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内部通報制度はコンプライアンス経営の要! 体制づくりと課題とは

東芝の不正会計や、日産自動車の代表取締役2名の逮捕事件のきっかけが内部通報であったことが報道され、話題となっています。

公益通報者保護法が施行された2006年頃から、各企業は、コンプライアンス問題に対する社員からの相談に対して、「ホットライン」や「ヘルプライン」と呼ばれる通報窓口を設置し、積極的に内部通報制度を作るようになっています。

この内部通報制度によって企業の不祥事が明らかとなる事例が増えましたが、一方では、相談を受けても事実確認が困難であったり、通報窓口の担当者の負担が大きかったりするなど、運用には課題があることが指摘されています。

今回は、コンプライアンス経営を実現する組織に必要となる内部通報制度の現状と課題、そして、通報窓口の設置方法をご紹介します。

参考)
今、内部通報制度が東芝を揺さぶる (企業法務ナビ)
https://www.corporate-legal.jp/法務ニュース/法務コラム/1920
内部通報で判明、検察に情報提供 日産会見詳報(2) (産経ニュース)
https://www.sankei.com/economy/news/181119/ecn1811190035-n1.html


1. 内部通報制度の現状と課題

内部通報制度とは、社員が社内の不正を発見したり、コンプライアンス違反の疑いがあったりする場合に通報する制度です。ここでは、「内部告発」との違いや、同制度のポイント、効果について紹介します。

1-1. 内部通報制度とは

内部告発との違い

「内部告発」と「内部通報」は、情報提供の内容と提供の対象が異なります。具体的には、次のような違いがあります。

内部告発は、「社員・職員などが、組織内における法令違反、不祥事、社会に害を与えるような違法行為や不正行為などを、行政・司法機関、消費者団体、マスコミなどの外部に対して情報を提供すること」、
内部通報は、「社員・職員などが、法令違反、規則違反や不正行為や疑問などを組織内部の窓口に対して、匿名または実名で相談・通報すること」”

出典)内部通報制度とは (BUSINESS LAWYERS)
https://business.bengo4.com/articles/201

つまり、外部に通報するのが内部告発であり、企業内部内で収めるのが内部通報という点が異なります。

通報者の保護が重要

内部通報制度を有効に運営するには、通報した従業員の秘密を守り、保護することが重要です。公益通報者保護法は、内部通報した社員が不当な扱いを受けないように保護するための法律として、2006年に施行されました。公益通報者保護法では、通報者の保護について、次の内容が明記されています。

① 公益通報をしたことを理由とする解雇の無効・その他不利益な扱いの禁止
② 公益通報をしたことを理由とする労働者派遣契約の解除の無効・その他不利益な扱いの禁止

出典)公益通報者保護法と制度の概要(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/overview/

内部通報制度の効果

それでは、内部通報制度を作ることは、コンプライアンス経営にとって、具体的にどのような価値があるのでしょうか。消費者庁のアンケートによると、内部通報制度を導入している企業は、次のような効果があると回答しています。

通報窓口を設置したことによる効果(複数回答、上位5項目)

1.従業員等による違法行為への抑止力として機能している49.4%
2.内部の自浄作用として違法行為を是正する機会が拡充された43.3%
3.従業員にとって安心して通報を行う環境が整備された43.3%
4.内部通報制度の規程に基づく適切な対応が確保できるようになった30.4%
5.株主や取引先などに対して、実務的な内部統制システムを整備していることを示すことができた24.2%

出典)平成28年度民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書、P55-57(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/research/investigation/pdf/chosa_kenkyu_chosa_170104_0002.pdf

コンプライアンス経営には、法令遵守に加えて、リスクマネジメントとCSR(企業の社会的責任、corporate social responsibility)の視点が必要であり、万が一損害が発生したときには、その拡大を防ぎ、事業継続のためのセーフティーネットを用意しておく必要があります。(「コンプライアンスとは 法令だけじゃない、CSRとリスクマネジメントの重要性」を参照)。

上記1、2、4の回答からは、内部通報制度は、リスクマネジメントに活用できることがわかります。また、上記3と5の回答からは、内部通報制度は、CSRに貢献していることがわかります。

参考)
法律・制度の概要Q&A(平成29年8月版)(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/overview/faq/

1-2. 内部通報制度の課題 ~通報側は「不安」、受付側は「難しい」

しかし、内部通報制度の導入には、運営上の課題もあります。同じ調査で、内部通報制度を導入している企業は、運用上の課題について、次のように回答しています。

運用上の課題や実務上の負担(複数回答、上位5項目)

1.通報というより不満や悩みの窓口となっている35.7%
2.本当に保護されるか、従業員に不安があるように感じる29.5%
3.不当な取り扱いを受けた事実の確認が難しい20.7%
4.担当者の事務負担が大きい17.1%
5.保護すべき通報かどうかの判断が難しい14.5%

出典)平成28年度民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書、P52-54(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/research/investigation/pdf/chosa_kenkyu_chosa_170104_0002.pdf

