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子どもだけじゃない!大人も注意が必要なゲーム障害と睡眠不足の関係

2019年5月、世界保健機構(WHO)が、国際疾病分類第11版において、オンラインやスマートフォンによるゲーム依存から生じた障害を、治療が必要となる障害として正式に承認しました。アルコール依存やギャンブル依存と同様に、医療機関による治療が必要な病気となったのです。

一般にゲーム障害は子どもに多いと言われていますが、大人だってゲームに没頭し、せっかくの土日を使い果たしてしまう人もいます。それどころか、毎晩「ほんのちょっとだけ」と、ついゲームをしてしまうことにより、日常的に睡眠不足を引き起こしてしまうことも。ゲームによる睡眠不足を解決するにはどうすればいいでしょうか。

では、ゲーム障害と睡眠不足の関係について見ていきましょう。


1. ゲーム障害とはどのような病気か

そもそもゲーム障害とは何か、また、どうして治療が必要なほどの病気なのかについて説明します。

1-1. 大人までゲーム障害となってしまう理由

「ゲーム障害」の診断基準として、次の3つが挙げられています。

・ゲームをする時間や頻度を自分でコントロールできない
・日常生活でゲームを他の何よりも優先させる
・生活に問題が生じてもゲームを続け、エスカレートさせる

これら3条件に当てはまる状態が1年以上続くと「ゲーム障害」とされます[1]

この3条件を完璧に満たすというのは、時間のある学生や定職を持たない人々ぐらいにしかできなさそうです。実際にゲーム障害の治療で有名な神奈川県久里浜病院の患者の多くは小中学生とのことです。脳の発達に影響を及ぼしかねないことから、一般的にゲーム障害は発達途中の子どもたちに多いとされており、「子どもの病気」と認識されがちです。

しかし、考えてみてください。㈱タイトーが「インベーダーゲーム」を発売したのが1978年。また㈱任天堂から「ファミリーコンピューター」が発売されたのは1983年のことです。当時これらのゲームに熱中した少年少女はいまや50~60代。今年の大卒新入社員が生まれたときには、もう、㈱ソニー・インタラクティブエンタテインメントからPlayStationが発売されていたのです(初代は1994年)。ほかにもNintendo SwitchやマイクロソフトX boxなど、ゲームが当たり前のように身近にある世代は、働き盛りの30代、40代に達しているわけです。いまや、親子でゲームを楽しむ時代になっています。

[1]日本経済新聞 ゲーム依存は病気 WHO、国際疾病の新基準(2019/5/25)

1-2. ゲームの進化、スマートフォンの普及

次いで、Play Station Vita、ニンテンドー3DSやNintendo Switch Liteなど、携帯できるゲーム機の登場、さらにスマートフォンの普及によるスマホゲームの影響が大きいでしょう。「いつでもどこでもいつまでも」遊べることから、満員電車の中、また歩いている最中にゲームをする人々を頻繁に見かけるはずです。それが原因で人にぶつかったり(またあえてプレイヤーらを狙ってぶつかって来る人が登場したり)、ゲームのせいだけではありませんが、歩きスマホで電車のホームから転落して命を落としたりというケースもいくつかあります。

こうした事件や事故、トラブルなどが注目されがちですが、「スマホでも簡単にできる」ということや、自宅に何らかのゲーム機が鎮座していることで、寝る前にちょっとゲームで楽しむこともあるでしょう。これは子どもだけでなく、ゲームとともに育った社会人についても共通していることなのです。あとちょっとだけ。あ、死んだ、もう一度、これが最後……。ほんのちょっとのつもりが、つい時間を忘れて、ゲームを続けてしまいがちです。気がついたらもう深夜3時、という経験をしたことのある人もいるのではないでしょうか。

最近のゲームはかなり作り込まれていて、ゲーム自体が長時間に及ぶだけでなく、巨大なマップ(世界)が広がっていて、目的を達成した後もその世界の中でカジノをする、街を暴走して遊ぶ、町を広げたり、動物を育ててみたりなど、ほかの要素がいくらでも盛り込まれています。つまり、ほぼ終わりがないのと同然です。こうしたゲームの新作が立て続けに生産されているのですから、ハマったら最後、「ゲームの沼」からは逃れられなくなるのです。

