グローバル人材になるために 英語より大事な『異文化コミュニケーション』とは

「グローバル人材になることがプロになるための条件」という企業が増えているようです。中にはTOEICのスコアを社員の昇格の条件としている企業も見られます。

その背後にあるのは、「グローバルビジネスの共通言語は英語だ。英語ができるようになったら外国人とうまく仕事ができる」というロジックでしょう。日本人にとって英語は永遠の課題であるかのように認識されているので、このロジックの妥当性について真剣に議論されることはあまりないようです。

しかし、このロジックはどのぐらい正しいのでしょうか。つまり、「英語ができると外国人とうまく仕事ができる」という仮説は妥当なのかということです。

この仮説の妥当性を見るためには、アメリカを例に採るとよいでしょう。英語ができるアメリカ人が外国人とうまく仕事ができるかというと、まったくそんなことはありません。実は、アメリカ人にとってもグローバル化への対応は大変頭の痛い問題になっているのです。

この問題に関連して、日本語が堪能なアメリカ人に「グローバル人材を英語で言うとどうなるの?」と聞いたことがあります。そうすると「それに該当する英語はない」という答えが返ってきました。

言葉がないということは、それだけグローバル化に対するアメリカの意識が遅れていることを意味しています。ちょうど「改善」のケースと同じです。日本の製造業が編み出した改善の手法は1980年代後半からアメリカに本格的な導入がされたのですが、該当する英語がなかったのでそのままkaizenとなって今日に至っているというわけです。

したがって、「英語ができれば外国人とうまく仕事ができる」というのは単なる信仰に過ぎないことになります。「鰯の頭も信心から」とは言いますが、グローバルビジネスで戦うためには、目的に沿った合理的なトレーニングを積んだ方が効果的だと思います。

目的は英語力をつけることではありません。あくまでも「外国人とうまく仕事をする」ということです。そして、そのために最も基本となるスキルが異文化コミュニケーションなのです。

1. 外国人は日本人をどう見ているか?

外国人とうまく仕事をするためには、どのような課題があるのでしょうか。

それを知るためには、日本人と仕事をしている外国人に聞いてみるのが一番です。日本人は外国人と仕事をするのが苦手だと思っていますが、それは外国人にとっても同じです。外国人も日本人と仕事をするのが苦手だと思っているのです。筆者の属するジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング(JIC)では、世界中の拠点で毎年数百人以上の外国人に向けて異文化コミュニケーションに関するセミナーを開催しており、その中で講師が次のような質問をしています。

「日本人と仕事をして、やりにくいと感じる点、困っている点は何ですか?」

拠点は北米、中南米、英、ヨーロッパ大陸、中国、日本と分散していますが、返ってくる答えは驚くほど一致しています。代表的なものを挙げると次のようになります。

  • 日本人のYesは必ずしもYesを意味しないようだ。
  • 日本人はNoと言わない。嫌ならはっきりNoと言ってほしい。
  • 反応が薄い。特に会議の沈黙に耐えるのがとてもつらい。
  • 優先順位よりも細部にこだわる。
  • 意思決定に時間がかかる。
  • 変化を嫌う。例えば、計画が意味のないものになっても変更しない。
  • 責任の所在があいまい。
  • 長時間労働。

日本人が外国人とうまく仕事をするためには、このような課題を克服する必要があるのです。明らかにTOEICで900点を取れば解決できるような話ではありません。いずれも日本の文化に根差した課題であると言えます。だからこそ、異なる文化的背景を持つ人とのやりとりをテーマにした異文化コミュニケーションのスキルが大事になるわけです。

参考までに言うと、アメリカのJICのセミナーでも、「日本人の英語がひどくて困る」という指摘はほとんどありません。日本人は英語力を気にしますが、アメリカ人はほとんど気にしていないのです。

「日本人はすごい」と外国人が思うこと

JICでは先ほどの質問とセットで必ず「日本人と仕事をして感心する点、見習いたいと思う点は何ですか?」という質問もしています。それに対する代表的な回答を挙げると次のようになります。

  • 信頼できる
  • 親切で協力的
  • 礼儀正しい
  • For the team
  • 労働倫理
  • 完璧主義
  • Hard working
  • 忍耐強い

日本人として当たり前のことが外国人にとって「すごい」となることがあります。また、すごい点と外国人が困っている点がトレードオフの関係にある場合もあります。これとは別に、エンジニアに対しては、その専門知識についての評価が高いこともよく知られています。ポジティブに感じられる点もあれば、ネガティブに感じられる点もあります。「お互い様」というのが文化相対主義[1]の立場をとる異文化コミュニケーションの基本的姿勢です。

