eラーニングを活用した店舗スタッフ教育 効果的な進め方

「店舗スタッフにもっと効果的な教育をしたい」

近年、小売・外食業界は競合他社との競争が激化し、各社で差別化のための施策が日々模索されています。一方で、各社とも労働力の大部分をパートやアルバイトなどの非正規従業員が担っていることもあり、以下のような悩みをよく耳にします。

  • すぐに施策を実践できるレベルにあるスタッフが少ない
  • 施策に必要な教育を通常業務の中で実践する余裕がない
  • 全員に集合研修するのは時間的にもコスト的にも厳しい
  • スタッフの入れ替わりが激しく継続的な施策を実践しにくい

店長やエリアマネージャー(SV)、本部担当者の中には、こうした理由から施策が実践できなかったり、実践に時間がかかったりしている人もいるのではないでしょうか。

本稿では、上記の解決策としてeラーニングを活用した店舗スタッフ教育を提案します。しかし、ただ施策やオペレーションをeラーニングで伝えただけでは、それほどの効果は期待できないかもしれません。重要なのは、スタッフを「当たり前のことができる」レベルから「自分で気づく・改善策を考える」レベルまで引き上げることです。そのためには、教材の中身だけでなく、どのように教育を実施するのかも検討する必要があります。
ぜひ参考にしてください。

1. 店舗教育にeラーニングを活用するメリット

店舗教育にeラーニングを活用するメリットは何でしょうか。現在、大手チェーンをはじめ多くの小売・外食の企業がeラーニングによる店舗教育を実施しています。その理由は、以下のようなメリットが獲得できるためだと考えられます。

  1. 時間と場所を選ばない
  2. 繰り返し利用できる
  3. 教育を均質化できる
  4. 管理を効率化できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

1-1. 時間と場所を選ばない

eラーニング教材は、仕様に準じたパソコンやスマホやタブレットがあり、インターネット環境に問題がなければ、時間と場所の制約を受けずに受講することができます。年中無休や24時間営業の店舗は夜勤や不規則勤務のスタッフもいるので、曜日や昼夜を問わず研修を実施できるのは大きなメリットです。

また、大人数に一斉配信することも可能なので、これまで時間と場所を調整して大人数を集めて研修していた企業は、その手間やコストを大幅に減らすことができます。ある小売チェーンの試算では、同社がeラーニングを用いて始めた教育施策を集合研修で行うと仮定した場合、eラーニングの4倍のコストがかかるといいます。

1-2. 繰り返し利用できる

eラーニングは同じ教材を繰り返し利用することもできるので、何度も再受講させたい、定期的に受講させたい、新人スタッフにも過去に実施した内容を教育させたいといった要望にも容易に応えることができます。人が入れ替わるたびに繰り返し同じことを教えてきた企業や店舗は、eラーニングを使うことで負担を減らすことができるでしょう。

また、eラーニング教材は完成後も簡単に追加や修正ができます。例えば新製品情報やキャンペーン情報などを追加して盛り込みたい場合でも、元の教材を更新するだけでタイムリーに周知することができます。こうした再利用性の高さもeラーニングの良さといえます。

1-3. 教育を均質化できる

集合研修や店舗ごとに教育を実施した場合、どうしても教えた人の資質によってスタッフの理解度にバラつきが発生しがちです。それにより、店舗やスタッフごとにスキルやサービス品質のバラつきが生じ、業績やブランド力にも悪い影響を与えかねません。

その点、eラーニングは全員が同じものを受講するので、教え方の違いによるバラつきをなくし、教育を均質化することができます。

また、全員が同じ教材を受講するので、店舗スタッフが新人やヘルプのスタッフに説明・指示する内容も「人によって言うことが違う」といったことが減り、現場の余計な負担や混乱を減らすことも期待できます。

1-4. 管理を効率化できる

eラーニングはLMS(学習管理システム)を使って学習履歴や成績を一元管理することができます。未受講者や成績をクリアしていない人を抽出して一覧にしたり、自動的に受講を促したりすることもできるので、本部や店長など管理者の負担が大幅に軽減されます。

