失敗しないeラーニング 「よいテスト」を効率的に作成する方法

「テスト作りって意外と大変だな…」

学習用教材のおまけのような感覚で作り始めたら、思ったよりも考えなければいけないことが多くて苦労した―自社でeラーニング教材を作成している企業の担当者の方は、一度はこんな風に感じたことがあるのではないでしょうか?

テストは、一般的に「知識の習得状況」を確認するために作られます。学習教材とセットで作ることもあれば、試験用にテストだけを作ることもあるでしょう。

いずれの場合も、「学習内容の理解度を確認すること」が主な目的ですから、学習内容に基づいて出題内容を考えればよいわけですが、これがなかなか大変です。というのも、テストを作成するにあたっては、「正解」にあたる学習内容だけを把握していればよいわけではないからです。

実際にテストを作成するにあたっては、以下のような内容を検討しなければなりません。

  • 学習内容のポイントを確認する
  • これを「どのように問うか」を考える
  • これに「どのように回答させるか」を考える
  • 選択式の場合、「誤答」を考える
  • 上記一連の作業を通じて難易度を調整する
  • 解説の内容を考える
  • 設計どおりにできているか確認する

これだけの作業を1問ずつ行うのは大変です。なるべくまとめて、計画的に効率よく作業を進めたいところです。

また、ことテストについては実施側の目も厳しいものです。自分の知識や判断力が「測られる」わけですから、無理もありません。

やっつけ作業でテストを作成し、実施後に苦情が出る事態は避けなければなりません。また、習得状況を正確に測ることができなかったり、学習内容の見直し・改善につなげることができないとなれば、次の教育施策への影響も出かねません。

そこで本稿では、「よいテストの作り方」について解説したいと思います。「よい学習教材」と「よいテスト」の両方を受講者に提供することがeラーニングによる教育を成功に導くポイントであることを認識した上で、教材制作に取り組みましょう。

※「よい学習教材」については別記事「〔仕様書サンプル付き〕失敗しないeラーニング 教材の作り方」にまとめていますので、ぜひご参照ください。

1. 「よいテスト」とは?

まずは、「よいテスト」とは何かを確認しましょう。

実際にテストを受ける「受講者の視点」あるいはテストを作成する「提供する側の視点」で見た場合の「よいテスト」の条件は同じです。具体的には以下の3つになります。

  • テストの実施目的が明確である
  • テスト問題に妥当性・信頼性がある
  • ストレスなく解答できる

では、「よいテスト」の条件について詳しく見ていきましょう。

1-1. 実施目的が明確なテスト

1つ目の条件は、「このテストの目的は何か?」が明確になっていることです。目的がなければ、テストの仕様検討や設問文・解説文などの作成を開始することはできません。

また、目的が曖昧な状態で制作をスタートさせると、制作過程で手戻りが発生する可能性が高まります。これは制作スケジュールの遅延や、制作コストの増加をもたらします。さらに、意図していなかったテストが出来上がってしまう可能性もあります。

何事も最初が肝心です。「こんなはずではなかった」と後悔しないためにも、まずは「このテストの目的は何か?」を考えるところから始めましょう。

1-2. 問題に妥当性・信頼性があるテスト

2つ目の条件は、テスト問題に妥当性・信頼性があるということです。そのためには、「学習した範囲内の知識で解答できる問題」を作成しなければなりません。テストは、受講者に教材を通じて学習した内容を問い、その理解度を測ることを目的としているからです。

問題にしやすいというだけの理由で、学習の範囲外にある概念や考え方(関連知識など)を題材とすることはやめましょう。これは受講者に混乱をもたらすほか、問い合わせの増加要因になってしまいます。

1-3. ストレスなく実施できるテスト

テスト問題を作成する際に大切なのは、受講者の立場で考えることです。

例えば学習していないことについて問われた受講者は、「こんなこと学習してない!」と混乱するでしょう。また、たとえ学習の範囲内の知識を問う問題であったとしても、問題の内容によっては、学習者に不要なストレスを感じさせることがあります。例えば、一読しただけでは何を問うているのかが分かりにくいもの、問題ごとに出題方法がバラバラで問題の内容に意識を集中できないものなどです。

テスト問題は、あくまでも学習した内容について明確かつ率直に問うものでなければならないのです。

2. 「よいテスト」の作り方

ここからは、具体的に「よいテスト」の作り方を確認していきましょう。
基本的にテストは以下の流れで作成します。

  1. テストの目的(何をどのような基準で測るのか)を決める。
  2. テストの仕様(種類、出題形式、解説の有無、合格基準など)を決める。
  3. テストの仕様に合わせて原稿を作成する。
  4. 教材作成支援ソフトを使って教材化する。
  5. テストの実施結果を分析して改善する。

では、「よいテスト」の作り方について詳しく見ていきましょう。

2-1. 作成フェーズ1:テストの目的(何をどのような基準で測るのか)を決める

テストの作成において最も重要なのがこの「テストの目的」を決めることです。
端的には、「学習内容の理解度を確認すること」が主な目的ですが、その理解度の広さや深さは、テストと対を成す学習教材の目的に応じて変わります。
以下の3点について確認しましょう。

① テストと対を成す「学習教材」の目的は何か?
② 学習教材を踏まえたテストの目的は何か?
③ 受講者の理解度を測る基準は?