[1] 文化に優劣をつけるような絶対的な基準はないという考え方。

2. 異文化コミュニケーションの考え方

文化の異なる人間のコミュニケーションは太古の昔から行われています。それが一つの学問分野としてテーマアップされたのは比較的最近で、1970年代に入ってからのことです。

当時IBMに勤務していたオランダ人のG・ホフステードが世界各国の支社で働く社員に対して価値観に関する社内調査を行ったことが契機となっています。調査データを分析した結果、いくつかの領域において問題解決の方法が国によって異なっていることが明らかになったのです。その背景には国民文化の違いがありました。そこで、そのような問題領域を文化的次元(cultural dimension)と名付け、文化的次元を手掛かりにして異文化を理解するというアプローチが生まれたのです。(G.ホフステード他,2013)

そこにおいてはIBMの社内調査というのがミソとなっています。というのは、各国のIBM社員は国籍が違うという点を除くと、他の点では似たような属性を持っていたからです。科学的実験の観点から言うと、「観察対象となる現象にある要因が影響することを確認するためには、その要因以外の条件をすべて同じにする」必要があります。そういう意味でIBMのデータは、国民文化の違いだけを浮き彫りにするには好都合だったというわけです。

IBMの調査以降、異文化コミュニケーションに関する様々な調査が行われるようになり、文化的次元についても様々な見解が開発されて今日に至っています。

3. 異文化を理解するための文化的次元とは?

人間には全人類に共通する普遍的な性質があります。
一方で、人間には一人ひとりに固有の性質があります。

この両極の中間に学習によって身に付ける文化的な性質があります。それは主として、ものの考え方、感じ方、行動のパターンなどに現れます。文化を共有する人間の集団内であれば、共有された価値観や常識的感覚を前提にしてコミュニケーションを行うことができます。

例えば、われわれは秋の夜長に虫の声を聞けば、もののあはれについて語り合うことができます。ところが、文化を共有していない外国人とはそのようなコミュニケーションをすることは困難です。

このように文化に起因する考え方や行動パターンの違いが最も顕著に現われる局面を文化的次元と呼んでいます。 

文化的次元を認識しておけば、外国人とのコミュニケーションが機能不全に陥らないように注意することができるというわけです。

異文化コミュニケーションの開祖であるホフステードは、文化的次元として次の5つを挙げています。(G.ホフステード他,2013)

  1. 権力格差
  2. 個人主義 集団主義
  3. 男らしさ 女性らしさ
  4. 不確実性に対する態度
  5. 長期志向 短期志向

1番目の権力格差は、人々が権力の格差をどの程度容認するかということです。中南米やアジアで権力格差は大きく、アングロ諸国(米英系)や北欧では小さくなっています。
2番目は個人と集団との関係で、欧米は個人主義、中南米やアジアは集団主義という傾向があります。
3番目は、自己主張が強い態度を望ましいとするか、謙虚な態度を望ましいかとするかということです。アングロ諸国が前者、北欧やラテン諸国が後者となっています。
4番目は、未知のものを危険と感じるか、興味をそそると感じるか、の違いです。ラテン諸国や日本が前者、アングロ諸国、北欧は後者となっています。
5番目は、時間軸の捉え方で、東アジアが長期志向、北南米が短期志向という傾向があります。

どの国がどのポジションにいるかについては専門家によっても見解の相違があります。したがって、ホフステードの見解を鵜呑みにする必要はありません。一つの見方として参考にすればよいのです。

4. 日本のビジネスの文化的特徴

ホフステードは欧州の視座で文化的次元を捉えているので、そのモデルは必ずしも日本のビジネスにフィットしていません。それに対して、JICはアメリカに進出した日系企業に対する異文化コミュニケーションのコンサルティングをルーツとしているので、日本企業の観点からビジネスの文化的次元を捉えています。

JICによる文化的次元を踏まえて日本のビジネスの文化的特徴につい見てみましょう 。それによって日本人がグローバルビジネスで何に気をつけなければいけないかが見えてきます。

ポイントは4つあります。

  1. 言語への依存度
  2. 対立に対する姿勢
  3. 役割の明確さ
  4. 時間の価値

4-1. 言語への依存度

言葉を駆使する言語中心のコミュニケーションのスタイルか、言葉に頼らない非言語的コミュニケーションのスタイルか、ということです。前者をローコンテクスト(低文脈)、後者をハイコンテクスト(高文脈)とも呼んでいます。言語中心のスタイルである欧米は、あいまいさに居心地の悪さを感じます。そのため、できるだけ言葉を使って正確に表現することが大事だと思っています。これに対して、日本では饒舌は野暮とされます。さらに言えば、空気を読めないようでは生きていけません。