学習履歴や成績のデータは、研修の管理だけでなく人材の管理にも役立ちます。例えば、誰がどの業務をできるのか、何が得意で、どのようなスキルを持っているかなどを把握できるので、こうした情報を契約更新の評価材料にしたり、人材配置やシフト作成の判断材料にしたりすることもできます。

2. eラーニングを活用した段階的な教育法

近年、「できて当たり前」レベルのサービス提供にとどまっていれば、その店舗のリピート率や客単価はなかなか向上しません。なぜなら、同じような店舗は周囲に数多くあるからです。そのため、競合に勝つためには「お客様の期待以上」のサービスレベルを実現する店舗にする必要があり、それを実現できる店舗スタッフを確保しなければなりません。

しかし、ただでさえ人材の確保が難しい状況の中、最初から高いスキルを持つスタッフを採用することは難しい店舗も多いと思います。そうなると、現在いるスタッフや新人スタッフを育成し、段階的にサービスレベルを引き上げていくことが求められます。

ここでは、スタッフのサービスレベルを上げるためにどのような教育施策を進めたらよいのか、eラーニングの活用方法とともにご紹介します。

2-1. 仕事のゴールを明確にする

店舗教育を実施するうえで「何を教えるか」ばかりを考えがちですが、同時に「どこまでやるのか」仕事のゴールを示すことも大切です。床掃除ひとつを取っても、スタッフ自身が、どの程度やるのか、どの範囲までやるのか分からなければ、自分でゴールを勝手に決め、不十分なのに「問題ない」と考えるようになるかもしれません。

実際、下の表からも分かるように、多くのスタッフは自分の仕事に問題意識を持っていないようです。その状態では、期待以上のサービスレベルを実現することは難しいでしょう。

(図表1)本部と店舗の意識の違い

本部や店長からすると「それくらい見て覚えて」「分からなければ聞けばよい」と思う人もいるかもしれません。しかし、業務未経験の主婦や、初めてアルバイトをする高校生に対して、初めから見て覚えることを期待するのは無理がありますし、誰しも未経験のことについては何が分からないのか自分で気づくのも大変なものです。

従って、まずは本部や店舗が「仕事のゴール」を検討し、スタッフに何を求めるのか、どのように振る舞い、どのような仕事ぶりを目標にすればよいのか、きちんと設定しましょう。そのうえで、そのゴールに到達するために必要な内容を洗い出し、確実に業務が遂行できるように教育プランや教材の中身を設計していくとよいでしょう。

2-2. 当たり前のことができるようになる

店舗教育の最初のステップは、スタッフを「当たり前のことができる」レベルに到達させることです。具体的には、会社や店舗で決めた仕事のやり方や手順を、自分ひとりで確実に遂行できるように教育します。

当然この段階の教育はどの店舗でも行っていると思いますが、教えたことが確実に定着していない、あるいは仕事に生かされていなければ意味がありません。また、一度は覚えたことでも、時間が経つと忘れたり、遂行レベルが低下することもあります。

その点で、eラーニングは正しく理解しているか確認したり、定期的な受講によって継続的な定着を促したりすることができるので、こうした問題の解決策として有効です。

また、「そもそも社会人や接客に携わる立場の者としての基本ができてないスタッフが多い」という話も耳にします。そのため、現在実施している学習項目が十分に足りているか再確認し、必要に応じて基礎トレーニングを強化することも大切です。下の表は各所で多く用いられている基礎トレーニング体系の大枠ですので、ぜひ参考にしてみてください。


(図表2)基礎トレーニングの体系

2-3. 気づくことができるようになる

店舗スタッフ教育の第2段階は、「当たり前のことができる」ようになったスタッフから「気づくことができる」スタッフに育てることです。

「期待以上」のサービスレベルを実現するためには、マニュアルに記載されていることだけでは十分ではありません。お客様が何を求めているのか、不快に思っていないかなどを察知し、先回りして適切な行動を実践してこそ、お客様の期待を超えることになるはずです。

「気づくかどうかは性格的なもので、トレーニングするものではない」という意見もあるかもしれません。しかしトレーニングにより、気づくことの重要性を教えたり習慣付けたりする一助にすることは可能です。

