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健康経営とは 従業員への健康投資が企業にもたらすメリットを解説

健康経営とは、「従業員の健康維持・向上が、将来的に収益性を高める投資である」との考えのもと、企業が主体となって、従業員の健康管理に関する取り組みをすることです。生産性の向上や医療費削減などを目的に、近年健康経営に取り組む企業が増えています。しかし、ここ数年間で広がった取り組みであるため、まだ、企業に十分な実践のノウハウが蓄積されているとは言えない状況です。

「健康経営のやり方が分からない」
「具体的にどんな取り組みがあるのか」

そのような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
本稿では、健康経営のメリットや進め方を解説します。


1. 健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性を高める投資であるとの考えのもと、企業が戦略的に従業員の健康づくりを促す取り組みです。アメリカ人経営学者のロバート・H・ローゼンが、著書『The Healthy Company』の中で提唱した経営手法で、「従業員の健康保持・増進が従業員の活力向上や生産性の向上などの組織の活性化をもたらす」という考えに基づいています。


2. 健康経営が注目される背景

健康経営の背景には、国民医療費の増加少子高齢化生産年齢人口の減少があります。増加し続ける国民医療費は健康保険組合などの財政悪化を招き、結果として「健康保険料の上昇」という形で企業負担の増加につながっています。今後さらに、人手不足から、労働力確保のために従業員の雇用延長を図らなければならない状況が見込まれます。従業員の健康状態の悪化は企業の生産性を低下させるだけでなく、体調悪化を理由とした離職率の増加にもつながり、有能な人材の流出を招きかねません。健康管理を個人任せにせず、企業としても早急に有効な策を打ち出す必要があります。

このような状況の中で注目されるようになったのが、アメリカで成果が出ている「健康経営」です。日本のように手厚い国民健康保険がないアメリカでは、企業が従業員の医療費をサポートしているケースが多いため、医療費の負担がそのまま企業のコストとして重くのしかかっていました。そこで、1970年代後半から企業と国が協力して国民の健康維持・向上を進め、禁煙とともに食生活改善を促すキャンペーンを実施しました。その結果、アメリカのがん死亡率は1991年をピークに下がり始め、1991年から2015年までの24年間で26%も低下しました。ジョンソン・エンド・ジョンソン社が算出したデータによると、健康経営に関して従業員へ1ドルの投資をすると、3ドルの投資リターンが見込まれるとの報告が出ています。

こうした例を見ると、企業が従業員の健康維保持・推進に積極的に取り組むことは、医療費負担を抑え、生産性を向上させるために必要不可欠と言えます。


3. 健康経営のメリットと注意点

健康経営は、企業にどのようなメリットがあるのでしょうか。また、運営する上でどのような点に注意すればよいのでしょうか。

3-1. 健康経営のメリット

健康経営のメリットは次のとおりです。

・生産性の向上
従業員の健康的な生活が実現すると、集中力や活力が向上し、体調不良によるミスや事故が減ります。その結果、生産性が向上し、企業収益の向上が見込めます。

・医療費の削減
日本の医療費の1/3以上は生活習慣病に関連しています。つまり、生活習慣病の予防に重要な「適度な運動」と「バランスの取れた食事」に気を配る習慣が身に付けば、大きな病気を防ぐことが期待できます。健康経営で従業員のセルフケアが習慣化すれば、通院・治療の頻度は減少し、企業が負担する医療費の削減につながります。

・企業イメージの向上
健康経営は従業員が心身共に元気に働ける企業として社内外にポジティブなイメージを与えます。実際に「健康経営銘柄2016」(5-1で後述)に選定された企業は、TOPIXとの比較において、株価が優位に推移しており、市場から高く評価されていることがうかがえます。

・人材の定着・確保
心身共に元気に働けることは、従業員の満足度を高め、人材の定着につながります。良い健康状態が続くことで、定年延長や再雇用となる従業員も増えるしょう。さらに、求職者に「従業員を大切にしている企業」として好印象を与えることができ、優秀な人材の確保が期待できます。

