LGBTとは何か?性的マイノリティを正しく理解し、快適な職場環境を

「LGBT」とは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字を並べた略称です。
LGBTという呼び方を聞いたことがあるという方は多いと思いますが、どういう人たちなのかを正確に理解していると自信をもって言える方は少ないのではないでしょうか。

ある日、同僚から「自分はゲイである」と突然告白されたら、あなたはどう答えますか?
「あぁ、そうなんだ…」とは言えても、その後の言葉に詰まる方が多いのではないでしょうか。

2015年3月31日、渋谷区で、全国初となる同性パートナーシップ条例が可決されました。このことは、LGBTの存在が日本で広く認知されるきっかけになりました。しかし、LGBTとはどういう人たちのことなのかについては、まだ正しい理解が広まっているとは言えないのが現状です。

性的マイノリティに関する専門シンクタンク、 LGBT 総合研究所が2016年に発表した調査によると、「LGBT」という言葉の認知はストレート層(性的マイノリティに該当しない人々)でも過半数を占めていたものの、内容まで理解していると答えた人はわずか3割程度でした。

この記事では、「LGBT」と「それ以外」、という構図で語られがちなこの問題に対して、そもそも性別とは何かという根本的なところから解説します。この記事の内容を理解いただければ、あなたのセクシュアリティもLGBTも、多くの組み合わせの中のひとつにすぎないということがわかるでしょう。

LGBT総合研究所が全国の20歳~59歳の個人10万人を調査したところ、約8%がLGBTをはじめとする性的マイノリティであると回答しました。

あなたの職場にも、毎日顔を合わせている人の中にも、実はLGBTであるという人がいるかもしれません。「自分はゲイである」という、同僚からの突然の告白に対する「正しい回答」はありません。しかし、「正しい理解のうえで回答する」ことは難しいことではありません。

お互いを尊重し合う第一歩として、ぜひLGBTの正しい理解を身につけてください。

※本記事では特に断りのない限り、「LGBT」を、LGBT以外の性的マイノリティも含んで幅広く捉えた意味で用いています。

1. 性別とは何か

「性別」と聞くと、多くの人は生物学的な身体のつくりの違いを想像するでしょう。しかし、実は人の性別には3種類の捉え方があり、その視点ごとに異なる性質を持つ人がいます。

  • Sex(セックス) 生物学的な身体の性別
  • Gender(ジェンダー) 社会的に役割を期待される性別
  • Sexuality(セクシュアリティ) 個人の性的な事柄を包括的に示す性別

セックスは見た目で分かるものなのでイメージしやすいでしょう。

また、ジェンダーという言葉も最近ではなじみ深くなりました。
「ジェンダーとは、社会的・文化的につくられる性を指す」と説明すると難しく感じるかもしれませんが、簡単に言えばそれぞれの社会でつくられる「男らしさ」や「女らしさ」の基準やイメージです。「女性だから料理が上手でなければならない」というのはジェンダーによる偏見の典型例と言えます。

では、3つ目に示したセクシュアリティという言葉は聞いたことがあるでしょうか。LGBTについて理解するためには、まずセクシュアリティを理解する必要があります。数あるセクシュアリティの中で、少数派の代表とされているのがLGBTだからです。それでは、セクシュアリティの定義から見ていきましょう。

1-1. セクシュアリティの定義

セクシュアリティとは、1つのものさしで測れるものではありません。包括的な概念であり、以下のように3つの項目の組み合わせで定義されます。

「①身体の性別」とは、セックスのことです。ただし、男性と女性だけではなく、両性の身体的特徴を持って生まれる場合もあるため、必ずしも2種類に分類できるわけではありません。

「②心の性別」とは、自分の性別についてどう感じているかということであり、性自認とも言われます。身体の性別には関係なく、単純に自分が自分の性別をどう認識しているかということです。例えばタレントのはるな愛さんは生物学的には男性として生まれましたが、心の性別は女性であると公表しています。彼女は1995年に性別適合手術を受けていますが、性別適合手術に対する考え方は個人個人で異なるので、身体の性別と心の性別が一致しない人のすべてが性別適合手術を希望しているというわけではありません。

