できる人は休むのもうまい 疲労回復のカギを握るアクティブレストとは

「週末しっかり休んだはずなのに、月曜から体が重い…。」
「次の一週間も疲れを引きずって、週末が待ち遠しくてしかたない…。」

こんな風に感じている方も多いのではないでしょうか?

疲れをとるための方法として、栄養をとる、ゆっくりお風呂に浸かる、何よりたっぷり寝るなどを思い浮かべると思いますが、「疲れを取るために、体を動かしましょう」と言われたらどうでしょう。「え?」と思いませんか?疲れているのに体を動かしたら、余計に疲れるのではないかと。

あえて体を動かすことで回復を促す、「アクティブレスト」(積極的休養)という考え方があります。

疲労の状態に合わせて適切な回復方法を選択することで、疲れを引きずることなく仕事のパフォーマンスもアップするとしたら、試してみる価値はあると思いませんか?

疲労がたまった状態を放っておくと、コリや痛みなどの不調が現れたり、睡眠不足に陥ったりする可能性もあります。そうなると当然、毎日の仕事へも影響してきますよね。

そこで今回は、あえて体を動かすことで疲労を回復し、体調を維持して仕事のパフォーマンスもアップする「アクティブレスト」とは具体的にどんなものなのか、疲労のメカニズムから具体的な回復のアプローチまで紹介いたします。

1.  疲労を感じるメカニズム

アクティブレストには体を動かすことで疲労回復を促す目的があり、「積極的休養」と訳されています。しかし体を動かすことが疲労回復にどうつながるのか、今ひとつピンとこないかもしれません。アクティブレストの考え方を知るために、まず疲労とは何かを探っていきましょう。

1-1. 細胞のサビがもたらす脳と自律神経の疲れ

かつては、エネルギー不足や乳酸のたまり過ぎが疲労の原因だと考えられていました。しかし最近では、必ずしも乳酸の蓄積が疲労をもたらす原因ではないことがわかってきています。体を動かすためのエネルギーは細胞でつくられ、生成過程では乳酸が発生します。しかしその乳酸は蓄積し続けるわけではなく、細胞内に運ばれて再びエネルギーを作り出す材料として使われます。

では、疲れをもたらす要因はどこにあるのでしょうか。実は「脳の疲労」がもっとも大きいと考えられています。脳の疲労はどうして起こるのかというと、その最大の原因が活性酸素です。

私たちが筋肉を動かしたり考えたりするためは大量のエネルギーが必要です。エネルギーを作る際には酸素を消費し、その副産物として活性酸素が生まれます。活性酸素には、体内に入りこんだ細菌を除去したり酵素の働きを促したりする大切な働きがあるのですが、増えすぎると、強い酸化力によって細胞を傷つけてしまいます。

活性酸素によって細胞がサビてしまうと、本来の機能が発揮できなくなります。とくに脳には、情報を処理したり自律神経をつかさどったりする重要な機能があります。心臓、内臓の動き、呼吸、体温調節、ホルモンの分泌などを調節する自律神経の働きが悪くなると、体調もすっきりしなくなる。交感神経、副交感神経のバランスも崩れてしまい、十分な睡眠がとれなくなる。昼間も何となく調子が悪くなる――。つまり、脳と率神経の疲れが、心身ともに疲労を感じる正体だといわれています。

1-2. 筋疲労と血流の滞りによる疲れ

自律神経の疲れのほか、体を使い続けることでも筋肉そのものが疲労します。「子供の運動会で張り切りすぎて筋肉痛」「1日中引っ越しの片づけで腕がパンパンに張ってしまった」というような経験を持つ方もいるでしょう。筋疲労の代表が筋肉痛です。

筋肉はひとつの大きな塊でではなく、細かい筋繊維の集合体です。筋肉を使いすぎると筋繊維が細かく傷つき、そのキズを修復しようと白血球を中心とした血液成分が集まります。このときに炎症が起き、同時に刺激物質が生成され、筋膜を刺激することで筋肉痛として感じるといわれています。

また、血流の滞りによっても疲労が現れます。

血行不良の要因はいろいろ考えられますが、血流改善に必要な栄養素不足が不足している食生活、1-1.で紹介したように、自律神経の疲労による機能低下などがあります。自律神経がうまく働かなくなると、血管収縮機能に乱れが生じて血流が悪くなるからです。

筋肉を動かさないことも血行不良の大きな原因として挙げられます。「ふくらはぎは第二の心臓」というフレーズを聞いたことがあると思います。心臓から足先までは離れていますが、脚の筋肉が収縮することによって血液を心臓に押し戻し循環させています。そのポンプの役割ゆえに第二の心臓といわれるのです。全身の筋肉にも同じ働きがあります。動くことによって血液を体の隅々まで行き渡らせているのです。

