を絶たない、そんな問題も抱えていました。とはいえ、24時間365日稼働するシステムの開発・運用・保守に関わるという業務の性質上、夜間の問い合わせや作業依頼にも基本的には対応せねばならず、結果として「夜遅くまでいる社員」「休まない社員」が「良い社員」とされるのが“業界の常識”とされていました。

狭いオフィスの中、徹夜で働いたり会社に寝泊まりしている人がいたり、お昼の休憩時間には、疲労のため自席に突っ伏して寝ている人がいたり・・・。住友商事出身で、2009年に合併前の住商情報システムの会長兼社長として着任し、SCSKの初代社長となった中井戸信英氏(当時)は、その状況を目の当たりにして、「この労働環境はありえない。インテリジェンスとはかけ離れている」と、強い危機感に駆られたそうです。

「社員が疲弊していては、本来のクリエイティブな仕事ができない」と感じた中井戸氏は長時間労働が常態化していることに着目。改革に乗り出します。誰もが働きやすさを感じられる職場づくりは、こうしてスタートを切りました。

1-2. 動き出したSCSKの「働き方改革」

SCSKでは2012年4月にフレックスタイム制を全社に適用、7月には裁量労働制が導入され、まずは柔軟な働き方ができる制度の整備が行われました。続いて、4~6月に特に残業の多かった32の部署があぶり出され、7-9月の残業時間を4~6月の半分にするよう命じられました(=「残業半減運動」)。

これらの部署は、各部署で主体的に施策を策定し、取り組みを進めました。業務の見直しや負荷分散、ノー残業デーの推進、会議の効率化などの施策により、結果として32部署のうち約半数が目標をほぼ達成。それに伴い、全社の平均残業時間も20時間強にまで削減されました。

ところが年度末(2013年3月)の繁忙期になると、ふたたび残業時間は逆戻り。結局、全社平均残業時間は施策実施前と変わらない30時間弱にまで増えてしまい、取り組みの効果が一時的でしかなかったことが証明されてしまったのでした。


2. ~失敗を繰り返さないために~
全社規模で動き出した「スマートワーク・チャレンジ」

2-1. 「スマートワーク・チャレンジ」でSCSKが目指したものは

2013年4月、「心身が健康で働きやすい職場作りに向けた意識改革と業務改善活動」を目的とした、「スマートワーク・チャレンジ20」(現スマートワーク・チャレンジ)という取り組みがスタートしました。活動名に冠された“20”という数字が示すように、
●平均月間残業時間20時間以内を目指すこと
●年間20日給付される有給休暇を100%、つまり20日フル取得できるようにすること
が目標として設定されました。

また、「残業半減運動」の反省から「組織的な取り組みでないと、社員一人ひとりの意識は変わらないし、改善活動は実現しない」[2]と学んだSCSKでは、この取り組みの対象を、一部の部署のみでなく、全社・全部門まで広げて推進しました。エントリーは事業部門ごとに行い、部門ごとそれぞれに目標達成のための施策の具体化および実施・運用に努めました。

2-2. 「スマートワーク・チャレンジ20」を支えた4つの施策

「スマートワーク・チャレンジ20」の推進にあたって、柱となった施策は4つありました。

(1)浮いた残業代を、全額社員に還元

インセンティブとして、有給休暇や残業目標を達成した組織に特別ボーナスを支給(今は月給に含まれている)し、20時間分の残業代を固定支給しました。これには、社員に対して、目標達成に向けた会社の本気度を示し、「残業をすればするほど残業代が増える」という従来のしくみから、「残業を減らしても給料は減らない」と発想を転換することで、社員の気持ちを目標達成へと向かわせるという狙いがありました。

(2)有給休暇が取りやすい環境づくり

いざ有給休暇の取得日数を増やそうとしても、これまで7割弱ほどしか取得していなかったものをいきなり増やすのはそれほど簡単ではありません。有給休暇を全て使い切っても、病気などの時には休めるバックアップ休暇を5日間設定したり、飛び石連休の合間や土曜日が祝日の場合の月曜などを全社一斉年休取得日や取得奨励日とすることで、有給休暇をとりやすい環境をつくっていきました。

(3)長時間労働の是正

管理職を含む全社員が実勤務時間を正確に記録する制度を導入し、労働時間の把握と「モグリ残業」の撲滅に努めました。さらに、月80時間を超える残業には社長の承認が必要としました。

(4)業務品質の向上

残業の多くはトラブル対応によるものでした。そこで、業務自体のクオリティを向上させてトラブルを減らすため、開発プロセスを標準化したり、トラブルをマネジメント層が早期に把握し対策を講じるような仕組みづくりをしました。

取り組みの結果、2014年度には月平均残業時間は18時間16分となり、見事目標を達成することができました。有給休暇取得率も、97.8%まで上昇しました。
次からは、「スマートワーク・チャレンジ」が功を奏し、長時間労働の是正に成功した要因をより深く探っていきたいと思います。

