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コンプライアンス問題を防ぐ「契約書」チェック 法律別のポイントとは

電子契約のメリットをリスクマネジメントの観点で考察 担当者必見!

「リモートワークが推奨される中、ハンコを押すためだけに出社するのは非合理ではないか?」

新型コロナウイルス禍の最中、社内からこんなため息が聞こえた企業は少なくないのではないでしょうか。

「ああもっと早く電子化しておくんだった」、と思ってもあのような急展開では間に合いません。新型コロナウイルスの感染第一波はひとまず従来の方式で乗り越えて、ウィズコロナの時代に向けて具体的な準備を進めている企業が多いと思います。

方法自体は難しくありません。契約書や請求書などの書類は世界的に電子化されつつありますし、国内のサービスも色々あります。そのノウハウを知って思い切って自社に導入すれば、今後のリモートワーク拡大に対応することができるでしょう。

しかし、実は電子契約には業務の効率化に加えてさらに特筆すべきメリットがあります。コンプライアンス上の効果です。

今回は、電子契約の導入により、企業のコンプライアンスにどのような効果が期待できるかについてご紹介します。電子契約の導入により、どのようなリスクマネジメントが可能になるのか、具体的な考え方を示しながら詳しく説明しますので、ぜひ参考にしてください。

参考)
中川 雅博「在宅勤務を阻む「ハンコ問題」、激論の舞台裏」,『東洋経済オンライン』,2020年4月25日,
https://toyokeizai.net/articles/-/346741?page=2(閲覧日:2020年9月15日)


1. 電子契約とは

若いベンチャー系企業なら、フットワークも軽く社員の意識も柔軟なので、新しい様式を取り入れやすいのですが、特に歴史のある大企業ほど、日本の伝統を継承した「ハンコ文化」から抜け出せないでいるようです。

しかし、こうした日本のやり方は、世界水準から見ればかなり周回遅れとなりつつあります。契約は、申し込みと承諾の意思表示の合致によって成立し、口頭でも成立します(保証契約など一部の契約については、例外的に書面による契約が要件になっています)。しかし、ビジネスの契約では、後で「言った」、「言わない」という理解の違いなどから生じる紛争のリスクを避けるために、契約書を文書で作成し、お互いに署名や押印をしたうえで、それぞれが原本を保管するのが一般的です。

1-1. 電子契約の定義

それでは、電子契約とは、どのような契約のことでしょうか。文書情報マネジメントの普及活動を行う「日本文書情報マネジメント協会」は、次のように定義しています。

“電子的に作成した契約書を、インターネットなどの通信回線を用いて契約の相手方へ開示し、契約内容への合意の意思表示として、契約当事者の電子書名を付与することにより契約の締結を行うもの。”[1]

つまり、契約書において必要なものは、今や印鑑ではなく電子署名へと移行しているのです。

1-2. 電子契約のメリット

電子契約の導入には、契約管理において、様々なメリットがあります。代表的な例は、次のような内容です。

(1) 契約管理の一元化
本社と複数の拠点があるような企業では、契約書の締結業務は拠点単位で行い、契約書の原本も、鍵付きのロッカーに入れるなど、拠点単位で管理している場合が多いと思います。しかし、電子契約を導入すれば、各拠点の契約書を含めて、サーバー上で一括管理することができます。

(2) 契約管理コストの削減
電子契約では、印鑑を押す押印手続きが不要になります。さらに、紙の契約書と異なり印紙税も不要です。そのため、押印や印紙を貼るための手続きに係る時間とコストが不要になります。したがって、多数の契約書を締結する企業では、これらの費用が大幅に削減できます。

(3) 契約締結手続きの可視化
電子契約は、電子契約システム上で締結手続きが行われます。つまり契約手続きをシステムから見ることができるのです。事前に社内で決裁した条件で契約締結が進んでいるか、予定通り契約締結が進んでいるかなど、契約手続きを可視化してチェックできます。

電子契約導入の課題や注意点、各部門との調整方法などについて、以下の書籍がわかりやすく説明しています。

参考)
高林淳、商事法務(編)『電子契約導入ガイドブック』,商事法務,2020
Amazonで詳細を見る

[1] 公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)電子契約委員会「電子契約活用ガイドラインVer1.0」,2019年5月,P3 1.電子契約とは,https://www.jiima.or.jp/wp-content/uploads/policy/denshikeiyaku_guideline_20190619.pdf(閲覧日:2020年9月15日)


2. 電子契約とコンプライアンス

法務部門の重要な業務がコンプライアンスの徹底です。信用においてはハンコに勝るものはない、そうお考えの方も多いと思われます。その理由は、どこかに不安な要素があるとビジネスパーソンとしての勘が働くからでしょう。実際にはどうなのでしょうか。

2-1. 契約とコンプライアンスの関係

まずは、通常の契約について改めて振り返ってみましょう。

企業の法務部門の基本業務として、契約書のリーガルチェックがあります。契約書の内容には、潜在的な法令違反の問題が含まれていることがありますので、コンプライアンスの視点からも、リーガルチェックが必要です。

