おすすめ記事

eラーニング 動画教材は簡単に作れる 学習効果の高い動画を内製する方法

勤務間インターバル制度とは 4月から努力義務化 導入企業には助成金も

勤務間インターバル制度とは、勤務終了後、一定の休息時間を設けることで、従業員の生活時間や睡眠時間を確保する制度です。

「24時間戦えますか」
かつて一世を風靡した栄養ドリンクのCMがありました。あれから30年、長時間労働による健康被害や労働力人口の減少が社会問題となり、働き方は「モーレツ」から「効率」へと大きく変化しました。企業は、RPA(定型業務の自動化)やクラウドなどを活用して労働時間を抑制し、一人当たりの生産性を高める工夫を図っています。
健康経営や生産性向上の観点から、短時間インターバル制度を導入する企業は微増しています。しかし、2018年1月時点での導入率は1.8%。導入の予定がなく、検討もしていない企業は89.1%で、そのうち29.9%が制度自体を知らなかったと回答しているように、まだまだ認知度が低いのが現状です。

「勤務間インターバルとは何か?」
「導入したら効果はあるのか?」
そんな疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

本稿では、勤務間インターバルについて、導入によって期待される効果や導入時の留意点、導入企業の事例を解説します。


1. 勤務間インターバル制度とは何か

勤務間インターバル制度とは、終業時刻から翌日の始業時刻の間に、一定時間の休息(インターバル)を設ける制度です。
「働き方改革関連法」に基づいて2019年4月に規定されました。努力義務のため、現段階では守れない企業に対する罰則規定はありませんが、制度を設けることで、従業員の健康を確保することが生産性の向上に繋がるという認識が広まることが期待されます。

勤務間インターバル制度を導入した働き方のイメージは次の図の通りです。


出典)厚生労働省 勤務間インターバル制度
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/interval.html

インターバルを11時間に設定した場合、終業時刻が23時になった日は、翌日の始業時刻は11時間後の10時になります。

出典)厚生労働省 「勤務間インターバル制度普及促進のため の有識者検討会」報告書
https://www.mhlw.go.jp/content/11201250/000462016.pdf

上図にあるように、終業時刻を繰り下げるか否かは各企業に委ねられています。厚生労働省では詳細なガイドラインを定めていないため、各企業が就業規則や労使協定で定めて運用しています。
(4章で後述します)


2. 制度が生まれた背景

日本の労働時間は減少傾向にあるものの、欧米と比較すると依然として長く、過労死問題にも繋がっています。長時間労働は、集中力の欠如、心血管疾患や精神疾患などさまざまなリスクがあることが報告されています。
そこで、長時間労働がもたらす健康被害を防ぐ対策のひとつとして、「働き方改革関連法」の中で勤務間インターバル制度が事業主の努力義務として規定されました。その際、参考にしたのは、1993年に制定された「EU労働時間指令」です。EU では、加盟国に共通する労働基準として「勤務終了後に 連続11時間の休息期間を確保する」ことを定めています。
勤務間インターバル制度を設けることで、労働者が健康的に働き続ける環境を整える狙いがあります。


3. 勤務間インターバル制度の効果

勤務間インターバル制度が企業に導入されることで、次のような効果が期待できます。

・健康管理の意識向上
厚生労働省の「平成 29 年「国民健康・栄養調査」の結果」によると、1日の睡眠時間が6時間未満の割合は 20.2%、年代別では40 歳代で30.9%に上り、十分な休養がとれていないことが分かります。勤務間インターバル制度により、企業が従業員に「十分な休養をとらせること」が規定されることで、企業に健康経営への意識が高まることが期待できます。

・人材の確保・定着
従業員の健康に配慮した働きやすい環境を整えることが、企業のイメージアップにも繋がります。優秀な人材の確保・定着に有効です。

・労働生産性の向上
労働時間が減ると利益率が下がるのではないかという懸念もあるようですが、厚労省の導入事例集に、労働時間の低下が利益率の低下には繋がらないことが示唆されています。時間の制約があることで、情報共有、仕事の段取りなどを計画的に進めるようになることから、結果として労働生産性が向上すると考えられます。

