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警備業法改正 法定教育に関する主な変更点とeラーニング活用のすすめ

「ただでさえ人材不足の中、法定教育に必要以上の時間を割きたくない。短時間で効果的な教育方法はないだろうか?」

警視庁のデータによると、2014年から2018年までの間に、警備員の人数は537,285人から554,517人へと17,232人ほど増加しています[1]

一方で、厚生労働省によると、警備員が含まれる保安職種の有効求人倍率が6.5倍[2]となっており、同時期の全体の有効求人倍率が1.39倍[3]であることと比較すると、まだまだ業界として人材不足だという現状がうかがえます。

このようにただでさえ人が不足している現場から、法定教育のために貴重な労働時間を割かなければならない。もちろん教育の質を下げるわけにもいかない。警備業界で教育を担われている方々は、こういった悩みに頭を抱えていらっしゃるのではないでしょうか。

そんな中、2019年に施行された警備業法の改正で、警備員の教育スタイルが大きく変わろうとしています。本稿では、警備員教育の在り方、警備業法の改正による変化、これにより教育担当者や警備業界の企業にとってどのようなメリットがあるのかなどについてお伝えしていきます。

[1] 平成30年における警備業の概況https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/statistics/30keibi.pdf
[2] 厚生労働省参考統計表令和2年3月https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/G35-202003.pdf
[3] 厚生労働省一般職業紹介状況(令和2年3月分及び令和元年度分)https://www.mhlw.go.jp/content/11602000/000623942.pdf


1. 警備員教育は法律で定められている

日本における警備業の歴史はまだ浅く、初めての警備会社が誕生したのは1962年です。その後1972年に、警備業務実施の適正化を図ることを目的として、警備業法が制定されました。警備業の定義、警備員の制限事項等、様々なルールを定める法律です。

その第21条第2項「警備業者等の責務」において、「警備業者は、その警備員に対し、警備業務を適正に実施させるため、この章の規定によるほか、内閣府令で定めるところにより教育を行うとともに、必要な指導及び監督をしなければならない。」とあります。

質の高い警備業務を提供するために、従業員の教育は重要事項です。そのため、警備業法の施行規則の中には教育の種類や内容、方法、時間、時期、担当者、教育計画書の作成などに関する細かな規定が書かれています。

つまり、警備員の教育は、法律によって定められた、必ず実施しなければならない必須事項なのです。年に1度、警察が行う警備会社への立ち入り検査では、適切な社員教育が行われているかどうか、ということが確認項目の一つとなっています。


2. 警備業法改正による警備員教育の主な変更点

2019年の警備業法の主な改正点としては、以下の4点が挙げられます。

・警備員教育の時間数と頻度の変更
・警備員教育の実施可能な講義方法の拡大
・警備員等の検定等に関する規則の一部改正
・登録講習機関による講習会の実施基準の見直し

このうち、今後実際の教育現場に大きく影響してくるのは、「警備員教育の時間数と頻度の変更」「警備員教育の実施可能な講義方法の拡大」です。ここではこの2点について、詳しく確認していきましょう。

(1) 警備員教育の時間と頻度の変更
今回の法改正により、新任教育の基本教育と業務別教育の時間数が統合され、改正前に決められていた教育時間数の3分の2に短縮されました。

例えば、改正前は一般の警備員新任教育で基本教育15時間、業務別教育15時間と定められていたものが、改正後は基本教育と業務別教育を合わせて20時間、に変更されています。

現任教育についてはその頻度も変更され、教育時間は改正前の16分の10に短縮、半年に1度だった実施頻度も、年度ごとに改められました。そのため、営業所に義務付けられている教育計画書、その他実施に関して記録した書類等の作成も、年度ごととなりました。

このような教育時間の短縮に至った背景には、現場における指導教育体制の充実と、警備員の質向上などがあるとされています。また、以前の規定では教育時間が長く、実際に業務に就くまでに時間がかかることから、業界から負担軽減を求める声があがっていたとも言われています。

延期にはなりましたが、東京オリンピックなどの大規模イベントを見据え、人材不足の警備業界では、できるだけ多くの人員を現場に確保するとともに、短期間で新人を育成・早期戦力化することが求められています。今回の新任教育時間の短縮と、現任教育の頻度の改正は、教育現場にとって確実な効率化に繋がるでしょう。

