ファシリテーターとは、グループや組織でものごとを進めていくときにその進行を円滑にし、目的を達成できるよう、中立的な立場から働きかける役割を担う人のことです。
会議を効率的に進めるためには、ファシリテーターを配置するのも一つの手段です。労働時間を減らしつつ、最大の成果を創出することが求められる昨今。限られた時間内に確実に結論に到達し、その後のアクションにつなげる効果のある方法です。
本稿では、ファシリテーターに求められるスキルや会議での役割、注意点を解説します。
目次
1. ファシリテーターとは
ファシリテーターとは、グループや組織でものごとに取り組むとき、中立的な立場から、スムーズな進行の舵をとり、より良い結論へと到達するように導いていく役割を担う人のことです。
会議において、参加者たちのさまざまな意見を収束させ、予定時間内に結論を導き出せるよう効率的に進行させるスキルや振る舞いをファシリテーションと言います。
ビジネス上のものごとには、目的や目標とするゴールがあります。
複数の人がひとつのことに取り組むとき、それぞれが見解や考えを持っているでしょう。会議やミーティングはその異なる見解や考えを出し合い、最適な結論を出すためのものです。
しかし、各々の意見が対立したままになったり、逆に意見が出なかったりして結論に至らず時間切れになることも少なくありません。
そこで、中立的な立場から進行をかじ取りしていくファシリテーターが必要となるのです。
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2. ファシリテーターが役立つ場面
ビジネスシーンでは、いろいろな場面でファシリテーターが必要とされることがあります。たとえば、職場でのコミュニケーションにおいて、意見や考えが対立したり、摩擦が生じたとき、それを解消し、皆を次のアクションに導いていける人はファシリテーターと言えます。
このように、会議の進行役として明確に位置づけられた立場だけでなく、プロジェクトの進行やグループ学習、タスク管理などでもファシリテーターは有効です。
3. ファシリテーターに求められるスキル
ファシリテーターは、時間、参加者、議論の内容など、同時進行で意識すべき事柄が多くあり、スムーズなファシリテーションをしていくためには、多岐にわたるスキルが必要とされます。主なスキルを挙げてみましょう。
・参加者やその場の雰囲気を読むスキル
・否定せず、積極的に聞く傾聴スキル
・意見喚起や考えやすさにつながる質問をするスキル
・簡潔にまとめ、記録するスキル
・論理的にまとめ、結論につなげるスキル
・プロセス管理スキル
・時間コントロールスキル
これらのスキルがファシリテーターの役割のなかでどのように活かされているのか、次章で見ていきましょう。
4. 会議のファシリテーターの役割
会議におけるファシリテーターの基本的な役割は以下の4つです。
4-1. 適切な場をつくる
人数や議題に合う空間(部屋)の用意も必要ですが、雰囲気づくりは重要です。その際に注意することは以下の点です。
・議題の周知
会議の席上で意見が出しやすいように、事前に話し合われる項目を周知しておく。
・ルールを確認し順守させる
特定の人の独壇や意見に対する否定反応が出ないようルールを確認する。
また、ルールに反する状況に気づき、抑制または意見者を保護する。
・中立の立場
進行中は常に中立の立場をとり、できるだけ多くの意見を吸い上げる。
4-2. 意見を引き出す
できるだけ多くの意見を引き出し、参加者全員の積極的な参加を促します。その際、意見を出しやすくするためのアクションを取ると同時に、話が脱線した場合の軌道修正も必要です。
・全体への配慮と理解へのサポート
発言者が偏らないよう、意見をしにくい人、してない人にも喚起する。
それぞれの意見を全員が理解できるようにし、考えやすさを提供する。
・発言者のサポート
否定をしない傾聴や相槌などで、話しやすさを提供する。
話の最中は急かさず、根気よく聞き、話の論点が全員に伝わるよう補助する。
・多様な意見の尊重
既存の意見とは異なる意見を歓迎する。
4-3. 意見を絞り込み、整理する
時間経過に対する意識を常に持ち、適切なタイミングで出た意見を整理します。
ファシリテーター自身が答えを出すのではなく、参加者主導を徹底することが重要です。
この段階で、合意形成のための意思決定をサポートします。
・対話の促進
参加者同士の対話を促す。
・意見の整理
出された意見をまとめ、構造的に整理していく。
