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働き方改革が失敗しそうな時(2) 革新を妨げる無意識の心理を知る

働き方改革を阻んでいるのは、私たちの意識の中にある「内集団バイアス/外集団バイアス」である――。

本シリーズでは、働き方改革を、制度改革や業務プロセス改革ではなく、意識改革という観点から考えています。前回は変革すべき意識に関するひとつの切り口として、「内集団」という概念をご紹介しました。

これまでの日本の会社は、男性正社員中心の「内集団」、つまり「自分と似ている」仲間、同じ価値観を共有できる者同士が協力連携する堅固な集団でした。しかし、働き方改革によって、性別、年齢、国籍や労働条件の異なる「自分と似ていない」人たち、いわば「外集団」メンバーをも、同じ会社の一員として受け入れなければならない状況になっています。そうした中、旧来の内集団メンバーの中に「内集団/外集団バイアス」が生じざるを得ず、それが働き方改革に対する心理的な抵抗感の要因のひとつとなっていると考えられます。

従来の内集団メンバーも、後から加わる外集団メンバーも一丸となって、より大きい「新しい内集団」を作ればいいではないか。なぜその切り替えが出来ないのか。そう思われる方は、おそらく常に物事を合理的に考え、目的意識を持って行動することができる人でしょう。

組織にいるのは、必ずしもそういう人ばかりではありません。

そもそも「集団を作る」のは、社会的動物としての人間の本能であり、人類の長い歴史の中で培われてきた進化の産物です。そこには、今日的な経済合理性や論理性、あるいは資本主義的な考え方だけでは割り切れない、無意識レベルの思考や感情が関係しています。

無意識だからこそ、それを変えていくことがとても難しいのです。

本稿では、働き方改革に鑑みた「内集団」にまつわるやっかいな点について、さらに掘り下げて考えていきます。具体的には、皆さんが日頃よく使っている「共感」という概念と、ほとんど聞いたことがないであろう「存在脅威管理理論」の2つをご紹介します。そして、そのような心の動きが、いかに無意識に動いているかを解説します。


1. 集団形成に必要な「共感」

共感とは、他の人の心の状態を推測し、理解する能力のことです。相手の気持ちを的確に察する共感力によって、わざわざ言葉に出して言われなくても相手が欲していることを汲みとったり、自分に求められている役割を果たしたり、自ら協力的な行動をとることができます。そもそも、私たちが集団を作るのは、お互いに協力し合うためですから、集団形成と共感は、切っても切れない密接な関係と言えます。

ところが、働き方改革によって「新しい内集団」を作ろうとするとき、共感という能力がマイナスに働いてしまうこともあるのです。

1-1. 共感力が育まれた背景とは?

組織への影響を考える前に、共感とはどういうものなのか、少しふれておきましょう。

共感力は、実は私たち人間の専売特許ではありません。

チンパンジーは、群れの中のケンカで負けた仲間に近づいて、抱きついたり傷を調べたりする慰め行動をとることが確認されています。しかも、こうした行動は、血縁関係がある場合や普段から親しい仲間に対して、より多く行われるそうです。チンパンジーの「慰め行動」に限らず、ゴリラやオランウータンなどヒト科に属する大型類人猿は、共感の一種と言えるさまざまな能力を具えています。

つまり、共感力は、私たち人間が類人猿と袂を分かつ前から綿々と受け継がれてきた、非常に原初的な能力なのです。言い換えれば、何百万年もかけて進化を遂げてきた分、昨日今日の環境変化によって簡単に変わるようなものではないわけです。

人間の一般的な心の働きは、約200万年前、直立二足歩行が完成してホモ・サピエンスにつながるホモ属が現れた頃の環境に適応している、と言われています。
ですから、もともと人間が「集団」を形成するために共感力を発揮するときに想定しているのは、現代の会社組織などではなく、1万年前に始まった農耕社会の集団でさえない、狩猟採集社会における原始的な集団なのです。

さらに、協力し合う仲間は、血縁関係のある者同士や、同じ土地に住み同じ言葉を使う同胞、そして同じ民族など、同質性の高い、「自分と似ている」人たちでした。しかも、集団を脅かすような周囲の環境変化や大規模な人の出入りが少なく、「自分と似ている」人たちだけで継続的に安定した集団を維持することが可能でした。安定した環境の中で、自分と似ているメンバーと長く共に過ごすからこそ、相手の気持ちを的確に察する能力を培うことが容易だったのです。

