集合研修からeラーニングへのスイッチ ポイントは再設計と動画活用

「集合研修をeラーニングに置き換える一番良い方法は何か?」

教育施策の切り替えを機に、eラーニングの活用を検討する教育担当の方は多いと思います。確かに、eラーニングは以下のような点で、集合研修に勝るメリットを持っているといえます。

  • 集合研修に比べて少ないコストで実施できる
  • 大勢の受講者に均質的な教育を提供できる(講師の質に左右されない)
  • 時間と場所の制約が少ない
  • システム上で一元管理できるので、運用の手間が少ない
  • 学習履歴をデータとして管理できる

しかし、これらのメリットだけで集合研修をeラーニングに置き換えるのは難しそうです。その事実は数字が物語っています。eラーニング市場は年々拡大しているとはいえ、研修市場全体で見ると、まだ35%程度です。

(単位:百万円)
矢野経済研究所「eラーニング市場に関する調査結果2017」「企業向け研修サービス市場に関する調査2017」を元に作成

eラーニングが導入され始めた2000年頃には、すべての研修はeラーニングに置き換えられるだろうと言う人も多くいましたが、約20年たった今でも、eラーニングの割合は、まだ35%程度の割合しかないというのが現状です。

それはなぜでしょうか?以下の3つの要因が考えられます。

  1. 企業文化として集合研修に重きを置く会社が多い
  2. 集合研修でしか実現できない学習効果がある
  3. 集合研修をeラーニングに置き換える方法に課題がある

1の企業文化については、なかなかいかんともしがたいところです。eラーニングベンダーたる我々の力不足とも言えるかもしれませんが、こちらは引き続きの課題とさせていただくとして、本稿では残りの2点について、解説を試みたいと思います。

集合研修をeラーニングに置き換えるという方針自体をどのように評価すればよいのか、また、どうしたら集合研修からeラーニングへの置き換えを促進できるのか、考察していきましょう。
後半では東進ハイスクールの事例もご紹介します。ぜひ参考にしてください。

1. 集合研修とeラーニングの共存

eラーニングは、従来集合研修に席巻されていた企業の人材育成の現場に改革をもたらしました。普及し始めた頃は、先端技術を好む企業を中心に集合研修をeラーニングに置き換える動きが急速に進み、アニメーションを搭載したリッチな教材がたくさん開発されました。

しかし、集合研修からeラーニングへの移行を機械的に進めた企業では、一部の分野における学習効果の低下が問題視されるようになりました。集合研修のメリットを無視してeラーニング化を進めても、思うような効果は得られないということです。

こうした流れの中で、集合研修ならではの効果というのが改めて見直されるようになりました。以下のようなものがあります。

  • 質疑応答やディスカッションなどを通じて即興的な対話が生まれ、それらを通じて更なる議論の発展・学びが期待できる
  • 対人コミュニケーションやロールプレイなど、実践的なトレーニングができる
  • 受講者間に仲間意識が生まれる
  • いわゆる「雰囲気」を通じ、企業文化や風土の継承に役立つ

そこで提唱されるようになったのが、ブレンディッドラーニングです。ブレンディッドラーニングはその名の通り「混合学習」の意味で、集合研修とeラーニングを組み合わせて運用する手法です。一つの教育施策を分解し、目的に応じてeラーニングと集合研修に振り分けます。

分かりやすい例として、3日間の集合研修を想定してみましょう。以下のようなプログラムだとします。

このうち、eラーニングで実現可能なパートを特定します。

科目にもよりますが、講義は知識の習得がメインでしょうから、個人の予習とすることができるでしょう。テストやアンケートはeラーニングの得意分野です。結果をデータとして取り出せますので、運用も効率化できます。

 このような考え方で分解、そして「ブレンド」すると、以下のようなプログラムが出来上がります。

上記の例はかなり分かりやすくしていますので、実際にはもう少し検討要素があるかと思いますが、単純に考えれば集合研修は3日間から1.5日間に短縮できます。仮にこの研修を合宿で行っていた場合、交通費や宿泊費等の部分でかなりのコスト効果が期待できるでしょう。

受講者の方は業務を離れる時間が短くなりますし、eラーニングは基本的に任意の時間・場所で実施できますので、生産性の点でもメリットが見込めます。間に集合研修をはさむことで、講師や他の受講生との直接的なコミュニケーションが生まれ、モチベーションアップも期待できるでしょう。

当社のあるお客様では、この方法の導入により、年間2000万円以上の経費節減を実現したそうです。

既存の研修を分解&ブレンドする際のポイントは以下の通りです。

  • 原理原則などの知識修得型の教育、および集計の必要なテストアンケート類はeラーニングで実施
  • 時事的な内容、および実技演習などを集合研修で実施

集合研修とeラーニングは相反する手法、二者択一というものではなく、それぞれの長所を活かして複合的に活用し、相乗効果を狙うべき関係だということができるでしょう。

2. 集合研修をeラーニングに置き換える方法

ブレンディッドラーニングは一つの理想的な形ですが、本来eラーニングで実施できるパートを集合研修で実施している企業は少なくありません。そこで、ここでは具体的な方法論を解説したいと思います。