「③誰を好きになるか」は、性的指向を表します。性的欲求を含む恋愛感情を意味することもあれば、性的欲求を含まない場合もありますが、すべてを包括して性的指向と呼ばれています。よって、その実質は人によってまちまちです。

「②心の性別」と「③誰を好きになるか」については、成長の過程で自分の認識が変わるなど、流動的な場合もあります。物心ついた時から心と身体の性別の違いに違和感があった人もいれば、思春期になって感じ始める人もいます。はたまた50歳になって初めて、何かのきっかけで、自分の中に押し殺していた気持ちに気づいたという例もあるのです。

一方で、そもそも「②心の性別」や「③誰を好きになるか」の概念を持たない人も存在します。自分が男性だとか女性だとか区別すること自体に違和感を持つ人や、異性にも同性にも恋愛感情を抱かない人がこの例です。

このように、身体の性別、心の性別、誰を好きになるか、これら3つの組み合わせによって決まるセクシュアリティには、無数の形が存在します。一般に「ストレート」と呼ばれる、「身体の性別と心の性別が一致しており、異性を好きになる」形も、この無数のセクシュアリティのパターンの中のひとつなのです。

1-2. LGBTとは

前節で人間には3種類の「性別」があるとご紹介しましたが、LGBTとはその3種類の中身の組み合わせの名称の頭文字をとったものです。それぞれの文字が何の略でどのようなセクシュアリティを示しているのかを確認してみましょう。

L:Lesbian(レズビアン) 身体と心の性別は女性で、性的指向も女性である人
G:Gay(ゲイ) 身体と心の性別は男性で、性的指向も男性である人
B:Bisexual(バイセクシュアル) 身体と心の性別を問わず、性的指向が両性である人
T:Transgender(トランスジェンダー) 身体の性別と心の性別が一致しない人

LGBTという言葉が使われ始めたのは、1980年代にアメリカで 性的マイノリティの権利を求める活動が起こったことがきっかけです。その後、2000年代に入り日本でも広く使われるようになってきました。性的マイノリティの権利を求める活動の背景には、過去に多くの国で同性愛が違法であったという歴史があります。同性愛者は死刑となる国も少なくありませんでした。ナチス・ドイツでは、1933年に政権を握ったヒトラーによって男性同性愛者が迫害され、彼らは強制収容所に送られていたのです。このような歴史を受けて性のあり方が見直されるようになり、LGBTという言葉が生まれました。現在では、LGBTの人権を尊重し、差別をなくすための取り組みが世界中で行われています。

歴史を振り返ってみると、LGBTの存在は紀元前2400年までさかのぼることができます。古代エジプトの王室に仕えていた男性、カーヌムホテップと、ニアンカーカーヌムは同性カップルであったという記録が残っています。2人は共同の墓に埋葬されており、墓からは親密な様子が描かれたレリーフも見つかっています。

 日本でも、仏教の伝播とともに、女性との関係が制限された僧が、自分の身の回りの世話をしてくれる少年と恋愛関係になることが一般的になっていきました。室町時代では三代将軍の足利義満が能楽の創始者である世阿弥と関係を持っていたなど、主従関係の中で男色と呼ばれる同性愛が存在していたのです。さらに江戸時代に入ると武士同士が同輩関係の中でも恋愛をするようになり、それは特に衆道(しゅどう)と呼ばれています。将軍や僧侶、武士といった上流階級の文化は一般人にもやがて伝わりました。日本はもともと民俗的に性に寛容な国であったのです。

 しかし一方で、男色や衆道が増えると、美少年をめぐる争いや君主への忠誠が疎かになるなどの問題も増えました。その結果、同性愛への取り締まりや規制が厳格化されていきました。さらに西洋文化の流入により、キリスト教的な価値観も広まって、次第にLGBTは「不道徳なもの」「隠さなければいけないもの」として影を潜めていったのです。

