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[こころの働き方改革1] 社内に漂う抵抗感の正体は、内集団バイアス

あなたの会社は働き方改革に取り組んでいますか?
これから取り組む予定はありますか?

今やこう聞かれて、「当社は働き方改革に取り組む必要性を感じない」という企業は、ごくわずかだと思います。

少子高齢化による待ったなしの労働力不足問題を解決するため、より柔軟な働き方を目指す制度改革や、労働時間を減らしてこれまで以上の成果を出すための業務プロセス改革に、多くのビジネスパーソンたちが日々尽力されていることでしょう。

一方で、その改革が思うように進まず、苦労している方も少なくないはずです。
働き方を改善し、効率化して、より少ない時間でより多くの成果を出すという、至極真っ当な改革が、一筋縄ではいかないのはなぜでしょう。

それは、「意識改革」、つまり、「私たちの意識を変える」という最も大切な改革ができていないからです。制度を作ったり業務プロセスをマニュアル化したりすることはできたとしても、私たちの意識がそれを活用しようと思わないことには、絵に描いた餅です。

けれども、働き方改革のために意識を変えるのは、口で言うほど簡単なことではありません。
というのも、意識のどの部分をどう変えればいいのかという、肝心のところがわかっていない場合も少なくないからです。

本稿では、働き方改革に不可欠な意識改革について、心理学的な観点からアプローチしていきます。あなたの職場で働き方改革をうまく進めるヒントは、職場の人々の「こころ」の動きにあるのかもしれません。


1. 意識に潜むブーメラン効果

まず、働き方改革についてごく簡単に説明しておきます。
これは、労働力不足を解消するための国を挙げた取り組みで、そのためには、
①これまで主戦力と見なされていなかった人たちにもっと活躍してもらう
②現在働いている人にもっと生産性を上げてもらう
という対応策があります。

①については、たとえば定年を迎えた人や子育て中の女性、あるいは非正規社員や外国人などが、それぞれの事情や能力に応じてもっと働けるようにすることが考えられます。具体的には、柔軟な働き方をしやすい環境を整備したり、処遇を公平にしたり、子育てや介護等と仕事の両立を促すなどの施策などがあります。
②については、不必要な長時間労働の是正を始めとして、業務プロセスの見直しや簡略化、IT活用による効率化、また創造性を発揮してイノベーティブな仕事ができるよう、個人の自由を尊重した柔軟な働き方を実現する制度の導入などが考えられます。

こうした制度改革や業務プロセス改革は、働く人すべての心身の健康と、生産性・創造性の向上を目指すいいことづくめの取り組みなのに、なぜ順調に進まないのでしょうか。改革に二の足を踏む人がいるのはなぜなのでしょうか。

人の思考や行動は不思議なもので、理詰めの説明だけですんなりと納得して行動できるわけではありません。頭ではわかっているけれども、気持ちがついていかないと、重い腰は上がらないのです。むしろ態度を硬化させて、積極的な反対さえしかねません。

自分の行動を変えるよう説得されると、かえって逆方向に意見や態度を変える傾向を、心理学では「ブーメラン効果」と呼びます。ブーメラン効果は、説得される側が過去そのことについて自分のスタンスを明らかにしていた場合、あるいは「こんなにメリットが大きい」などと押しつけがましく説得を受けた場合、余計に強くなります。

働き方改革を推進する立場にいる皆さんは、社員の働き方だけでなく、気持ちにまで気を配ることが大切です。働き方改革に抵抗を感じている人たちは自分のどういうスタンスを大切にしているのか、どのような感情や思考が改革を進めるネックになっているのか、理解に努めましょう。こういった意識をあえて変えるにはどうしたらよいかを綿密に検討し、実践するのです。それが、ブーメラン効果をとどめ、働き方改革を前に進める第一歩となります。

コラム

<なぜ「心の動き」に名前を付けるのか>

 

「人から説得されるとつい反発したくなる、という心理は、日常の中でよく起こること。なぜ、あえてブーメラン効果と呼ぶの?」
と思われた方もいらっしゃるでしょう。

 

思考や感情、行動について科学的に研究する心理学では、日々繰り返される私たちの思考や感情について
① 一定のパターンがあるという仮説を立てる
②そのパターンが本当に一般的か、統計的分析等を用いて検証する
③検証ができたら、「〇〇効果」などと命名して明確な定義を設定する
といった段取りで、一つ一つ明らかにしていきます

