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インナーブランディングとは 企業力を高める社内施策の手法・事例

インナーブランディングとは、企業の理念や目指す姿について、従業員およびステークホルダーの理解を深め、行動を促す社内活動のことです。

「最高の品質をお届けする〇〇」
「未来を創る〇〇部品」
法人向け部品メーカーなどが、目立つ看板を掲げているのを見たことはありますか。一般消費者への認知度を高める必要のない企業がなぜ広告を出すのでしょうか。それは、広く世の中に自社の先進性を訴えるため、人材確保のためでもありますが、もうひとつ、従業員に誇りを持って働いてもらうためでもあります。このような従業員向けのブランディングはインナーブランディングと呼ばれ、現在注目を浴びています。

本稿では、インナーブランディングについて、具体的な施策や企業事例を交えて解説します。


1. インナーブランディングとは

インナーブランディングとは、企業理念の浸透を従業員およびステークホルダーに促す啓蒙活動のことです。「インターナルブランディング」とも呼ばれます。
インナーブランディングは当初、「従業員」だけが対象でしたが、現在では「企業が最終顧客に製品・サービスが届くまでの活動に関わるすべての関与者」までを対象に含めることも多くなっています。つまり、従業員はもちろんのこと、協力業者、運送業者、さらには小売業者に至るまでを対象とした幅広い活動を展開します。

1-1. インナーブランディングが注目される背景

インナーブランディングは1990年代にアメリカで登場した手法で、決して新しいものではありません。では、なぜ今、注目されるようになったのでしょうか。

現在、グローバル化と技術革新をはじめとする環境変化により、多くの企業はビジネスモデルの転換期を迎えています。一方で、働き方改革に向けた取り組みも重要性を増しており、両者に対応し得る組織風土改革が求められています。
このような環境の中で組織が成長し続けるためには、一人ひとりの従業員がオーナーシップを持ち、従来のやり方にとらわれない発想で壁を乗り越えていく「自律型組織」であることが求められます。それを実現する手段のひとつとして、インナーブランディングが注目されているのです。
インナーブランディングにより企業理念が組織全体に浸透し、従業員が誇りを持って働くようになると、自分に与えられた役割や業務を「他人ごと」ではなく、「自分のこと」として捉え、オーナーシップを持ってより主体的に行動するようになります。この従業員一人ひとりのオーナーシップが、自立した組織を生み、企業が成長を続ける鍵になると言われています。

1-2. インナーブランディングとアウターブランディング

インナーブランディングに対して、アウターブランディングがあります。一般的に「ブランディング」と言うと、アウターブランディングに関する活動が主流です。アウターブランディングとは社外の顧客や一般消費者に向けて企業やそのブランドをPRする活動です。具体的な施策には、CM広告で商品露出を増やしたり、店頭のデザインや演出に工夫を凝らしたり、イベントへの協賛をしたりすることなどがあります。
アウターブランディングの目的は消費者に購入意欲を起こさせることですが、その効果をさらに発揮するには、従業員の意識変化による製品・サービスの向上が欠かせません。このように、社外向けのアウターブランディングと社内向けのインナーブランディングは互いに影響し合うため、ブランド価値を築くためには、どちらも展開する必要があります。


2. インナーブランディングの効果

インナーブランディングはどのような効果があるのでしょうか。

従業員満足度の向上
インナーブランディングが浸透することにより、従業員は一人ひとりが「企業のブランドを背負っている」という認識を持つようになります。仕事に誇りをもって主体的に働くようになり、やりがいと達成感を得ることでしょう。このような職場環境であれば従業員の定着率も向上します。

・企業の品質・サービス改善
企業理念が浸透することで、従業員は、製品やサービスがなぜ生まれたのか、これらを通じて何を世の中に提供したいかを理念に基づいて理解するようになるでしょう。自社製品・サービスの理解が深まるのはもちろんのこと、企業理念を「自分のこと」として捉え、「もっと顧客に喜んでもらう方法はないか」とオーナーシップを持って業務にあたることが期待できます。従来の枠にとらわれず、時には部署を超え、サプライヤーも巻き込んで、新たな挑戦をするかも知れません。こうして社内外から出た意見やアイデアを、自社の商品・サービスに活かすことができます。

・優秀な人材の獲得
業務内容や待遇が魅力的なことに加え、従業員満足度の高い企業であることも求職者にとっては魅力的な材料になります。働きたい意欲の強い優秀な人材を確保しやすくなります。

インナーブランディングによって「仕事の意味・意義」が従業員に浸透すると、それがモチベーションの向上、サービスの向上につながるだけでなく、従業員と接するステークホルダーにもポジティブな印象を与えることができます。


3. インナーブランディングの進め方

インナーブランディングには大きく4つのステップがあります。それぞれのステップについて解説します。① 現状把握
インナーブランディングを始めるまでに、まず現状を把握します。企業のトップは経営理念を日頃から従業員に伝えているか、従業員はその理念を把握しているかについて、アンケートやインタビューで拾い上げます。また、社内の環境、仕事内容や商品・サービスの品質も調査し、現時点での評価を分析します。

②理念・行動指針の策定
現状を把握したら、次は企業の目指す姿や、それを日々の行動に落とし込むための行動指針を定めます。

③施策の選定
経営理念や行動指針が明確になれば、次はそれを従業員へどのように共有するかを検討します。具体的な施策は次のとおりです。

・ブランドロゴの策定
・クレド、ブランドブックの制作
・イントラネットの構築
・社内SNSでの情報発信
・ブランド意識浸透のための研修、ワークショップの実施
・TV広告、看板などでの社外への発信

