【絵コンテサンプル付き】動画時代のeラーニング 企画から編集まで

「従業員教育に動画を使いたい。ちょっとした撮影なら自分達でできそうだが、撮った動画をどうやって教材にすればいいんだろう?」

ここ10年のネットワーク速度の飛躍的な向上もあり、私たちが動画に接する機会は増えました。

YouTubeをはじめとした動画コンテンツの配信プラットフォームも増え、ネット広告も動画で制作されたものが増えてきています。インターネットで動画を目にしない日はないのではないかと言えるくらい、さまざまな分野において動画の活用が一般的となっています。

出典)総務省『平成27年版情報通信白書 第2部 ICTが拓く未来社会)』[ⅰ]

この傾向は、企業の人材育成の場においても顕著です。ただ、目的はエンターテインメントではなく「教育」。撮影自体は社内でできても、それをどのように料理して教材化し、また配信すればよいのか。この方法論に悩む教育担当の方は多いのではないでしょうか。

逆に言うと、この問題を突破できれば、自社で動画教材を作って自由に配信することができ、低コストかつスピーディーに教育を提供できるようになります。

そこで本稿では、eラーニングと動画の関係と、教育用の動画の作り方を解説します。ぜひ参考にしてください。

1 . 動画時代のeラーニング

昨今、企業のeラーニング現場では、教材コンテンツの一部に動画を使ったり、教材そのものを一本の動画で制作する例が増えています。当社のLMS「Careership®」のクラウドサービスの状況を見ても、登録されている教材の約40%が動画を利用したものとなっており、この値は年々増加する傾向にあります。

具体的なデータを見てみましょう。

以下は、当社の動画サーバーから配信された動画のデータ転送量を 、2014年4月を100として比較したものです。ご覧の通り、3年半で6.3倍となり、今後も需要は増加の一途をたどると予想されます。

(図表)当社のeラーニングサービスにおける動画データの転送量

このように、今や動画を使ったeラーニング教材は珍しくありません。各社が、自社のオリジナル教材を動画で作成し、従業員に配信しています。では、それはどのような内容の動画でしょうか?お客様とコミュニケーションをしてみると、以下のような動画が多いようです。

  1. 集合研修を撮影した動画
  2. 配信用に講義を撮影した動画
  3. 営業マンや店舗スタッフ向けに自社の商品・サービスを説明する動画
  4. 具体的な作業や体の動きを伝えるためのマニュアル動画
  5. 社長や経営幹部から従業員に向けたメッセージ動画

それぞれ詳しく見ていきましょう。

① 集合研修を撮影した動画
こちらは、ある意味「集合研修のeラーニングへの置き換え」の一種ですが、基本的には集合研修、またはそれと同等の内容を撮影したものが多いようです。つまり、eラーニングとしての再設計は行われていないということです。
何らかの事情で集合研修に出席できなかった方や、集合研修の内容の振り返りのために活用されているようです。

② 配信用に講義を撮影した動画
動画で配信することを前提として撮影された講義です。放送大学のように、講師がスライドを示しながら内容を解説します。話し手はプロの講師のこともありますし、社内の教育担当者やその他、教育するテーマの専門スタッフなどのこともあります。

③ 営業マンや店舗スタッフ向けに自社の商品・サービスを説明する動画
これは②と似ているのですが、目的が「営業力や販売力の強化」に集約されている点が異なります。新商品やサービスがリリースされるタイミングで、その特徴やラインナップ、差別化ポイントなどを説明する動画を作り、営業マンや店舗のスタッフに見てもらい、売り上げの向上を目指します。

④ 具体的な作業や体の動きを伝えるためのマニュアル動画
文章と写真・イラストだけでは伝えにくい内容を、映像で説明するものです。製造ライン上の作業の仕方や品質チェックの仕方、調理方法、機材の使い方など、手元の繊細な動きを伝えることができます。
また、接客の基本動作やお客様とのコミュニケーションの仕方をいくつかのパターンで撮影し、ロールプレイに活用している企業、メガネ型デバイスの内蔵カメラで作業シーンを撮影し、作業者の目線を再現するといった工夫をしている企業もみられます。
音声がなくても、動作だけで伝えられる内容なら、外国人スタッフ向けの教材としても活用できますので、活用の幅は広いといえるでしょう。