 

わざわざそんなことをやって何の得になるのか?と感じるかもしれませんが、実は私たちの日常生活にとても役立つことがあります。

 

それは、自分の中でうまく説明のつかない感情や思考を抱いたとき、
そうしたもやもやに「名前」があると知る
→その「正体」が明らかになる
→他人も同じような傾向があると安心できる
というように、不安を和らげる効果がある、ということです。

 

どうも体調が思わしくなくて数日ぐずぐずしていても、医師から「〇〇症ですね」と診断されたとたん、「ああ、私は〇〇症だったんだ」と妙にほっとした経験がありませんか? 心も体と同じです。正体不明だと思っていたものに「名前」がつけられるだけで、それまでの不安が雲散霧消する、というのは、それこそ人間の典型的な意識パターンなのです。

 

「ブーメラン効果」という言葉も、こういう風に活用してみてはいかがでしょう。たとえば会議の場で、他の人の真っ当な意見にムカっとして思わず「反対!」と叫びそうになったとき。「ブーメラン効果」という言葉を知っていれば、「あ、これがブーメラン効果かも」と思い出すことができます。
こう気づけば、自分を客観視し、ひと呼吸おいて冷静に意見を述べることができます。「ブーメラン効果」を職場内の共通語にするのもいいかもしれません。誰かが感情的に反対意見を述べたりしても、「ブーメラン効果、出ましたね」とやんわり指摘することで、当人も周囲の人もより冷静に対処できるようになるでしょう。

 

しかつめらしい心理学用語をうまく活用すれば、自分の感情コントロールや職場でのコミュニケーション改善ができるということを、ぜひ心に留めておいてください。


2. 「内集団」とは何か

働き方改革のボトルネックとなりうる概念として、「内集団」というものがあります。

内集団とは、会社やコミュニティ、あるいは学校など私たちが所属している集団のことで、より厳密には、そこに属することが自分のアイデンティティの一部となっているような集団を指します。ちなみに、そのようなアイデンティティを「社会的アイデンティティ」と呼び、個人一人ひとりの特徴や属性を「自分自身」として捉える「個人的アイデンティティ」と区別しています。

「内集団」が、働き方改革においてどのような影響を与えるのか考えてみましょう。

2-1.個人と所属集団が同一化した「内集団」

私たちが社会的アイデンティティを求めるような内集団では、所属する人たちが共通のものの考え方や価値観を抱き、お互いの同胞意識も強くなります。

いわゆる日本的経営が主流だった時代は、まさに「内集団」と呼べる企業が多く存在しました。
新卒で入社した人たちは、同期の仲間と同じ独身寮で同じ釜の飯を食って、結婚したら社宅に住んで、早い遅いはあれどおおむね平等に昇進するうちに、価値観までをも共有して均質な集団を形成していきます。先輩後輩たちと強い絆で結ばれ、一致団結して会社の発展に努め、定年まで勤め上げました。

個人的アイデンティティと社会的アイデンティティがほとんど同一化し、同一化した人たち同士、いわば「自分と似ている者」同士が団結する一枚岩の内集団は、バブル崩壊までの日本企業の強さの源泉だったともいえます。

2-2. 内集団が抱く内集団/外集団バイアス

内集団は、日本的経営が崩壊した今日でも健在です。強力なカリスマ経営者が率いるオーナー企業や、個性的な若手起業家が設立したベンチャー企業なども、やはり一種の内集団です。
トップのリーダーシップに賛同した社員たちがその価値観を分かち合って独自の企業文化を築き、あうんの呼吸でお互い連携して協力する内集団は、非常に効率よく成果を出すことができます。

半面、内集団は、所属する人たちに独自のルールに従うことを強制し、ルールに従わない「出る杭」は打ってしまう場合も少なくありません。「出る杭」は、打たれ続けるうちに、自分の中で社会的アイデンティティのほうが圧倒的地位を占めるようになり、個人的アイデンティティは消去されてしまいます。

こうした環境に居続け、慣れきってしまった社員は、ビジネスの環境変化によって内集団の勝ちパターンが時代遅れになっても、声を上げてそれを指摘することをためらいます。そのうちに自分の頭で考えなくなり、組織の拡大とともにルールが形骸化しても、粛々とそれを継続する、といった弊害が生じかねないのも事実です。

