eラーニングのメリット・デメリット 管理者と受講者双方の視点で考察

eラーニングがなかった時代、企業の人材育成は主に集合研修で行われていました。

日程と場所の確保、講師の手配、対象者への連絡、資料の準備、アテンド、出欠の管理、提出物の管理、欠席者へのフォロー、成績の管理、実施レポートの作成などなど、人事担当者は集合研修の管理業務に奔走していました。

eラーニングは元々、こうした集合研修の運用を効率化する目的で開発・発展されてきました。しかし、今では上記のような集合研修の管理業務もシステムで行う企業が増えています。集合研修の管理業務が省力化できれば、eラーニングはいらなくなるのでしょうか?

いいえ、そうはなりません。eラーニングが日本に普及し始めたのは2000年頃のことですが、その後進んだのは「集合研修のeラーニング化」だけでなく「集合研修とeラーニングの棲み分け」です。効率面だけでなく、効果の面でも、eラーニングと集合研修それぞれの長所を活かした考え方が定着してきているのです。

それゆえに、集合研修と比較した場合のeラーニングのメリット・デメリットを把握しておくことは重要と言えるでしょう。本稿では、集合研修時代と比較した場合のeラーニングのメリット・デメリットを、管理者と受講者、双方の視点で解説します。最後に比較表もご用意していますので、ぜひ提案等にご活用ください。

なお、eラーニングの導入検討を具体的に進める方法については以下の記事にまとめていますので、よろしければ併せてご参照ください。

-ベンダーの選び方について詳しくは>>「eラーニング業者の選び方 要件定義のポイントを紹介〔資料サンプル付き〕
-契約から運用開始までのプロセスについて詳しくは>>「eラーニング導入の進め方 運用開始までの4つのステップを丁寧に解説
-LMS選定時の比較ポイントについて詳しくは>>「LMS(学習管理システム)の選定時に注目すべき機能をQ&Aでご紹介


1. 管理者にとってのeラーニング

まずは管理者にとってのメリット・デメリットです。

冒頭で述べたとおり、eラーニングは集合研修の運用を効率化する目的で発展してきているため、管理者にとってのメリットは大前提であり、集合研修と比較した場合のデメリットは少ないといえます。とはいえ、eラーニングならではの注意点もありますので、ここではその点についても触れておきたいと思います。

1-1. 管理上のメリットとは?

「効率化」の代表格は手間の削減、コスト削減、スピードアップですが、eラーニングの場合、学習機会の拡大や教育の均質化などを通じて人材育成そのものの効率化を図ることができます。それぞれ確認してみましょう。

大勢の受講者に教育を届けることができる

これはeラーニングの最大のメリットといえます。集合研修の場合、一人の講師が一回の講義でカバーできるのはせいぜい40-50名でしょう。仮に1000名の社員にコンプライアンス教育を行うとしたら、20回は同じ研修を行う必要があります。eラーニングの場合は一つの教材を一度に数千人、数万人に配信することができるので、圧倒的に便利です。

教育の品質を統一できる

20回のコンプライアンス研修を同時期に開催するとしたら、複数の講師を手配することになると思います。仮にテキストの内容が同じでも、講義の展開は講師次第です。eラーニングの場合、どこで誰が受けても教材は同一ですので、講師の質に左右されることがありません。最も評価の高い講師の研修をeラーニング化して配信することも可能です。

時間と場所の確保がいらない

集合研修の場合、全国各地の拠点ごとに日程を組んで会場を決め、受講者に集まってもらう必要があります。eラーニングの場合、国内はもちろん、インターネット環境が許せば世界のどこへでも同じ教材を配信することができます。IT化が進んだ現代社会では当たり前といえば当たり前ですが、eラーニングが登場した当時は、「移動がいらない」というのは画期的なことでした。

集合研修に比べて低コスト

eラーニング導入の先駆である株式会社オートバックスセブンが試算を行ったところ、同社がeラーニングを用いて始めた教育施策を集合研修で行うと仮定した場合、eラーニングの4倍のコストがかかるという結果が出ています。

また、ある大手学習塾では、新人講師向けの初期教育として実施していた3時間×4コマの集合研修のうち1コマをeラーニングに置き換えることで、教壇に立つまでの期間の圧縮と、集合研修のトレーナーにかけていたコストを25%削減することに成功しました。

教育にかけられるコストは企業によって様々なので、一概に比較することはできませんが、eラーニングの導入により学習機会や対象者が拡大されれば、仮にコスト自体が増えたとしても、費用対効果はより高いと言えるでしょう。