(2) 警備員教育において選択可能な教育方法の追加
従来、警備員教育の講義は対面による方法に限定されていました。改正により、ここに「電気通信回線を使用して行うもの」が追加されました。

具体的には、eラーニングのようなパソコンでインターネットを利用して行う学習方法のことです。採用条件として、本人確認ができること、受講状況を確認できること、受講者の知識習得状況を確認できること、質疑応答の機会があることなどが挙げられています。

この改正により、教育担当者の負担と、受講生である警備員たちの時間的拘束の負担が大きく軽減されることが予測されます。eラーニングの導入に具体的にどのようなメリットがあるのかは第4章でご説明します。


3. 警備員教育の主な方法

法改正前の警備員教育は、主に次の方法で行われていました。

(1) 社内で教育担当者が研修を実施
教育資格を持った担当者が、社内研修を行います。ほとんどの警備会社はこの教育方法を採用しているのではないでしょうか。メリットとしては、社内で行うため、その会社に特化した内容も盛り込み、教育を行うことができます。そのため、現場に則した教育になり、受講生の満足度も高くなります。

一方で、社内の研修はカリキュラムやテキストの作成、講師としてのファシリテーションなど、教育担当者のやるべきことが多いというデメリットがあります。おそらくほとんどの企業の教育担当者は、研修以外の業務にも携わっているため、社内研修の実施にかなりの時間が取られることを負担に感じているのではないでしょうか。

また、教育担当者のレベルによって研修効果にばらつきが出る、一度に多くの受講生を社内で拘束するため、会場の確保や受講生の日程調整が困難、というようなデメリットもあり得ます。

(2) 業界団体の外部セミナーを受講

警備業界に特化した団体が外部会場で行うセミナーに参加するという方法です。公益社団法人東京ビルメンテナンス協会や、東京都警備業協会等が実施しています。

メリットとしては、カリキュラム、テキストがすでに準備されており、当日受講生が会場に行くだけで良いので、教育担当者の負担が少ない点が挙げられます。また、プロの講師が教えるため、理解度にばらつきが生じにくいと言えます

デメリットに目を移すと、外部セミナーでは一人あたりの費用がかかるため、まとまった人数の場合は社内研修よりも費用負担が大きくなります。さらに、セミナーの日程が固定のため調整しづらい、人気のセミナーはすぐに埋まってしまう、一般的な内容がメインなので自社の現場に則した学習ができないといったことも懸念されます。

以上が、これまでの警備員教育の現場で行われていた教育方法でした。


4. これから活用できるeラーニングによる警備員教育

警備業法の改正により、社内研修と外部セミナーに加えてeラーニングという選択もできるようになりました。本章では、eラーニングの導入を検討するにあたって把握しておくべきポイントをお伝えします。

(1) eラーニング導入のメリット・デメリット
まずはeラーニングを導入した場合の具体的なメリットとデメリットを確認しましょう。

・教育担当者と受講者、双方の負担軽減
まず、教育担当者にとっても受講者にとっても、eラーニングの導入はかなりの負担軽減につながると言えます。

研修やセミナーは日時や会場が決められており、融通が利きにくいというデメリットがあります。一方で、eラーニングなら、定められた受講期間中、パソコンやスマートフォンなどの端末とインターネットさえ利用できればいつでもどこでも学習することができるので、時間と場所の確保が不要です。

また、学習だけでなくテストも実施できるので知識習得状況を可視化できるというメリットもあります。

・長期運用でコスト削減も
費用面で見ると、初期投資は必要ですが、いったん運用が始まれば運営面の負担は確実に軽減できます。長期的に見れば、研修の実施や管理といった業務を社内のリソースで行うよりも、大幅なコスト削減が可能になるでしょう。

・データ管理の効率化
学習効果や教育の管理・運営の負担軽減に加え、データ管理の効率化も、eラーニング導入の大きなメリットと言えます。警備業法の中に、教育計計画書と教育実施簿を営業所に備え付けなければならない、という規定があります。

eラーニングの受講履歴は学習管理システム(LMS; Learning Management System)のデータベースに記録されるので、これを活用すれば立入検査で必要なデータを簡単に用意することができます。

なお、法定教育に関して製薬業界によく似た運用事例がありますので、ぜひこちらも参考にしてみてください。

参考)
「MRの学習履歴とOJTの実施報告を一元管理し、教育管理を効率化する」
https://www.lightworks.co.jp/solution-2/pharmaceutical