例えば、ある飲食チェーンではeラーニングを活用してシミュレーション形式の接客トレーニングを実施し、気づくべきポイントや的確に対応する重要性をスタッフに理解させるようにしています。


(図表3)シミュレーション形式の接客トレーニング

そのeラーニング教材では、実際の店舗での接客シーンを想定した上図のパターンを何度か繰り返します。すると自分が選択した内容によって状況が変わっていくことを体験でき、これによってお客様を洞察するポイントや重要性が学習できる仕組みになっています。

また、デジタルコンテンツ上だけでなく、さらに同様のシミュレーション形式のトレーニングを実地訓練する方式も各所で用いられています。

2-4. 改善提案ができるようになる

「期待以上」のサービスを実現する店舗になるためには、「気づくことができる」スタッフが能動的にサービスを実施できるようになる必要があります。

例えば、高いリピート率を誇るディズニーランドで働くスタッフたちは、お客様に気づいて行動するとともに、従来の仕事に対してさまざまな提案をしていることで知られています。そうしたスタッフの自発的な行動が、今までにない(=お客様の期待を上回る)サービスを生み出すことにつながっています。

そのようなスタッフを育てるためには、コミュニケーション能力や企画力、提案力などのスキルも必要ですが、本人に「意欲」がないことには始まりません。改善提案は「もっと良い店にしたい」「もっと良いサービスをしたい」という気持ちがあって初めて生まれるものです。いくら高いスキルを持っていても、いくら上から意見を求められても、本人にその気(意欲)がなければ何も変えようとは思わないでしょう。

従って、店舗のサービスレベルを上げるためには、スタッフのスキルと意欲の両方を高める必要があります。

では、どのようにすればスタッフの意欲を引き出すことができるのでしょうか。そのヒントとなりそうなのが下のグラフです。

(図表4)意欲を引き出す方法

このグラフで興味深いのが、給与などの条件面より「理念やビジョン、目標の浸透」が圧倒的に多い点です。この結果は、パートやアルバイトという就業形態であっても自分の店舗や会社のために働く意義や楽しみ、喜びを共有できれば就業意欲向上につながることを示唆しています。

実際、先ほど例示したディズニーランドでも、あらゆるスタッフに対して「理念やビジョン、目標の浸透」を行っていることで有名です。つまり、意欲を引き出すのは金銭よりもビジョンなのです。

それでは「理念やビジョン、目標の浸透」はどのすれば可能になるのでしょうか。大事なことは、会社や店舗が自分たちのためだけでなく、お客様や周辺地域のためにも存在し、良好な関係を築いていくことこそが存在意義であることを理解してもらうことです。

そのためには、例えば以下の要素を含んだコンテンツを整備して、eラーニングなどを活用して全員に周知する必要があります。

  • トップからのメッセージ
  • ミッションステートメント
  • お客様との関わり
  • 社会や地域との関わり
  • スタッフとしての行動規範

これらを繰り返し伝えて常日頃から意識できるようにすることで、店舗や会社についてさまざまな角度から理解し、働く意義や楽しみ、喜びを共有していきましょう。

3. まとめ

近年、「小売・外食業界は競合他社との競争が激化し、競合に勝つためには「できて当たり前」のサービスレベルから脱却し、「お客様の期待以上」のサービスレベルを実現する店舗になる必要があり、それを実現できる店舗スタッフを育成しなければなりません。

本稿では、そのための店舗教育の手段としてeラーニングを活用した段階的な育成法を提案しました。eラーニングを活用するメリットは大きく分けて以下の4つになります。

  • 時間と場所を選ばない
  • 繰り返し利用できる
  • 教育を均質化できる
  • 管理を効率化できる

さらに、上記の特性を踏まえたうえで、eラーニングを活用した段階的な教育法として、次の4つのステップについて説明しました

  • 仕事のゴールを明確にする
  • 当たり前のことができるようになる
  • 気づくことができるようになる
  • 改善提案ができるようになる

「できて当たり前」レベルから「お客様の期待以上」の店舗に進化するには、スタッフのスキルと意欲の双方を高めることが不可欠です。本稿を参考に、ぜひ自社・自店舗でも店舗スタッフ教育のあり方を検討してみてください。

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