この回答からは、企業の多くが通報窓口で受け付けた情報の事実確認をとても困難な課題だと感じ、また、通報する従業員も、不安に思っていることがわかります。

参考)
内部通報制度において企業が抱える問題点・課題 (BUSINESS LAWYERS)
https://business.bengo4.com/articles/202
外部ヘルプライン「企業倫理ホットライン」の取り組みと、運営企業の立場から見た内部通報制度の課題について(ダイヤルサービス株式会社)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/research/hearing/pdf/150305_siryo3.pdf
内部通報窓口/リスクホットライン| 企業リスクの調査と対応支援 反社会的勢力チェックや警護・警備 企業危機管理の株式会社エス・ピー・ネットワーク
https://www.sp-network.co.jp/service/consulting/risk-hotline.html

1-3. 内部通報とCSR ~通報が一定数あるほうが健全

1-1でも触れた、内部通報のCSRの関係について、興味深い調査があります。

東洋経済新報社は、「内部通報が一定数あるほうが健全という考え方が主流」としたうえで、2006年から通報窓口を設置しているか否かを継続的に調査し、2012年からは通報件数の多さでランキングを作成し、発表しています。この調査の2018年版では、CSRに貢献する通報しやすい環境を整備した企業として、次の事例を紹介しています。

“6位は日本電信電話で365件。前年304件から大きく増えた。2002年11月策定の「NTTグループ企業倫理憲章」には、「不正・不祥事を通報した役員および社員は、申告したことによる不利益が生じないように保護される」と明記。匿名通報や取引関係のある会社の勤務者からの通報も受け付けている。「公益通報保護ガイドライン」の改定に対応し、第三者評価を実施するなど、通用しやすい環境整備を進めている。”

出典)最新版!「内部通報が多い」100社ランキング(2018年版)(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/188974?page=2

この事例から、従業員の通報に対する不安感を軽減するには、内部通報制度を社内規程に明記したうえで、どのように保護するかを社員に具体的に知らせ、運用を徹底する必要があることがわかります。

参考)
最新版!「内部通報が多い」100社ランキング(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/133942(2016年版)
https://toyokeizai.net/articles/-/188974?page=2(2017年版)
https://toyokeizai.net/articles/-/188974?page=2(2018年版)


2. 内部通報の相談窓口

ここまで、内部通報制度のあらましについて確認してきました。この章では、実際に制度を機能させるために「相談窓口」をどのように運用すればよいのかを考えていきましょう。

2-1. 社内と社外、どこに設置するか

それでは、ホットラインやヘルプラインと呼ばれる通報窓口は、社内に置くべきでしょうか、それとも、社外に置くべきでしょうか。

消費者庁の調査では、各企業の通報窓口の設置場所は、次のような構成になっています。

通報窓口の設置場所(単一回答)

1.社内外いずれにも設置59.9%
2.社内のみに設置32.1%
3.社外のみに設置7.0%
4.制度は導入しているが、特定の通報受付窓口は社内外のいずれにも設置していない0.6%
5.無回答0.4%

原典)平成28年度民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書、P28(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/research/investigation/pdf/chosa_kenkyu_chosa_170104_0002.pdf

この数字を見ると社内外いずれにも設置している企業が主流です。
しかし、2017年版の東洋経済新報社の調査では、社外の専門機関に一本化することにより、相談件数が100件(2014年から2015 年)近く増えたIHIの興味深い事例が紹介されています。

“6位はIHIで333件。前年238件から大きく増えた。「コンプライアンス・ホットライン」と呼ぶ窓口は社外専門機関に一本化。関係会社や派遣従業員を含む幅広い従業員に設置趣旨や利用方法を広く周知している。今回のランキング対象上位100社で社内窓口がないのは同社だけだ。ただ、これは新しい時代の先取りかもしれない。社内の窓口に通報することに、どうしても不安を持つ社員がいるからだ。信頼がおける専門機関に委託するのは、公平性を高めるという意味では効果的だ。”

出典)最新版!「内部通報が多い」100社ランキング(2017年版)(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/188974?page=2

この事例のみで通報窓口を、社外のみに設置する方が良いか否かは判断できませんが、前述の運営上の課題で指摘されている従業員の不安や窓口担当の判断の困難さなどの問題を解決する方法の一つとして注目できる取り組みです。

内部通報制度の基本なので、通報窓口は設置することが必要です。ただし、社内に置くか、社外の専門機関や法律事務所などに置くか、両方に置くかについては、企業の組織やコンプライアンス体制により異なります。

参考)
内部通報制度において企業が抱える問題点・課題 (BUSINESS LAWYERS)
https://business.bengo4.com/articles/202
公益通報者保護法を踏まえた内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドライン(消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/whisleblower_protection_system/private/system/pdf/minkan_shikumi_161213_0002.pdf

