クラウド型のeラーニングを選ぶ理由 メリットとデメリットを解説

「eラーニングをクラウドサービスで利用するメリットは何か?情報セキュリティ上の問題などは発生しないのだろうか? 」

eラーニングの新規導入を検討されている、またはイントラネットで使っていたeラーニングをクラウド化することを検討されている企業の教育担当者の方は、こんな疑問を持つかもしれません。

クラウドの仕組み自体は、メールやストレージなどのサービスで既に使っている方も多いと思います。
「雲(クラウド)」という言葉をコンピューターサービスと結び付けたのはGoogle社のエリック・シュミットCEOによる2006年8月のカンファレンスでの発言と言われています。10年ほど前のことです。[1]

クラウドサービスの登場以前のコンピューターの利用形態は、手元のパソコン内にあるソフトウェアやデータを利用するというものでしたが、「クラウド・コンピューティング(クラウド)」という利用形態が広まることで、インターネット上に置いたソフトウェアやデータを使うことができるようになりました。これにより、手元のパソコンはもちろん他の端末(PCやスマートフォンやタブレットなど)でも、インターネットさえつながれば、同じソフト、同じデータを使っていつでもどこでも作業をすることができるようになったのです。

クラウドを使ったビジネス市場はその後、拡大を続けています。MM総研によると、2015年度には国内クラウドサービス市場は前年度比33.7%増の1兆108億円となり、1兆円を突破しました。[2]

MM総研調査レポートより(2016年12月13日)<https://www.m2ri.jp/news/detail.html?id=212>

当社でも、2011年1月から学習管理システム(LMS)「Careership®」のクラウドサービス化を始め、今では前利用企業のうち98%がクラウドサービスを利用されています。それはなぜでしょうか?

本稿では、Careership®を例に、クラウドサービスによるeラーニングを利用することのメリットやデメリットについて解説していきたいと思います。

[1] 朝日新聞デジタル「クラウド・コンピューティング」<http://www.asahi.com/topics/クラウド・コンピューティング.php>
[2] 株式会社MM総研(2016)「国内クラウド市場は1兆円を突破」<https://www.m2ri.jp/news/detail.html?id=212>

1. eラーニングをクラウド化する、というのはどういうことか

eラーニングをクラウド化する、というのはどういうことでしょうか。分かりやすく図にしてみましょう。
まずはクラウドサービスが登場する以前の利用形態を見てみます。


(イメージ)オンプレミスによるeラーニング利用

オンプレミスというのは、システムを自社のサーバー上に置き、イントラネットで利用する形態のことを指します。
この場合、eラーニングの運用を巡るすべてのサービスは自社内で完結することとなります。
これを「クラウド化」すると、以下の様になります。


(イメージ)クラウドサービスによるeラーニング利用

このように、クラウドサービスの最大の特徴はeラーニングを運用するためのシステムであるLMS(Learning Management System、学習管理システム)がeラーニングベンダーのサーバー上にあることです。

これによってどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。次章以降でみていきましょう。

2. eラーニングをクラウド化することのメリットとデメリット

「メリットとデメリット」と書きましたが、実はeラーニングをクラウド化することのメリットはデメリットを圧倒的に上回るといえます。世間一般でクラウドサービスがこれだけ普及していることからもご想像いただけると思いますが、クラウド化は「いいことだらけ」です。具体的にどんな「いいこと」があるのか、まずはメリットから確認していきましょう。

2-1. クラウド化のメリット

eラーニングをクラウド化することのメリットは、なんといっても「システムとサーバーをベンダーが管理してくれる」ことです。
具体的には、以下の4点が挙げられます。

  1. アクセス数の予測やそれに伴うシステムの管理を自社で行う必要がない
  2. システムの監視とトラブル対応をベンダーがやってくれる
  3. 他のシステムとの連携が容易である
  4. 大規模災害やテロ対策に有効である
  5. セキュリティ対策もベンダーがやってくれる

一つずつ見ていきましょう。

2-1-1. アクセス数の予測やそれに伴うシステムの管理を自社で行う必要がない

意外に思われるかもしれませんが、eラーニングの利用には季節的な波があります。当社のクラウドサービスの場合、アクセスが一番多いのは9~11月です。ビジネス的には閑散期と呼ばれる期間です。この時期に、セキュリティやコンプライアンス研修を一気にやってしまおう、というお客様が比較的多いようです。

以下のグラフは2013年4月のCareership®へのアクセス数を100とし、その後の様子を示したものです。確かに、9~11月はその年度のアクセス数が多いことが分かります。


