企業の人材教育シーンに普及しつつある いまどきのeラーニングとは?

あなたの会社ではeラーニングを使っていますか?

eラーニングはもはや珍しいものではなく、教育ツールとしてビジネスの世界に定着しつつあります。2015年度に国内企業360社を対象に行われた調査によると、「eラーニングを実施している」と回答した企業は80.0%で、前年度調査の1.3倍でした[1]

国内の企業数は420万社ありますので、360というサンプル数は少なめですが、eラーニングの利用企業が増加傾向にあることは間違いなさそうです。eラーニングという教育ツールが、ビジネス上の何らかの課題解決に効果を発揮し、評価されているととらえてよいでしょう。

今後、eラーニングに対する認知度はますます高まっていくものと思われます。

そこで、本稿では、eラーニングとは何か、その基本的なところをわかりやすくまとめてみました。導入を検討している方、少し使ったことがあるけれどよくわからないという方は、ぜひ参考にしてみてください。

[1]株式会社日本能率協会マネジメントセンター「国内企業360社対象 e ラーニングに関する実施状況調査」< https://www.jmam.co.jp/topics/1223801_1893.html >

1. eラーニングとは

eラーニングの”e”はelectric”の”e”です。「eラーニング」を直訳すると「電子的教育」ということになります。広義にとらえれば「電子的」であればよいので、具体的な実施形態や学習内容について特に規定はありません。そこで、ここでは一般的な企業で活用されているeラーニングをモデルに、基本情報を確認していきます。

1-1. eラーニングの定義

日本イーラーニングコンソシアムによると、eラーニングは「パソコンとインターネットを中心とするIT技術を活用した教育システム」と定義されています[2]

企業で活用されているeラーニングの基本スタイルは、LMSLearning Management System, 学習管理システム)と呼ばれるサーバー上のシステムから、教材コンテンツを配信するというものです。教材コンテンツは従来イラストやアニメーションと原稿、そしてそれを読み上げるナレーションで構成されるのが一般的でしたが、近年はイラストと原稿だけのシンプルなものや、動画を活用したものが増えています。

また、教材コンテンツを配信するだけではなく、ライブ性や双方向性を重視したeラーニングもあります。例えば、講師のレクチャーをライブ配信したり、テレビ会議システムを使ってディスカッションやワンオンワンの授業を行う、などです。実施時にリアルタイムで人の手が必要となるため、単なるコンテンツ配信と比べてコストがかかりますが、個々の受講者のニーズに応えられる分、高い学習効果が望めます。

[2] 日本イーラーニングコンソシアム (編集)(2004)『eラーニング導入ガイド』p.1, 東京電機大学出版局.

eラーニングとアニメーション

かつて、eラーニングにはリッチなアニメーションがよく利用されていました。制作には多くの場合「Flash」というコンテンツ制作ソフトが使われ、受講者は「Flash Player」というプラグインを介してアニメーションを再生し、学習していたのです。しかし、IT技術や環境の移り変わりとともに、脆弱性などの問題が発生し、開発元であるAdobe社は2017726日、Flash Playerの提供を2020年末で終了することを発表しました。

こうした背景もあり、最近のeラーニングではアニメーションを使うものが減っています。替わって、シンプルな構成のスライドやイラスト、写真、動画が駆使されるようになりました。

こうした傾向は、スマートフォンやタブレットの普及による端末の多様化とシンクロするものとも言えるでしょう。こうした端末の利用者は、限定された画面の中に配置されている文字や画像、動画から情報を得ることに慣れているのです。

多くの場合、重視されるのは有益な情報をいかに効率的に得られるかです。端的な文章表現と分かりやすい非文字情報。ともすれば、教材中のアニメーションは冗長という評価を受けかねません。

eラーニングは、時代とともに変化しています。

1-2. eラーニングの仕組み

eラーニングの基本スタイルの運用イメージは以下の通りです。

LMSDVDでいうところのプレイヤーのようなイメージで、ここにソフトにあたる教材コンテンツを登録し、配信します。受講者は、配信される教材コンテンツをパソコンやタブレット、スマートフォンなどの端末で閲覧し、確認テストを受けます。

LMSが単なるプレイヤーに留まらないのは、受講者の学習履歴を記録・管理できる点にあります。受講者の端末から、その受講者がいつどの教材を受講し、進捗状況はどうで、確認テストは何点だったか、といった情報をキャッチし、データベースに格納するのです。