たとえば、既存の技術では競合関係にある企業同士が、将来の技術について、共同開発契約を締結して提携する場合を考えてみましょう。円滑に共同開発が進み、予定通り成果物が完成すればよいのですが、うまく進まず、契約の有効期間内に成果物が完成せずに終了したり、双方合意して契約関係を解消したりするケースがあります。このような共同開発契約の条件として、将来の類似研究や開発が制限されていることがありますが、何らかの条件をつけることは、場合によっては独占禁止法に違反する可能性があります。

また、メーカーが部品の製造を下請先に委託する取引において、有償で支給する原材料の代金を、その材料を組み込んだ部品を受領する前に支払う条件を業務委託契約書に記載していた場合は、下請法の違反になります。
 
このように、契約書の条件には、コンプライアンス問題となり得る合意が含まれていることがあります。そのためにも法務部の厳密な審査が必要なのです。

参考)
一色正彦「どうする?契約書の審査」,『企業法務A2Z」,第一法規,2020.5

2-2. 電子契約のコンプライアンス効果

契約のリーガルチェックは、電子契約を導入することにより、コンプライアンスにおいて、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的には、次のような効果が期待できます。

(1) 契約管理の徹底
前述のメリットのところでも説明したように、事前に法務部門がチェックした契約が、実際に各現場でどのように締結まで推進され、契約が締結されているか否かを一元管理することができます。また、継続的な取引契約の場合、契約期限が切れているにもかかわらず、契約の更新が漏れていることがありますが、電子契約では、このようなメンテナンスのリスクも一元管理により軽減できます。

また、紙の契約書に押印する場合、すべてのページ間の綴り目に押印したり、複数の契約が同一の場合、割印をしたりします。これらは、契約書の押印後、改ざんされるリスクに対する措置です。しかし電子契約の場合は、次項で説明しますが、契約の改ざんができない ので、これらの措置を行う必要がありません。契約書の記載内容が改ざんされるリスクがないことは、コンプライアンス面からも重要です。

参考)
「契約書に押すハンコ:文章の偽造・変造を防止するもの」,『契約のミカタ』,2016年7月7日,https://keiyaku-mikata.info/archives/120(閲覧日:2020年9月15日)

(2) 自然災害や火災リスクのバックアップ
遠隔地に多数の拠点を持つ企業の場合、すべての契約書の原本を本社で一括保管することは難しいのが実情であり、通常、契約書の原本は、本社と各拠点で分散管理されています。そのため、仮に自然災害や火災などで、本社や拠点で保管している契約書の原本が紛失してしまった場合、企業活動の継続に影響が出てしまいます。

電子契約に詳しい宮内宏弁護士は、著書の中で、電子契約が自然災害、大火災、テロなどの非常時に対して企業活動を継続するためのBCP(Business Continuity Plan:企業継続計画)について、紙の契約書の原本が災害などで失われ、証拠としての価値が低いコピーしか残らない場合のリスクについて、次のように述べています。

”電子契約においては、原本・コピーの違いはありません。最初に作成したファイルであっても、 電子署名が行われた時の電子文書から変更されていないことを確認できるからです。このような意味での原本性が維持できますから、遠隔地にコピーを保存しておけば、本社のファイルが喪失した場合でも、それがために企業活動に支障をきたすおそれはありません。この意味で、電子契約の導入は、BCPにおいて、大きな効果をもたらすといえます。”[2]

(※下線は筆者)

ここで言及されている電子署名とは、紙の契約書に押印する行為を電子的に行う処理のことです。電子署名の証拠性を確保するプロセスは、次のような内容です。

”電子署名では電子証明書の秘密鍵を利用して署名データという形で電子的な結果が残ります。また、その結果が正しいかを確認する場面では、紙の契約書では実際の印影を重ねたり、透かしたりする等、目視で確認しますが、電子署名の確認では署名検証という電子的な手段によって簡単・確実に確認出来ます。この署名検証によって、その電子文書に対して誰が?どのような内容?(本人性や改ざん性)について、電子署名を行ったかが確認可能となります。”[3]

(3) リスク分析によるコンプライアンスの向上
コンプライアンス問題は、組織や上司からの圧力や、売り上げおよび利益のノルマに対するプレッシャーから、心が不正に傾いてしまう「性弱説」による場合があることが指摘されています。このような圧力に対するけん制として、相互に業務が監視できるシステムは有効な方法のひとつです。

前述の宮内宏弁護士は、著書の中で、コンプライアンスの実現では相互監視機能が重要であること、紙の契約では監視される本人に気づかれない方法の情報収集や網羅的な調査を行うことが困難であると指摘したうえで、電子契約のメリットについて、次のように述べています。

”電子契約による対外的な電子化が実現すれば、これらの問題は容易に解決できます。電子契約等の証憑をデータベースに格納することにより、調査対象部署に知られることなく調査できますし、網羅的な分析も容易にできるようになります。したがって、電子契約の導入は、コンプライアンスの向上に極めて効果的です。”[4]