このような文化的次元の違いは次のような行き違いを生むことになります。本当にあった話です。

あるアメリカ人のエンジニアが新規のプロジェクトを日本人の上司に提案した。上司に意見を尋ねると、その答えは「このプロジェクトを成功させるのは難しいと思う」であった。日本人上司は成功しない確固たる理由も説明せずに、ただ拒絶しているようだった。そこで、このエンジニアは上司を説得できるようにさらに深く掘り下げて研究することに決めた。

日本人であれば、上司から「難しい」と言われたら、それが「No」を意味することがわかります。それが忖度できないようでは社会人として未熟との烙印を押されかねません。しかし、アメリカ人にとって、「難しい」はあくまでも難しいという意味でしかありません。非常にチャレンジングであるという指摘を受けたわけですから、より一層努力するのは当然の帰結となります。

言語中心の欧米では、コミュニケーションの第一義的な責任は話し手にあります。これに対して、日本は非言語的な側面を重視するので、責任は聞き手にもあることになります。つまり、聞き手が話し手の意図することを推測する必要があるのです。日本人が外国人とコミュニケーションをするときは、普段よりも多くの言葉を使って自分の言いたいことを細部にいたるまで正確に表現することを心掛ける必要があります。「相手も大人だから言わなくてもわかるはずだ」という発想は禁物です。

4-2. 対立に対する姿勢

問題を解決するためには、オープンで対立を厭わない直接的な姿勢が大事だと思うか、和を重視して対立を回避する間接的な姿勢が望ましいと思うか、ということです。

これについては欧米で違いがあり、ヨーロッパ大陸の諸国は対立が問題解決の足かせになるとは考えません。意外に思うかもしれませんが、アメリカはヨーロッパの大陸諸国ほど直接的ではありません。アメリカ人にとってヨーロッパ大陸の人はストレートで、非常にきつく感じるそうです。

一方、日本はやや複雑です。日本は、対立が人間関係に悪影響を及ぼすことを心配するので、できるだけ対立を回避する努力をします。ところが、目上の人間は目下の人間に対して対立してもよいとされています。この二面性にも外国人は戸惑いを覚えることになります。

「日本人のYesはYesではないようだ」、「日本人はNoと言わない」という外国人の困惑は、対立を回避しようとする日本人の姿勢から来ています。日本人からすると相手を慮ってのこと、つまり、好意に基づくものなのですが、皮肉なことにそれが相手を困らせる結果になってしまうのです。外国人に対してはYes/Noをはっきりと言う必要があります。

4-3. 役割の明確さ

仕事において役割は明確であるべきと考えるか、必要であれば何でもやるべきと考えるか、ということです。

欧米諸国ではすべてのポストに職務記述書(JD: Job Description)が用意されています。JDに書かれていない仕事をすると他人の縄張りを犯すことになるかもしれないので、抵抗を覚えます。これに対して、日本では「それは私の仕事ではありません」という人は評価されません。

役割の明確さの違いは日本人が外国人に対して戸惑いを覚える要因の一つです。外国人の部下から「そのような仕事は私の責任範囲にないので、お手伝いできません」と言われても、その部下は決して非協力的ということではないのです。

4-4. 時間の価値

時間は貴重だから効率的に活用しようとするか、物事を正しく行うためには時間をかける必要があると考えるか、ということです。

欧米諸国は時間が貴重であると捉え、インドや中近東諸国は時間は十分あると捉える傾向にあります。

一方、日本は複雑です。工場の現場などオペレーションにおいては効率性が徹底的に追求されます。時間の無駄遣いは許されません。ところが、経営の意思決定になると時間をかけることに抵抗を覚えません。このギャップも外国人が当惑するところです。

時間の価値に関して日本人が外国人に苦しめられるのは、締め切りです。日本人にとって締め切りは絶対的なものです。したがって、どんなことがあっても死守しなければなりません。ところが、そこまで締め切りをシビアに捉えている外国人はいないのです。Time is moneyのアメリカ人でさえ締め切りは努力目標という受け止め方が普通なのです。

日本の異文化コミュニケーション事始め:反省しないアメリカ人

日本の異文化コミュニケーションを専門とするJICがアメリカで誕生したのは1994年のことです。1980年代後半から自動車産業がアメリカで続々と工場を設立したことが背景となっています。