教育を提供する事務局(システム管理者)は、学習履歴を確認することで、教育施策の進捗管理を行います。

LMS自体は、事業者のサーバー上のものをクラウドサービスで利用するか、自社サーバー上に構築して利用するかの、2つのパターンがあります。クラウドサービスの場合、受講者の端末さえ用意できればすぐに受講が可能です。後者の場合は、システムを導入・設定する必要があるので、初期投資が必要です。

外部インターネット通信が可能であれば、クラウドサービスを利用する形が一般的です。

1-3. 歴史と規格について

1-3-1. 歴史

eラーニングは、IT社会の実現を目指す人々と、よりよい教育を追究する人々が、相互に影響し合いながら、ともに作り上げてきた教育手法といえます。その始まりは1990年代のアメリカでした。日本に本格的に普及し始めたきっかけは、2000年、インターネットの普及と共に、日本型のIT社会を目指すとして政府が発表したe-Japan構想です。

2001年には「産・官・学の力を結集し、継続的にユーザおよびeラーニング事業者の方々に積極的な支援活動を推進するために[3]」特定非営利活動法人「日本eラーニングコンソシアム」が発足し、eラーニングの普及促進事業が開始されました。

その後、まずは企業や高等教育機関での活用が試みられました。ほどなく課題となったのは、教育のコストと効果のバランシングです。集合研修をeラーニングに置き換えることにより、コストを削減することはできますが、集合研修のメリットを無視して機械的に置き換えを進めると、教育効果が損なわれてしまいます。

そこで、集合研修とeラーニング、それぞれの長所を活かして使い分けることで教育の効果を最大限にする「ブレンディッドラーニング」という考え方が生まれました。

こうした手法は、今では小学校や学習塾でも活用されています。例えば、学習そのものはタブレット端末等を用いて生徒各自が行い、授業を質疑応答やディスカッション、応用問題への取り組みの場として活用する「反転教育」なども、その一例といえるでしょう。

また、企業においては、eラーニングをタレントマネジメントに活かす取り組みも行われています。これは、職種や職位に応じたスキルセットを定義し、それを構成するスキル項目ごとに教育手法を定めて実施していくものです。知識が中心で個人学習が可能なものにはeラーニングを適用します。グループワークが必要なものには集合研修を、さらに現場の実作業等に関するものにはOJTを適用します。それぞれのスキルを最も効果的な形で学び、修得できるよう、事前に設計を行うことで、自社にとって理想的な人材を育成することができるのです。

このように、eラーニングは既に私たちの教育システムの1つとして広く認知され、様々な形で活用されています。今後、人材不足に直面しながら生産性の向上を目指していかなければならない日本において、eラーニングを活用した教育手法はさらに進化を続けていくことでしょう。

[1] 日本イーラーニングコンソシアム「eLCについて」http://www.elc.or.jp/about_us/ 2017814日閲覧)

1-3-2. 規格

冒頭でご紹介したLMSとコンテンツ教材を組み合わせて運用するタイプのeラーニングには、標準規格があります。業界人以外は知っておく必要はないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

LMSに記録された学習履歴は、個人と企業の情報資産です。例えばこれを他のシステムに移行したり、何らかの理由によってシステムを統合する必要が生じた場合、規格が統一されていないと大変な混乱が生じます。そこで、主に学習履歴のデータの持ち方や記録の仕方についてルールを設け、LMSや教材コンテンツの開発事業者にこれを守らせる仕組みが構築されているのです。

現在普及しているeラーニングの標準規格は「SCORM1.2」もしくは「SCORM2004」です。
また、次期規格として「xAPI ( Experience API )」も公開されています。xAPIは、eラーニングだけでなく、オフラインで行われる様々な学習の履歴や人事情報、業務履歴、実績等 ― つまりそのビジネスパーソンを形成するあらゆる経験(experience)― の情報を統合的に管理・分析し、新しいデータ活用につなげようとするものです。
新規導入の際は、どの規格に準拠しているかを確認しておきましょう。

2. eラーニングのメリットとデメリット

eラーニングについては、主に集合研修と比較する形で様々なメリットとデメリットが言われています。
主なものを、受講者視点と管理者視点のものに分けて、表にまとめてみました。


(図表)eラーニングのメリット・デメリット

ここでは上記の表を元に、受講者と管理者それぞれにとってのメリット・デメリットについてまとめてみたいと思います。

2-1. 受講者のメリット・デメリット

まず受講者のメリットについては、時間と場所に関するものがあります。集合研修のように物理的な拘束を受けることなく、任意の時間に任意の場所で学習することができるのは、大きなメリットでしょう。一方で、仲間と一緒にワイワイガヤガヤ、雑談を交えながら学習することはできないので、モチベーションの維持に苦しむことはあります。これはデメリットと言えます。

