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eラーニングの効果事例 教育によって店舗の売上を上げる方法

eラーニングの効果は数字で見えるのか。

何度か導入を検討しているものの、「効果がはっきりしない」「費用対効果の目処が立てられない」といった理由で先送りとしている企業もまだまだ多いのではないでしょうか。

インターネットを利用した学習形態が「eラーニング」という言葉で表現されるようになったのは2000年頃のこと。それから約20年、eラーニングは多くの企業の人材育成に採用されてきました。中には長続きせず、利用をやめてしまった企業もありますが、市場規模の推移を見てみると、ここ数年は増加傾向にあるようです。

(単位:百万円)
(図表1)矢野経済研究所推計によるeラーニング市場規模推移(2017)

eラーニングの利用が増えている背景としては、まず企業のコスト削減に対する意識がこれまでになく高まっていることが考えられます。集合研修のコスト、研修データをエクセルで管理するコスト、受講者にバイネームでメール連絡をするコスト―。eラーニングを導入することで、これらにかけていたコストを大幅に削減できるからです。(eラーニング全般についてもっと詳しく知りたい方は別記事「eラーニングで企業の人材育成を成功させるために必要な知識と実践方法の全て」をご参照ください。)

また、eラーニングの学習効果が認められるようになったことも、利用が拡大している一つの要因であると考えられます。eラーニングの学習効果は、検証が難しいこともあって従来曖昧とされがちでしたが、導入企業の事例が増えてきたことで、徐々に実証されて来ています。

特に業績に与える影響は、多店舗を展開する企業において明確に見られる傾向があります。
本稿では、eラーニングを用いた施策が業績の向上につながった事例を2つご紹介したいと思います。

なお、各事例の効果検証に用いているのは、ドナルド・カークパトリックが提唱した4段階評価モデルです。(Kirkpatrick、1975)

(図表2)カークパトリックの4段階評価モデル

ドナルド・カークパトリック(1924-2014)はアメリカの経営学者で、企業の人材教育の成果を測るための指標を4段階で提示したことで知られています。それが4段階評価モデルです。1975年に提唱された後日本にも導入され、企業で行われる研修の効果測定に広く利用されてきています。

では、事例をみてみましょう。


1. 事例1:オートバックス様 eラーニングの修了率と平均客単価の相関を分析

オートバックス様は1998年に自社向けの教材開発に着手され、翌年6月からグループ向けに提供を開始されました。eラーニングが普及したのは2000年以降ですから、この先見性は当時としては異例だったと思います。(ちなみに当時、当社はまだ存在していませんでした)

オートバックス様がeラーニングへの取り組みを始められた背景には、以下の様な問題を受け、集合研修を中心とした教育に限界を感じていたことがありました。

  • 集合研修の講師不足
  • 研修中の店舗要員の不足
  • OJT時間の不足

そこで、接客に必要な知識や基礎的な商品知識に関するeラーニング教材を10タイトル開発し、教育体系を整備して、店舗スタッフに配信したのです。

運用を続ける中で、カークパトリックの4段階評価における「レベル1:反応」や「レベル2:学習」については、アンケートや社内資格制度の活用を際して定期的に評価が行われました。ここまでは、一般的なeラーニング研修においても、比較的簡単にデータが取れるところです。

一方で、「レベル3:行動」、「レベル4:業績」になると、本人および第三者へのインタビューや、個人の業績とeラーニング研修との相関分析が必要になるため、実際に行うのはなかなか大変です。

オートバックス様では、eラーニングの運用が10周年を迎える2009年に向けて、2004-2007年までの3年間の学習成果を元にレベル3、レベル4を含む全4段階の評価を行いました。

レベル3は、店員の行動を確認するものです。これは店舗ごとの覆面調査の形で行われ、「接客の基本」「対応力・商品知識」「顧客視点」「店舗印象」「総合」の5項目を採点方式で評価しました

その結果、eラーニングの修了者が多い店舗ほど点数が高い結果となりました。

レベル4については、370の店舗の従業員を対象に、客単価、平均売上、そしてeラーニングの修了状況の相関分析を行いました。その結果、eラーニングの修了者が多い店舗とそうではない店舗では、平均客単価に1,241円もの差が出たことが分かりました。