共感力が育まれてきたこのような背景を考えると、共感力は、「変化の少ない安定した環境」の中で、「自分と似ている」人たちに対して、最も適切に発揮されるといえます。

しかし21世紀の現在、私たちを取り巻く社会経済環境は、長い人類の歴史上、それこそ未曽有の速さで変化しています。グローバル化や価値観の多様化が進み、身近にいる人たちの同質性はどんどん低下しています。その結果、200万年前の環境に適応している共感力は、そうした変化に対応しきれず、さまざまなかたちで適応不全を起こしてしまいます。よかれと思って配慮したつもりなのに、その共感が裏目に出てしまうのです。

1-2. 共感が裏目にでるとき① 目的をはき違える

2017年の流行語大賞に選ばれた「忖度(そんたく)」という言葉があります。

本来の意味は、他人の心を推し量ること。また、推し量って相手に配慮すること」です。まさに共感そのものであり、私たちが集団生活を送る上で欠かせない能力のはずです。それなのに、なぜ「忖度」がこれほど悪評高くなってしまったのでしょうか?

それは、昔と今では集団の目的が変化しているにも関わらず、時代遅れの目的のためだけに忖度が駆使されたせいでしょう。

原始時代の集団の目的は、「集団として生き残ること」でした。そのためには、経験や知識の豊富なリーダーに付き従って恭順の意を示し、いざ敵が攻めてきたらリーダーの指揮のもと仲間と一致団結して戦うことが必要不可欠でした。共感力を発揮して、リーダーや仲間たちが自分に何を求めているかを忖度し、先回りして行動するメンバーが、集団内で重宝されていたのです。

しかし、現代社会の組織の目的は、生き残ることだけではありません。組織ごとに固有の、もっと具体的な高次の目的があります。例えば、会社であれば、経営理念を実現し、社会に貢献すること。財務省であれば、国家の財政を健全に運営すること。そうした目的を果たすためには、リーダーからの指示がなくてもやるべきことをやり、ときにはより良い方法を求めて、リーダーと意見を戦わせることもあるでしょう。

ところが、間違った忖度をした人たちは、こうしたより高次の目的や社会的公正をなおざりにし、自分たちの生き残りという目的だけに走ってしまったのではないでしょうか。

しかも、本来の「集団が」生き残るという、その主語さえも矮小化してしまったように思われます。〇〇省という「集団が」生き残るというより、省内で「自分が」生き残る、あるいはさまざまな集団がせめぎあう霞が関・永田町で「自分のリーダーが」生き残る、といった視野狭窄に陥っていたのではないでしょうか。

共感力は、集団が生き残ることを大前提として、相手の気持ちを慮(おもんぱか)る能力です。しかし、上記のような目的を持つ現代の組織においては、「相手の気持ち」を考えるだけでは、結果的に組織にとってマイナスに働く危険性があるのです。

1-3. 共感が裏目にでるとき② 勘違いの配慮をする

上述した「目的のはき違え」にも関係しますが、共感力を発揮して推測した相手の気持ちが、実は相手が本当に思っていることとは違っていた、という場合もあります。そしてこうした「無駄な配慮」が、働き方改革に対する大きな妨げのひとつになっています。

最近、ある会社の女性部長から、有給休暇取得奨励にまつわる苦労話を伺いました。その会社では、数年前に1週間の連続休暇をとることが全社員に義務付けられたにもかかわらず、ある年上男性の部下は、休暇初日に出社してしまったというのです。彼は「休んでいいとか言いながら、部長は実は休んでほしくないんじゃないか。休むと自分の評価にマイナスになるんじゃないか」という推測をしたわけです。翌年も「休日出勤」した彼は、部長からすぐに家に帰れと強制され、ようやく「本当に休んでいいんだ」と思うようになったそうです。
この男性部下は、共感力を発揮して上司の気持ちを汲み取ったつもりが、それは大きな勘違いだったわけです。

こうした勘違いは、枚挙にいとまがありません。

長時間労働是正のため、仕事がなければ残業するなと言われているのに、「会社に長くいることが熱心な社員の印」と信じ込み、上司より先には帰らない社員。

育児休暇制度があっても、「仕事を放り出して育児をするなんて男としてどうなんだ」と思われるのではないかと心配して、取得したくても取得できない社員。

形骸化した会議はやめようと言われても、主催者のメンツや周りの目を気にして、無駄とわかっている会議に黙々と出席し続ける社員。

こうした思い込みは、特定の人の気持ちを慮る、というよりは、組織における暗黙のルール(と自分が思い込んでいること)に配慮し過ぎた結果です。社会環境が変化し、組織の考え方も変わってきていることに気づかず、既成概念に基づいた時代遅れの「共感」から抜け出せずにいるのです。