・合意形成のサポート
適時確認をしながら、全員が一致した解釈のもとに進める。
4-4. 結論をまとめる
参加者主導で絞られた内容を、最終結論に導いていきます。
・振り返り
話し合いの状況を簡潔に振り返る。
・結論のまとめと理解の確認
当初の目的や目標に照らして、沿った結論をまとめる。
全員が完全に理解・納得していることを確認する。
・その後のアクションを認識させる
結論に対して、参加者ごとにその後のアクションを明確に認識させる。
このように、①場を設定し、②参加者主導で議論が進むように支援、③意見を集約し、④結論をまとめ次の行動を認識させることがファシリテーターに求められる基本的な役割です。
5. ファシリテーター自身の注意点
ここで、ファシリテーター自身の注意点を確認していきましょう。
5-1. 自分の主観や意見を介入させない
自らも組織の一員であれば、当事者意識を持つことは大切です。
しかし、ファシリテーターがそのスタンスを取ると、その会議はファシリテーターがいないのと同じになってしまいます。その結果、進行上で起こり得る問題点を、自ら作り出してしまう可能性も出てきます。自分の主観や意見を入れずに、より良い進行に集中することが大切です。
5-2. 決定しない
ファシリテーターは、その責任のポイントを間違えないように注意しましょう。
議題に上がる問題の解決をすることはファシリテーターの役割ではありません。責任感から、自分の意思や能力で最終意見をまとめようとするのも間違いです。参加者が考え、意見をまとめ、決定するのをサポートするのがファシリテーターです。
6. ファシリテーターには場の協力が不可欠
会議でファシリテーターを置くとき、主催者や参加者たちが進行のすべてをファシリテーターに委ねてしまってはうまくいきません。ファシリテーションは、その場にいる人たちの協力のもとに成り立つものです。そうでなければ、どんなにベテランのファシリテーターであっても、最適な結論に導くことが難しくなってしまいます。
7. まとめ
ファシリテーターとは、グループや組織でものごとを進めていくときにその進行を円滑にし、目的を達成できるよう、中立的な立場から働きかける役割を担う人のことです。
ファシリテーターには次のようなスキルが必要です。
・参加者やその場の雰囲気を読むスキル
・否定せず、積極的に聞く傾聴スキル
・意見喚起や考えやすさにつながる質問をするスキル
・簡潔にまとめ、記録するスキル
・論理的にまとめ、結論につなげるスキル
・プロセス管理スキル
・時間コントロールスキル
ファシリテーターが会議の進行役をする場合の4つ基本的な役割と注意点は以下のとおりです。
①適切な場をつくる | ・議題の周知 |
②意見を引き出す | ・全体への配慮と理解のサポート |
③意見を絞り込み、整理する | ・対話の促進 |
④結論をまとめる | ・振り返り |
このとき、ファシリテーターは以下のことに注意しなければいけません。
・自分の主観や意見を介入させない
・決定しない
ファシリテーションを成功させるためには、ファシリテーター自身だけでなく、参加者もファシリテーションについて理解している必要があります。これにより、積極的な協力体制が整い、会議やプロジェクトなどの目的を達成することができるのです。
ダイバーシティが推進されている現在、異なる考えをまとめたり、意見の対立を解消し、次の行動につなげていくスキルを持ったファシリテーターの存在は重要です。ファシリテーターの育成に積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。
参考)
DIAMOND online 「ファシリテーターに求められる「4つのスキル」とは?」
https://diamond.jp/articles/-/161326
奈良県資料 「ファシリテーターについて」
http://www.pref.nara.jp/secure/70776/10.pdf
TFU リエゾンゼミ・ナビ 『学びとの出会い』 「10.ファシリテーターの役割について知ろう」
https://www.tfu.ac.jp/students/arpn890000001rdp-att/navi06-10.pdf
ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ 「ファシリテーションの概要」
https://www.ctp.co.jp/style/facilitation/about_facilitation/