さらに、自分たちの価値観やお互いの結束を大切にするあまり、ライバル会社よりも自分たちのほうが優れている、という過大評価をしがちです。日頃は仕事の愚痴などをこぼしていても、店に自社商品とライバル会社の商品が並んでいたら、値段が高くてもつい自社商品を買ってしまったりするでしょう。これを「内集団びいき(内集団バイアス)」と呼びます。

同時に、ライバル会社の実力を実際以上に見下したり、ひどいときはネットの掲示板にライバル社の商品の酷評を書き込んだり、差別的な行動に出る場合もあります。これを「外集団バイアス」と呼びます。

ちなみに人間は、企業や学校のように明確な目的や特性を持つ集団でなくても、こうした内集団/外集団バイアスを示すことが、心理学の実験で証明されています。サマーキャンプに参加した同じ中学校の生徒を、ランダムにAチームとBチームに割り振り、それぞれチームの旗を作って綱引きやソフトボールなど勝ち負けのはっきりしたゲームをやらせるだけで、他チームに対する「外集団バイアス」が生じたそうです。


3. 「内集団」と働き方改革

それでは、「内集団」の意識は、働き方改革にどう影響するのでしょうか。
働き方改革の主戦力となる人たちを中心に考えてみます。

3-1.「自分と似ていない」人を受け入れる難しさ

内集団の中心は日本人男性正社員です。一方、働き方改革によって新たに主戦力に加わろうとするのは女性、高齢者、外国人、非正規社員など、一種の外集団です。定年を過ぎた人、性別や国籍の異なる人たちは明らかに「自分と似ていない」し、あるいは非正規社員という立場も、正社員とは異なります。

自分と似ていない者、自分がよく知らない相手に警戒心を抱くのは、人間はもちろん動物の本能です。従って、既にお互いがよく知り合い、考え方も行動パターンも似ている同士で内集団を形成しているところに、よそものが入ってくると、どうしても本能が働いてしまいます。頭では、同じ会社の社員だとわかっていても、気持ちの面でどうしても壁ができ、内集団/外集団バイアスが生じてしまいます。本来であれば同じ会社の仲間として一致団結すべきなのに、1つの組織の中に内集団vs.外集団という一種の対立関係が出来てしまうのです。

ソニーのようなグローバル企業でも、東京本社側と海外の子会社との間に「内集団びいき」や「外集団バイアス」がありました。役員でさえ、同じソニー社員である外国人を、あからさまな差別用語で表現する人もいたくらいです。ましてや外国人が東京本社で働くとなると、言葉の問題というだけでは済まないさまざまな軋轢が生じてしまいます。

一口に「労働力不足解消のために外国人を積極採用しよう」と言われても、すんなり受け入れることは多くの人たちにとっては至難の業なのです。

3-2.内集団が抱える、新しい規範へのストレス

生産性向上や効率化のための「フレックス勤務」「テレワーク制度」、育児のための「時短制度」といった具体的施策は、内集団が守ってきた従来の規範と異なる発想に基づいています。全社員が同じ時間に出社して朝礼を行い、終業時間後も同じように残業するのが当たり前、というスタイルを根本から覆すものです。これまで「皆で行動を共にする」ことを是としてきた内集団にとっては、なかなか相容れない考え方でしょう。

たとえば、人事部が「有給休暇の100%消化を目指しましょう」と、どんなに声高に叫んでも、なかなか取得が進まないのは、単に「上司や周りの目が…」といった話だけにとどまらないのかもしれません。「皆で行動を共にする」という内集団の掟を破ってのけものにされるのを恐れる人間の本能かもしれないのです。

無駄な会議は止めよう、会議時間は基本的に30分で済むようプロセス改善しよう、と言っても、「今ある会議で無駄なものは1つもない。どんなに短くしても45分はかかる」と反論する人たちがいます。彼らは、内集団のメンバー間のコンセンサスや納得感のほうを、効率よりも重視しているだけなのかもしれません。

つまり、従来の内集団メンバーにとって、働き方改革とは、自分と似ていない外集団メンバーを同じ仲間として受け入れなければならない、しかも時間の使い方や行動の仕方に関して信じてきた自分たちの規範を大幅に変更することを強いられる、非常にストレスフルなイベントなのです。


