絶対に失敗しないeラーニングの選び方 選定基準は6W1Hで整理する

意思決定の際、意識するしないにかかわらず、必ず作用している重要な要素は何でしょう?

答えは「基準」です。 

何かを決める時は、必ず何かしらの条件や指標に照らして、比較なり評価なりを行なっているものです。その条件や指標が自分にとっての「基準」です。 

例えば、歯医者の選び方を想像してみましょう。「歯医者 地名 評判」というキーワードで検索をしてみたとします。結果、画面には打ち込んだキーワードに関する情報が出て来るわけですが、最終的に全員が同じ歯医者を選ぶでしょうか。恐らく違うと思います。

eラーニングも同じです。調査は重要ですが、漫然とWeb検索をしてみても、表示される情報を自社なりに評価できなければ、教材やシステムはなかなか絞り込めません。

また、新システムの導入にあたっては、コストや納期、導入・運用の手間、社内調整など、心配事がたくさんあります。ともすると、本来の導入目的よりも短期的なトラブル対策に集中してしまい、導入後に機能不足や運用上の問題点に気付いて事態の収拾に追われる、などということになりかねません。

では、eラーニングを選ぶときにはどんな基準を持っておけばよいのでしょうか。
本稿では、eラーニングの選定段階で検討しておくべき事項について解説します。
6W1Hで整理しましたので、一つずつみていきましょう。

1.eラーニングの利用目的を明確にする(Why)

まずは利用目的を明確にしておくことが重要です。
eラーニングの導入検討を始めた動機が教育コストの削減だとしても、eラーニング自体の運用目的を明確にしておかなければ、導入後に仕組みが形骸化してしまう恐れがあります。導入により一時的にコスト削減に成功しても、教育効果が得られず施策としての価値が失われれば、その時点でかけているコストも無駄ということになってしまいかねません。

何のためにeラーニングを導入するのか。eラーニングを使って何をしたいのか。どうなれば目的が達成されたといえるのか。こうしたことをよく検討しておきましょう。その際、自社の経営目標や課題を基点にして考えると、現実的かつ合理性のある利用目的が見えてきます。

例を見てみましょう。

もし、人材育成そのものが経営課題であるなら、教育施策が関与できることは明確です。eラーニングの利用目的は、求められる人材育成の支援となるでしょう。

 

経営課題が教育と直接的に関係ない場合は、人事部としてのミッションや打ち出した施策に対し、どのようにeラーニングを利用することができるか検討します。コンプライアンスや情報セキュリティなど、従業員の知識獲得が直接成果に結びつく場合は、利用目的も明確にしやすいでしょう。

教育を通じて、教育以外の価値創造を目指す場合は、ミッションに対する施策を具体化して行き、どのステップでeラーニングを利用するか、明確にしておきましょう。

そもそも、eラーニングの導入が検討されるということは、経営課題上何らかの必要性が生じているものと考えられます。よって、上記の作業は裏付けに近いものになりますが、ここを改めて押さえておかないと、施策に説得力を持たせられません。

導入担当者は、起案や他部署への説明に備える意味でも、自社の課題とeラーニングの利用目的をつなぐ絵を描き、きちんと説明できるようにしておくことが重要です。

2. 教育施策の対象者を確認する(Whom)

教育施策の対象者は、eラーニングの利用者にあたります。
全社員かもしれませんし、特定の部門または階層の従業員かもしれません。正社員だけなのか、非正規雇用のスタッフも含むのか、なるべく明確にしておきましょう。

というのも、eラーニングを運用する際は、通常、LMS(Learning Management System, 学習管理システム)にユーザ情報を登録し、IDとパスワードを発行します。LMS上で、ユーザIDとeラーニング教材を結びつけることで、教材の配信や受講者の学習履歴の管理が可能となるのです。

よって、eラーニングを利用するにあたっては、ユーザIDがあらゆる情報の中心となります。ユーザの基本情報としては、氏名、生年月日、所属組織、職種、雇用形態、入社年次等が考えられるでしょう。