LGBTと対比される言葉が、Straight(ストレート)です。身体の性別と心の性別が一致しており、異性を恋愛対象とする人、つまり身体と心の性別が男性で女性を恋愛対象とする人、あるいは身体と心の性別が女性で男性を恋愛対象とする人のことを指します。しかしながら、例えばストレートの女性でも、仕事の時だけは女性と思われたくないと考える人がいるように、必ずしも100%ストレートであるわけではありません。ここにも個人の考え方によっていろいろなパターンがあるのです。

出典)LONDON NAVI「LGBTのシンボル、レインボーのフラッグを掲げその性的指向に誇りを持つイベントPride in Londonのパレードが7月8日開催!」<http://london.navi.com/special/80003006>

LGBTの象徴である6色の虹色の旗、レインボーフラッグは、「性とはグラデーションでありさまざまなカタチが存在する」ということを示しています。LGBTという言葉も、性的マイノリティの中のたくさんのセクシュアリティのうち、4つを代表したに過ぎません。例えば、性別を問わず他者に対して恋愛感情も性的欲求も抱かないAsexual(アセクシャル)や、自分の性別を定めることに違和感を覚えるQueer(クィア)、これ以外にもたくさんのセクシュアリティが存在しているのです。

2. LGBTの抱えるさまざまな困難

性の多様性への理解がまだ十分とは言えない現代の日本社会では、日常生活の中でLGBTが生きづらさを感じる場面が数多くあります。性的指向や性自認によって困難を抱えている当事者が、差別を受けないための法整備を求めている団体、LGBT法連合会では、LGBT困難リストを発表しており、その中でこのように語っています。

「困難」には2つの側面があります。
①人々の理解が進んでいないことによる生きづらさ
②法整備が追いついていないことによる不可能

LGBTの生きづらさを改善するためには、これら両方を解消することが必要です。ここでは①を社会的困難、②を法的困難として、性的マイノリティが実生活で直面している困難を、具体的に見ていきます。

2-1. 社会的困難

社会的困難は、自分自身や他者との関わり、社会との関わりに際して生じます。LGBTの社会的困難は、3つのステージに分類することができます。

■自己承認
自己承認とは、自分が性的マイノリティであることを受け入れられるかどうか、ということです。自分のセクシュアリティを自覚していても、それを受け入れられない場合があるのです。「自分はおかしいのではないか?」「治さなくてはいけないのではないか?」と悩み、自己肯定感を持つことが難しくなります。自分のセクシュアリティを受け入れられない原因は人それぞれです。多数派であるストレートの友人と比べてしまったり、性への理解が十分でない親が、子どもの身体の性別によって心の性別や恋愛対象の性別を決めつけ、時にそれを押し付けてしまったり。LGBTを自己承認できないことは、ひいては自殺などにも繋がりかねない深刻な問題です。

■他己承認
自己承認ができたとしても、それを親や友人、同僚に告白することには多くのリスクが伴います。相手に受け入れられるかという不安や、勘当や絶交されてしまうのではないかという恐怖によって、自分のセクシュアリティを他人にカミングアウトできない人がとても多いのが現実です。また、信頼できる人にカミングアウトしたあとも、他人が自分の許可なく他の人に自分のセクシュアリティを暴露してしまうこと(アウティング)に怯える人も少なくありません。

NHKが2015年にLGBTを含む性的マイノリティ当事者に行ったアンケート調査によると、LGBT当事者がカミングアウトした人数は「1人〜4人」と回答した人が21.1% 、「誰にも言っていない」と回答した人も6.2%に上りました。このアンケートを分析した国立社会保障・人口問題研究所室長の釜野氏は、「この調査の存在を知らなかったり、調査について知っていても、周囲に知られたくないため回答できなかったという人からも回答が得られれば『(カミングアウトを)だれにもしていない』という答えがもっと多くなったのではないか」と分析しています。