健康経営は、企業の生産性向上や医療費削減、人材の確保・定着につながり、企業イメージの向上や業績の向上へと好循環を生み出します。

3-2. 健康経営に取り組む上での注意点

健康経営には時間がかかることを認識しなければなりません。すぐに成果をもとめず、長期的な活動を展開する必要があります。特に、「健康管理をしてほしい」と思う従業員ほど、健康診断にすら行かないものです。人の生活習慣を変えるには相応の労力がかかります。まずは健康意識の高い従業員から巻き込み、徐々に浸透させるとよいでしょう。


4. 健康経営の進め方

健康経営には大きく4つのステップで進めていきます。それぞれのステップについて解説します。

ステップ1:健康経営宣言
さまざまな取り組みをする前に、健康経営を成功させる鍵として重要なことが、「健康経営宣言」です。朝礼やミーティングの場で、責任者やトップ自らが従業員に健康経営を行うことを宣言しましょう。企業が真剣に従業員の健康を考えていることを伝えると、「私たちを大切に思ってくれている」と従業員にも伝わり、その後の取り組みへの参加意欲につながります。


参考)凸版印刷株式会社 健康経営宣言 https://www.toppan.co.jp/about-us/our-corporate-approach/health-manage-declaration.html

ステップ2:現状把握
従業員の現段階での健康状態を把握します。企業自身や健保組合の保険者が保有する従業員の健康状態に係るデータを整理しましょう。また、従業員へ健康に関するアンケートを実施し、労働時間やコミュニケーション、福利厚生などに問題がないかを調査するのも効果的です。
調査する項目例は次のとおりです。

・残業は少ないか
・充分な休養は取れているか
・有休はとれているか
・朝、従業員同士の挨拶はあるか
・コミュニケーションはとりやすいか
・長期病欠の従業員がいるか
・仕事中の事故は頻繁に起こるか
・業務に集中できているか
・パワハラ、セクハラなどはないか

そのほか、従業員に歩数計を配布し、日頃の活動量の把握や、血圧計や体組成計によるバイタルデータを活用する方法もあります。

ステップ3:計画(成果目標)を立てる
調査で見えてきた課題を解決する取り組みを考えます。その際に、成果が表れたかどうか分かるように、あらかじめ評価指標を設定します。「検診実施率〇%」、「万歩計〇歩」のように、評価指標には数値を用いることが望ましいです。

ステップ4:実行
策定した計画に沿い、取り組みを実行します。例えば次のような取り組みが挙げられます。

・職場の禁煙ルールの明確化
・社内食堂の整備、メニューの改良
・職場環境の改善
・長時間労働の抑制
・職員の休暇取得
・健康指導
・健康に関する情報提供
・運動機会の提供

あらゆるプロジェクトと同様に、健康経営も計画的に進める必要があります。実施にあたっては、企業だけでなく健康保険組合や外部の専門家との連携を取りながら進めます。


5. 経済産業省の取り組み

経済産業省では、優良な健康経営に取り組む法人を「見える化」 し、社会的に評価を受けることができる環境を整備しています。その顕彰制度である「健康経営銘柄」と「健康経営優良法人認定制度」について解説します。

5-1. 健康経営銘柄

経済産業省と東京証券取引所が共同で、東京証券取引所の上場会社の中から原則1業種 1 社、「健康経営」に優れた企業を選定する制度で、2015年に設立されました。長期的な企業価値向上を重視する投資家にとって魅力ある企業として紹介することを通じ、企業による「健康経営」の取り組みを促進することを目指しています。
設立初年に選ばれた企業は22社でしたが、2018年は26社、そして2019年には27業種36社と増加しています。

◆認定を受けるには
健康経営銘柄に選定されるためには毎年8月~10月ごろに行われる健康経営度調査に回答し、以下の基準を満たす必要があります。

1. 健康経営度調査に回答した企業の上位20%に入ること
2. 法令違反の有無や社内の体制づくりなど、定められている健康経営の必須項目を全て満たすこと
3. ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上であること