これらの情報は、個々の教材の受講対象者を検討したり、学習履歴を分析したりする際に役立ちます。例えば、特定の部門の特定の雇用形態のスタッフだけに配信したい、入社3年目の従業員の学習の進捗状況を確認したい、といった例がありえます。

eラーニングの導入検討の段階で、登録すべきユーザを明確にし、属性情報を含めたリストの作成または入手方法を想定しておくと、実際の導入段階で慌てずに済みます。

3. 教材コンテンツを用意する(What)

次に注目すべきは、教材です。
上述のように、経営課題と教育内容(科目)を結び付けやすい場合もありますし、そうでない場合もあるでしょう。集合研修を置き換える場合は、投影スライド等の既存の研修資料を活用したいと考えるかもしれません。

教材については準備の仕方が4パターンあるので、確認しておきましょう。

(1)既製品を購入する
巷のeラーニング事業者が制作・販売している教材を導入する方法です。大抵の場合、教材コンテンツを物理的に購入するのはなく、ライセンス販売の形を取ります。学習内容は自由に決められませんが、逆に言えば、標準的で一般的な内容を受講者に提供できることになります。

(2)既製品をカスタマイズする
1の既製教材に、自社で取り扱いたい内容を追加したり、不要な内容をカットしたりする方法です。よくある例としては、教材内に含まれているケーススタディの入れ替えが挙げられます。学習内容は一般的なものでも、具体的なケースを元に考えるシーンでは、自社のビジネスに関係する内容を採用し、実践的な学びにつなげたいというのが主な理由です。また、コンプライアンスやハラスメントを扱う教材では、ケースの内容を過去の実例に差し替えて、リアリティを持たせ、危機意識の強化につなげたいという例もみられます。

(3)教材をオーダーメイドする
教材を一からオーダーメイドする方法です。この場合、教育担当者とeラーニング事業者で打ち合わせを行い、教材の設計を行うところから始まります。学習内容はもちろんのこと、イラストのテイストやナレーションの有無、ナレーターの雰囲気、テストの難易度等も相談しながら決められるので、細部に至るまで思い通りの教材を作り上げることができます。
ただし、その分コストと期間がかかります。

(4)教材を自社で制作する
昨今、eラーニングを活用している企業では、教材コンテンツの作成ツールを導入するところが増えています。これは、PowerPoint等のアプリケーションソフトで一定のフォーマットに沿って作った教材を、eラーニングとして配信できる形に変換するものです。
オーダーメイドの教材と比べると簡素な作りの教材になりますが、自社の体制さえ整っていれば、コストをかけずに、短期間でeラーニング教材を作ることができるので、以下のようなニーズに適しています。

  • 集合研修の既存教材をeラーニング化したい
  • マニュアルをeラーニング化したい
  • 部門単位で教材を作れるようにしたい
  • システムの導入後に自分たちでラインナップを増やしたい
  • 教材の内容を随時更新したい 

このように、教材の準備の仕方は様々です。eラーニングの利用目的に鑑みて、どのパターンを採用するのが良さそうか、検討しておくとよいでしょう。

4. システムの利用方法と端末を確認する(Where)

eラーニングを利用するには、LMSを置いておくサーバーが必要です。外部通信が可能な環境であれば、eラーニング事業者のサーバー上のLMSをクラウドサービスで利用することができます。一方、受講者のアクセス先が社内のイントラネットに限られる場合は、自社のサーバー上にLMSをインストールする必要があります(オンプレミス)。

自社の場合いずれの方法がよいか、事前に情報セキュリティ部門に相談し、検討しておくと良いでしょう。

配信方法の次に検討が必要なのは、受信方法(端末)です。想定される端末としては、従業員に会社から支給されているパソコン、タブレット、スマートフォンなどが考えられます。個人が所有している端末を考慮に入れる必要が生じる場合もあるでしょう。