1-4. 共感が裏目にでるとき③ 「自分と似ている」人たちを優先する

少し前の話ですが、友人の女性が、課長昇格試験の上司推薦を逃しました。彼女は、同じ部署の年下男性が推薦を受けたと知り、上司にその理由を尋ねました。返ってきた答えは、こうでした。

「だって、彼には妻子がいるんだよ。君は独身だろう」

独身の彼女と違い、彼には養うべき家族がいるから、早く昇格させて給料を増やしてあげないといけない、という上司の配慮でしょうか。そもそも昇格の可否は業務遂行能力で判断すべきなのに、扶養家族の有無を考慮すること自体、言語道断です。加えて、この発言には、あからさまな機会不均等や男女差別があります。

しかし、「自分と似ている」人たちへの共感、という文脈で考えれば、さもありなん、という気がします。組織としての公平性より、自分と同じように妻子を養っている男性に対する共感が、優先されたとも考えられます。

ところが、現代の会社、特に「働き方改革」が目指す人材の多様化が進んだ会社では、扶養家族を持ち、一家の大黒柱として働いているのは、男性とは限りません。「自分と似ている」かどうかを、外見だけで判断するのは難しくなってきているのです。言い換えれば、「自分と似ていない」人たちの中に「自分と似ている」共通点を見出し、共感の対象を広げることが、組織をスムーズに運営する上でとても重要なのです。

「自分と似ていない」者に共感力を発揮した好例として、雌ゴリラのビンディ・ジュアの逸話をご紹介しておきましょう。

1996年、シカゴのブルックフィールド動物園で、3歳の男の子がゴリラの運動場の中に落下してしまいました。あわや、と思われたとき、ビンディ・ジュアが男の子をそっと抱き上げて、運動場の中ほどまで運んだそうです。男の子は飼育員の手で無事救出され、ビンディ・ジュアはアメリカの雑誌「Time」に「Best “People” in 1996」の1人として選出されました。

ゴリラでさえ、種族の異なる人間に対して共感的行動をとれたのですから、いわんや人間同士をや。共感の対象を、年齢や性別や国籍や価値観の違う人たちにまで広げることは不可能ではないはずです。


2. 深層心理に潜む「存在脅威管理理論」

「共感」に続き、もうひとつ、働き方改革を阻む内集団バイアスの裏にある深層心理をご紹介しましょう。皆さんはあまり聞いたことのない言葉かもしれませんが、「存在脅威管理理論」(Terror Management Theory)というものです。

2-1. 存在脅威管理理論とは?

「存在脅威管理理論」とは、「存在脅威」、すなわち「やがて死んでこの世に存在しなくなることへの恐怖」を紛らわすための心のメカニズムについての理論です。そのメカニズムは、「文化的世界観」「自尊感情」という2つのキーワードを核として、以下のようなプロセスを踏みます。

① 特定の集団に所属し、その集団内の価値観や道徳、ものの考え方などの「文化的世界観」を共有する。
② その「文化的世界観」によって規定される規範に従って行動し、集団の中で一定の役割を果たして、忠誠を示す。
③ 集団内のメンバーから承認してもらう。
④ それによって、自分は意義ある集団において重要な役割を果たしている、自分は価値ある存在なのだ、という「自尊感情」を高めることができる。

集団に所属することによって得られる「文化的世界観」「自尊感情」が、私たちを存在論的恐怖から守ってくれる精神的シェルターの役割を果たす、というのがこの理論の骨子です。

2-2. 存在脅威管理理論の観点から見た会社で働く意味

会社で働くことを、この理論に当てはめてみましょう。

① 会社に就職して、その会社の社是や経営理念、物事の考え方(=その会社の「文化的世界観」)を習得する。
② そうしたしきたりをしっかり守り、与えられた職務を忠実に果たし、滅私奉公をする。
③ その貢献を社内で承認・評価される。その証が昇格昇給となって表れる。
④ それによって、自分はこの会社になくてはならない存在だと信じ、「自尊感情」を高めることができる。

存在脅威管理理論に照らすと、会社に就職して働き続けることは、単に生活費や自己実現のためとはいえない、次元の違う意味を持っていることがわかります。

-会社の伝統やしきたりを忠実に守ることに並々ならぬ精力を傾ける人。
-社内での昇進に固執し、出世のためには手段を選ばない人。
-後進に道を譲りたがらず、また退任後も相談役として居続けたがる人。