性的マイノリティの理解が十分でない環境では、無責任なアウティングが当事者の職を奪ってしまったり、精神的な病に陥る原因となってしまったりする可能性があることを忘れてはいけません。実際に、上述のNHKの調査には、「性的マイノリティであることを理由に企業の採用試験で落とされた」という切実な声も紹介されています。また、ライフネット生命保険がLGBTを含む性的マイノリティ当事者約15,000人を対象に実施したインターネットによるアンケート調査によると、「職場や学校で性的少数者について差別的発言を聞いたことがある」という人は72%に上りました。

■社会承認
社会が性的マイノリティの存在を広く受け入れているかどうかも、生活するうえで大きな問題になります。例えば、日本では単に手をつないで外を歩くことさえも好奇の目にさらされてしまうため、同性カップルにとってはまだまだ難しい行為なのです。

他にも、同性カップルが賃貸住宅を借りようとすると、法的には婚姻関係にないために、パートナー関係が解消された場合の賃料滞納を危惧されたり、LGBTに対する偏見から近隣トラブルを懸念され、貸し渋られたりするケースがあります。事実上は結婚と同じ状態であっても、法的に証明されていないが故に、友達同士のシェアハウスと同じ扱いになってしまうのです。

一方で、大手携帯電話キャリアでは、同性カップルでも家族割を適用できるサービスを開始しニュースになりました。他にも、保険会社が保険金の受取人として同性カップルのパートナーも認めるようになったり、結婚式場が同姓カップルの結婚式の申し込みを受け付けるようになったりと、徐々に社会が変化してきていることもうかがえます。

また、セクシュアリティによって固有の困難も存在します。例えばトランスジェンダーでは、どのトイレを使うかが大きな問題になります。性自認と異なる性別のトイレを使うことは当事者の大きな精神的負担になりますが、身体の性別が性自認と異なっている場合、性自認と同じ性別のトイレを使用することは現実的に困難です。

そのため、多目的トイレを使用することになりますが、多目的トイレが設置されていない施設も多く、また多目的トイレは多くの人に障害者用と認識されているため、使用する際に周りの目が気になるという声もあります。他にも、どちらの性別の更衣室を使用するのか、どちらの性別の制服を着用するのか等、日常生活においてごく当たり前の行為が障害となりうるのです。

性的マイノリティにとって、社会のサービスを差別されることなく利用できるようになることは、平穏な日常生活を享受するために解決すべき大きな課題であるのです。

2-2. 法的困難

現在の日本の法律や制度は性的マイノリティの存在を前提にしていないため、さまざまなシチュエーションで性的マイノリティの権利が制限されてしまっています。なかでも大きな問題となっているのが、同性パートナーとの婚姻が認められていないことによる数多くの困難です。ストレートなら婚姻するだけで与えられる権利や社会保障のほとんどすべてが、同性カップルには認められないのです。

婚姻関係が認められないことによる権利の制限は多岐にわたります。扶養家族として所得税の申告ができない、死別したパートナーの遺産を相続できない、公営住宅へ入居できないなどの法的な権利や社会保障給付にとどまらず、救急車の付き添いや病院の面会が制限される、会社の福利厚生が利用できないなど、民間のサービスにもできないことは山ほどあります。法律に記載がないために当事者が権利を主張することができないのが現状です。

また、トランスジェンダーでは性別変更を望む人が少なくありません。しかし現在の日本では、性別適合手術を受けて身体の性別を変えた場合にしか戸籍上の性別を変えることはできません。トランスジェンダーであっても性別適合手術を望まない人や、金銭面等の理由で手術を受けられない人は、法的に性別を変えることはできないのです。

これは、婚姻ができずさまざまなサービスが受けられないという前述の困難にも繋がります。性的マイノリティは、自分の力ではいかんともしがたい社会システム上の問題や矛盾に翻弄されているのです。

3. 性的マイノリティも生きやすくなる環境づくり

LGBTの人々が日々直面している困難を解消するには、どうしたらよいのでしょうか。法律や制度の改正はもちろん必要ですが、ここでは、LGBTの人々を受け入れる社会をつくる第一歩として、個人が今日から始められることをご紹介します。