⑤ 社長や経営幹部から従業員に向けたメッセージ動画
これは教育コンテンツというわけではありませんが、経営トップのメッセージを全社員に届けるために活用されているものです。
例えば、年頭や期初の社長挨拶をコンテンツとして配信する例があります。国内なら遠隔地であってもライブ配信が可能ですが、海外拠点が多い場合は時差の関係でライブ配信が難しくなります。動画をeラーニングとして配信することで、個人が任意の時間に見ることができます。
また、不祥事があった場合の会社としての方針説明や従業員の意識強化、経営課題の共有などに活用される例もあります。経営トップ層のメッセージを組織の末端まで届けることで、意識改革やモチベーションの喚起につなげることが狙いです。

このように、eラーニングにおける動画の活用方法はさまざまです。日常生活でも動画が大変身近になっているので、動画という手法自体については社内でももう違和感はあまりないのではないでしょうか。

とはいえ、テーマは何であれ、動画でありさえすればよいということでもありません。動画に接する機会が増え、動画自体が珍しくなくなった分、ユーザー(受講者)の目も肥えてきています。一般的に、視聴者はよりイージーに見られるものを求める傾向にあります。つまらなかったり、分かりづらかったりするコンテンツは見てもらえません。

eラーニングにおいても、「飽きずに最後までしっかり見てもらえること」が動画を作る際の重要なポイントになっています。とはいえ、エンターテインメントではないので「面白い」「笑える」という要素はなかなか追究しにくいところです。代わって、教材としての分かりやすさ、学習効果の高さがポイントになってきます。

そこで、次の章では、どうしたら分かりやすく学習効果のある動画が作れるのか、その制作方法について、工程に沿って見ていきましょう。

2. 学習効果の高い動画の作り方

動画の主な制作工程は、企画→絵コンテ・脚本作成→ロケハン・撮影→編集→圧縮となります。


(図表)動画の制作工程

動画の制作=撮影と思われるかもしれませんが、実はその前後に大切な工程が二つずつあるのです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。

2-1. 企画

どんなものにも言えますが、企画がしっかりしていないとすべてがダメになります。誰を対象とするのか、訴えたいテーマは何か、などを明確に決めておく必要があります。テーマによっては動画に向かないものもありますので、検討を経て諦めるということもこの段階でありえるでしょう。

なお、1章の冒頭で述べたように、eラーニングの教材に動画を使用する場合は、教材コンテンツの一部として使うのか、教材そのものを一本の動画で作るのか、二種類のパターンがあります。後者の場合は全てのストーリーを動画だけで完結すればよいわけですが、前者の場合は教材全体の設計との調整が必要になります。

例えば、基本的には文章とイラストを使ったスライドで学習し、必要なシーンだけ動画を見る、という設計の教材を作る場合、動画の中で使われる用語やナレーションのトーンなどをスライドパートと合わせる必要があるわけです。

このあたりは動画云々というよりeラーニング教材そのものの作り方に関わってきます。教材の作り方については別記事「【仕様書サンプル付き】失敗しないeラーニング 教材の作り方 」にまとめていますので、ぜひそちらをご参照ください。

2-2. 絵コンテ(ストーリーボード)・脚本作成

どういった内容の動画を撮影するか、カメラマンや出演者などに理解してもらうために、絵コンテや脚本を用意します。

絵コンテは、画面のレイアウトや出演者の動作、セリフなどを記載したもので、撮影の進行や撮影後の編集に利用します。ストーリーボードとも言われます。脚本は、セリフや演技の指示などが書かれたもので、主に出演者が利用します。

芝居までするような映像は撮らないにしても、簡単な絵コンテだけは用意しておくとよいでしょう。どういった映像にするかを決め、事前に関係者間で共有しておいた方が、撮影当日の運びがスムーズになります。

例えば以下の絵コンテは、エンジンオイルの役割について説明する動画教材を作った際に実際に使ったものです。新人スタッフに講師が解説をするという内容になっています。この例では、後から背景にクロマキー(映像合成技術の一種)を使い、 CGアニメのキャラクターを入れることになっていたので、出演者の視線や体の動きなどドラマでいう「演出」が必要でした。

キャラクター使用までいかずとも、学習のポイントをテロップで出したり、二人以上の登場人物が掛け合いをするような設定の場合には、必要な演出を事前に検討しておきましょう。そうすることで、後の編集工程が進めやすくなります。