4. 「内集団」と「外集団」の関係

ストレスフル、という意味では、新規参入してくる側、つまり外集団にとっても同様です。
たとえば、男性中心の会社で地道に仕事を続けてきた女性が、女性活躍推進の旗印のもとにいきなり管理職に抜擢された場合、管理職としての振る舞い方がわからず苦労している、という話をよく聞きます。

次は、内集団と外集団側の意識の違いを考えてみましょう。

4-1. 内集団メンバーの常識、外集団メンバーの戸惑い

課長に昇進した知り合いの女性が、「部課長会議でいくら意見しても、なぜかスルーされてしまう」と嘆いていました。おそらく彼女は、会議前の根回しで既にコンセンサスがとれている内容に無邪気に反対意見を述べたか、何か触れてはいけない虎の尾を踏む発言をしたか、そんなところでしょう。あうんの呼吸で議事を進めている「内集団」の男性部課長たちの中で、彼女一人がまさに孤軍奮闘の「外集団」だったのです。

もう一つ、筆者自身が経験した例を紹介しましょう。

皆さんの会社では、担当者が有給休暇をとったり私用で遅刻したりしているときに顧客から電話がかかってきたら、「本日はお休みをいただいておりまして…」とか「今日は11時出社の予定です」と正直に告げますか? それとも、「外出しております」「会議中です」といった方便を使いますか? 

私が長い間働いていたメーカーでは、前者のような対応をしたことも聞いたこともありませんでした。しかし、金融機関では当たり前のように使うようです。金融機関に転職して初めてそれを耳にしたとき、どうしてそんなウソをつくのだろう、と不思議に思いました。しかしじきに、このしきたりはどうやら金融業界全般に普及しているらしいことに気付きました。決してウソをついているわけではなく、お客様が緊急の用事で連絡してきているのに、担当者がのほほんと休んでいます、と言うわけにはいかないという「お客様ファースト」のスピリットに則った暗黙のルールだったのです。

私がもしそのことに気づかず、いつまでも正直に電話応対をしていたら、知らぬ間に自分が所属する内集団の評判を落としていたかもしれません。一方、「お客様ファースト」のスピリットという理由を理解しないまま、郷に入っては郷に従えということで「外出しております」という方便をとっていたら、それはそれでストレスがたまったでしょう。

4-2.内集団の無意識にある暗黙のルール

既に出来上がっている組織に入っていく外集団メンバーが一番つらいのは、内集団メンバーが共有している暗黙のルールが何なのかがよくわからない点です。

内集団の中で共有されている規範や価値観は、就業規則のように明文化されているわけではありません。部課長会議の中で、どの議題は事前の根回しが必要なのか、根回しの方法は個別の打ち合わせか喫煙ルームの立ち話か、あるいはどの議題が部長の「虎の尾」で、十分時間をかけて議論(するふり)をして徐々にほぐしていかなければならないのか。こんな微妙なニュアンスを、新米の女性管理職に懇切丁寧に説明してくれる人が、どれだけいるでしょうか。

こうした暗黙のルールは、内集団のメンバー自身の無意識レベルにまでしみ込んで、空気のようになっているので、外から見たら特殊なしきたりと思われかねないことに内集団のメンバーたちは気づきません。当事者が気づいていない以上、彼らが、重要視している規範や価値観を、部外者にはっきり伝えてくれることを期待してもムダだといえます。

まして、働き方改革の一環だからといって「会議時間の短縮」を指示したところで、内集団メンバーの意識がころりと変わるはずがありません。「会議時間の短縮」は表面的な効率化に過ぎないと思っている可能性があります。というのも、彼らは、3-2であげたような会議の進め方のほうが、内集団メンバーの合意形成に最も適切であり、チームパフォーマンスを上げるには時間をかけた合意形成が欠かせないと信じているからです。

「会議時間の短縮」をなかなか実践しない社員がいる場合、彼らがなぜ会議の効率化を図らないのか抵抗の裏にはどんな価値観があるのかを、根気強く探っていく必要があります。

コラム

<内集団の考え方は有給休暇の取り方にも影響する?>

 

電話対応の仕方に関しては、もしかしたら、前職のメーカーでも最前線の営業部隊では、上記のような対応をしていたのかもしれません。私は社外の人から電話がかかってくることがほとんどない部署にいたため、業界横断的な「営業部隊」という内集団のルールに疎かった可能性があります。

 