3-1. 正しい知識と関心を持つ

人間には防衛本能が備わっていますので、「知らないもの」に対してはおのずと警戒心が生まれます。社会の無理解が性の多様性への抵抗感を生み、そのことが多くのLGBTの生きづらさにつながっています。2016年に連合(日本労働組合総連合会)が実施した調査によると、職場に同性愛者や両性愛者がいた場合、抵抗を感じる人は35%、つまり3人に1人が抵抗を感じるという現実があります。これはLGBT当事者たちにとっては非常につらい数字です。

出典)「LGBTに関する職場の意識調査」連合調べ <https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20160825.pdf>

しかし、この記事の冒頭でご紹介した通り、ストレート層でLGBTの名称と内容まで知っている人は約3割しかいません。この調査で「嫌だ」と回答した人の中にも、「よくわからないから抵抗を感じる」と思っている人が少なくないはずです。つまり、社会がLGBTについて正しく理解すれば、人間の防衛本能による警戒心が薄れ、職場にLGBTがいても抵抗を感じない人が増え、結果的にLGBTが暮らしやすい環境となる可能性が高まるのです。

ここまで読み進めたあなたには、LGBT への十分な関心があり、正しい知識も身に付けていただいたと思います。その上で、もうひとつ心に留めておいていただきたいことは、常に自分の周りにもLGBTがいるかもしれないという意識を持つことです。本記事の冒頭でご紹介したように、日本でも約8%の人がLGBTです。これは12.5人に1人がLGBTということであり、日本人の中でAB型の人が占める割合と変わりません。

今までLGBTの人に出会ったことがないという人も多いかもしれませんが、AB型の人に出会ったことがないという人はいないでしょう。LGBTの人にもきっと出会っているはずです。ただ、さまざまな理由でカミングアウトされなかっただけなのです。LGBTも生きやすい社会をつくるには、日々の生活や仕事の中で性的マイノリティが存在する可能性を排除しないことが重要です。それが、生活や仕事の中でのちょっとした気遣いや、新たなサービス設計の際の配慮につながれば、どのようなセクシュアリティの人でも生きやすい社会につながっていきます。

3-2. 正しい言葉選びをする

LGBTについて正しい知識を身につけたら、次は普段自分が使っている言葉に目を向けてみてください。わかりやすい差別用語を使わないことはもちろんですが、隠れた差別用語で気づかないうちに当事者を傷つけてしまうことがないように、言葉を選ぶときに少しだけ想像力を働かせてみてください。あなたの言葉の選び方ひとつで、LGBT当事者の人たちは居心地の悪い思いをせずに済むかもしれません。

■分かりやすい差別用語
ホモやレズという言い方は差別にあたります。もともとこれらの言葉に差別の意味はありませんが、悪意を含んだ意味で用いられてきた歴史があるため、このような呼び方をされると傷つくLGBT当事者はたくさんいます。性同一性障害者をオカマやオナベというのもNGです。

差別用語 正しい呼び方
ホモ ゲイ
レズ レズビアン、ビアン
オカマ、オナベ トランスジェンダー
ノーマル ストレート、ノンケ

異性愛者をノーマルと呼ぶのも、同性愛をアブノーマルと示唆するため不適切です。また、当たり前ですが、同性愛者に対して「気持ち悪い」「変だ」などと発言することも不適切ですので、特に深い意味がなかったとしても差別と受け取られる言葉は控えるべきです。

■隠れた差別用語
隠れた差別用語は、言葉そのものというよりも、「人は外見と心の性別が一致しているものだ」「恋愛は異性とするべきだ」「男はこうあるべきだ」「女はこうあるべきだ」などの価値観を前提として投げかけられる言葉を指します。

例えば、男友達に対して「彼女はいるの?」と聞くことは日常的に行われていますが、相手がゲイであったらどう思うでしょうか。カミングアウトしている人ばかりではないことを考慮して「パートナーはいるの?」という言い方に改めれば、相手がLGBT当事者だったとしても戸惑わずに済むでしょう。