また、以前は受講可能な端末(デバイス)の有無がeラーニング導入の障害になることがありましたが、企業における個人用パソコンの支給は一般化していますし、タブレットやスマートフォンの普及により、以前に比べるとその深刻度は低下していると言えます。

2-2. 管理者のメリット・デメリット

次に、管理者側のメリットを見てみると、大規模運用、情報の一元管理、データ活用といった、ITの基本といえる要素がまず挙げられます。講師の質に左右されることなく、何千人規模の受講者にまったく同じ学習内容を提供できる仕組みは、知識共有型の教育には大変有効です。

一方で、集団性が失われる分、個人のモチベーション喚起や受講促進に苦労が伴うことは避けられません。一般的なLMSでは、進捗状況に応じてメール配信を行う(例えば未修了者だけにチアアップメールを送るなど)ことができますが、メンタリングの実施やランキング発表等を通じた学習する風土作り、集合研修との組み合わせ等、システムに頼らない工夫も大切です。

また、eラーニングはテーマを選ぶと昔から言われていますが、動画の配信技術の向上により、eラーニングでカバーできる範囲は着実に広がってきています。例えば、以前は業務に必要な「動作」を教材コンテンツで伝えるのは困難でしたが、今では熟練スタッフの動画を撮影して配信することで、手を使った細かな作業の仕方や体の動かし方などを、受講者にリアルに伝えることができるようになりました。

ディスカッションやシミュレーション、実技確認が必要な学習については、既述の通り、集合研修やテレビ会議システム等を取り入れることで補完が可能です。eラーニングを導入するからといって全ての教育をeラーニングに置き換えようとすると、効果が低下するリスクがあるので注意が必要です。

また、コストに関しては、集合研修に比べれば確実に減らすことができるといえます。

eラーニング導入の先駆である株式会社オートバックスセブンが試算を行ったところ、同社がeラーニングを用いて始めた教育施策を集合研修で行うと仮定した場合、eラーニングの4倍のコストがかかるという結果が出ました[3]

また、ある大手学習塾では、新人講師向けの初期教育として実施していた3時間×4コマの集合研修のうち1コマをeラーニングに置き換えることで、教壇に立つまでの期間の圧縮と、集合研修のトレーナーにかけていたコストを25%削減することに成功しました。

ただ、教育にかけているコストは企業によって千差万別ですし、教育の内容によってeラーニングを活用しやすい場合とそうでない場合があります。eラーニングの導入により学習機会や受講対象者が拡大されれば、コスト比較だけでは評価できない効果が生まれるかもしれません。上述のオートバックスセブンが試算対象とした教育も、eラーニングを導入したからこそ実施が可能になったものと考えられます。

古い仕組みを新しい仕組みに置き換えるだけでなく、新しい価値を生み出していくという視点を加えることで、eラーニングの活用可能性はどんどん広がっていくでしょう。

[3] 石井幸雄・小迫宏行(2001)「オートバックスにおけるe-ラーニングを活用した企業内教育」,『教育システム情報学会誌 Vol.18 No.3/4 2001 秋・冬合併号』pp. 433-436 , 教育システム情報学会.

3. まとめ

いかがでしたか?
定義や仕組み、メリットとデメリットなど、eラーニングの基本的な情報をご紹介しました。

eラーニングは一般的にLMSに教材コンテンツを登録し、それを配信する形で行う教育手法を指します。外部インターネット通信が可能であれば、クラウドサービスを利用する形が一般的です。
教材コンテンツについては、従来はアニメーションを利用したものが多くみられましたが、近年はイラストと原稿だけのシンプルなものと、動画を活用したものが増えています。

受講者にとってのeラーニングの最大のメリットは、好きな時間に好きな場所で受講できるという点です。管理者にとっては、大人数の受講状況と学習履歴を一元管理できる点がメリットといえるでしょう。一方で、受講者にとっても管理者にとっても、モチベーションの維持が課題になるため、学習する風土作り等の工夫が必要です。

従来から言われてきた受講端末の問題や教育内容については、スマートフォンや動画の普及に伴い、制約が減ってきています。

集合研修をeラーニングに置き換えると、確実にコスト削減につながりますが、教育効果を考えた場合、全てをeラーニングに置き換えるのではなく、目的に応じて集合研修と使い分けることが理想的です。これをブレンディッドラーニングといいます。近年は、これにSNS機能やテレビ会議システムなどを組み合わせて教育を行う企業も増えています。

IT社会の発展とともに変化してきたeラーニング。これを機会に、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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