クラウドサービスを利用する場合と、社内に閉じられたイントラネットを利用する場合では、eラーニングを利用できる場所や端末が異なります。また、社外での受講を可とするか不可とするかといった判断によっても、利用できる端末は変わってくるでしょう。

端末への対応状況は、eラーニングの教材コンテンツやLMSによって異なります。利用したい端末を明確にし、それに対応している教材やLMSを選ぶ必要があるのです。

また、会社のセキュリティポリシーや教材の内容の秘匿性により、eラーニングの利用にアクセス制限をかける必要が出てくる場合もあります。このあたりについても、事業者に相談ができるよう、整理しておくとよいでしょう。

5. 利用開始時期を想定する(When)

eラーニングは、明日からポンと始められるものではありません。導入に際してはおおまかに以下のような準備が必要です。

  • LMSのセットアップ
  • 教材の準備、登録
  • ユーザの登録
  • 公開設定
  • 運用テスト
  • マニュアル準備
  • 社内告知

意思決定と契約締結後、事業者の支援を受けつつこれらのステップを進める必要があります。運用の規模や要件によりますが、準備に必要な期間としてクラウドサービスの場合は1~3ヶ月、オンプレミスの場合はそれ以上を見込んでおきましょう。教育施策を開始する時期から逆算して、システムを選定し、契約を結ぶ必要があるということになります。

6. 管理・運用体制を整備する(Who)

前項で挙げたeラーニングの導入ステップの遂行とその後の運用のためには、しっかりとした管理・運用体制が必要です。部門を横断したタスクチームを作り、安定した運用と着実な教育施策の実施を目指しましょう。

なお、導入、運用、万が一のトラブル対応、いずれにおいても、事業者のサポートは欠かせません。担当営業へのアクセス、運用相談窓口の活用、場合によっては運用代行サービスの利用など、自社の事情に応じて最適なサポートを受けられるよう、事前に運用体制の全体像を整理し、タスクチーム内で共有しておきましょう。

7. 学習履歴の活用方法をイメージする(How)

eラーニングの選定段階で意外と見過ごされがちなのが、将来的に生まれる学習履歴の存在です。

学習履歴は、LMSに登録されているユーザIDに紐付く形でサーバーに保存されるログ情報です。LMSの管理者は、そのユーザが、いつ、どの教材のどのパートを受講したのか。テストを受けた場合は何点取得し、合格したのか、不合格だったのか。このような情報を随時確認することができます。

eラーニングの選定段階では、教育施策の開始、すなわちeラーニングの配信を開始することに集中しがちなので、無理もありません。でも、中長期的に考えた場合、eラーニングを利用した教育施策においてはこの学習履歴が非常に重要な情報となります。

具体的なイメージを持っていただくために、学習履歴の活用例を見てみましょう。

「教育のエビデンス」として
学習履歴は、会社が従業員にどのような教育を提供し、誰が実際に受けたか、というエビデンスになります。例えばコンプライアンス教育や情報セキュリティ教育、派遣法で定められている派遣スタッフの法定教育等、対外的に実施状況を報告・公表する必要がある場合、LMSに記録される学習履歴は定量データとして役立ちます。

従業員の能力の把握のために
特にテストを行った場合、その成績を確認することで、当該従業員が有する知識や能力を確認することができます。教材の作りにもよりますが、テストの点数だけでなく、個々の設問の採点結果や回答内容も確認することができるので、理解が不足している分野の確認や、回答の傾向等を把握することができます。
これらのデータを、個人<チーム<部門と集計していくことで、全体的な苦手分野の特定や、次の施策で強化すべきポイントの確認が可能になります。

進捗管理のために
あるeラーニングを1ヶ月間100人に公開したとします。この場合、日が経つにつれて、着手状況や進捗状況にバラツキが生じてくるでしょう。学習履歴を定期的に確認することで、ゴール(全員修了)に対して全体の受講状況がどのように推移しているか、把握することができます。