冒頭でお伝えした、「最高の品質を作る〇〇」などの企業看板も、インナーブランディングの一種です。駅から工場に向かう途中、従業員が毎日その看板を目にすることで、それに恥じない仕事をしようという意識が芽生えることでしょう。「ネジのゆるみや細かい傷を見逃すまい」「もっとよい製品を作る」といった責任感や向上心を持って業務にあたることが期待できます。

④継続的な施策の展開
インナーブランディングは一過性ではなく、長期に渡る活動です。いったん決めた理念や方針を頻繁に変えることなく、繰り返し掲示し、ブランド意識を浸透させましょう。

このように、4つのステップで活動を進めます。インナーブランディングは売り上げや市場シェアのように収益に直結することがないため、なかなか評価しにくいものです。そのため、活動前の状態を始めに測定しておき、活動が進むにつれて従業員の意識がどう変化していくかを定期的に調査すると良いでしょう。


4. インナーブランディングの企業事例

インナーブランディングを実際に展開している企業を2つご紹介します。

4-1. 三井化学株式会社

素材メーカーの三井化学は、法人向けのビジネスであるという特徴から、プロダクトの価値が世の中に認識されにくいという課題がありました。これは、従業員のモチベーションやロイヤリティにも大きく関わります。ものを作り上げたことや、特許が取れたことへの達成感はあっても、それがどう社会と関わっているかが見えないからです。そこで挑戦したのが、オープン・ラボラトリー活動「そざいの魅力ラボ」です。


出典)
@ENGAGEMENT 従業員17,000人を超える組織の縦割りを解消。三井化学の研究者が集う部活プロジェクト | JinJIのトリセツ
 https://atengagement.com/torisetu/mitsui/

当初は、自社が持つ素材の魅力・価値について、時には外部の方も招いて議論を繰り返すところから始まりましたが、その後、アイデアを基に実際にプロダクトを作り上げたり、展示会での発表・販売したりするところにまで活動の幅が広がりました。部署を超えての交流や、お客様との直接のコミュニケーションを通じて、自身の知識の幅が広がり、大きな成長を感じた従業員が多くいたようです。この試みは、社内意識を向上させただけではなく、営業に関わるインバウンドの問い合わせにつながるなど、さまざまな方面から大きな反響を呼びました。

4-2. スターバックスコーヒージャパン株式会社 

コーヒーチェーンのスターバックスコーヒーでは、「従業員が満足していない企業ではお客様を満足させることはできない」という考えから、顧客満足度以上に従業員満足度を重視しています。
その一つの表れが学生アルバイトも正社員も分け隔てなく実施する、延べ80時間に及ぶ研修です。そこでは、コーヒーの淹れ方を教わる前に、まずスターバックスのミッションや歴史を学ぶところから始めます。こうしてスターバックスの基本理念への理解を深めた上で、「仕事を通して自分がどうなりたいのか」「スターバックスでどんな経験がしたいのか」を従業員に考えさせ、仕事に臨む姿勢を教えます。このような充実した研修制度によって、従業員一人ひとりがオーナーシップをもってお客様に接するようになり、魅力的な空間を生み出しています。


5. まとめ

インナーブランディングとは、企業の理念や目指す姿について、従業員およびステークホルダーの理解を深め、行動を促す社内活動のことです。

インナーブランディング注目の背景には、ビジネスモデル転換と働き方改革という両面から組織変革が求められるようになったことが挙げられます。

インナーブランディングに対して、アウターブランディングがあります。アウターブランディングは社外の顧客や一般消費者に向けてブランドをPRする活動です。社外向けのアウターブランディングと社内向けのインナーブランディングは互いに影響し合うため、ブランド価値を築くためには、どちらも展開する必要があります。

インナーブランディングをすることで企業が期待できる効果は次のとおりです。
・従業員満足度の向上
・企業の品質・サービス改善
・優秀な人材の獲得

インナーブランディングの進め方は次のとおりです。
①現状把握
②理念・行動指針の策定
③施策の選定
④継続的な施策の展開

インナーブランディングによって、従業員一人ひとりが業務に誇りと自信を持つことは、良質な製品・サービスの提供を可能にするだけでなく、間接的に社外にもポジティブな印象を与え、ビジネスの拡大につながります。この機会に、インナーブランディングに取り組んでみてはいかがでしょうか。

参考)
・甲斐莊 正晃(2005)『インナーブランディング~成功企業の社員意識はいかにして作られるか~』中央経済社
・博報堂コンサルティング インターナルブランディングの進化が、企業のビジネスモデル転換を加速させる< 第1回 >
http://www.hakuhodo-consulting.co.jp/blog/branding/branding_20180502/
・ VISUAL SHIFT 社内意識が向上! 三井化学が手がけたインナーブランディングの成功例
https://visual-shift.jp/9860/
・@ENGAGEMENT 従業員17,000人を超える組織の縦割りを解消。三井化学の研究者が集う部活プロジェクト | JinJIのトリセツ
 https://atengagement.com/torisetu/mitsui/

・リクナビNEXTジャーナル 離職率の低いスターバックスが従業員に徹底している5つのポイント
https://next.rikunabi.com/journal/20140926/

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