集合研修をeラーニングに置き換える主な方法としては、以下の3つが挙げられます。

  1. 映像化
  2. リアルタイム動画配信
  3. スライドをペースとしたコンテンツ化

2-1. 映像化

集合研修を撮影し、動画として配信する方法です。これは一番手っ取り早い手段といえるでしょう。

ただ、通常の講義をビデオに撮って配信するだけでは、コンテンツとしての魅力という点ではやや弱いといわざるを得ません。

これは筆者の体験談ですが、その昔ある企業の管理職になった直後、管理職研修という名目で人事からCD-ROM約20枚を渡されました。これらはBBT(ビジネス・ブレークスルー大学) の教材だったのですが、1枚に約60分の講義映像が収録されており、いざ視聴してみたもののこれが苦痛の何物でもない。

スタジオで撮影しているので、集合研修を単に撮影したものではないのですが、講師が立って、小さなフリップを指さしながら延々と解説を進めます。講師の話し方にも抑揚がなく、まったく内容に入り込めませんでした。映像を用いた教育の残念な例といわざるを得ません。

一方、「IT授業」を提唱し、東進ハイスクールに代表される数々の学習塾を運営している株式会社ナガセは、映像教育に成功し、少子化の中にあって売上を伸ばしています。

株式会社ナガセ 業績推移(単位:百万円)

なぜナガセは成功しているのでしょう?
集合研修を映像化する際の成功ポイントを押さえるために、ナガセの講義映像の特長をみてみましょう。

  1. 講師の高いタレント性
  2. 高い更新速度
  3. 2倍速再生

これは筆者の見方ですが、学習者の集中力とモチベーションを維持し、学習効果を挙げるという点においてはほぼ上記に集約されると思います。
一つずつみていきましょう。

①講師の高いタレント性

林修先生をはじめ、東進ハイスクールが抱える講師陣は個性が強く、話がとても上手です。単に講義内容を話しているのではなく、周辺の知識も伝えています。これはマニュアルがあるわけではなく、講師自身が受講者を飽きさせないための工夫・努力としてやっているようです。

企業の集合研修でも、アイスブレイクやオモシロエピソードをまじえて進められるものも少なくありません。映像化する際は、プロの講師を呼ぶにしても、社内講師が行うにしても、何らかのオリジナリティを出していただく、単調な展開にしない、話し方に抑揚をつける、などの工夫があると良いでしょう。

②高い更新頻度

東進ハイスクールの講師陣は時事ネタを織り交ぜて講義しますので、すぐに内容が古くなります。そのため、同じ内容の講義でも、最低四半期に1回は撮影を実施しているようです。学生は同じ内容を復習するにしても新しい時事ネタが聞けるのでより楽しく学習ができます。

企業の教育施策の場合、対象者はビジネスパーソンですから、学生と同等の工夫まではいらないと考えてよいでしょう。一方で、経営の考え方や業務内容の変化、法律対応などの面で情報が劣化する可能性はあります。定期的に教材の内容を見直す仕組みを作っておくのが理想的です。

2倍速再生

東進ハイスクールの映像授業は、2倍速再生が可能です。特に珍しい機能ではないようい思えますが、実は受講環境に関してはこれが一番評価されているそうです。ダラダラと話されるよりも、知っているところは2倍速で、重要な部分は等速で講義を聞く。このメリハリが必要なんでしょうね。

これは、忙しいビジネスパーソンが相手の研修でもまったく同じことが言えると思います。

映像の長さについては、1学習単位10分から20分程度に抑えておかないと、集中力が続かないようです。Jストリームの調査によれば、「長くても10分未満が適切」という結果が出ています[i]。講義内容にもよりますが、あまり長くならないよう、単元を区切るなどの工夫をするとよいでしょう。

このように、集合研修を動画コンテンツという形のeラーニングに置き換える際は、撮影の仕方の他に、講師の話し方や再生時間などに工夫する必要がありそうです。

なお、動画の撮影方法については別記事「【絵コンテサンプル付き】動画時代のeラーニング 企画から編集まで」にまとめていますので、ぜひそちらをご参照ください。

2-2. リアルタイム動画

Skypeなどのテレビ会議システムを使ったリアルタイム動画を利用する方法です。ITを使っているので、これも広い範囲でのeラーニングと言えます。最近では、英会話スクールなどで、国外在住の外国人講師との対面レッスンに利用される例が増えています。