また、従業員にとっては、休養時間が増えることで、家族や友人との充実した時間や自己啓発や地域活動への参加のための時間などを持つことができるでしょう。ワーク・ライフ・バランスが整った、豊かな生活が実現しやすくなります。


4. 導入時の留意点

現在、勤務間インターバル制度の詳細なガイドラインは定められておらず、企業ごとにルールを決めて運用しています。導入時に留意すべき点を解説します。

・休息時間の定義
最低限確保すべき休息時間を定める必要があります。目安となるのはEU加盟国の「11時間」ですが、最低水準は「8時間」です。この8時間は、「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(平成元年2月9日労働省告示第7号)に、自動車運転者については、「勤務終了後、継続8時間以上の休息期間を与えること」 と明記されている点を根拠としています。

・就業規則の整備
通勤時間を「休息時間」に含めるか、適応除外を設けるかなど、さまざまなケースを想定し、就業規則を整備する必要があります。特に重要なのは終業時刻の扱いです。始業時間を繰り下げた日の終業時刻をどうするかについて、自社の業態に照らし合わせ、十分に検討することが大切です。
主な選択肢は次の通りです。

(1)終業時刻は繰り下げない
 実質、短時間勤務となります。短縮された時間を出勤したものとみなします。

(2)終業時刻も繰り下げる
 時差出勤扱いになります。1日の所定労働時間は変わりません。

このように、繰り下げるか否かで労働時間が変わります。それぞれのケースにおける就業規則規定例が厚生労働省で紹介されているので参考にしてください。

参照)厚生労働省 就業規則規定例
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000162467.pdf

・労働時間の管理
制度の実施には、始業時刻と終業時刻を適正に把握することが重要です。勤怠管理システムにアラート機能を追加すれば、休息時間が設定値を下回った場合にアラートが表示され管理しやすくなるので、この機会に勤怠管理システムを見直してもよいでしょう。

導入する際は、労使間で十分に話し合い、実態を把握した上で制度設計をすることが重要です。


5. 企業の導入例

実際に制度を導入する企業では、どのような効果や課題が出ているのでしょうか。今回は4つの企業を紹介します。

企業名

内容

導入効果

課題

株式会社岩田屋三越

11時間

 

平均労働時間が7.45時間から6.65時間へ短縮(2017年度)。

繁忙期に守れないことが課題。長時間労働を続けると人材流出になることを、管理する側に意識してもらうようことが必要。

株式会社ニトリホールディングス

10時間

 

インターバル時間の不足は導入前と比べて3分の1まで減少。

インターバルの時間を11時間に延長したいと考えており、今後はIT技術を使って組織全体の業務改善を図りながら、働きやすい環境を整える予定。

株式会社東邦銀行

11時間

 

時間外・休日労働時間が52%減少。余暇を自己啓発や勉強に活用する従業員が増加。

今後は「場所」に縛られない働き方を導入したい。「在宅勤務」や「テレワーク」といった働き方についても検討している。

森永乳業株式会社

最低8時間、本社は10時間

他の取組と合わせた成果で、年次有給休暇取得率が55%から65%へ。

天災地変や大規模なトラブルにより、インターバル時間をコントロールできない場合がある。制度の実行力という意味ではまだまだ改善の余地あり。

突発的なトラブルにより十分なインターバルが確保できないという課題は残るものの、全体として導入効果は大きいことが分かります。休養時間を十分に確保することは、健康増進だけでなく、時間管理の意識向上にも有効なようです。


6. 助成金について

厚労省は「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」を2018年度に創設し、勤務間インターバルの導入を支援しています。中小企業の事業主は、一定の条件を満たせば助成金を申請することが可能です。

◇対象の事業主
(1) 労働者災害補償保険の適用事業主であること
(2) 次のいずれかに該当する事業主であること

業種

資本または出資額

常時雇用する労働者

小売業(飲食店を含む)