健康経営銘柄は上場企業が対象ですが、健康経営調査は未上場企業に対しても実施しています。2019年に健康経営調査に回答した企業は上場・未上場合わせて1,800社にのぼり、前年度から約1.5倍、初年度から約3.7倍に増加しました。このことからも、企業の健康経営への意識が高まっていることがうかがえます。なお、2019年は未上場企業の回答数が上場企業を上回りました。
未上場企業への認定制度については次に解説します。

5-2. 健康経営優良法人認定制度

地域の健康課題に即した取り組みや日本健康会議[1]が進める健康増進の取り組みをもとに、特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業などを顕彰する制度です。2015年に健康経営銘柄を開始しましたが、健康経営の普及に伴い、上場企業だけではなく未上場企業や医療法人等の法人、中小企業も対象とした広い認定制度を設立すべきではないかという意見が出たため、2017 年に健康経営優良法人認定制度を創設しました。

健康経営優良法人認定制度は、大規模法人部門と中小規模法人部門の2つに分けられ、それぞれの認定フローが異なります。

参考)経済産業省 健康経営優良法人の申請について 6.健康経営優良法人の申請から認定までの流れ
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin_shinsei.html

「健康経営優良法人2019」には、大規模法人部門に818法人、中小規模法人部門に2502法人が認定されました。大規模法人部門認定法人の中でも、健康経営度調査結果の上位500法人には、通称「ホワイト500」として認定します。

認定基準の詳細はこちらをご参照ください。
健康経営優良法人2020(大規模法人部門)認定基準(PDF形式:599KB)
健康経営優良法人2020(中小規模法人部門)認定基準(PDF形式:473KB)

[1]国民一人ひとりの健康寿命延伸と適正な医療について、民間組織が連携し行政の全面的な支援のもと実効的な活動を行うために組織された活動団体


6. まとめ

健康経営とは、「従業員の健康維持・向上が、将来的に収益性を高める投資である」との考えのもと、企業が主体となって、従業員の健康管理に関する取り組みをすることです。国民医療費の増加や少子高齢化、生産年齢人口の減少を背景に、注目されるようになりました。

健康経営のメリットは次のとおりです。
・生産性の向上
・医療費の削減
・企業イメージの向上
・人材の定着・確保

ただし、健康経営には時間がかかることを認識しなければなりません。すぐに成果をもとめず、長期的な活動を展開する必要があります。

健康経営には大きく4つのステップがあります。
ステップ1:健康経営宣言
ステップ2:現状把握
ステップ3:計画(成果目標)を立てる
ステップ4:実行

実施にあたっては、企業だけでなく健康保険組合や外部の専門家との連携を取ります。

健康経営を推進するため、経済産業省では顕彰制度を設けています。
・健康経営銘柄
・健康経営優良法人認定制度

健康経営の取り組みは、短期的に見ればコストがかかり、ノウハウも十分に無いなど、なかなか実行しづらい側面もあるでしょう。しかし、長期的に見れば経営面で大きな成果を期待できます。今こそ、企業が主体となって従業員の健康管理に取り組んでみていはいかがでしょうか。

参考)
・金城実(2018)『日本一わかりやすい健康経営』プレジデント社 
・経済産業省 ヘルスケア産業課 企業の「健康経営」ガイドブック ~連携・協働による健康づくりのススメ~ (改訂第1版)
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkokeiei-guidebook2804.pdf
・経済産業省 ヘルスケア産業課 健康経営の推進について
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/180710kenkoukeiei-gaiyou.pdf
・経済産業省 健康経営銘柄
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_meigara.html
・経済産業省 健康経営優良法人認定制度
https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin.html
・Care Net 米国のがん死亡率、低下続く (2018/02/06)
https://www.carenet.com/news/general/hdn/45332

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