[2] 『SCSKのシゴト革命』(日経BP総研 イノベーションICT研究所 著、1997年)P.16


3. 成功要因1:トップによる強い旗振りが、“会社の本気”を社内外に伝えた

3-1. 「利益が一時的に下がってもいい」トップの宣言に社内が変わり始めた

残業時間の削減を進めようとすると、こなせる仕事の量が減り利益の低減を招くのではないか、そんな懸念が社内で生じることがあります。SCSKの場合も、当初は「これまでの付加価値をお客様に提供できるのか」という疑問の声が役員の中から出ていたといいます。

しかし、「社員が心身の健康を保ち、仕事にやりがいを持ち、最高のパフォーマンスを発揮してこそ、お客様の喜びと感動につながる最高のサービスを提供できる」という強い信念を持っていた中井戸社長(当時)は、「会社の利益が一時的に下がってもいい。」そう社内に宣言したのです。これにより、社員たちに社長の本気が伝わり、また、安心感を持って労働時間の削減に取り組むことができたのです。

3-2. 取引先も巻き込んでいった、「社長からの手紙」

とはいえ、説得すべきは社内だけではありません。自社がいくら長時間労働の是正を進めようとしても、取引先の理解が得られず、現場の社員たちが業務時間を短縮できない、という事があります。SCSKのような、顧客企業のオフィスに社員が常駐することも多い企業ではなおさら、そのようなケースが多くみられます。

先に述べたようにSCSKでは2013年以降「一斉年休取得日」を設定し、社員に休暇の取得を強く呼びかけていますが、これを実現すべく取引先には年度初めに社長名でその旨を伝える手紙を作成。役員らが取引先に出向いて「社長からの手紙」を手渡すようにしています。取引先の理解の獲得に、現場の社員の手を煩わせない。これもトップによる強い旗振りの証でした。

(取引先に宛てられた「社長からの手紙」[3]

「社員が家庭や生活を大事にして、健康に長く働ける会社を創りたい」というビジョンを、経営トップが一貫して掲げ、それを目に見える形で示し続けたこと、それこそがSCSKが「働き方改革」に成功した最大の要因に違いないと考えられます。

[3] SCSK株式会社(2017)「SCSKにおける“働き方改革”スマートワーク・チャレンジの取り組みと成果」p.9. <http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/it/pdf/seminar_03.pdf>(厚生労働省「IT業界の働き方・休み方の推進」Webサイト内事例紹介資料より)


4. 成功要因2:部門主導の施策実行とそれを支えた制度と仕組み

4-1. 部門に委ねられた施策の発案と実行

前述のとおり、「スマートワーク・チャレンジ」の推進にあたっては、部門それぞれが目標達成のための施策の具体化および実施・運用に取り組み、部門ごとにその評価もなされました。というのも、部署によって仕事の中身は千差万別。具体的な残業削減の方法は各自で考えてもらうしかないという認識が会社にあったからでした。

部門ごとの施策はさまざまで、例えばある事業部門では“スマチャレ係長”という役割を設けました。毎週、くじ引きで決まった“スマチャレ係長”が、課長の判断を仰いだ上で、メンバー全員の労務管理を疑似的に代行するのです。

その他にも、様々な施策が実行され効果を上げていきましたが、日常的な取り組みの多くは、会議の効率化など、短期的な成功に終わった「残業半減運動」と同じようなものだったといいます。ではなぜ、「スマートワーク・チャレンジ」では、効果が続いたのでしょうか?それは、限られた部門だけでなく全社的に推進したという事もありますが、部門ごとの取り組みを活性化・継続させるための様々な仕組みを会社側が用意したことにありました。

4-2. 現場が本気になるための仕組みづくりとは?

各部門の取り組みと並行して、会社としては、トップ以下全役員が集まる情報連絡会という会議の中で、役員が部門ごとの残業時間・有休取得の進捗状況を報告するようになりました。また、その模様は新たに開設したポータルサイトで逐次全社に公開されました。進捗が思わしくない部門に対してトップから発せられる厳しいメッセージも含め、すべてがタイムリーに伝わることで、社員全員が情報連絡会の様子に注視しながら本気で改善に取り組む流れが出来上がりました。

その他に、残業削減のアイディアを募るコンテスト「スマチャレ特別表彰」も創設されました。これによって人事は各部門がどのような施策を通じて目標を達成したのかを把握できるようになりました。さらに、寄せられた様々な施策アイディアをポータルサイトで紹介し、各部門がそれを見ながら自部門に合う残業削減施策を積極的に取り入れていくようになり、目標達成のための推進力のひとつになっていきました。


5. 成功要因3:長時間労働の是正と同時に進められた「業務クオリティの向上」

SCSKでは当初から、問題案件こそが最も大きな長時間残業の原因と考えられていました。

問題案件とは例えば、システム開発の第一歩である“要件定義”が曖昧で、プログラムの実装段階になって思わぬ工数が発生したり、要件定義まで戻ってやりなおしたり、というような案件で、長時間残業の常態化だけでなく、会社に少なくない損失をももたらしていました(2013年当時、営業利益239億に対して、不採算案件に引き当てた金額は約12億円[4])。