また、インターネットが進歩し、オンラインゲームが急増したことにより、世界中の人々とつながって、SNS的効果を生み出しています。そこでコミュニケーションが広がればよいのですが、これらのコミュニケーションはあくまでネット上で完結し、ニックネームで存在する「誰なのか、どこの国の人かもわからない人々」と、リアルな人間関係には進展しません。さらに、チームを組んでともに戦うタイプのゲームの場合、時差がある分、こちらが深夜時間に差し掛かっても、ゲームが佳境となっていればチームから離脱することは許してもらえないこともあり、後々ネット上で攻撃される対象となることもあります。現実に韓国や台湾、インドなどでは、(必ずしもチーム制のゲームとは限りませんが)長時間、寝ずのゲームをすることによって、命を落とした例があります。


2. ゲームが心身に及ぼす悪影響

それでは、なぜゲームが障害となるほどの悪影響を及ぼすのでしょうか。これは、人体、特に脳の仕組みに関係しています。

2-1. 脳内ドーパミンが大量発生

ドーパミンは、人間の脳にある「側坐核(そくざかく)」という部分から分泌される脳内物質です。このドーパミンには、その人を気持ちよくさせる作用があり、別名「快楽物質」とも言われます。たとえば、仕事や勉強でとてもやる気が出ているのは、脳内にドーパミンが多く分泌されているからです。それによって脳を興奮状態にさせることができるのです。

ゲームを始めると、次第に楽しくなってきます。これはドーパミンの分泌がだんだん増えていくからです。一方で、人は身体のバランス調整ができる機能を備えていますから、ドーパミンが多すぎると、今度はドーパミンを抑制する物質が働き始めます。でもゲームが楽しいので、脳はさらにドーパミンを欲しがり、また抑制し、という繰り返しが起こり、何時間もゲームを続ける「負のスパイラル」に陥ってしまうのです。遅く帰ってきたのだからすぐに眠ればよいものの、うっかりゲームに手を出してしまったがために、ほんの10分のつもりが1時間、2時間と止めどきを忘れ、夜ふかしして翌日は睡眠不足になるということが起こりやすくなるわけです。これはドーパミンが脳内にあふれている状態です。そうなると、寝ようとしても興奮は収まらずになかなか眠れなくなり、翌日の仕事のパフォーマンスは落ち、大小さまざまなミスも起こす可能性が高くなります。

2-2. ブルーライトによる生活リズムの乱れ

パソコンやスマートフォンの画面からは、ブルーライトという光が発せられています。ブルーライトは光を分解したときに青色に相当する波長の部分で、もっとも強い光とされています。近年、ブルーライトカットの眼鏡をよく見かけますが、ブルーライトは目を疲れさせる光であり、厚生労働省でもパソコンなどの作業を続けたら15分程度の休憩を挟むことを推奨しています。

ブルーライトのもうひとつの悪影響は、人の概日リズム(サーカディアンリズム)を狂わせてしまうことです。概日リズムとは、人間の体が24時間の中で行動させるリズムで、朝、日光を浴びると目が覚め、夜になると眠くなるリズムです。朝になるとセロトニンという脳内物質によって交感神経が優位になって活動的になり、夜になるとセロトニンに代わってメラトニンという副交感神経を優位にする物質が増えて、体をリラックスさせ、休息や眠気を誘うため、身体が維持され、日常生活を送ることができています。

ところが、このブルーライトは目から入る強い光の刺激ですから、夜にパソコンやスマホを見ると、光によって概日リズムが狂わされてしまいます。概日リズムの乱れは、睡眠不足、睡眠障害だけでなく、うつ病などの精神状態の乱れや肥満など生活習慣病を引き起こす原因になるのです。そのため、快適な睡眠を得るためには、寝る3時間前ぐらいにはパソコンを使うのを止める、ベッドでスマホを見ない、もしくは持ち込まないことが対策のひとつとされています。生活のリズムが一度混乱して睡眠時間が削られると、どこかで取り戻さないかぎり、いわゆる「睡眠負債」という状態に陥ってしまいます。つまり、寝る前にゲームをすることは、身体に大きな影響を及ぼすということです。