日本の文化とアメリカの文化が工場で出合ったときに、最初に問題になったのが「アメリカ人があやまらない」ということです。オペレーションではヒューマンエラーが避けられません。少しでもミスをしたら「すみません」と言うのが当然です。これが日本人の感覚です。ところが、アメリカ人はミスをしても「I’m sorry」と言わないのです。対立回避志向の日本人ボスは最初のうちは遠慮していますが、我慢の限界を超えると注意をします。それで「I’m sorry」かと思ったら大間違いで、アメリカ人はミスをした理由(日本人的には「言い訳」)について説明を始めるのです。こうして日本人のイライラが爆発し、アメリカ人と険悪なムードになったのです。

アメリカ人だって自分がミスを犯したことはわかっています。「I’m sorry」と言わないのは、単に、ミスした後にそのように言う慣習がないからなのです。また、日本人ボスは当初はミスに対して何も言いませんでした。これは言語中心のアメリカ人にとっては「ミスをしてもOKなのだ」というメッセージになっていたのです。

「I’m sorry」と言ってくれさえすれば済む話なのに、というのが日本人の感覚ですが、「I’m sorry」と「すみません」のニュアンスの違いを認識する必要もあります。日本語が堪能なアメリカ人に聞くと「すみません」はまったく謝罪を意味していないと言います。謝罪でなければ何なのかと聞くと「単なるSofterだ」と言います。とげとげしくなる空気をやわらかくする機能を持つ言葉ということです。この解釈が正しいかどうかは別にして、日本人が職場で謝罪を期待しているわけではないのは確かだと思います。日本人が期待しているのは反省です。「すみません」は反省、つまり「次はうまくやります」の意思表示の役割を担っています。だから反省しないアメリカ人(そのように見えた)にイラッときたのです。

5. 文化的次元を理解しマネジメントする方法

日本でビジネスをマネジメントする場合でも様々な知識と経験が求められます。それがグローバルとなれば、変数がさらに増えます。複雑なグローバルビジネスのマネジメントに対応するためにも、文化的次元を理解することが非常に役に立ちます。

簡単なケースを使ってグローバルビジネスのマネジメントの問題を見てみましょう。

[営業部長]売上を増やすことが使命だ。市場での競争は激しく、お客さんのニーズもますます多様化している。わがままな客に振り回されたくはないが、注文を断ると競合他社につけ入るすきを与えてしまう。緊急の特注品の注文であっても対応すべきだ。

[製造部長]高品質で低コストの製品を安定供給するのが使命だ。そのためには計画的なオペレーションが重要だ。わがままな客の緊急オーダーに対応するとコストアップで赤字になるばかりか、品質不良も発生しかねない。品質問題を起こして客を失ったら元も子もない。

こうして二人の部長の間で口論が絶えることはなかった。

この課題に対してフランス人(文化的次元 :権力格差=高 × 不確実性回避=高)は次のように主張した。
「対立する部長の上司である社長が注意を怠っている。社長が何らかの命令を下してこの課題を解決すべきだ。」

これに対して、ドイツ人(文化的次元:権力格差=低 × 不確実性回避=高)が異論を唱えた。
「対立する部長の責任範囲を明確にしていなかったことが問題だから、厳格な規則を設けることでこの課題を解決すべきだ。社長が介入することはできるだけ控えるべきだ」

一方、イギリス人(文化的次元:権力格差=低 × 不確実性回避=低)はまた独自の見解を述べた。
「対立する部長の交渉能力にそもそもの問題がある。二人にネゴシエーションのトレーニングを受けさせることでこの課題を解決すべきだ。命令や規則で問題は解決しない。状況に応じて臨機応変の対応ができることが大事なのだ」

ビジネスに正解は一つではなく、どの意見が正しいということはありません。グローバルビジネスで大事なことは、外国人の主張の背後に存在する文化的次元の特徴を認識して、相手を深く理解するように努めることです。「自分の意見が絶対に正しいんだ」という頑なな姿勢がグローバルビジネスでは最も危ないのです。それは、マネジメント手法にも見られます。

日本のケースでいうと目標管理制度(MBO: Management By Objective)を挙げることができます。MBOは目標をどれだけ達成したかで個人の業績を評価する手法のことで、多くの企業で採用されています。にもかかわらずMBOが効果を発揮しているという話を聞くことは希です。実は、そこにも日本の文化的次元の特徴が関係しているのです。

MBOはアメリカで開発された手法なので、当然のことながらアメリカの文化的次元の特徴を前提としています。アメリカは、権力格差が小さく、不確実性の回避が低いという特徴を持っています。そのため、部下は上司と対等の議論ができる独立した存在であることが前提となっています。要するに、上司に対しても遠慮なく不満をぶつけられるということです。また、上司と部下がお互いにチャレンジに伴って生じるある程度のあいまいさ(想定外のことetc.)を受入れられる柔軟性を有していることも前提となっています。