具体的なケースで見ていきましょう。

ケース

Z社は、コンシューマー向けの商品を製造し直営店を通じて販売しています。毎月のように新商品を発売していますが、「店頭に立つパート・アルバイトスタッフに新商品に関する知識をタイムリーに提供できない」ことが課題でした。メールにPDFファイルを添付して情報(新商品の特徴、顧客ターゲット、接客トークの見本等)を提供していましたが、本当に店舗スタッフがその情報を確認しているのか分かりません。

そこでeラーニングによる商品知識の提供を開始することにしました。eラーニングであれば受講履歴を使って、スタッフが新商品の情報を確認したかどうかを把握できるほか、テストの点数で理解度を確認することができるからです。

続いて、目的と基準を整理します。

① このケースにおける学習教材の目的は?
このケースにおける学習教材の目的は、「店舗スタッフが新商品に関する知識を獲得し、顧客に分かりやすく説明できるようになる」ことです。

② 学習教材を踏まえたテストの目的は?
学習教材の目的である「店舗スタッフが新商品に関する知識を獲得し、顧客に分かりやすく説明できるようになる」の達成状況を確認することがテストの目的となります。

③ テスト問題作成の基準は?
テスト問題を作成するにあたっては、出題の範囲、深度、難易度などに基準を設けておく必要があります。例えばこのケースの学習目的は「店舗スタッフが新商品に関する知識を獲得し、顧客に分かりやすく説明できるようになる」ですが、「説明できる」には様々なレベルがありえるでしょう。

対象がシフト勤務かつ大人数のパート・アルバイトスタッフであることを考えると、この教育施策では限られた時間の中で最大限の効果を引き出すことが重要になります。よって、商品の特徴について細かなスペックまで覚える必要はないでしょう。新商品について最低限必要な知識を習得できたか、また、主な接客トークのパターンを把握できたか、が確認すべきポイントになります。このポイントを前提に、問題の作成基準を設定すればよいのです。

2-2. 作成フェーズ2:テストの仕様(種類、出題形式、解説の有無、合格基準など)を決める

テストの目的が固まったら、その目的を達成するために必要となるテストの仕様を検討します。検討すべき主な仕様としては以下があります。

① テストの種類
② テストの出題形式
③ 解説の要否
④ 合格基準

1つずつ見ていきましょう。

① テストの種類
テストにはこの表にあるように、いくつかの種類があります。目的に応じて最適な種類を選びましょう。


(図表)テストの種類

② テストの出題形式
出題形式としては、「択一式」「複数選択式」「○×式」などが一般的に利用されています。問題の内容にもよりますが、難易度のレベルはおおむね以下のようになります。

「○×式」<「択一式」<「複数選択式」

受講者の理解度をより厳密に測りたい場合は、「○×式」よりも「択一式」、「択一式」よりも「複数選択式」を選ぶとよいでしょう。

さらに難易度をアップさせる方法として「ランダム出題」があります。これは、テストを実施するたびに問題の出題順を変えるというものです。このほか、選択肢の順番を変える「選択肢シャッフル」もあります。

なお、択一式の変形タイプに「プルダウン式」があります。また、解答を文章で記載させる記述式もあります。この記述式に関しては、テスト実施後の採点が難しいことを理解しておきましょう。

③ 解説の要否
採点後に解説を出すか出さないかを決める必要があります。

・解説がないパターン
学習教材の内容について単純に問う問題については解説は不要です。なぜなら、合格基準を下回る点数しか取れなかった場合には、知識があやふやな部分についてもう一度学習してから確認テストを受けたほうがより高い学習効果が見込めるからです。

・解説がある場合パターン
演習形式(ケーススタディ)の問題の場合には、基本的に解説をつけます。ケーススタディは、学習教材で学んだ知識を織り込んだ応用問題なので、なぜその解答になるのか分かり難いことがあるからです。応用的な考え方を身に付けてもらうためにも、解説は有効です。
この場合、テストは単に「測るもの」ではなく、それ自体に「学び」の要素が含まれることになります。

④ 合格基準
テストには合格基準を設けるのが一般的ですが、その基準は、学習内容や学習目的に応じて調整する必要があります。下記の例のように、100%の得点率とする場合もあります。

例)
受講者全員に必要最低限の知識を習得させたい場合には 70%
一定の水準をクリアしていれば問題ない場合は 80%
情報セキュリティのように、完璧な対応が求められる場合は 100% など