2-2. 通報を受けたら、どう対応すべきか ~問題解決フロー

それでは、通報窓口の担当者は、実際に相談を受けた後、どのような点に気をつける必要があるでしょうか。

パナソニックの事例を見てみると、同社は消費者庁が主催する「公益通報者保護説明会」において、通報対応にあたり次のような5項目に留意しているとしています。

1.匿名対応顕名を要請するも、匿名で調査実施
2.返信24時間以内に、受付第一報発信
3.通報・相談者保護氏名・所属の機密保持。加えて、通報・相談者が推定されるおそれのある情報も同様
4.通報対応毅然として姿勢・行動によるトラブル防止
5.解決レベル通報・相談の内容に応じ、また、本人の意向をできるだけ尊重

原典)「自浄作用を高める取組み~社会に信頼される会社に~」パナソニック(株)、2013年1月20日、消費者庁主催「公益通報者保護法説明会」配布資料 P24

この事例は、内部通報者に配慮したきめ細やかな対応が必要であることを示しています。

次のフローチャートは、メーカーなどで製品やサービスの品質問題などが発生したときに、損害の拡大を防止することを目的とした問題解決のフローチャートです。原典)一色正彦、竹下洋史著、「法務・知財パーソンのための契約交渉のセオリー」、第一法規、2018、P194 図9「品質クレーム対応のフロー」

このフローチャートのポイントとして、次の3点が挙げられます。

① 最初に、正確な事実を迅速に確認し、具体的な根拠に基づき対策を考える。
② 対策は、緊急対策暫定対策恒久対策の3段階に区分し、段階的に問題解決に取り組む。
③ 問題の原因究明後、責任部門や当事者が、妥当な負担をする必要はあるが、責任問題は最後に取り組む。

問題が発生した当初、どうしても、”どの部門の責任か、誰の責任か”、という責任問題に目が向く傾向があります。しかし、初期段階で重要なことは、損害の拡大を防ぐ緊急対策に必要な正確な事実を迅速に把握することです。

この段階で責任問題を並行して議論してしまうと、責任を追求されたり、追求される可能性のある部門や当事者から正確な事実関係を迅速に確認したりすることが困難になります。そのため、結果として、損害の拡大が防止できないだけでなく、正確な事実がわからないために、再度問題が発生するという「二次災害」を招くリスクがあります。

この手順は、通報窓口での対応でも同じです。内部通報制度を円滑に運営するためには、通報を受けた後の対応について、コンプライアンス対応の基本である“何をすべきで、“何をすべきでないか(Do’s and Don’ts) ”を明確にしておく必要があります。

コンプライアンス経営を実現するための組織作りにおいて、通報窓口を設置し、内部通報制度を作り、社内外に周知したうえで制度を円滑に運用することは、リスクマネジメントとCSRの観点からも重要な取り組みです。

現在、公益通報者保護法は、改正の検討が行われています2018年12月26日、内閣府の消費者委員会 公益通報者保護専門調査会が改正に関する報告書をまとめました。保護対象の拡大や通報窓口設置の原則義務化など、内部通報制度の整備に対して一定の前進であるとの意見がある一方、内部通報者に報復した企業への刑事罰の導入や窓口担当者に対する守秘義務の見送りなど、批判的な意見もあります。

今後、この報告書を受けて改正法案が検討され、次の通常国会で審議される予定です。この法改正は、コンプライアンス経営に影響を与える内容になる可能性が高く、改正内容を注視する必要があります。

参考)
公益通報者保護法専門調査会報告書(内閣府)
https://www.cao.go.jp/consumer/kabusoshiki/koueki/doc/20181227_koueki_houkoku.pdf
公益通報者保護法の改正議論に関する意見(日本経済団体連合会)
http://www.keidanren.or.jp/policy/2018/069.html
公益通報保護対象にOBや役員も(共同通信)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20181226-00000058-kyodonews-soci
公益通報者保護法の改正(金沢合同法律事務所)
https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog/201901037330.html


3. まとめ

内部通報制度は、社員がコンプライアンス違反やその疑いのある事実について、相談できる通報窓口を作り、その対応方法と通報者を保護する制度です。

内部通報制度により、違法行為への抑止力、違法行為を是正する自浄採用、社員が安心する環境などの効果があります。一方、悩みや不満の窓口になる、社員が保護されるか不安がある、事実の確認が難しい、などの運営上の課題があります。

内部通報が一定数ある方が健全という考えが主流になっており、積極的に内部通報制度を活用することで、CSR(企業の社会的責任)に貢献している企業も現れています。

また、通報窓口は、社内と社外に設置する事例が大半ですが、社内規程に明記するなど、通報しやすい環境を作ったり、社外の専門機関に一本化したりすることで、通報数を増やしている企業の事例もあります。

内部通報制度を円滑に運用するには、通報者の保護と、迅速でわかりやすい対応が必要です。
特に、対応の順番が重要であり、初期段階でまず必要なことは、できるだけ早く正確な事実を確認したうえで、緊急対応をすることです。責任部門や担当者の責任などといった問題は、対応が終わったあとに行えばいいのです。。

現在、公益通報者保護法の改正が検討されており、コンプライアンス経営に影響する法改正になる可能性が高く、注視しておく必要があります。

今回ご紹介したコンプライアンスを実現するための通報窓口の作り方と運営のポイントを参照し、自社に適切なコンプライアンス体制構築に取り組んでください。

 

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