(図表3)eラーニング利用上位店舗と下位店舗の平均客単価・売上推移比較[1]

オートバックス様がeラーニングを使ってここまでの成果を挙げられた理由は何でしょうか。
それは、eラーニングの受講を促進するために行われた様々な施策です。

従業員にとって最大のインセンティブは給与ですが、当時、オートバックス様の店舗の90%はフランチャイズだったため、eラーニングの学習成果を時給等に反映することはできませんでした。そのため、学習を推進するためのポスターを作成して配布したり、10タイトルのeラーニングをすべて合格したら、記念バッジやお菓子を送り届けるなど、事務局側が実に地道な努力をされたようです。eラーニングの修了レベルに応じた社内資格の創設も、その一つでした。

eラーニングの学習効果を業績につなげるには、eラーニングそのものの質だけでなく、運用面にも様々な工夫が必要だということを物語る事例といえるでしょう。

なお、上記の検証ではさらに興味深いことも判明しました。しっかり学習を行っている店舗とそうではない店舗では、離職率がそれぞれ、54.9%、22.0%と、大きな差があることが分かったのです。これは、eラーニングによる学習が、仕事の面白さや達成感、自身の成長の実感等につながったためと推測されます。

近年、小売・飲食業界で深刻化している離職率問題にも、eラーニングは有効な打ち手となるかもしれません。

[1] 橋本真治・小迫宏行(2009)p.48.


2. 事例2:JXTGエネルギー様 eラーニング実施店と未実施店の業績を比較

JXTGエネルギー様では、2008年以降、ガソリンスタンドのスタッフに向けてeラーニングによる教育施策を提供しています。

JXTGエネルギー様では、当時ガソリン以外の商品・サービスの販売に力を入れていましたが、現場スタッフの販促力に課題を感じ、教育の必要性を再認識されました。しかし、国内の11,000店を超える店舗に向けて、内容と質を揃えた教育を届けるのは一筋縄ではいきません。そこで、eラーニングの導入を決めました。

当時のJXTGエネルギー様の課題は以下のように整理できます。

  • スタッフ間の販売スキル・商品知識の差が激しい
  • 店舗数が多く、店舗ごとに提供できる学習機会が異なっている

この2点を解決するために、eラーニングを導入して、

  1. スタッフに教育すべきスキル・商品情報を標準化し、
  2. 学習機会を均等にすることで、スタッフ間、店舗間のスキル差・知識差をなくし、
  3. これを継続することで全体のオペレーションレベルを底上げし、顧客満足・売上を向上させる

ことを目標としました。

また、これが徹底できれば、自ずと「従業員満足度の向上にも繋がる」という見立てもありました。

そこで、まずは各シーズンに展開されるキャンペーンに合わせて販促のeラーニング教材を順次開発し、ラインナップを整えていきました。ご参考まで、当社で開発を支援させていただいた教材には以下のようなものがあります。

(図表4)当時開発したeラーニング教材ラインナップ

商品・サービスの知識が中心ですが、それだけに留まらず、最終的には顧客満足につなげていく、という意図からCS(Customer Satisfaction)経営の基礎まで用意しました。

このうち、最初に開発したエンジンオイルの教材について、本導入前の2009年4月に500店舗を対象に試験運用を行い、同年4月から6月にかけて、効果検証を行いました。

検証では、カークパトリックの4段階評価モデル全てのレベルについて調査を行いましたが、「レベル1:反応」「レベル2:学習」「レベル3:行動」はアンケート調査やヒアリングなどを元にした定性的な情報が中心なので、ここには「レベル4:業績」の結果のみ掲載します。

(図表5)エンジンオイルの販売量推移(JXTGエネルギー様調べ)

この調査結果を見て、JXTGエネルギー様が注目したのは6月の販売量の増加率です。例年、5月は大型連休の影響で販売量が増加しますが、6月はその反動で減少傾向に転じ、前年度の水準を維持するのがやっとのところだそうです。しかし、この年の6月、「eラーニング実施店」の前年度比は15%増となっており、その差は「eラーニング未実施店」と比べても有意です。