こういう人たちは、もしかすると存在論的恐怖が人一倍強く、それを紛らわせるため、会社に所属することで得られるシェルターをより強固なものにし、維持したい、という潜在意識に突き動かされているのかもしれません。

2-3. 働き方改革と存在論的恐怖の関係

存在脅威管理理論は、文字通り「死ぬ」ことへの脅威に対してだけでなく、広く「自分の存在や地位を脅かされる」場合にも、あてはまります。この点が、まさに働き方改革に対する阻害要因になるのです。

働き方改革によって、内集団メンバーはこれまで大切にしてきた労働条件や業務の進め方についてのルール、しきたり、考え方など、いわば「文化的世界観」の大幅変更を余儀なくされます。これまで絶対と信じ、忠実に従うことを心掛けてきた規範が、実は絶対ではなかったと知らされたとき、自らのアイデンティティを否定され、存在自体を危うくさせられるように感じたとしても無理はありません。

たとえば、働き方改革で打ち出される「女性管理職の割合を30%に増やす」といった方針を聞いたときの内集団メンバーの心理を想像してみましょう。

彼らにとってこの方針は、ただでさえ数が限られている管理職への昇進確率が、さらに減ることを意味します。昇進できないことは、他者からの評価が得られない、とも受け取れるでしょう。自尊感情が深く傷つき、まさに自分の存在価値が危うい状態になります。

このようにして、会社における自らの存在が脅威に晒されると、必然的に上述のような「文化的世界観」と「自尊感情」をキーワードとする自己防衛策が発動されます。

自分たちの自尊感情を高めるために、従来の内集団におけるリーダーシップのあり方や管理職としての業務の進め方のほうが優れているのだと自己正当化して、新しい施策は断固拒否する。
新参者は、自分たちの価値観を理解できない「外集団」として排斥し、女性にゲタを履かせて昇進させるのはいかがなものか、などと陰に陽に足を引っ張る。

これこそ典型的な「内集団/外集団バイアス」です。

ちなみに、心理学の研究の中で、疑似的に存在論的脅威を受けた男子大学生は、ジェンダーに関する内集団バイアスを強化させたという実験結果があります。働き方改革を推進する上で、ワーク・ライフ・バランスや管理職のクォータ制(役員や管理職における女性の割合の最低ラインを義務付ける制度)など、性差にかかわる課題が進まないのも、こうした心理的背景が関係しているのかもしれません。


3. 脳の「自動運転」の功罪

これまでご説明してきた共感や、存在脅威管理理論に基づく心の動きは、必ずしも私たちが意識的にやっていることではありません。無意識のうちに感じ、考え、行動していることが多いのです。

無意識で動くことは、実は人間の脳にとって非常に効率よいやり方です。しかし、その効率的なやり方こそが、働き方改革が追求する効率性向上を阻害しているのです。

3-1. 怠け者の脳

人間の脳は、基本的に怠け者にできています。

脳は人間の全体重の2%程度の重さしかありませんが、人間が摂取するカロリーの20%を消費すると言われています。つまり非常にエネルギー効率の悪い器官なのです。従って、エネルギー節約のためには、脳はできるだけ働かないほうがよく、そのために脳はほとんど注意を払わなくてもインプットされた情報を自動的に処理する、いわゆる「自動運転」という戦略をとります。

-朝起きたら、半分まだ寝ている状態でも、洗面所に行って顔を洗う。
-道で前を歩いている人が転んだら、反射的に手を差し伸べて助け起こす。
-職場の部下ににこやかにあいさつされたら、こちらも同じようににっこり笑うし、会議中同僚に自分の意見を真っ向から否定されたら、思わず敵対的な気持ちが沸き上がる。

これらはすべて、脳が「自動運転」モードでアウトプットしている「日常の習慣行動」や「共感力」や「感情」です。

同様に、他人に対して共感力を発揮することも、存在論的脅威から逃れるために「文化的世界観」を遵守して他者から評価してもらうことも、そして「内集団/外集団バイアス」に囚われることも、そのプロセスの多くは自動化されているのです。

また、物事を自動運転モードで処理するには、環境変化が少ないに越したことはありません。環境が変化し、対応すべき新たな課題が出てくると、それまでに作り上げた思考回路に基づいた自動運転モードが通用せず、新たな回路を組み上げなくてはならなくなるからです。

