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〔ジンズ〕企業の急成長を支える店舗スタッフ教育とは? LMSを活用した仕組みを構築しCS向上を実現

店舗を通じてサービスを提供する企業が成長するとき、その企業は大きなチャンスと同時に、リスクにも直面します。例えば、店舗数の拡大にスタッフ教育が追い付かず、サービスの質が低下。結果として客離れが進み、好調だったはずの業績がみるみるうちに悪化、ということも往々にして起こりえます。そんなリスクを回避し、店舗サービスの質を維持・向上させ、成長に更なるドライブをかけていくには、どのようなスタッフ教育が必要なのでしょうか。

株式会社ジンズは2001年に1号店「JINS天神店」を出店しました。2009年に軽量メガネ「Air frame」、2011年には機能性アイウエアとして非視力矯正市場を創出したブルーライトカットメガネ「JINS SCREEN(旧 JINS PC)」などが続けてヒット。新規出店が急激に増える中で、店舗スタッフ教育を体系化し、LMS(Learning Management System、学習管理システム)によるスキル習得・管理の仕組みを構築・導入していきました。スタッフ教育がうまく回りだした結果、サービスレベルの底上げに成功し、顧客満足度も向上しています。

本稿では、株式会社ジンズ アイウエア事業部 店舗統括グループ 店舗教育推進 チームリーダーの茂呂貴史様、同 藤本早織様にインタビューを行い、LMSを活用し教育体系をどのようにして作り上げていったか、またその効果や、今後の展望についてお聞きした内容をまとめました。(※2018年9月より店舗人財開発グループに名称変更)

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1. 課題と背景:10日間の集合研修からはじまったジンズの教育制度

―お二人が所属する店舗教育推進グループでは、どのようなことを業務とされているのでしょうか?

茂呂様 店舗スタッフの教育に関わること全般の企画・運用をしています。もともとはジンズでは、新人スタッフを群馬県前橋市にあるセミナーハウスに10日間、集中的に研修を行い、あとは配属先の店舗でのOJTに任せる、というやり方で教育を実施していました。しかし10日もの期間スタッフを拘束するのはなかなか難しく、参加するスタッフの方から不満の声も上がっていたこともあり、その後、前橋での研修は3日間に短縮されました。そうすると今度は、やはり3日間では足りない、ということになってくるんですね。日数が減った分、当然店舗で教えるべきことが増えるのですが、お客様への対応をしながらのOJTなので、満足に教育ができる環境とは言えませんでした。

ちょうど会社も大きく成長している時期で、店舗数も拡大していたので、既存の教育運用では会社の成長速度・規模に追いついていかないという認識がありました。そこで、足りない部分を補えるよう教育体制をきちんと構築していこうということで、2013年6月に店舗教育推進グループが部署として立ち上がったのです。それ以降、店舗スタッフのスキルアップ、ステップアップの仕組みづくりや、業務でやるべきことの整理と体系化、研修・検定の企画実行とマニュアル・教材づくりなどに取り組んできています。

―大きな課題として、「会社の成長や店舗の拡大に合致した教育の仕組みづくり」があったということでしょうか?

茂呂様 そうですね。それまではサービスの基準や業務マニュアルと呼べるものが明確にはなかったので、各店舗が独自の経験値に応じてOJTを進めていました。すると、どうしても店長によって教育内容が左右されてしまいます。接客は得意だけれど、視力測定やフィッティングといった技術の部分が苦手という店長もいれば、その逆もいます。ジンズ全体でみると、店舗ごとにバラツキがあることも問題でした。

藤本様 店舗数の拡大に伴い、新卒採用の数もものすごい勢いで増えていきました。採用が増え始めた2010年には50~60人だったところから2018年には260人という規模です。これだけ人数が多いと、全員に教育が行き届かない場合もあります。また新人の方からしても、「聞きたいことがあっても、忙しそうだから聞けない」ということになります。「CAREERSHIP®」導入前は、従業員満足度調査の結果を見ても、「教えてもらえない」など教育に対する不満の声も上がってきていました。

売上・店舗数・販売本数の推移
※店舗数:国内店舗(直営、FC)は2017年8月末現在、海外店舗(中国・北米・台湾)2017年6月末現在


2. 構築:階層ごとに「何ができたらいいのか」明確化

―教育の体系化はどのように進められましたか?

茂呂様 他社の事例なども学びつつ、ジンズ独自に各階層の役割・職務を定義していきました。まずは、それまで個々人の頭の中にあった「何ができたらいい」「何ができないとダメ」という基準を明確化・表面化し、「エントリー」「ベーシック」「アドバンス」「エキスパート」の4階層(※現在は6階層)に分け、階層ごとのチェックリストを作成しました。そして、店長会議の場で内容を精査したり、ハイパフォーマーと言われていた人たちにも確認してもらいながら現場感があるものを、「JINSGRAM(ジンズグラム)」というマニュアルにまとめていきました。もともと社内向けのQ&A集のようなものとして存在していた「JINSGRAM」を、教育とも紐づいた内容に整備し、これが全社統一の基準となりました。

―LMS「CAREERSHIP®」の導入は、「JINSGRAM」を整備された後に進められたのでしょうか?