(図表)Careership®へのアクセス状況推移

このように傾向の分かる場合はもちろんのこと、急にアクセス数が増加した場合でも、クラウドならサーバー内のCPUやメモリ、サーバーの数を調整することで容易に対応できます。

クラウドサービスでない場合、上記のような対応は教育の主管部門たる人事部と情報システム部門が連携し、過去のデータも踏まえて行わなければなりません。eラーニングベンダーが提供するクラウドサービスを利用すれば、システムのパフォーマンスまわりの調整はすべてベンダーがやってくれます。自社では通信速度の設定を適切に行えば、アクセス渋滞が起きることはまずないといってよいでしょう。

2-1-2. システムの監視とトラブル対応をベンダーがやってくれる

自社のサーバー上にLMSを置いて運用する場合、当然ながらトラブル対応も自社で行わなければなりません。クラウド化すると、システムの安定稼動について責任を負うのはベンダーですので、トラブルの検知も対応も、基本的にはすべてベンダーがやってくれます。

例えば当社のクラウドサービスでは、監視システムを使い、専門スタッフがいつでもどこでもトラブルに対処できる体制をとっています。アクセス数の急な増加やそれに伴うトラブルについては、リアルタイムの監視状況や過去のデータなどから事前に予測し、先回りした対応を行います。

自社でシステムの監視体制を構築し、対応する人員を配置することを考えれば、コスト面でもリソース面でも効率的と言えるでしょう。

2-1-3. 他システムとの連携が容易である

企業内には、LMS以外にも様々なシステムがあります。オンプレミスのシステム同士を連携する場合、連携に必要なツールの用意も含めて対応は自社で行う必要があります。クラウドサービスの場合もツールは必要ですが、ここでもやはり、ベンダーのノウハウを活用することができます。ベンダーは基本的な連携方式を決めていますので、どのシステムとどんな情報項目を連携したいのかを伝え、提案してもらえばOkです。

例えば当社クラウドサービスの場合、データセンターにある専用サーバーとお客様のシステムをつなぐためのノウハウを提供しています。

連携の例が最も多いのは、人事データベースです。LMSを利用するためにはユーザー情報が必要ですが、これを手動でLMSに登録し、更新を行っていくのはなかなか大変ですし、登録するためにいったん個人情報をリスト化し、ファイルで管理する必要があるため、情報セキュリティ上の課題も発生します。そこで、LMSと人事データベースを直接つなぎ、そこに登録されている従業員の情報を日次でLMSに取り込むことで、運用の省力化と情報の一元管理が可能になるのです。

(イメージ)人事データ連携

当社では半数近いお客様がこの仕組みを利用されています。

また、逆に、LMSに保存される学習履歴や受講状況などのデータをお客様の管理システムに取り込むという運用をしているケースもがみられます。

これからは企業内の様々なデータをAIやBIなどを使って解析し、ビジネスに活かしていく動きが盛んになりますので、システム間の連携はさらに強化されていくことになるでしょう。(LMSの今後の方向性については別記事「eラーニングのトレンドから見える 人材教育におけるIT活用の進化」をご参照ください)

2-1-4. 大規模災害やテロ対策に有効である

筆者はこれがクラウド化の最大のメリットと考えています。クラウド、つまりシステムが雲のようになっているため、ふわふわとは行かないまでも、比較的容易に場所の変更ができるのです。

この「引っ越し」、実は東日本大震災以来、多方面から叫ばれている、DR(Disaster Recovery、災害復旧)と密接に関係します。大災害や大事故が発生して、サービスの提供が停止してしまっては一大事です。そのため、多くのクラウドサービス事業者が、リスク分散という観点から、システムやデータの管理が一つの拠点に依存し過ぎないよう対策をとるようになりました。引っ越しが容易にできる、というのは非常に重要なことなのです。

例えば当社のクラウドはこれまでに2回の引っ越しを経験していますが、システムとデータベースを全面的に引っ越しをするのではなく、拠点を増やし、バックアップ環境を使ってアクセス先を分散するような対応をとっています。例えば、あってはならないのですが、現在使用しているインターネットデータセンター(IDC)に飛行機が墜落してIDC全体が吹き飛んでしまったとしても、当社のサービスは継続できるようになっています。
リスクを分散するという点では、クラウドサービスを利用すること自体が災害復旧対策といえるでしょう。

完全にIDCに依存したシステムも多く見受けられますが、それではクラウドの意味がないと筆者は考えています。

こうした安定性を示すためには、「システム稼働率」という言葉が用いられます。eラーニングのクラウド化、またはクラウドサービスのリプレイスにあたっては、eラーニングベンダーにSLA(Service Level Agreement、サービス水準合意)の提示を求め、この「システム稼働率」を確認してみることをおすすめします。