しかし十分に筋肉を動かさないままだとどうなるでしょうか。

体を動かさないと、筋肉が衰え、血液を循環させる力が弱まります。血液によって十分な酸素や栄養が行き届かなくなると、肩こり、腰痛、冷えなどさまざまな体調不良、疲れにつながってしまうのです。さらに血液の届かない末端の毛細血管は劣化し、ますます血流が悪くなるという負のスパイラルに陥る可能性もあります。

1-3. 脳と体のアンバランスによる疲れ

「忙しくて午前3時まで仕事をしていたら目が冴えて寝られなくなった」「徹夜明けでそのままゴルフに出掛けてがんばったよ」という経験があるでしょうか。

これは、体と脳の感じる疲労が一致しない状態。脳が興奮状態のままだと交感神経が活発に働いてしまい、眠れない、疲れを感じないのです。寝る直前まで仕事をしているケースのほか、「明日は待ちに待った旅行」というウキウキした状態や、その逆に「明日の会議は気が重いな」というストレスがたまる状況でも、脳は興奮状態になりがちです。

このようなアンバランスの状態が続くと、睡眠の質が悪くなり、十分に睡眠時間をとっているのに疲れがとれない慢性の睡眠障害に陥ってしまうこともあります。                                                                

2. 疲労回復に有効なアクティブレストとは?

アクティブレスト(積極的休養)は、もともとスポーツ選手の疲労を抜くために用いられた方法です。さまざまな疲労に、アクティブレストではどうアプローチするのでしょうか。疲労回復についてわかりやすく説明するために、普段からトレーニングを行っている人の疲労回復方法を紹介します。

休養には完全休養とアクティブレストがあります。完全休養とはトレーニングせずに体を休息させることで、激しいレース後や痛みがある場合に用います。

これに対してアクティブレストは、軽い運動を取り入れることで筋肉疲労をとっていく方法です。筋肉を回復させるのが目的なら完全休養がいいのではと考えがちですが、継続的にトレーニングを行う場合、体の隅々まで血流を促すアクティブレストのほうが早く回復するといわれています。例えば、きついトレーニングやレースの後に行うクーリングダウンもアクティブレストのひとつ。軽いジョギングやバイク、ストレッチを取り入れて回復を促します。

アクティブレストの方法をビジネスパーソンに当てはめてみましょう。普段あまり運動をしていないけれど、何となく疲れを感じているような方です。体を酷使するアスリートとは異なりますが、疲労回復のメカニズムに応用できます。

2-1. 筋肉と血流へのアプローチ

例えばいきなり体を動かして筋肉痛がひどいというケース。体を動かすと筋肉のポンプ作用で血液が体の隅々まで巡ります。血流がスムーズになると、栄養が行き渡るほか、老廃物の排出もスムーズになります。結果として筋疲労の回復が早くなり、また血流改善で体のコリが和らぐことも考えられます。

筋肉は、使わないと衰えてかたくなってしまいます。そのままにしておくとコリや痛みにつながり、ますます動くのが億劫になってしまうことも。全身の筋肉のポンプ作用を維持するために、アクティブレストで筋肉のコンディションを整えておくことは疲労回復への第一歩といえます。

2-2. 脳と自律神経の疲れへのアプローチ

1章で、脳と自律神経の疲労が疲れを感じる大きな要因だと紹介しました。膨大な情報を処理しなければならない現代では、脳の疲労を軽減するのはなかなか難しいように思えます。アクティブレストで脳の疲れを癒せるのでしょうか。

自律神経の疲労には、傷ついた細胞から出るFF(Fatigue Factor)というタンパク質が作用しているといわれています。ただしそれを抑制してくれる物質もあり、それがFR(Fatigue Recover)というたんぱく質。FRは体内にとどまり、活性酸素の活動が弱い就寝中に働きます。つまり、FRを増やせば自律神経の疲労が回復すると考えられます。

増やす方法のひとつが運動です。運動をするとFFが発生しますが、それに呼応してFRも発生します。普段から体を動かして疲労回復物質であるFRを作りやすい体にしておくことで睡眠中に自律神経の回復を促すといわれています。

さらに脳と体の疲れを調整するプラス効果も期待できます。

「毎日同じルートで会社と家の往復。週末は家でごろごろ…。ある週末に友だちに誘われてハイキングに出かけたら、かえって体がリフレッシュした」。そんな経験はありませんか?