「男っぽい」「女っぽい」「男なんだから」「女なんだから」というような発言も、相手の受け取り方によっては差別用語となります。「男気がある」「男勝りな」「雄々しい」「たおやかな」など、日本語には固定観念的な男女を想起させるさまざまな表現がありますが、差別表現とそうでない表現の境界は非常に曖昧です。自分は褒め言葉のつもりで使っても、相手はその言葉に戸惑ったり傷ついたりする可能性もあります。相手がその言葉をどのように受け取るのかわからない場合は、別の言い方に変えるなど臨機応変に対応することが望ましいでしょう。

他にも、恋愛感情も性的欲求も抱かないアセクシャルの人に「いつ結婚するの?」と質問することも相手に不快感を与えることであるのは明白です。恋愛対象は異性であるべきだ、結婚こそが人生最大の幸せであるなどの固定化された価値観を会話の中に持ち込まないように意識することが重要です。

3-3. アライであることを表明する

Ally(アライ)とは、同盟や連携を意味するAlliance(アライアンス)からできた言葉です。盟友・味方という意味を持ち、自分自身がLGBTであるかどうかに関係なく、LGBTの権利を尊重する意思のある人々のことを指します。ストレートの人はもちろん、例えば自分自身がゲイであっても、ストレートやトランスジェンダーなど、他のセクシュアリティの人にも理解を示して尊重する気持ちは大切です。性的マイノリティに対する理解があれば、誰でもアライになることができるのです。

アライであることは、LGBTの象徴であるレインボーカラーのバッジやシールを身に付けることで簡単に表明できます。また、職場の自分のデスクに虹色の小物を置くことで、さりげなくアライであることを表現することもできます。もしかするとあなたには、その虹色のアイテムが具体的に何かの効力を発揮しているという実感は得られないかもしれません。

LGBTのことを知らない人にも、ただの虹色の小物にしか見えないでしょう。しかし、あなたの周りにいる12.5人に1人のLGBT当事者は、きっとその表明に勇気をもらっているはずです。カミングアウトに大きな勇気が必要な日本社会において、自分を分かってくれる人がいる、と感じることができるのはとても大きな安心感に繋がるのです。

4. まとめ

性別は、見た目だけで二分されるべきものではありません。「身体の性別」、「心の性別」、「誰を好きになるか」この3つの組み合わせで定義される性別、セクシュアリティは無限大であり、あなたのセクシュアリティも数あるセクシュアリティのひとつです。

数あるセクシュアリティの中でも少数派の代表とされているのがLGBTです。L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)の存在自体は紀元前2400年までもさかのぼることができます。現在日本では12.5人に1人がLGBTであると考えられており、今あなたが接している人々の中にも存在している可能性が大いにあります。しかし、その多くはさまざまな理由により、自分がLGBTであることをカミングアウトしていません。

自身のセクシュアリティに関わらず皆が自分らしく生きるためには、皆がそれぞれのセクシュアリティにおいて異なる困難を抱えているということを理解し合うことがとても大切です。社会的困難や法的困難、抱えている問題はさまざまですが、周囲の理解があれば乗り越えられることもあります。

当事者が必ずしも自身のセクシュアリティをカミングアウトする必要はありません。職場や学校はそれぞれ仕事をする場、勉強をする場ですので、ストレートの人でもそのような場で性の話をしない人も多いはずです。LGBTの人も同じです。よって、特別に話をしなくても、セクシュアリティも含めて個人の意思を尊重し、誰もが居心地のいい雰囲気作りを考えていくことが大切なのです。社会は急には変わりませんが、一人一人の小さな行動が積み重なって、偏見や価値観を乗り越える大きな変化となるのです。

<参考>
LGBT をはじめとするセクシャルマイノリティの意識調査 株式会社 博報堂DYホールディングス・株式会社 LGBT 総合研究所
http://www.hakuhodody-holdings.co.jp/news/corporate/pdf/HDYnews20160601.pdf
LGBT当事者アンケート調査~2600人の声から~ NHKオンライン
http://www.nhk.or.jp/d-navi/link/lgbt/