ちなみに、当社Careership®のクラウドサービスでは、2015年度から2017年11月現在まで、稼働率100%を維持しています。ぜひ検討枠にご追加ください。

2-1-5. セキュリティ対策もベンダーがやってくれる

eラーニングに限らず、インターネットの利用にあたってはセキュリティが常に課題となります。
他の項目同様、オンプレミスの場合はその対策も自社で行わなければなりませんが、クラウドサービスの場合はベンダーが構築した体制を利用すればよいので手間がかかりません。

ベンダーは常に市場競争にさらされながら、高いセキュリティの実現を目指しているのが普通です。基準の設定から対策まで自社で検討してセキュリティ体制を構築するよりも、常に最新の動向を把握して対策を行っているベンダーを利用するほうが、合理的といえるでしょう。

一般に、IDCというのは常時にDDosと呼ばれるような標的型サイバー攻撃にさらされています。当社のIDCでも1日に数千から数万件の攻撃があります。IDCではこういった攻撃に耐えうる対策を常に取っているため、セキュリティレベルは非常に高くなっています。
また、当社では年に1回以上、Careership®の脆弱性診断テストを実施しています。

何重もの対策を実施しているクラウドサービスは、自社の管理下のシステムよりもむしろ安心して利用することができるでしょう。

2-2. クラウド化のデメリット

先ほど、eラーニングをクラウド化するメリットはデメリットを格段に上回る、と書きましたが、メリットだけを挙げるのはフェアではないと言われてしまいそうなので、ここでは敢えてデメリットも挙げてみたいと思います。

2-2-1. セキュリティ対策が不十分だと攻撃に弱い

先ほどクラウドはセキュリティレベルが高いと書きましたが、その対策を怠ると、逆にセキュリティレベルが低くなり、DDosなどの攻撃に対して極端に弱くなってしまいます。eラーニングベンダーを選定する際は、その対策レベルをしっかり見極めることが必要です。例えば、ウイルス定義の更新頻度や脆弱性診断の実施報告書などの提出を求めると、具体的な内容を確認することができます。

2-2-2. 自社のセキュリティレベルと合わない場合がある

セキュリティレベルは各社で異なります。既述の通り、競争にさらされているベンダーは高いセキュリティレベルを実現していますが、どうしても譲れない部分がお客様とベンダーとでは異なる場合もあります。セキュリティレベルは各社、各ベンダーのポリシーに関わってきますので、こういった場合は、別のベンダーにするか、オンプレミスという方法を選ぶ必要があるでしょう。

3. まとめ

いかがでしたか?
eラーニングをクラウド化するとはどういうことか、またそのメリットとデメリットについてみてきました。

クラウドサービスとは、インターネット上に置かれたソフトウェアやデータに様々な場所、端末からアクセスする仕組みのことです。

クラウド化のメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

  1. アクセス数の予測やそれに伴うシステムの管理を自社で行う必要がない
  2. システムの監視とトラブル対応をベンダーがやってくれる
  3. 他システムとの連携が容易である
  4. 大規模災害やテロ対策に有効である
  5. セキュリティ対策もベンダーがやってくれる

共通して言えるのは、自社のリソースを省力化しつつ高いサービス品質を実現できるということです。
管理・監視、トラブル対応、システム連携、災害復旧対策、セキュリティ対策等、システム運用には様々な管理業務があり、それらを円滑に行うためにはしっかりとした体制作りが必要です。
これらをすべてアウトソーシングできるようにしたのが、クラウドサービスなのです。

クラウド化のデメリットとしては、以下のようなものが挙げられますが、自社に最適なベンダーを選定すれば、よほどの事情がない限り対策が可能でしょう。

  1. セキュリティ対策が不十分だと攻撃に弱い
  2. 自社のセキュリティレベルと合わない場合がある

実は、本稿で取り上げたメリット・デメリットは、eラーニングに限った内容ではなく、クラウドサービス全般に当てはめることができるものです。
AI時代の到来を迎え、今後はこれまで以上に企業内システムの連携が積極的に進められ、データの統合・解析が行われ、ビジネスに活用されるようになっていくでしょう。人材の能力開発に関する情報も、その一環です。
究極的には社内のシステムがすべてクラウドサービス化されれば、すべての情報の連携が可能になります。

これを機に、ぜひeラーニングのクラウドサービス利用をご検討ください。

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