これに対して、日本は権力格差が大きく、不確実性の回避が強いので、アメリカと同じようにMBOを行うことはできません。部下はなるべく上司が受け入れやすい無難な目標を掲げようとします。目標を巡って侃々諤々の議論が行われることは滅多にありません。また、できるだけ達成可能な目標を設定しようとします。しかし、そのような予見性は、変化の激しい今日の外部環境には通用しません。それがわかっているにもかかわらず、一度決めた目標は男の約束(男同士の場合です)なので、よっぽど状況が変わらない限り修正されません。こうして、MBOは容易に形骸化してしまうのです。

マネジメントの手法の多くはアメリカで開発されています。それはあくまでもアメリカの文化の中だけで普遍性のあるアプローチなのです。アメリカ発の手法をそのまま日本に持って来ても、うまくいく保証はありません。新しい手法を導入する際は、常に日本の文化的次元にフィットした適応方法を模索しなければならないのです。

それに関する目覚ましい成功例を挙げると、QCQuality Control:品質管理)があります。QCは元々アメリカが開発したものですが、日本の現場はそれを長い年月をかけて自家薬篭中の物にしたうえで、TQC(Total Quality Control)という日本独自の形に昇華していったのです。

6. まとめ

グローバル化の進展とともに、日本国内だけでビジネスが完結することは難しくなっています。一昔前までグローバルビジネスは国際部門や海外に赴任する一部の人のためのものでした。しかし、今日ではどの部署にいても外国人との接触が避けられません。TV会議によって誰もが海外のお客さんやパートナーと直接対面できるようになっています。意思決定を伴う重要な会議を日本人メンバーだけで行うことも難しくなっています。さらに、外国人の上司や部下がいるケースも増えています。

そのような状況で英語力を磨くことは重要ですが、それだけではとてもグローバルビジネスの荒波を乗り越えることはできません。外国人の言っている言葉が理解できても、真意が理解できなければビジネスにならないからです。だからこそ文化的次元を手掛かりにした異文化コミュニケーションのスキルが不可欠になるのです。

文化的次元を理解することの最大のアドバンテージは柔軟性が身に付くことです。今や世界中の国がグローバルビジネスに参加しています。すべての国の文化的特徴を理解することは不可能ですが、そのような状況で最も現実的で、かつ、対応力を発揮できるのが柔軟性です。文化的な柔軟性というのは、自分の価値観や常識を絶対視しないということです。自分の価値観や常識は絶対的なものではなく、ある文化的次元のスケールの中に存在する相対的なものなのです。そのような認識を持つことによって、相手の価値観や常識を理解し、リスペクトができるようになるのです。

グローバル人材を目指すのであれば、文化的次元を手掛かりにして異文化コミュニケーションのスキルを磨いて欲しいと思います。

山本 和隆
経営コンサルタント
ジャパンインターカルチュラルコンサルティング日本代表
ライトワークス取締役
旭硝子、モトローラ㈱ 経営戦略部長、フューチャーシステムコンサルティング㈱ ディレクター、Rhodia Electronics & Catalysis General Manager、スミダ電機副社長などを経て現職。
一橋大学経済学部卒、シカゴ大学経営大学院修士課程修了(MBA)。
主な著書に「新版 グロービスMBAファイナンス」(ダイヤモンド社)、「ファイナンス入門講義」(日本経済新聞出版社)、「MBA式考える文章術」(東洋経済新聞社)、「経営戦略」(ファーストプレス)などがある。 

<参考文献>

  • 多分化世界、G・ホフステード、GJ・ホフステード、M・ミンコフ、有斐閣
  • Figuring Foreigners Out, Craig Storti, Intercultural Press, 1999
  • 反省しないアメリカ人をあつかう方法34、ロッシェル・カップ、アルク

以下の様なお悩みを抱えてはいませんか?

e-ラーニングのイメージ画像■効率的な社員教育によって生産性を上げたい
■社員、従業員教育にもっと力をいれたい
■全社的なスキルの底上げ・均質化を実現したい

当メディアを運営する株式会社ライトワークスは、 大企業での豊富な実績を基に、

・堅牢で豊富な機能を持ち、統合的な学習管理を可能にするLMS

・さまざまなニーズに対応する多様な教材
・グローバル人材の育成プログラム

を提供しており、人材育成におけるあなたの課題を解決します。
まずはお気軽に無料でお問い合わせください。