企業の集合研修の置き換えを想定する場合は、例えば、一人の質の高い講師の講義を1拠点から全国に配信するといった形が考えられます。学習効果の面でも講師の人件費の面でも非常に効率的といえますし、タイムリーな内容も盛り込めるでしょう。

当社のお客様では、全国の拠点で同時開催される全社集会に際し、東京のメイン会場で行われる社長の演説を地方会場にライブ配信している例もみられます。

少々技術的なお話になりますが、リアルタイム動画を配信する際は、ネットワークの規格に注意が必要です。よく使われるのはUDP[ⅱ]です。Webページなど閲覧する場合によく使われるTCP[ⅲ]と呼ばれるもの違い、UDPは原理自体簡単なため便利なのですが、反面、視聴履歴(学習履歴)を取りたい、正しく配信されていない場合は、エラーメッセージを出したい、という場合には使えません。また、何の制限もなく一斉に配信してしまうので、1教室内に複数台のPCで一斉に見る、ということをしてしまうと、一発でネットワークがダウンしてしまいます。

2-3. スライドをベースとしたコンテンツ化

集合研修の講義内容をベースにeラーニング教材を作成するという方法です。ご紹介する3つの方法の中では一番準備に手間がかかるかもしれませんが、いったん作ってしまえば動画に比べて運用とメンテナンスは楽です。

最も効率が良いのは、集合研修のテキストやスライド資料を改編するやり方でしょう。これらの資料は大抵の場合PowerPointで作成されています。スライド内のイラストやチャートに、講師のトークスクリプトを原稿として当て込んで、一つの教材として編集しなおすのです。

これをeラーニングコンテンツにするわけですが、その作業は教材作成支援ツールを使えば簡単にできます。最近は自社でeラーニングを制作したいというニーズが高まっており、eラーニングベンダー各社がこうしたツールを提供していますので、確認してみましょう。大抵の場合、PowerPointとExcelがあればOKです。

教材支援ツールを使ったeラーニング教材の作り方については、別記事「【仕様書サンプル付き】失敗しないeラーニング 教材の作り方 」に詳しく解説していますので、ぜひそちらをご参照ください。

集合研修の全てをスライドで表現するのが難しい場合は、動画と組み合わせることも可能です。
例を見てみましょう。
こちらは講師と講義スライドを一緒に表示するタイプの教材です。「映像化」と組み合わせた例といえるでしょう。

 

また、スライドで学習した後、関連する動画を見せるという形も考えられます。

 

このパターンを採用すれば、座学の集合研修だけでなく、実地研修に近い内容もeラーニングで配信することができるでしょう。

集合研修ならではの効果というものを忘れてはいけません。ただ、学習目的に沿って情報をコンパクトに整理できること、音声なしでも学習できるよう工夫ができること、PowerPointやExcelがベースなので、内容のメンテナンスがしやすいことは、コンテンツ化のメリットといえるでしょう。

それぞれのメリットを確認し、教育施策ごとに最適な方法をとることが理想的です。

3. まとめ

いかがでしたか?
eラーニングを集合研修に置き換える方法や考え方についてまとめてみました。 

eラーニングは企業の人材育成の現場に改革をもたらしましたが、全面的に集合研修を代替できるわけではありません。

講義など知識の習得がメインとなる教育や、テストやアンケートなどデータを集計する必要のある施策はeラーニングに置き換えることが可能でしょう。一方で、時事的な内容や、リアルタイムかつ双方向的なコミュニケーションが意義を持つ内容の場合は集合研修が向いています。

集合研修とeラーニング、それぞれのメリットを活かし、相乗効果を狙うような形で使い分けをするのが理想的です。これをブレンディッドラーニングといいます。

集合研修をeラーニングに置き換える主な方法には、以下の3つがあります。

  1. 映像化
  2. リアルタイム動画配信
  3. スライドをペースとしたコンテンツ化

 映像化する際は、受講者が飽きないよう、撮影の仕方や講師の話し方、再生時間などに工夫することが望まれます。

リアルタイム動画の場合は、ネットワークの規格に注意が必要です。UDPという規格がおすすめです。
スライドをベースとしたコンテンツ化は、教材作成支援ツールを使う方法です。PowerPointやExcelを使って教材資料を用意し、これを教材作成支援ツールでeラーニングコンテンツにします。動画を組み合わせることも可能です。

集合研修のeラーニングへの置き換えにあたっては、再設計と動画の活用がポイントといえるでしょう。
ぜひあなたの会社の教育施策の参考にしてください。

[ⅰ] https://www.stream.co.jp/resources/blog/2017/02/23/1341/

[ⅱ] UDPUser Datagram Protocol):構造が簡単なため、速度が速い。TCPのように接続確認はしないため、信頼性は低い。

[ⅲ] Transmission Control Protocol):Webページを見る際に使われる規格。接続できたか否かの確認を取るので信頼性が高い。

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