ちなみに、この絵コンテを制作したときにポイントとしたのは、受講者の視線を講師の顔よりも講師が指し示す図やチャートに持っていくことでした。

講義型の動画では、講師の顔ばかりが映っていると受講者がすぐに飽きてしまいます。東進ハイスクールの林修先生のような際立ったキャラクターの方なら話は別ですが、一般の、または社内の講師の方の場合は、受講者を飽きさせないための工夫、つまり演出を意識するようにしましょう。

なお、映像だけで内容をすべて理解してもらう必要がある場合は、もっと詳細な絵コンテが必要なります。究極的な例は、「タイタニック」で有名な映画監督のジェームス・キャメロン。彼はまるで絵画のようなストーリーボードを描くことで有名です。「タイタニック 絵コンテ」で検索してみてください。映画の中の該当シーンがすぐに頭の中に蘇ってきます。

また、教育的な内容でも、ドラマ仕立てのものを作成することがあります。この場合、脚本もしっかり作る必要があります。訴えたいものは何かを出演者にしっかり理解してもらえるようにト書き(脚本上の演出)はしっかり作成しましょう。

2-3. ロケハン・撮影

ロケは「ロケーション撮影」つまり「現場での撮影」のこと、ロケハンは「ロケーション・ハンティング」の略で、事前に撮影現場をチェックしておくことです。撮影はロケ以外にスタジオ撮影がありますが、いずれにしてもロケハンは必須です。

事前に関係者が 現場を見て出演者や機材の配置などをイメージしておかないと、効率が悪くなるからです。主なチェックポイントには以下のようなものがあります。


(図表)ロケハンのチェックポイント

上記のうち、特に照明が重要です。素人が撮影すると、とかく暗くなりがちです。「照明1つで画質の良し悪しが決まる」と言っても過言ではありません。十分な光を当てられるよう、照明器具を用意しておくことをおすすめします。

また、カメラの配置についてですが、複数のアングルで撮影しておくと、メインカメラで撮影した映像に何らかの問題があった場合の保険になりますし、編集にも活用できるので、サブカメラを配置するようにしましょう。

あまり思い出したくないのですが、一台のカメラで撮影した動画にNG映像しかなかった、という経験が何度かあります。その場合、涙を飲んでNG映像を駆使するか、調整が付くのであれば再撮影するしかないわけですが、事前からメインとサブのカメラを用意し、複数の映像を撮っておけば、ある程度代用が効くわけです。

最近はスマホでも4K動画が取れる時代ですから、カメラ機材にそれほどお金をかける必要はないでしょう。それよりも、一定の台数を確保し、複数のアングルで撮影しておくことをお勧めします。

撮影した映像について、後から気付いて意外と気になるのは影の存在です。映像の中に撮影スタッフの影が入っている、出演者の影が濃くて気になるなど。これは小手先の編集ではどうにもなりません。

これを回避するための一番のポイントは、リハーサルの実施です。 スタッフの影が映像に入らないように、また、照明を加減するために、撮影前に必ずリハーサルを実施しましょう。

2-4. 編集

動画は撮影したら即完成、とはいきません。受講者は、孫の運動会の映像を1コマも逃さず見るおじいちゃん、おばあちゃんでありません。NG場面はもちろん、不要な部分は極力そぎ落とす必要があります。

また、複数のアングルから撮った映像をニュースのように切り替えて見せると、受講者の集中力を持続させる効果があります。

例えば、2008年までTBS系列で放送していた、筑紫哲也さん総合司会のNEWS23。このコーナーでは、あるテーマについて、筑紫哲也さんがカメラに向かって一方的に数分間話すのですが、映像は数秒単位で、筑紫哲也さんの全身、顔の正面、左右といろいろな角度に切り替わります。

これにより、視聴者は一方的に話す筑紫哲也さんの話を、集中力を維持しながら聞くことができました。生放送なのでこれはスイッチャーの技ですが、編集でも複数の映像を切り替えて使うとグッと品質が向上します。

ただし、映像ソースが増えれば増えるほど編集時間が長くなりますので、カメラは1~2台から始めるといいかと思います。

また、編集では、テロップやナレーション付けはもちろん、光や色合いなどの調整も行います。特にテロップは重要です。受講者が動画に慣れてきているとは言え、単に板書映像などを見せられても退屈してしまいます。