2-3. 長時間のゲームによる疲労や血行の悪化

ドーパミンの分泌によって脳が興奮状態に陥ると、楽しすぎて気持ちが高揚します。我を忘れてゲームに集中した結果、体や脳の疲労に気づかないで死亡した例があります。その人は、ネットカフェで丸2日以上、興奮状態に陥ったままゲームをし続けて気を失い、目覚めてまたゲームを始めたものの、また倒れてそのまま亡くなってしまいました。また、長時間同じ姿勢のままゲームをし続けたために、血行が悪くなり、肺の中の血液が凝固してしまう肺塞栓症で死亡した例もあります。これは、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれており、耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

2-4. 常にゲームのことを考え仕事がおろそかに

特にロールプレイングゲームに多いと思いますが、ある謎を提示されてそれを解読することでゲームが先に進むという展開がよくあります。もしあなたが、謎を解けず、どうにもこうにも行き詰まっているとしたらどうでしょう。ゲームをしていないときでも気に掛かり、ゲーム内の状況を思い出しては、「あ、あれを試していなかった」「あそこを通れば向こうに行けるのではないか」などと思案してしまうのではないでしょうか。筆者自身もかつて、とあるロールプレイングゲームで同じ経験があるので気持ちはよくわかります。

するとどうなるか。まず、仕事中もゲームのことばかり考えているので、どこか上の空になります。また、集中力が低下してしまうので、手元の仕事がなかなか終わりません。そして仕事終わりが待ち遠しくなり、帰った途端その思いついた方法を試そうとします。残業などがあったりしようものなら、イライラが募って、早く片付けるためにむしろミスをしがちになるのです。

2-5. 課金システムによる不安と喪失感

ゲーム障害という「病気」とは直接関係ないことですが、課金システムも心身を不安定にする要素となり得ます。以前から問題になっていることですが、ゲームによっては有利になるアイテムなどを手に入れるための「ガチャ」という課金システムにより、ガチャを回し続け、思いがけずお金を使い込んでしまうのです。目の前で現金をやり取りするわけではないので、うっかりガチャを回しすぎてしまい、あとから請求金額に驚愕するということになるわけです。これはニュースなどにも取り上げられたので、現在は多少解消されているかもしれませんが、それでも課金システムはなくなってはいません。「次回のクレジットカードの支払い、どうしよう」。暗くなると不安がわき上がり、眠れなくなる人も多いはずです。せっかく苦労して稼いだお金を、何も得るものもなく使い果たしてしまうのは、実にもったいないことですし、喪失感が日常生活にも影響を及ぼすかもしれません。
これらを考えると、本当は楽しいはずのゲームがおもしろくなくなってしまうかもしれません。


3. ゲーム障害を治す方法

急に話は変わりますが、喫煙者で「今日からもう絶対吸わない」と禁煙宣言しても、2~3日もすると、煙草に手が伸び、禁煙は失敗するというケースが多く見られます。そこで禁煙を医学的に治す、禁煙治療というものが開発されました。その際、ある薬を服用しますが、最初の1週間は煙草を吸っていても構わない。2週間目から減らしていき、3週間目で完全禁煙というスタイルが一般的です。

ゲームも同じで、よほどの強い意志がないかぎり、今からすっぱり止めるということは困難なはずです。これまで時間をかけて育ててきたキャラクターや世界を一気にこの場で削除してしまうことなど、安々とはできません。それでは、どのように対処すればいいのでしょうか。

3-1. 時間を決める、減らしていく

こうしたゲーム障害の治療としてよく取り入れられるのが、時間を決めて行うという訓練です。今週は2時間ゲームをする。来週は1時間、翌週は30分というように、少しずつ時間を減らしてゲームに接する状況を作らないようにすることです。毎日「何時から何時までゲームをした」と記録して、それを見返すことも効果的です。

3-2. ゲームで「後悔」してみる

ギャンブル依存症の場合、大損で借金し生活が破綻してしまうものですが、時には勝つときもあります。それゆえに「負けを取り戻そう」と依存することになるわけですが、ゲームの場合、費やした時間は何も生み出しません。ゲーム中は楽しいかもしれませんが、実際にはプラスマイナスゼロの非生産的な時間です。もしトータル100時間をゲームに費やしたなら、その時間を無駄に捨ててしまったことにほかなりません。