「お客様ファースト」という配慮はとても大切です。けれども、社員の当然の権利である有休取得を、公にできない隠し事のように扱うのは、いかがなものでしょうか。
今や働き方改革を進めることは、すべての業種、部門で待ったなしです。少なくとも育児や介護のための時短勤務などは、社員が罪悪感なく安心して申請できなければなりません。職場の雰囲気づくりと暗黙のルールの見直しが必要な時期にきているのではないでしょうか。

 

最近はようやく、証券会社などでも顧客に「〇△は休暇をいただいています」とはっきり告げるようになってきたようです。私が個人口座を開設している証券会社の担当者は、夏休みの予定と不在中のピンチヒッターの名前を連絡してきてくれます。夜討ち朝駆けの証券マンも、ためらわずに休むようになったのは、やはり働き方改革の成果でしょう。不在中は互いにフォローしあう連携体制さえしっかり整えておけば、皆が安心して休みをとることができます。


5. 意識改革のカギは内集団/外集団バイアスへの対策

働き方改革を推進する担当者は、社員の無意識の中に、これまで述べてきたような「内集団/外集団バイアスが存在するかもしれない」ということに十分留意する必要があります。

内集団メンバーは、自分たちの常識が他者にとっての常識とは限らない、ということに気づいていません。それどころか、働き方改革によって参画してくる「自分たちと似ていない」メンバーが、自分たちの「常識」を理解していないことを不服に感じ、「自分たちと似ていない」ために「外集団バイアス」を抱きかねないのです。

これまで会社を支えてきたのは、他でもない自分たち内集団メンバーなのに、働き方改革の名のもとに、自分たちの信条を変えなければならないということは、彼らにとって理不尽な状況に違いありません。それゆえに、新参者に対する外集団バイアスが強くなってしまうことは容易に想像できます。

従って、社員の中にあるそのような無意識のバイアスを理解しておくことが、非常に重要になるのです。特に、上述の部課長会議の進め方の例のように、働き方改革の具体策を推進しようとしてうまくいかない場合は、ただ説得するのではなく、相手の心の動きを理解することが大切です。外から見ると非効率に見える従来のやり方に、社員たちがどういう気持ちを抱いているのか、「効率化」よりも大切にしている価値観が潜んでいないか、社員の気持ちに寄り添って考えてみることで、本当に効果の出る施策はどうあるべきかが見えてくるはずです。


6. まとめ

働き方改革は、働く人すべての心身の健康と生産性・創造性の向上を目指しており、論理的に考えれば反対する理由のない、いいことづくめの施策に見えます。しかし人は、「頭ではわかっているけれども気持ちがついていかない」ために抵抗を示すこともあり、そうした気持ち、つまり意識レベルの配慮が必要です。

意識レベルのボトルネックを考える一つの切り口に、「内集団」という概念があります。

内集団とは、会社やコミュニティ、あるいは学校など私たちが所属している集団のことです。強力な内集団のひとつである勤務先では、仲間同士があうんの呼吸でお互い連携して協力し、非常に効率よく成果を出すことができます。一方で内集団は、「自分と似ている」者が他者よりも優れているという「内集団バイアス」や、他者を見下す「外集団バイアス」を抱きやすいという難点があります。

働き方改革は、内集団メンバーにしてみると、自分と似ていない外集団メンバーを同じ仲間として受け入れなければならない事態ともいえるでしょう。この内集団vs.外集団という一種の対立関係は、本来一丸となるべき一つの組織の中で、内集団/外集団バイアスを生じさせます。

しかも、働き方改革の諸施策は、内集団メンバーが大切にしてきた規範や価値観の大幅変更を余儀なくしかねないため、一見効率的に見えても、彼らにとっては非常にストレスフルで、根本的な行動変容は至難の業です。

働き方改革を推進する場合は、働き方改革を受け入れる側の内集団/外集団バイアスに十分留意しなければなりません。具体的な施策を心から納得して実行してもらうために、彼らの価値観、気持ちに寄り添い、それをいかにうまく変えていくかを考えることが大切です。

次回は、こうした意識を変えていくことが変革がむずかしい理由についてさらに深めて解説したいと思います。

(参考文献)
・ 「心理学辞典」 中島義明 他 有斐閣 2004年
・ 「心理学」 無藤隆 他 有斐閣 2004年
・ 「社会心理学」 遠藤由美 編著 ミネルヴァ書房 2009年
・ 「コミュニケーションの認知科学2 共感」 梅田聡 他 岩波書店 2014年

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