何となく体がだるい、気分がスッキリしないとき、あえてウォーキングやジョギングをしたり、軽いストレッチをしたりすると爽快感を感じることがあります。これには、脳を覚醒してくれるセロトニンの分泌が関係しています。セロトニン神経は単純なリズム運動によって活性化されるので、歩く、走るという繰り返し運動は効果的です。アクティブレストとしてウォーキングなどを取り入れることで、アンバランスだった脳と体の疲れが調整されるという効果も期待できます。

3. アクティブレストの方法

では実際に、アクティブレストとしてどんな運動をとりいれればいいのでしょうか。「普段あまり体を動かしていないから億劫」「きつい運動はしたくない」と考えるのは当然です。

アクティブレストのコツは次の3つです。

  1. きつい運動はしない
  2. 頑張らない
  3. 気持ちいいと感じる

体がきつく感じるほど運動をしてしまうと、かえってストレスを感じて疲労が深まってしまうこともあります。気持ちが安定し、身体が温かくなるのを感じら、心地よくなることがアクティブレストの基本です。

3-1. ストレッチ

簡単なストレッチですが筋肉を伸縮させることで血流が良くなり、コリをほぐす効果があります。痛いと感じところは筋肉がかたくなっているのかもしれません。深い呼吸を繰り返しながらゆっくりと伸ばしましょう。

①太もも
片方の脚を伸ばして床に座ります。両ひじを後ろの床つけながらゆっくりと上体を倒していきます。前太もも全体の筋肉が伸びるのを感じながら10~20秒。反対側も同様に行います。

②腰
椅子に座って背筋を伸ばし、腰をひねるように回して脇腹、腰の筋肉を伸ばします。回転できる範囲は人によって異なります。無理せず気持ちいいと感じるところまででOKです。左右交互に5回程度。

③ふくらはぎ
立った状態で片方の足を一歩前に踏み出し、両足の裏を着けたまま後ろ側の脚のひざを伸ばし、前足のひざを曲げます。後ろ足のふくらはぎから膝裏が伸びるのを感じながら、10~20秒。反対側も同様に。

④肩と首
手を反対側の側頭部に置き、手の重みを利用してクビを横に倒します。首すじから肩にかけて伸びるのを感じながら、左右5回ほど。伸ばしている側の腕はリラックスさせます。

3-2. ウォーキング、ハイキング

運動をあまりしていない人でも取り入れやすいのが、有酸素運動の代表といえるウォーキング。散歩よりもやや速めに歩きます。ひじを曲げて後ろに振ることを意識すれば、肩甲骨回りの筋肉が刺激されます。

アクティブレストが目的なので、いきなり長時間歩いたり走ったりすることは控えましょう。まずは20分、体がぽかぽかと温かく、少し心拍数が上がる程度で十分です。

週末を利用してハイキングもおすすめです。自然の中を歩けば風や木々や土の香り、木漏れ日などが心地よく、爽快感、リラックス効果が得られますし、オンとオフのメリハリをつけて気持ちを切り替えるのも、疲労回復の一助になります。いきなり山に行くのも心配という方は、手始めにアップダウンのある公園などで脚慣らしをするのもいいでしょう。

外歩きの場合、できればウォーキングシューズかビギナー用のランニングシューズを使用するのをおすすめします。ソールが厚くクッション性があるので衝撃を吸収してくれます。

ここまで、アクティブレストが疲労回復にもたらす効果を見てきました。「疲労」というと何だか悪者のように感じるかもしれませんが、決してそうではありません。疲労を感じることは、「休養をとりなし」と脳が教えてくれているということです。肝心なのは、疲労を自覚して上手に回復する自分なりの休養方法を見つけることではないでしょうか。そのひとつにアクティブレストという方法があります。

4. まとめ

疲れは、筋肉を動かすことによって引き起こされるだけではありません。最近では体内で発生した活性酸素が脳の神経細胞を傷つけ、自律神経が本来の機能を発揮できなくなることが疲れを感じる大元だと考えられています。

「休息しているはずなのに何となく体が重い、頭がすっきりしない」という疲労を感じたら、それは脳と自律神経が疲れているのかもしれません。

疲労をとる方法は、休息だけではありません。動くことで疲労回復を促すアクティブレストも有効です。アクティブレストには、
①筋肉を動かすことで血流を促し、栄養素が行き届きやすくするとともに老廃物を除去しやすくなる
②疲労回復物資をつくり、疲れがたまりにくい体をつくる
③オンとオフのメリハリをつけることでリフレッシュする
などの効果が考えられます。

ストレス過多で脳を酷使する現代では、誰でも疲れやすい状況にあるといえます。仕事のパフォーマンスアップに、毎日を活動的に過ごすために、軽く動いて疲労回復を促すアクティブレストを活用してみてください。

(参考文献・情報)
・蒲池桂子(2017)「とんかつ定食をお昼に食べても大丈夫なのはなぜ?」技術評論社.
・湯浅景元(2014)「スポーツ科学のプロが教える 体の不調を改善するための症状別ウォーキング」SBクリエイティブ.
・根来秀行(2013)「健康は時間で決まる」かんき出版.
・「月刊ランナーズ 2013年7月号」アールビーズ.
・藤村寛子「働き盛りの疲労意識と実態」<http://www.jhf.go.jp/files/300333390.pdf#search=%27%E7%96%B2%E5%8A%B4+go%27>
・グリコ・パワープロダクション「アクティブレストは疲れているときこそ有効!」<http://cp.glico.jp/powerpro/citric-acid/entry80/>
・PRESIDENT Online「『アクティブ・レスト』のすすめ」<http://president.jp/articles/-/9904>

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