このことから、eラーニングによるエンジンオイルに関する学習が、販売量の増加につながったものと考えられます。

これに続き、JXTGエネルギー様ではタイヤやバッテリーについても粗利益の比較を行いました。その結果を示すのが以下のグラフです。

(図表6)粗利伸び率の昨対比(JXTGエネルギー様調べ)

いずれにおいても、eラーニング受講店の優位性がはっきりと現れています。

なお、この調査は直営店を中心に行われたため比較的スムーズに進めることができました。特約店様については、eラーニングの導入について、現在も研修事務局から様々な働きかけを実施しているそうです。展開する店舗数が多い場合や、運営の形態が様々ある場合は、eラーニングの導入や運用の仕方に工夫が必要になることも、認識しておくとよいでしょう。

とはいえ、本事例は導入の仕方というよりも、現場スタッフにとってすぐに役立つ教材ラインナップを揃えて展開したことが成功のカギだったと言えます。実際、効果検証の中のアンケートでは「自信がついた」「お客様へのおすすめの仕方が分かった」「これまで以上に積極的にコミュニケーションができそう」といったポジティブな意見が多数寄せられました。

課題に対する打ち手を設定し、目標を達成するための施策をこれだけの規模で、具体的かつ緻密に進めてこられた事務局の推進力とご努力は、並大抵のものではありません。同時に、だからこそ上掲のような効果が得られたことは間違いないでしょう。

業界を問わず、接客に携わる現場スタッフの皆さんは、お客様と話す内容やその方法(言い回しや表現)について学びを求めているのかもしれません。JXTG様の事例は、そういったスタッフの、ともすれば自分でも気付いていなかったかもしれないニーズへの訴求に成功した例といえるでしょう。


3. まとめ

いかがでしたか?
eラーニングの学習効果と業績の関係について、オートバックス様、JXTGエネルギー様、2社の事例をご紹介しました。
学習効果を見える化する手法としては、カークパトリックの4段階評価モデルを利用しました。

いずれの事例においても、eラーニングの活用により、「レベル4:業績」へのポジティブな影響を確認することができました。「eラーニングの効果は数字で見えるのか」という冒頭の問いに対する一つの回答になったかと思います。

小売・サービス業界では、個人の成長と売上の相関が比較的見えやすいため、効果測定に向いているといえます。ただ、eラーニングが従業員の知識の向上や意識の変化、行動の変容につながり得ることは確実であり、この点については業界を問わず効果を期待することができるでしょう。

あとは、どのような教材を用意し、どのように運用するか、に係っているといえます。
今回事例をご紹介した2社では、いずれも自社特有の知見をまとめたオリジナル教材を用意して活用していました。

オリジナル教材の開発は、eラーニング事業者に発注してオーダーメイドすることもできますし、最近では教材作成ツールを使って自社で用意する例も増えてきています。(詳細は別記事「【仕様書サンプル付き】失敗しないeラーニング 教材の作り方」参照のこと)
ビジネスの一般的な内容であれば、レディメイドの教材を活用することも可能です。目的に応じて最適な教材を用意することが大切です。

また、運用については、2社とも、単にeラーニングを配信するだけでなく、様々な工夫を行っていました。例えば、キャンペーンを実施したり、社内資格制度を設けるなどです。こうした取組みを通じて職場に「学ぶ風土」を作ること、受講者に自分の成長を実感してもらうことで学びや仕事へのモチベーションを喚起することが、eラーニングを長期的かつ安定的に運用していくことにつながります。

「学ぶ」と「働く」の間に好循環を生むことが、eラーニングを活用した教育施策のミッションであると言えるでしょう。

ぜひ、あなたの会社の教育プラン作成の参考にしてください。

 

<参考文献>
・Kirkpatrick, Donald L, Evaluating Training Programs, Alexandria, VA, American Society for Training and Development, p.1, 1975.
・石井幸雄・小迫宏行(2001)「オートバックスにおけるe-ラーニングを活用した企業内教育」『教育システム情報学会誌』vol.18,no.3/4,教育システム情報学会.
・橋本真治・小迫宏行(2009)「eラーニング教材を使った学習成果が企業業績に及ぼす影響」『教育システム情報学研究報告 eラーニング環境のデザインとHRD(Human Resource Development)/一般』vol.24,no.4,pp.46-49,教育システム情報学会.

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