上述のオートバックスセブンが試算対象とした教育も、eラーニングを導入したからこそ実施が可能になったものと考えられます。そうしたことを踏まえた評価が必要です。

教育施策にオリジナリティが出せる

企業の人材育成プランは自社の課題に基づいて設計されるのがベストです。もちろん、自社オリジナルの集合研修を開発することも可能ですが、基本的には専門家である講師のプログラムをベースにすることになります。

eラーニングの教材の調達方法はそれに比べると多様で、①既製品を買う、②オーダーメイドする、③既製品をカスタマイズする、④自社で制作(よく「内製」と言います)する、という選択肢があります。これらを組み合わせて活用することで、自社の人材育成上の課題に対して最も理想的な教育施策を追求することが可能です。

(eラーニングの教材は「モノ」ですので、「ヒト」を相手にするよりも調整が楽で自由度が高いという点も実は重要なポイントです)

学習履歴を自動的に取ることができる

集合研修の実施結果を「数値化」するのは大変ですが、eラーニングの場合は学習を実施するごとに学習時間や進捗率、取得点数などが自動的にデータベースに記録されます。状況を把握したり、実施後のレポートのために集計を行ったりする手間は圧倒的に少なく済みますし、最初からデータ化されているので様々な軸での分析も可能です。

また、全ての情報が一つのデータベースに蓄積されていくので、ある受講者の学習履歴を一元管理し、必要なときに可視化することが可能です。その集合はビッグデータとなり、自社の人材の傾向分析や教育施策の検討に活用することが可能です。

受講者とのコミュニケーションが楽

eラーニングの管理システム(LMS)には、受講者とのコミュニケーション機能がついているのが普通です。集合研修を手で管理していた時代は、メールソフトを駆使して受講者に連絡を取っていたと思いますが、この場合、送信先のセットだけで一苦労。誤送信のリスクも高く、連絡回数を極力減らす方向に調整していたと思います。

LMSでは、バイネームでメールアドレスを指定するのではなく、「ある教材の配信対象者」や「ある教材の進捗率が50%未満の受講者」といった条件でメールを送信することができるので、手間もリスクも減らせます。自動配信機能も使えるので、事前にメールをセットしておくことも可能です。メールのほかにも掲示板などの機能も使えます。

1-2. 管理上のデメリットとは?

ここでは、集合研修のeラーニングへの置き換えによって生じるマイナス要素を取り上げます。

受講者同士の交流が減る

これはeラーニングの登場以来、デメリットとして言われ続けていることです。集合研修の大きなメリットとして、同期との仲間意識や組織横断的なネットワーク作り、そして企業風土の醸成などが挙げられます。これらの要素は会社への帰属意識、いわゆる「エンゲージメント」につながっていきます。仮に集合研修を全てeラーニングに置き換えた場合、こうした点で機会損失が生じることは否めません。

eラーニングのメリットを優先するなら、社員同士の交流を図る別の施策を行うなど、工夫が必要になるかもしれません。

その場で質疑応答ができない

集合研修なら、その場で講師や他の受講者に質問ができます。eラーニングの場合、基本的に単独で学習を進めることになるので、不明点や疑問があってもその場で解決することができません。この点については、教材の作りや、別途質問対応窓口を設ける、社内SNSを活用するなど、運用上の工夫が必要になるでしょう。

1-3. 管理上の注意点

ここでは集合研修をeラーニングに置き換える際の注意点を確認します。

全ての教育をeラーニング化できるわけではない

冒頭でも述べましたが、集合研修には集合研修ならではのメリットや、集合型でしかできない要素があります。例えばディスカッションやロールプレイなど、応用や実技面のトレーニングは集合研修の方が向くでしょう。eラーニングが登場した初期の頃は、集合研修を機械的にeラーニングに置き換えたため、学習効果が損なわれてしまう例がみられました。そのような事態にならないよう、eラーニングで予習として知識の習得を行い、集合研修で実践を学ぶなど、それぞれの特徴を活かした教育設計が必要です(ブレンディッドラーニング)。

もっとも、IT技術の発展により、eラーニングでカバーできる範囲は着実に広がってきています。

例えば、以前は業務に必要な「動作」を教材コンテンツで伝えるのは困難でしたが、動画配信技術の向上により、今では熟練スタッフの動画を撮影して配信することで、手を使った細かな作業の仕方や体の動かし方などを、受講者にリアルに伝えることができるようになりました。ディスカッションやシミュレーション、実技確認が必要な学習についても、SNSやテレビ会議システム等を取り入れることで補完が可能です。

eラーニングとそれ以外の教育手法をどのように組み合わせて活用していくか、自社に最適な形を検討しましょう。

集合研修をeラーニングに置き換える方法について詳しくは>>「集合研修からeラーニングへのスイッチ ポイントは再設計と動画活用

受講者のモチベーション維持に工夫が必要

eラーニングの導入により、集団性が失われる分、個人のモチベーション喚起や受講促進に苦労が生じる場合があります。一般的なLMSでは、進捗状況に応じてメール配信を行う(例えば未修了者だけにチアアップメールを送るなど)ことができますが、メンタリングの実施やランキング発表等を通じた学習する風土作り、集合研修との組み合わせ等、システムだけに頼らない工夫も大切です。

受講環境の整備が必要

これは注意点というよりは導入の大前提となりますが、eラーニングの利用には、インターネット環境と端末が必要です。自社のインフラの状況を確認し、必要に応じて投資が必要になります。なお、個人端末が支給されていなくても、受講サイト自体は個人ごとのログインアカウントで切り替えができるので、共用パソコンやタブレットを利用している例もみられます。


2. 受講者にとってのeラーニング

受講者は人事担当者にとっての「顧客」です。顧客視点でeラーニングのメリット・デメリットを確認しておきましょう。

2-1. 受講上のメリットとは?

受講者にとってのメリットは利便性に関するものが中心です。利便性は学習の動機を拡大し、ひいては学習効果につながっていきます。

いつでもどこでも学習できる

集合研修のように拘束を受けることなく、任意の時間に任意の場所で学習することができるのは、受講者にとってeラーニングの最大のメリットです。業務の隙間時間でも、移動中でも、休日に自宅でも、端末さえあれば自由に学習することができます。

自分のペースで学習を進められる

集合研修では、周囲と同じペースで学習を進めていかなければなりません。理解が追いつかず、焦ってしまうこともあるでしょう。eラーニングは個人学習が基本なので、マイペースに進めることができます。期日があるとしても、ペースに関するストレスがないことは、大きなメリットと言えるでしょう。

繰り返し学習できる

集合研修は基本的に一度の体験で終わってしまいます。テキストは手元に残るかもしれませんが、終わってしまえば「教えてもらう」ことはできません。eラーニングは繰り返し受講が可能ですので、理解できるまで何度でも復習することができます

2-2. 受講上のデメリットとは?

受講者にとってのeラーニングのデメリットは、メリットの裏返しと言えます。

モチベーションの維持が難しい

これでは「いつでもどこでも学習できる」というメリットと引き換えになります。eラーニングでは仲間と一緒にワイワイガヤガヤ、雑談を交えながら学習することはできません。そのため、モチベーションの維持に苦しむ場合があります。これには管理者側の働きかけが必要でしょう。

強制感を感じることがある

「いつでもどこでも学習できる」ということは、その学習から「逃げられない」ということです。そもそも会社から提供される学習機会はフル活用すべきですし、集合研修なら逃げられるというものでもありませんが、システムで管理されるという状況にストレスを感じてしまう場合があります。これについては、そうならないよう、教材の数やスケジュール等に工夫が必要でしょう。

受講するための環境・端末が必要

集合研修は身一つあれば受講できますが、eラーニングにはインターネット環境と端末が必要です。昔はこのことが問題になりがちでしたが、今では企業における個人用パソコンの支給は一般化していますし、eラーニング受講に個人のタブレットやスマートフォンの利用を許可している企業も多くみられます。風化しつつあるデメリットと言えるでしょう。


まとめ

いかがでしたか?
eラーニングについて、管理者と受講者それぞれにとってのメリットとデメリットを解説してきました。

◆eラーニングのメリット・デメリット一覧

管理者

受講者

メリット

・大勢の学習者に教育を届けることができる
・教育の品質を統一できる
・時間と場所の確保がいらない
・集合研修に比べて低コスト
・教育施策にオリジナリティが出せる
・学習履歴を自動的に取ることができる
・学習者とのコミュニケーションが楽

・いつでもどこでも学習できる
・自分のペースで学習を進められる
・繰り返し学習できる

デメリット

・学習者同士の交流が減る
・その場で質疑応答ができない

・モチベーションの維持が難しい
・強制感を感じることがある
・受講するための環境・端末が必要

注意点

・全ての教育をeラーニング化できるわけではない
・学習者のモチベーション維持に工夫が必要
・受講環境の整備が必要

管理者にとっては、大規模な運用が可能なことと、学習履歴を一元管理できる点が最大のメリットといえるでしょう。受講者にとっては、好きな時間に好きな場所で受講できるという点がメリットといえます。一方で、他の受講者との交流やモチベーションの維持は、管理者と受講者双方にとっての課題になります。

また、集合研修をeラーニングに置き換えると、確実にコスト削減につながりますが、教育効果を考えた場合、全てをeラーニングに置き換えるのではなく、目的に応じて集合研修と使い分けることが理想的です。これを「ブレンディッドラーニング」といいます。近年は、これにSNS機能やテレビ会議システムなどを組み合わせて教育を行う企業も増えています。

eラーニングを効果的に活用するためには、eラーニングだけに頼りすぎず、バランスのよい教育施策を設計するとともに、学習する風土作りなどソフト面の工夫が必要と言えます。

古い仕組みを新しい仕組みに置き換えるだけでなく、新しい価値を生み出していくという視点を加えることで、eラーニングの活用可能性はどんどん広がっていくでしょう。

IT社会の発展とともに変化してきたeラーニング。これを機会に、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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