5,000万円以下

50人以下

サービス業

5,000万円以下

100人以下

卸売業

1億円以下

100人以下

その他の業種

3億円以下

300人以下

◇対象となる取り組み
(1) 労務管理担当者に対する研修
(2) 労働者に対する研修、周知・啓発
(3) 外部専門家(社会保険労務士、中小企業診断士など)によるコンサルティング
(4) 就業規則・労使協定等の作成・変更
(5) 人材確保に向けた取組み
(6) 労務管理用ソフトウェアの導入・更新
(7) 労務管理用機器の導入・更新
(8) デジタル式運行記録計(デジタコ)の導入・更新
(9) テレワーク用通信機器の導入・更新 
(10)労働能率の増進に資する設備・機器等の導入・更新
※(1)研修には、業務研修も含みます。
※(10)設備や機器には、原則としてパソコン、タブレット、スマートフォンは対象となりません。

◇支給額
対象経費の合計額に補助率3/4(※)を乗じた額を助成します(ただし次の表の上限額を超える場合は、上限額とします)。
※常時使用する労働者数が30名以下かつ、支給対象の取組で(6)から(10)を実施する場合で、その所要額が30万円を超える場合の補助率は4/5です。

<上限額>

休息時間数(※)

「新規導入」に該当する取り組み

「適用範囲の拡大」又は「時間延長」に該当する取り組み

9時間以上11時間未満

80万円

40万円

11時間以上

100万円

50万円

※事業実施計画において指定した事業場に導入する勤務間インターバルの休息時間のうち、最も短いものを指します。

参考)厚生労働省「時間外労働等改善助成金」勤務間インターバル導入コースのご案内
https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/000498203.pdf


7. まとめ

勤務間インターバル制度とは、勤務終了後、一定時間の休息を設けることで、従業員の生活時間や睡眠時間を確保する制度です。

制度を導入することで、企業には次のような効果が期待できます。
・健康管理の意識向上
・人材の確保・定着
・労働生産性の向上

一方、ワーク・ライフ・バランスの実現という点で従業員にとっても効果のある制度と言えるでしょう。

導入に際しては、次のような点に留意する必要があります。
・休息時間の定義
・就業規則の整備
・労働時間の管理

実際に制度を導入している企業のインターバル時間は8~11時間です。突発的なトラブルにより十分なインターバルが確保できないという課題は残るものの、労働時間の短縮や有休消化率の増加など、全体として導入効果は大きいことが分かります。

厚生労働省は「時間外労働等改善助成金(勤務間インターバル導入コース)」を2018年度に創設し、勤務間インターバルの導入を支援しています。中小企業の事業主は、一定の条件を満たせば助成金を申請することが可能です。

勤務間インターバル制度は働き方改革に関連する他の取り組みと合わせて実施することで一層効果が上がると考えられます。努力義務化されたこの機会に、制度の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

参考)
・厚生労働省 勤務間インターバル制度
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/interval/
・厚生労働省 勤務間インターバル制度普及促進のための有識者検討会
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/other-roudou_444910.html
・FNN PRIME  4月から始まる「勤務間インターバル制度」をご存知?でも“努力義務”だと…厚労省に聞いた
https://www.fnn.jp/posts/00439561HDK

働き方改革の実現をテーマとしたeラーニング

「働き方改革シリーズ」

働き方改革シリーズ教材イメージ

働き方改革を推進するためには、会社として制度を見直すだけでなく、従業員一人ひとりが意識を変え、正しい知識を身に付けて働き方改革に取り組んでいくことが欠かせません。

eラーニング教材「働き方改革シリーズ」は、長時間労働の是正やLGBTへの理解、がん治療と仕事の両立支援方法などを効率的に学習でき、社員の意識改革に大変役立ちます。

今後も働き方改革をテーマにした教材を順次投入し、貴社の働き方改革の実現をサポートいたします。

<教材ラインナップ>

【チームで取り組む長時間労働の是正 ―働き方改革の実現に向けて―】
【誰もが働きやすい職場をつくる「LGBT」】
【ダイバーシティのエッセンス】
【ダイバーシティ浸透をはばむハラスメント ―働きやすい職場をつくるために―】
【クイズで学ぶ「がん治療と仕事の両立」(管理職編)】

無料にて教材のプレビューが可能ですので、ぜひご覧になってみてください。

◆動作環境◆
教材の動作環境については、当社HPの製品サポートページをご覧ください。
※OSのバージョンや機種特有の問題により一部の端末では正常に動作しない場合があります。予めご了承ください。

個人情報の取り扱いにつきましては個人情報保護方針をご確認ください