少々専門的なお話になりますが、例えば東京学芸大学の丸山氏らは、授業映像に「構成的アプローチ に基づく動画教材作成方法」を基にした 解説を付加したところ、動画の再生時間が10%弱長くなったにも関わらずテストの平均点が30%向上した、と報告しています。[ⅱ]テストの平均点が上がるということは、受講者が集中力を持ってその動画の内容を学習したということになります。

また、東北大学教育情報基盤センターの三石氏は、編集によって重要ポイントなどを強調するなどのマーキング を付加によることにより、授業映像の復習教材としての効果が高まる可能性を示しました[ⅲ]

編集1つで面白くない授業が楽しくなることもあり得るのです。撮影した動画を教材として仕上げるために、ぜひ取り入れてみてください。
編集用ツールとしては、アドビ社のPremierが使いやすく、値段も手ごろです。

2-5. 圧縮

編集が終わった動画は、最終的にはネットワークを使って配信する場合が多いため、ある程度の大きさに圧縮する必要があります。企業向けの一般的な映像サイズは以下の通りです。

  • 画面サイズ :横853ピクセル×高さ480ピクセル 前後
  • ビットレート :500Kbps 前後
  • フレームレート :30

上記の場合、1動画の大きさ(ファイルサイズ)は、おおよそ10分の映像で約38MB程度になります。
ツールはこちらもアドビ社のMedia Encoderがいろいろな形式に変換できるので、お勧めです。

ちなみにYouTubeの場合、以下のような動画に自動で圧縮されます。上記と比べかなり高画質なことが分かります。個人向けならこれでもいいのでしょうが、企業内でこの画質の動画を流したら、たちまちネットワーク管理部門からクレームが出ることでしょう。お気をつけください。


YouTubeヘルプページを元に作成[ⅳ]

3. まとめ

いかがでしたか?
eラーニングと動画の関係、教材用の動画の作り方をご紹介しました。

eラーニングに動画を活用する例は年々増加傾向にあり、当社のクラウドサービスの場合、登録されている教材の約40%に何らかの動画が使用されています。
eラーニングに活用される動画には、以下のようなものがあります。

  1. 集合研修を撮影した動画
  2. 配信用に講義を撮影した動画
  3. 営業マンや店舗スタッフ向けに自社の商品・サービスを説明する動画
  4. 具体的な作業や体の動きを伝えるためのマニュアル動画
  5. 社長や経営幹部から従業員に向けたメッセージ動画

また、eラーニングの教材に動画を使用する場合は、教材コンテンツの一部として使うのか、教材そのものを一本の動画で作るのか、二種類のパターンがあります。

いずれのパターンにおいても、「飽きずに最後までしっかり見てもらえること」がポイントになってきますが、eラーニング用の動画はエンターテインメント目的ではないので、制作にあたっては「わかりやすさ」や「学習効果」を意識する必要があります。

動画を制作する工程は以下の通りです。

企画→絵コンテ・脚本作成→ロケハン・撮影→編集→圧縮

  • 企画段階では、誰を対象とするのか、訴えたいテーマは何か、などを明確に決めておく必要があります。
  • 絵コンテ・脚本作成では、撮影に必要な演出要素を明確にしておくことが大切です。
  • ロケハン・撮影では、特に照明に注意が必要です。照明器具の用意、カメラを数台使うこと、リハーサルを必ず実施することなどがポイントとなります。
  • 編集では、アングルの切り替えやテロップの挿入などにより、受講者を飽きさせない工夫をしましょう。
  • 圧縮では、一般的な映像サイズの適用をお勧めします。

動画の制作は、大変ですが楽しいものです。自社で動画を制作する際は、ぜひ一度上記の手順どおりにやってみてください。コツを掴めばどんどんスムーズになっていくと思います。

参考文献
[ⅰ] 総務省「平成27年版情報通信白書 特集テーマ 『ICTの過去・現在・未来』」<http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h27/html/nc261110.html>
[ⅱ] 丸山浩平・森本康彦・北澤武・宮寺庸造(2017)「主体的な数学学習のための構成的アプローチに基づく動画教材作成方法の開発と評価」『教育システム情報学会』Vol34, No.2, pp.107-121
[ⅲ] 三石大・今野文子・長谷川真吾(2017)「LMS上で配信する板書型授業を収録したビデオの復習教材としての可能性の検討教育」『システム情報学会』Vol34, No.2, pp.144-155.
[ⅳ] YouTube「アップロードする動画の推奨エンコード設定<https://support.google.com/youtube/answer/1722171?hl=ja>

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