こうした時間の無駄を振り返る方法も、ゲームから離れるひとつの方法です。失った時間を数えて、その時間があれば何ができたのかを書き出して見ると、いかに自分が人生を無為に過ごしたか、反省したくなるはずです。わざと後悔してみるわけです。

3-3. やりたいことをリストアップ、実行する

自分がしたいことを50個でも100個でも、思いつくだけリストアップしてみること自体が、効果的な対処法です。そのリストの中で、ゲームに費やした時間があったらできただろうことを、今からでもいいからやってみるのです。つまり前述の「後悔」を前向きの力に変換すること。中には、「今まで忘れていたけれども、昔からやってみたかったんだよな」と、ゲーム以上の目標を思い出すかもしれません。これは、「新しい自分」を発見するということであり、ゲーム障害の治療法のひとつとしても導入されているものです。特にゲームとは真逆の運動や作業が良いとされています。

そして究極のゲーム障害治療は、「恋人をつくること」。もちろん誰でも簡単にできることではありませんが、片思いでもある人を好きになる。そのアプローチの仕方を考えてみる。ストーカーやセクハラになってはいけませんが、通常の恋愛経験をしてみると、成功すればゲームのことなど忘れてしまうでしょう。現実に、その方法でゲーム障害から脱出した人がいるので、効果はあるはずです。ただ、告白して失敗し、落ち込んでまたゲームの世界に没入するということでは、意味がありませんけれど。

少なくとも、ゲーム以外の何かにハマってみることは、ゲームを忘れるにはよい方法であることは間違いありません。


4. まとめ

近年は「eスポーツ」として世界大会が行われるほど、ゲームが全世界で注目されています。多額の賞金を勝ち取るプロのゲーマーも世界中に存在します。いつかはオリンピック種目に、という声もちらほら。国内外の多くのゲームメーカーからは、怒涛のように新作が発売され続けています。しかも、かつてはゲーム少年/少女だった人々が、今はもう子どもや孫を持つ世代になってしまいました。親の目を気にしなくてもいいし、ゲームの新作をためらわずに買う財力はそれなりにあるはずです。

ほんのちょっとのつもりで始めたはずのゲームに夢中になったがために、寝る時間まで削り、翌日の仕事や生活に支障をきたしてしまうことになります。これは、ゲームに限らず、寝る前についスマホを手にしてSNSなどを始めてしまって夜ふかしするのも同様です。この経験ならば身に覚えがある人はかなり多いはずです。

ゲームを楽しむことは否定しませんが、どこかで区切りをつけなければ、時間はただ浪費され、ふと我に返ったとき、その非生産性に後悔してしまうことになりかねません。それ以上に、心身に悪影響を及ぼす可能性も高いのです。

ゲーム障害を治すには、ゲームに接する時間を減らし、何か別の身につくこと、楽しいこと、やってみたいことに取り組んでみるのが比較的簡単な治療法です。いまやWHOでも病気と認定されたゲーム障害を治すためには、確固たる自分の意志を持つことが大切です。

<参考>
・日本経済新聞 ゲーム依存は病気 WHO、国際疾病の新基準(2019/5/25)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45280950V20C19A5MM8000/?n_cid=DSREA001
・日本経済新聞 ゲーム障害、実態把握急ぐ 診断基準確定で厚労省(2019/5/25)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45283060V20C19A5CZ8000/?n_cid=DSREA001
・朝日新聞DIGITAL ゲームに没頭、眠れない…「病気」かも? 診断や治療は(2019/9/8)
https://www.asahi.com/articles/ASM9552WBM95ULBJ011.html
・AFP BB NEWS ビデオゲームは大人の趣味、米成人の65%が日常的にプレー(2019/5/10)
https://www.afpbb.com/articles/-/3224364
・ブルーライト研究会 ブルーライトとは
http://blue-light.biz/about_bluelight/
・武庫川女子大学情報教育研究センター紀要「インターネット・ゲーム障害」(IGD)を考える 萱村俊哉著 
https://mukogawa.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=821&item_no=1&page_id=28&block_id=33