問題案件を減らすため、開発現場におけるプロジェクト監理体制の確立や開発基準の整備を推進、また問題発生の危険があるプロジェクトを早めにあぶり出し、必要な対策が取りやすくするための体制も整備しました。個々の社員に対してはそれぞれの専門スキルや能力を見える化し、適切な人材育成や評価、またプロジェクトへの人材配置ができるように改善しました。これら業務クオリティ向上の取り組みは書籍『SCSKのシゴト革命』(日経BP総研 イノベーションICT研究所 著)として詳しくまとめられています。より深く知りたい方はそちらをご参照ください。

[4] 『SCSKのシゴト革命』(既出)P.54.


6. おわりに~これからのSCSKが目指す「働き方改革」とは~

「スマートワーク・チャレンジ」の成功を受け、社員の健康増進を図る「健康わくわくマイレージ制度」(2015年4月~)、多様な働き方を模索するための「どこでもWORK」(2016年~)と、「働き方改革」の取り組みを次々と導入し、今もSCSKは「働き方改革」のトップランナーとして走り続けています。改革がスタートした2012年とは社員の満足度も格段に向上し、また人気の就職希望先としても名前が挙がるようになりました。

社員満足度の変化[5]

今後のSCSKが目指すもの、それは高い業務クオリティを誇り、性別・年齢・国籍を超えてすべての社員が健康でいきいきと働ける会社、働きやすく、やりがいのある会社です。さらに、パートナーや同業他社だけでなく、業種を超えて日本全体の働き方改革を後押ししていけるような会社です。

ここで見てきたSCSKの軌跡は、「働き方改革」を始めようとしている企業、今まさに進めている企業にとって、示唆に富んだ事例ではないでしょうか。SCSKが「働き方改革」に成功した3つの成功要因を参考にし、ぜひ自社の取り組みに活かしていただければと思います。

[5] SCSK株式会社(2017)「SCSKにおける“働き方改革”スマートワーク・チャレンジの取り組みと成果」p.14.<http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/it/pdf/seminar_03.pdf>(厚生労働省「IT業界の働き方・休み方の推進」Webサイト内事例紹介資料より)

 

<参考資料>
・日経BP総研 イノベーションICT研究所(997)『SCSKのシゴト革命』日経BP社.
・SCSK「統合報告書2017」
https://www.scsk.jp/ir/library/report/index.html
・厚生労働省「IT業界の働き方・休み方推進」Webサイト内事例紹介資料より
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/shigoto/it/doc.html
・日本の人事部「HRアワード2015」受賞者インタビュー
「第67回SCSK株式会社 やるだけでなくやりきる仕組み “働き方改革”でIT業界の常識を覆すSCSKの『スマートワークチャレンジ』とは」(前・後編)
https://jinjibu.jp/article/detl/tonari/1346/
https://jinjibu.jp/article/detl/tonari/1347/
・プレジデントオンライン「SCSK「残業月18時間」に改善できた理由」
http://president.jp/articles/-/22245
・ITmediaエンタープライズ 「思い込みを捨てよ!! 非ITでも成果は出せる――「働き方改革」の実践者が語る大切なポイント」
www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/1707/19/news048.html
・リクルートマネジメントソリューションズ「働き方改革とマネジメントの関係 SCSK 積極的にマネジャーの育成や登用をすすめるのはなぜか」
https://www.recruit-ms.co.jp/issue/case/0000000493/

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

組織的な意識改革で長時間労働を是正するためのeラーニング

「チームで取り組む長時間労働の是正働き方改革の実現にむけて

長時間労働の是正は待ったなしです。

大企業で発生しがちな長時間労働をめぐる現場の問題を的確にとらえ、合理的な考え方・改善方法を提示する「チームで取り組む長時間労働の是正―働き方改革の実現にむけて―」。

長時間労働への意識を変え、チームで「仕事の時短」を実現しましょう。

<教材目次>
第1章  長時間労働の課題
  1  長時間労働是正が求められる背景
  2 長時間労働是正の3つのアプローチ
第2章 今日からできる「仕事の時短」
  1  「仕事の時短」の価値観の形成と目標設定
  2  会議の時短
第3章  「仕事の時短」を発展させる
  1  長時間労働の背景と帰結
  2  「仕事の時短」を継続する
  3  時短勤務制度との関わり

無料にて教材のプレビューが可能ですので、ぜひご覧になってみてください。

※推奨ブラウザ
通常版:Internet Explorer
マルチデバイス版:Internet Explorer、Microsofr Edge、Google Ghrome、Safari
※OSのバージョンや機種特有の問題により一部の端末では正常に動作しない場合があります。予めご了承ください。

個人情報の取り扱いにつきましては個人情報保護方針をご確認ください

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう