eラーニングの歴史 人材育成のあり方を変えた教育手法の軌跡をたどる

eラーニングの歴史は、インターネットの発達とパソコンやモバイルなどの端末の進化と連動しています。

今や企業の人材育成の基盤となったeラーニング。本稿では、eラーニングに関する基礎知識の一端として、今も進化を続けるこの教育手法がここまでどのように発展してきたか、その過程をご紹介します。

以下は簡単な年表です。これを元に、変遷の主なポイントを確認していきましょう。


1. eラーニング以前

コンピュータを使った学習方法はCAI(computer-aided instruction)[1]など1950年代から開発が行われてきました。

[1] コンピュータ支援教育。コンピュータを利用した学習支援システムのこと。


2. CBTからWBT

eラーニングという語が登場するのは1990年代です。この頃、パソコンが一般家庭にも普及します。特に1995年、Windows 95の発売は画期的なできごとでした。それまで一部の人が使うものであったパソコンが、専門的な知識やスキルを必要とせず扱えるようになったからです。世界中で爆発的な人気となったWindows 95にはCD-ROMが標準装備されていました。これにより、CD-ROM化した教材を使ってパソコンで学習する方法が確立したのです。

CBT(Computer-Based Training)と呼ばれるこの手法には、大容量のデータを収録できるC D-ROMの特性を生かし、動画や音声などのマルチメディアを活用したインタラクティブなコンテンツを効果的に利用できるというメリットがありました。

一方で、教材の作成コストがかかる、配布後の内容の修正が難しい、また学習の進捗度が受講者側で保存されていたため管理者側で一括管理することが困難などの課題もあり、一般的に普及するほどには拡がりませんでした。

次に大きな動きがあったのは2000年です。この年、当時の森内閣が日本型IT社会の実現を目指す「e-Japan構想」を打ち出しました。ここで、5年以内に超高速ネットワークインフラを整備し、低価格で利用できるようにすることなどが重点政策として掲げられました。そして翌2001年には日本イーラーニングコンソシアムが設立され、eラーニングの普及促進事業が本格的に始まりました。
このような動きを背景に、2000年代にはインターネットのブロードバンド化が進みました。ADSLやCATV、FTTHなど手頃な価格で高速大容量のインターネット接続を提供するサービスが登場。インターネットは急速に普及していき、企業内ネットワークも整備・拡大します。

これに伴い、eラーニングの手法もWBT(Web-Based Training)に進展していきました。配布されたCD-ROM教材を個別のパソコンに入れて学習していた方法から、インターネットで配信された教材を使ってオンラインで学習する方法に変わっていったのです。先述した企業内ネットワークの発達により、eラーニング研修を導入する企業も増加していきます。

研修を提供する企業は教材をLMS(Learning Management System、学習管理システム)と呼ばれるサーバー上のシステムから配信。この形態には教育の運営側にとって以下のようなメリットがあり、大企業を中心に導入が進みました。

  • 受講者の学習履歴を管理できる
  • 教材データをサーバー上に保存できる
  • CD-ROM教材よりも低コストで教材を作成・配信することができる
  • CD-ROM教材よりもメンテナンス(内容の更新)がしやすい

インターネットにつながったパソコンさえあれば好きな時間に好きな場所で学習でき、実施報告も不要という点で、WBTは受講者たるビジネスパーソンにとっても革新的だったと言えるでしょう。

※eラーニング、LMSについて、詳しくは以下の記事をご参照ください。
「eラーニングとは 進化した教育システムの特徴や仕組みの基礎知識」
「LMSとは何か eラーニングとの関係や今後の進化の方向性を徹底解説」


3. パソコンからスマートデバイスへ

2000年代に入るとiPhoneやAndroidなどのスマートフォンが登場し、2010年にはこれらより大型のiPad、Nexusといったタブレット端末が発売されました。これに伴い、eラーニングもさらに次の段階へと発展していきます。

3-1. 新しい教育手法の登場

eラーニングの発展形として、近年次のような教育手法が注目されています。

モバイルラーニング

「好きな時間に好きな場所で」とはいっても、これまではパソコンがあり、インターネット環境が整備されているところでないとeラーニングでの学習はできませんでした。しかし、スマートフォンやタブレットのような携帯端末であれば、移動や休憩時間を利用して学習することが可能です。こうした学習方法はeラーニングとは区別してモバイルラーニング、mラーニングとも呼ばれています。

※モバイルラーニングについては以下の記事もご参照ください。
「モバイルラーニング」とは スマホ・タブレットによる学習のメリット・デメリット」

ソーシャルラーニング

TwitterやFacebookなどのSNSや、ブログ、YouTube、Q&Aサイトといったソーシャルメディアを学びのツールとして活用するソーシャルラーニングという手法も成果を出しています。参加者同士がネットワークを通じて相互に教え合ったり、習得した知識について意見を交わしたりすることで理解を深め、また専門家や先輩の経験を共有することができることも学習者の励みになり意欲を高めることになるでしょう。

※ソーシャルラーニングについては以下の記事もご参照ください。
「ソーシャルラーニングとは 個人の成長とナレッジの共有化を実現する新手法」

マイクロラーニング

従来のeラーニング教材の学習時間は数十分~1時間程度が普通でしたが、スマートデバイスでの隙間時間を使った学習方法が普及してきたことで、これを細分化する動きがあります。マイクロラーニングでは、1回の学習時間が1~5分程度に収まるよう学習範囲を細かく区切り、学習の手軽さとそれによる効果の向上を狙います。無駄な要素をそぎ落とし、効率を重視した手法は、正に忙しい現代のビジネスパーソン向きと言えるでしょう。

※マイクロラーニングについては以下の記事もご参照ください。
 「マイクロラーニングとは 「学び」のあり方を変える新しいeラーニング」

3-2. 教材コンテンツの「作り」の変化

新しい教育手法の登場と平行して、教材の作りにも変化が出てきています。

かつて、eラーニングの教材にはアニメーションを用いたリッチなコンテンツが使われていました。しかし、2008年のリーマンショック後に企業の教育費が削減・抑制されたこと、またアニメーションの作成・再生に使用されてきた「Flash Player」の提供が2020年末で終了する見込みとなったことなどを背景に、静止画とテキストを中心としたシンプルなコンテンツが主流になって来ています。

また、YouTubeなど動画文化の浸透により、動画を活用したコンテンツも増加しています。

こうした動きは、教材の再生環境である携帯端末の普及とも連動しており、今後も変化を続けていくと思われます。


4. まとめ

eラーニングの歴史は、大きく以下のように移り変わってきています。

CBT(Computer-Based Training):CD-ROM化した教材をパソコンで学習する方法
WBT(Web-Based Training):インターネットで配信される教材をオンラインで学習する方法。管理者側はLMSで学習履歴や教材データの管理ができる。
スマートデバイスの活用:スマートフォンやタブレット端末で学習する方法。短い時間で、これまで以上に場所を選ばず学習できるようになった。動画やSNSの活用が進む。

この背景にあるのはIT技術の進化です。来るAI時代も、eラーニングは「より身近に」「より簡単に」学べる学習ツールへと発展を続けていくでしょう。

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