言い換えると、変化の少ない環境下でこそ、怠け者の脳が編み出した「自動運転」モードが効率的かつ適切に機能するのです。

3-2. 環境変化についていけない脳の自動運転

ところがここに来て、社会経済環境は激変し、これまでの自動運転は通用しなくなってきています。それどころか、条件反射的にこれまでの行動を繰り返すことは、弊害をもたらしているといえます。

-働き方改革で新たに制定されたルールの意味も考えず、相変わらず長時間労働を繰り返す。
-全体の業務効率を下げていることに気づかず、形骸化してしまった会議前の根回しに没頭する。

もともとは効率よく組織を運営していくためのこうした手段が、いつしか目的化してしまい、非効率の元凶となっていることも珍しくありません。

こうした旧弊を根本から打破し、真の生産性向上を実現するのが働き方改革の狙いです。

打破するための第一歩として、組織集団とは切っても切り離せない「内集団/外集団バイアス」があり、その背景となる共感力や存在論的脅威が社員の心の中にあること、しかもそれらが「自動運転」化されているということを、まず認識しておくことが大切です。


4. まとめ

働き方改革を阻んでいる要因のひとつは、私たちの意識の中にある「内集団/外集団バイアス」です。従来の内集団メンバーも、後から加わる外集団メンバーも一丸となって、より大きい「新しい内集団」を作ればいいのに、合理的に考え、意識を変えることは、なかなか容易ではありません。

どうして難しいのかをひも解くキーワードとして、意識の根底にある「共感」と「存在脅威管理理論」の2つの概念をご紹介しました。

共感は、集団を作ってお互いに協力し合うために不可欠な能力なのに、昨今の急激な環境変化の中では裏目に出てしまう傾向があります。相手の気持ちを慮るあまり、組織の目的をなおざりにしたり、勘違いの配慮をしてしまったり、あるいは自分と似ている人を優先したりすることによって、本来は組織集団に利するはずの共感が、マイナスに働いてしまうのです。

「存在脅威管理理論」とは、やがてこの世に存在しなくなるという存在論的な恐怖を紛らわすため、集団に所属することによって自分の存在価値を確証する、という考え方です。この理論に照らすと、働き方改革は自分の存在を脅かすものと受け取られるため、必然的に防衛策が発動され、「内集団/外集団バイアス」が強められてしまいます。

こうした心の動きの多くは、脳の中で「自動運転」化されているため、社会経済の環境変化に対応しきれません。働き方改革は、まさに環境変化に対応してこれまでのやり方を根本から変えようとする変革ですから、こうした脳の自動運転の弊害をよく認識し、適切に対処していく必要があります。

次回は、いよいよこうした意識をどう変革していくのか、具体的な施策をご紹介していきます。

働き方改革が失敗しそうな時(1) 社員の心に巣食う抵抗感の正体を知る

働き方改革が失敗しそうな時(3) 成功に導く3つの方法を知る

<参考文献、情報>
・「存在脅威管理理論への誘い」脇本竜太郎 サイエンス社 2012年
・「脳と心のしくみ」池谷裕二編 新星出版社 2016年
・「きずなと思いやりが日本をダメにする」 山岸俊男・長谷川眞理子 集英社インターナショナル 2016年
・「ファスト&スロー(上・下)」ダニエル・カーネマン 早川書房 2014年
・「社会心理学」遠藤由美 編著 ミネルヴァ書房 2009年
・「コミュニケーションの認知科学2 共感」 梅田聡 他 岩波書店 2014年
・「進化心理学:理論と実践研究の紹介」平石界 認知科学7巻4号 2000年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcss/7/4/7_4_341/_article/-char/ja/
・「The Causes and Consequences of a Need for Self-Esteem: A Terror Management Theory」Greenberg, J., Pyszczynski, T., & Solomon, S.  Advances in Experimental Social Psychology 1991年
https://www.researchgate.net/publication/277685987_A_Terror_Management_Theory_of_Social_Behavior_The_Psychological_Functions_of_Self-Esteem_and_Cultural_Worldviews/download
・「自己価値への脅成が男性のジェンダーに関する潜在的態度に及ぼす影響」石井国 雄・沼崎誠 社会心理学研究 第27巻第1号 2011年
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssp/27/1/27_KJ00007406647/_pdf/-char/ja
・「Gorilla Carries 3-Year-Old Boy to Safety After He Fell Into Enclosure in 1996 Incident」 ABC News 2016年5月30日
https://abcnews.go.com/US/gorilla-carries-year-boy-safety-fell-enclosure-1996/story?id=39479586

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