・デメリットは限定的
デメリットとしては、受講者同士の交流が減る、受講者側に端末の用意が必要であるといったことがあります。このあたりについては企業によって事情が異なると思われます。

もっとも、最近は若い世代を中心に従業員同士の交流もSNSで行われることが多いですし、スマートフォンやタブレットなどを持っていれば、大きな問題はないでしょう。

端末を持っていない従業員については、社用パソコンを貸し出すかオフィスで受講するといった対策が考えられます。

eラーニングについて、さらに詳しいメリット、デメリットは以下の記事をご参照ください。

(2) 教材コンテンツを内製するという選択肢
eラーニングには「一般的な内容のパッケージ商品」というイメージを持っている人もいるかもしれません。しかし、パッケージ商品だけではなく、今までの教材を使用して、内製で教材や理解度テストを作ることができる教材作成ツールというものがあります。

一般的な内容だけでなく、特化した内容も含めて教育したい…という時は、そういったツールの導入も検討すると良いかもしれません。教材作成ツールは、大抵の場合eラーニング(LMS)ベンダーが提供可能なので、問い合わせてみましょう。

    教材作成ツール『教材コーチ君®』   
教材コーチ君


全23種類のファイルを取り込み可能。eラーニング教材の作成・編集を簡単に。

ライトワークスの『教材コーチ君』を利用すれば、社内資料をもとに最短1分で簡単にオリジナル教材を作成することができます。
また、テストや設問も全15種類の豊富な出題形式・設定から自由に選んで作成することができます。


まとめ

2019年の警備業法の改正では、主に以下の内容が変更されました。

●警備員教育の時間数と頻度の変更
●警備員教育の実施可能な講義方法の拡大
●警備員等の検定等に関する規則の一部改正
●登録講習機関による講習会の実施基準の見直し

中でも最初の2項目は、今後の警備員教育の在り方に大きく影響してきます。

まず「警備員教育の時間数と頻度の変更」では、法定教育の時間が今までの3分の2になり、現任者への教育頻度が半年に1度から年度ごとに1度に変更となりました。これにより、教育担当者と受講者の時間的負担は軽減されました。

一方でこのことは、短縮された時間の中でも、警備員の質を落とさないように教育を実施しなければならないことを意味します。その対策につながるのが、「警備員教育の実施可能な講義方法の拡大」です。

従来、警備員教育は対面式の講義に限定されていましたが、今回の改正によりeラーニングの導入も可能になりました。

eラーニングの導入には、

●教育担当者と受講者、双方の負担軽減
●長期運用でコスト削減
●データ管理の効率化

など、多くのメリットがあります。

eラーニングは、その利便性と管理の効率化という点で、警備員教育の現場に変革をもたらすでしょう。ノウハウがない中での導入は敷居が高いかもしれませんが、検討の価値はあります。

ぜひ自社にとって最適な方法を見つけ、警備員教育の効率と効果、双方の実現を目指しましょう。

参考)
・Wikipedia 警備
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AD%A6%E5%82%99#%E8%AD%A6%E5%82%99%E5%8F%B2
・警備業法施行規則
https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=358M50000002001
・警備マガジン 警備員として働くには研修が必須!新任現任教育の気になる研修内容とは
https://job-con.jp/special/security/guide/knowledge10
・一般社団法人広島県警備業協会 新任教育の教育時間数(新旧比較)
http://www.hirokeikyo.com/%E6%95%99%E8%82%B2%E6%99%82%E9%96%93.pdf
・警備保障タイムズ 警備員教育 大幅見直し
http://kh-t.jp/close-up/c241.html
・SPnet 選任業務編
http://www.spnet.biz/spnet_part_2/senningyomuhen/senninhen_2.htm
・警視庁 警備業法施行規則の一部を改正する内閣府令等の施行について(通達)
https://www.toukeikyo.or.jp/tsuutatsu22.pdf
・警備保障タイムズ 教育時間、削減へ
http://kh-t.jp/topnews/top-2019jly.html
・(公社)東京ビルメンテナンス協会 警備業務に関する実態調査報告書
https://www.tokyo-bm.or.jp/dcms_media/other/R1-keibi-zittai.pdf
・広島県庁 令和元年8月30日 官報
https://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/363787.pdf

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