2-3. 作成フェーズ3:仕様に合わせて原稿を作成する

次は、確定した仕様に則った原稿の作成です。注意すべきポイントは以下になります。

① 設問文の仕様統一
② 文章の調子を整える

① 設問文の仕様統一
設問文の仕様はできるだけ統一するようにしましょう。仕様が複数あると、学習者にストレスを与え、解答作業に集中できなくなる可能性があるからです。以下の、不適切な例と適切な例を確認してください。

<不適切な例(複数の仕様が混在している)>
(a)正しいものはどれでしょうか?
(b)間違っているものはどれでしょうか?
(c)適切なものはどれでしょうか?
(d)適切でないものはどれでしょうか?

<適切な例(仕様がある程度統一されている)>
(a)正しいものはどれでしょうか?
(b)間違っているものはどれでしょうか?
(c)正しいものはどれでしょうか?
(d)間違っているものはどれでしょうか?

適切な例のほうが、解答時にストレスが少ないことは明らかでしょう。

② 文章の調子を整える
テストの原稿は「です・ます」調、または「だ・ある」調で作成します。どちらがよいというわけではありません。気をつけたいのは、2つの調子が1つの文章内に混在しないようにすることです。
この場合も、学習者に不要なストレスを与えてしまいます。例えば以下のような文章です。

<不適切な例(2つの調子が混在)>
設問文の仕様はできるだけ統一するようにしましょう。仕様が複数あると、学習者にストレスを与え、解答作業に集中できなくなる可能性があるからだ。

<適切な例(1つの調子で記載)>
設問文の仕様はできるだけ統一するようにしましょう。仕様が複数あると、学習者にストレスを与え、解答作業に集中できなくなる可能性があるからです。

適切な例のほうがスムーズに読むことができると思います。

2-4. 作成フェーズ4:教材化する

原稿が完成したら、教材化します。ここでは、教材作成ツールを使った教材制作手順について簡単に説明します。

まず、教材作成ツールに取り込むためのファイルフォーマットに準拠した原稿を作成します。以下は当社の教材作成ツールにテスト原稿を取り込むために使用するExcelファイル画面の一部です。


参考)「教材コーチ君©」の原稿作成例

このファイル(原稿)を教材作成ツールに取り込んで作成した教材のイメージは以下のようになります。


参考)「教材コーチ君©」で作成したテストイメージ

このように、教材作成ツールに対応したファイル(原稿)さえ作成すれば、テストの作成は短時間(数分程度)で実施することができます。また、改訂作業も容易になります。

2-5. 作成フェーズ5:テスト結果を分析して改善する

作成した教材をLMSに搭載して運用(受講)しますが、やりっぱなしでは意味がありません。テスト結果の分析や学習者へのアンケート結果をもとに次の施策作りに取り組むこと、あるいはテスト自体の改善に取り組むことが大切です。分析のポイントとしては以下があります。

  • テストの目的を達成することができたか
  • テスト問題と学習者のレベルは合っていたか
  • 合格基準は適切だったか
  • 学習者はストレスを感じていなかったか etc.

このような分析と改善の継続的な実施がテストの品質、さらにはeラーニングを活用した教育研修の品質を高め、学習者の満足度の向上につながります。

2-6. まとめ

テストの作成方法を解説しましたが、新たな発見などはあったでしょうか?
簡単に振り返ってみましょう。

「よいテスト」とは、以下の項目を満たしたテストのことです。

  • テストの実施目的が明確である
  • テスト問題に妥当性・信頼性がある
  • ストレスなく解答できる

特に「実施目的の明確化」が重要です。なぜなら、この目的に沿う形でテストの仕様や合格基準などが決められるからです。テストを作成するにあたっては、「何のためにこのテストを作成するのか」を検討することから始めましょう。目的が明確になったら、テスト作成に携わる関係者全員に確認した上で開発を開始します。

実施目的に応じてテストの仕様を固め、原稿を作成していくことになりますが、ここでのポイントは、必ず「学習範囲の中から出題する」ということです。これはテスト問題の妥当性・信頼性を確保するために欠かせない視点です。

実際の原稿作成においては、「学習者に無用なストレスを与えない」ことを意識しましょう。具体的な取り組みとして、「設問文の仕様を統一する」「文章の調子を整える」「シンプルな文章で問い掛ける」などがあります。ちょっとした配慮が、テストに対する学習者の評価を高めることにつながります。

テストは、実施したら終わりではありません。テスト結果や学習者の声(評価)を分析して次の施策、あるいはテストの改善につなげていく必要があります。そのためにも、テスト作成の担当者は、学習教材の内容に精通することが求められます。

テスト作りは大変ですが、目的を明確にした上で、手順を踏んで制作すればそんなに難しくはありません。この記事を参考にテスト作りに挑戦してみてください。

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