例えば、1週間目は100人中50人が受講を開始し、更にそのうち10人が進捗率100%、すなわちその教材を修了しました。2週目になると、受講開始は80人に、修了者は30人に増えました。このタイミングで、受講を開始していない20人に対し、受講を開始するよう、メールで通達を出すなどの対策が可能です。

これを繰り返すことで、1ヶ月後に100人全員が修了できれば、その教育施策は、ひとまず実施段階としては成功したと言えるでしょう。学習履歴はこのように、結果の確認だけでなく、施策の遂行そのものに役立ちます。

施策の評価、効果検証のために
教育施策の実施段階が終わったら、次に求められるのは評価です。全体の修了率は何パーセントだったか、受講状況はどのように推移したか、そして、この施策を行ったことで得られた効果は何か。効果検証方法の例としては、例えばアンケートの実施が考えられます。(アンケートもLMSで行えます)

学習履歴とアンケートの結果を分析することで、教育の内容はどうだったか、それによって受講者の意識がどのように変わったか、次に求められる施策はどんなものか、確認と検討が可能になります。

また、効果検証の最高峰とされるのは、業績への影響の確認です。施策の内容にもよりますが、例えば販売スタッフに対する商品教育とセールストーク教育を行った場合、個々のスタッフの学習履歴と売上の推移を分析することで、相関が見えてくる可能性があります。

もちろん、スタッフの販売力の向上には現場のOJTや業務フローの改善等も影響しますので、安易にeラーニングだけに評価に結び付けるわけにはいきませんが、一定期間施策を繰り返すことで、だんだん全体の傾向が見えてきます。

実際に、eラーニングによる教育施策を通じて業績をアップさせた事例は存在しますので、こちらについては別の記事でご紹介したいと思います。

このように、学習履歴は、単なる結果確認に留まらず、次回施策の決定や目標の設定、会社の業績や対外的な評価等、未来につながる形で様々に活用できるデータです。eラーニングの選定にあたっては、学習履歴として記録される項目、データの取り出しやすさ、集計のしやすさ等についても注目しましょう。

8. まとめ

いかがでしたか?
eラーニングを選定するにあたって整理しておくべきことを、6W1Hで具体的にまとめてみました。

  1. 利用目的(Why
  2. 教材コンテンツ(What
  3. 利用者(Whom
  4. システムの利用方法、端末(Where
  5. 利用開始時期(When
  6. 管理・運用体制(Who
  7. 学習履歴の活用方法(How

 まず、eラーニングをどのように活用するか、その目的を明確にします。自社の経営目標や課題に対する打ち手として教育施策どのように関与できるか、整理してみるとよいでしょう。

次に、教育施策の対象者を確認します。eラーニングの運用では、教材の配信状況や学習履歴など、あらゆる情報がユーザIDを基点として管理されるので、登録すべきユーザを明確にしておくことが大切です。

教材コンテンツの準備の仕方には、(1)既製品を購入する(2)既製品をカスタマイズする(3)教材をオーダーメイドする(4)教材を自社で制作する、の4パターンがあります。eラーニングの利用目的に鑑みて、検討しておくとよいでしょう。

システムの利用方法には、eラーニング事業者が提供するクラウドサービスを利用する方法と、自社のサーバー上にLMSをインストールし、イントラネットで利用する方法があります。利用可能な端末はシステムの運用方法等によって変わって来るので、要件として整理しておきましょう。

eラーニングの利用を開始するには、準備が必要となります。クラウドサービスの場合は13ヶ月、オンプレミスの場合はそれ以上の導入期間を見込んでおきましょう。
また、導入とその後の運用のために、タスクチームを作り、管理・運用体制を明確にしておくと安心です。事業者から受けられるサポート内容についても、確認するようにしましょう。

運用開始後に生まれる学習履歴は、教育のエビデンスとなるほか、従業員の能力把握や教育施策の進捗管理、効果検証など、様々な目的のために活用できます。eラーニングの選定にあたっては、学習履歴の活用イメージも持っておくとよいでしょう。

自社にとっての選定基準を明確にし、最適なeラーニングを選びましょう。

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