相互監視をしていても、潜在的にコンプライアンス問題が発生するリスクが高い部門を特定するのは容易ではありません。しかし、ネットアンケートを用いて定期的に比較分析することにより、リスクが高い部門に当たりを付けることは可能です。リスク分析を目的としてアンケートを行う場合には、アンケート結果をどのように統計的に分析して活用するかを考えて、その目的を実現できる質問文と選択文を設計する必要があります

たとえば、メーカーの場合、ネットアンケートにより独占禁止法の認識が低いと思われる部門があったとします。ただし、アンケート結果のみでは具体的なコンプライアンス問題が進行しているのか、または、どの程度潜在的なコンプライアンス問題が発生するリスクがあるかはわかりません。しかし、対象の部門の契約について、独占禁止法違反となるリスクの高い同業他社と締結している共同開発契約、OEM(相手先ブランド)取引契約などを重点的に調査することにより、コンプライアンス問題の可能性を見つけることが可能です。

このように、電子契約の導入による契約情報のデータ化は、企業のコンプライアンス実現にも大いに貢献が期待できるのです。

2-3. データ管理の注意事項

電子契約をデータ管理する場合は、データ保存に関する「電子帳簿保存法」(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)に準拠する必要があります。電子帳簿保存法には、データ保存について細かく要件が規定されています。電子契約をPDFファイルとしてサーバーに保存しておけば、民法・商法上の契約としては有効です。しかし、データの保存方法が電子帳簿保存法の要件を満たしていない場合、税法上のリスクを抱えることになります。

電子契約とコンプライアンスの問題については、電子帳簿保存法に従ったデータ保存をしているか否かをチェックする必要があります

参考)
高林淳、商事法務(編)『電子契約導入ガイドブック』,商事法務, 2020, Chapter4 税務編 電子帳簿保存法のポイント
「契約書の「データ保存」に関する法務と税務 —電子契約をデータとして保存する場合」,『サインのリ・デザイン』,https://www.cloudsign.jp/media/20180323-keiyakuhozon1/ (閲覧日:2020年9月15日)

[2] 弁護士 宮内宏(編著)『改訂版 電子契約の教科書 ~基礎から導入事例まで~」,日本法令,2019, P16-17,1-3 電子契約のメリット、(4) BCPへの寄与
[3] 公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)電子契約委員会「電子契約活用ガイドラインVer1.0」,2019年5月,P18 2-3 電子署名の役割,https://www.jiima.or.jp/wp-content/uploads/policy/denshikeiyaku_guideline_20190619.pdf(閲覧日:2020年9月15日)
[4] 弁護士 宮内宏(編著)『改訂版 電子契約の教科書 ~基礎から導入事例まで~」,日本法令,2019, P16, 1-3 電子契約のメリット(3)コンプライアンス向上

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3. まとめ

電子契約は、電子的に作成し、電子契約システムのうえで、締結され、サーバーに保存される契約です。契約の電子化は、
(1)契約の一元管理
(2)契約管理コストの削減
(3)契約締結手続きの可視化
というメリットがあります。

さらに、電子契約は、企業のコンプライアンスに貢献する効果が期待できます。具体的には、
(1)契約管理の徹底
(2)自然災害や火災リスクのバックアップ
(3)リスク分析によるコンプライアンスの向上
などです。電子契約による契約情報のデータ化は、企業のコンプライアンス実現にも大いに貢献します。

電子契約をデータ管理する場合は、「電子帳簿保存法」に準拠する必要があります。電子帳簿保存法には、データ保存について細かく規定されており、その基準に準拠していない場合は、税法上のリスクを抱えることになるため、注意が必要です。

今回ご紹介した電子契約によるコンプライアンスの取り組み方法を参考に、自社の適切なコンプライアンスの実現に取り組んでください。

参考)
・高林淳、商事法務(編)『電子契約導入ガイドブック』,商事法務, 2020
・弁護士 宮内宏(編著)『改訂版 電子契約の教科書 ~基礎から導入事例まで~」,日本法令,2019
・高林淳編著「リーガルテック・AIの実務 デジタル・トランスフォーメーション(DX)時代の企業法務改革」,商事法務,2020
・一色正彦「どうする?契約書の審査」,『企業法務A2Z」,第一法規,2020.5
・中川 雅博「在宅勤務を阻む「ハンコ問題」、激論の舞台裏」,『東洋経済オンライン』,2020年4月25日,https://toyokeizai.net/articles/-/346741?page=2(閲覧日:2020年9月15日)
・公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(JIIMA)電子契約委員会「電子契約活用ガイドラインVer1.0」,2019年5月,P18 2-3 電子署名の役割,https://www.jiima.or.jp/wp-content/uploads/policy/denshikeiyaku_guideline_20190619.pdf(閲覧日:2020年9月15日)
・「契約書に押すハンコ:文章の偽造・変造を防止するもの」,『契約のミカタ』,2016年7月7日,https://keiyaku-mikata.info/archives/120(閲覧日:2020年9月15日)
・「契約書の「データ保存」に関する法務と税務 —電子契約をデータとして保存する場合」,『サインのリ・デザイン』,https://www.cloudsign.jp/media/20180323-keiyakuhozon1/ (閲覧日:2020年9月15日)

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