藤本様 「CAREERSHIP®」も「JINSGRAM」と同時並行で進めました。「JINSGRAM」で定義した階層ごとのチェックリストを確認でき、トレーニングを進め、店舗でテストを受け、本部での検定に合格すると1階層上のレベルに上がれる、という一連の流れを「CAREERSHIP®」内でできるように構築しました。

―教材開発において、こだわった部分はありますか?

藤本様 全体を通して意識したのは、新人スタッフでもしっかりわかりやすいように作る、ということです。小難しく作っても意味がないので、動画なども使い、とにかく見れば直感的にわかるものになるよう心掛けています。
また、当社は常に新しいことに挑戦する社風で、新商品も毎月複数出ていますので、商品知識を学習できるコンテンツをしっかり作り、店舗に情報を落とせるようにしています。具体的には、商品ごとに特性やラインナップ、提案の仕方(セリフ)などをまとめたものを作成しています。これを学習すると「CAREERSHIP®」の学習画面に星のマークがつくようにし、「星取表」として学習のモチベーションアップも狙いました。

これまで作成した商品知識コンテンツは「CAREERSHIP®」内にアーカイブされているので、ちょっとした空き時間を活用して自身のスマホで学習したり、大きな商戦時に本社の人間が店舗ヘルプに行く際などにもすぐに閲覧することができたりと、役立っていますね。

―商品の提案の仕方を動画に撮って店舗間で共有されている、と聞きました。

茂呂様 各店舗の中での取り組みとして、実際にロールプレイで商品提案をしてみたものを動画で撮影し、近隣エリアの各店舗に共有し、動画を見た他店舗のスタッフが「いいね」したり、コメントを残したりすることができるようになっています。商品の提案方法は、本部が提示するやり方だけが正解なのではなく、その他にも良い方法やパターンがあると思います。そういった良い取り組みをスピーディーに横展開するための仕組みですね。

―その他に特徴的な教材はありますか?

藤本様 店舗内の様子を360度カメラで撮影した写真を見せ、複数のお客様がいらした際に、どのお客様からどのようにお声をかけるべきかを学ぶ教材を追加しました。店舗にいらっしゃるお客様は、明確に購入の意思をお持ちの方もいれば、ちょっと覗いてみただけの方もいて、さまざまです。お客様の動きからニーズを読み取り、適切な順番でお声がけをするという行為は、ベテランのスタッフであれば経験値でできています。しかし、新人にとっては判断基準が見えづらく難しいものですので、それを可視化し、店舗全体を見渡してどう動くべきか、どうお客様に満足していただく店舗になるかの基準をよりリアルに示せるように作成しました。


3. 運用:店長を巻き込み、時間をかけて全社に浸透

―教育体系や「CAREERSHIP®」を活用した仕組みが出来上がり、運用はすんなりと進んだのでしょうか?

茂呂様 新人に関しては新しい仕組みに沿って教育を進めればよかったので、問題なく運用開始できました。先輩に聞かなくても、ある程度自分で学ぶことができるセルフトレーニングの環境がしっかりと構築できたので、「教えてもらえない」という不満は確実に減っています。新人研修の場でも、「一からこれを覚えていけばいいのでわかるやすい」「困ったときはこれを見ればいいので助かる」といった声を聞けるようになりました。

ただ、既存メンバーについては、既に各自のやり方が浸透していたので、できることをなぜもう一度学ばなければいけないのかという考えもあり、難しい部分もありました。もちろん、マニュアルがすべてではないし、ちゃんとできるなら、それはそれで構わないという考え方もあります。しかし一方で、新人は基準に沿って学習しているのに、ベテランは違う事を言う、という齟齬も生じてきて、やはり全社統一した基準をまずは理解してもらうべきだと考えました。

―具体的にどのように浸透を図っていったのでしょうか?

藤本様 店長を巻き込んでいかないと現場には浸透しないだろうと考えていたので、まずは本部から各店舗を統括しているエリアリーダーを通じて、店長たちに必要性を理解してもらえるよう働きかけをしました。さらに、店長に率先して検定を受けてもらうことを進めました。「エントリー」階層のレベルからすべての検定に取り組んでもらうのは大変なので、要点をかいつまんだパックのようなものを用意して受けてもらいました。全体に行き渡るには1年半くらいの時間を要しましたが、丁寧に進めていきました。


4. 効果:スキルの見える化でサービスレベル・CSが向上

―LMS導入の効果をどのように評価されていますか?

茂呂様 スタッフのスキルを「見える化」できたのが、一番大きいと感じています。LMS導入以前は、店舗単位でしか管理できていなかったのが、個々のスタッフが「どんな階層にいて今何をどこまで習得しているか」ということがわかるため、本部・エリアリーダー・店長とが連携して教育を進めやすくなりました。
また、スタッフ側からすると、自律的に目標を立てやすくなってきています。たとえば新人が「入社半年後までに『ベーシック』取得を目指します」というように、具体的な目標を掲げてスキルを習得していく行動も見られるようになりました。

―顧客満足度の向上への貢献、という面ではいかがでしょうか?

茂呂様 教育の仕組みがうまく回りだしたことで全体のサービスレベルが向上し、顧客満足度(CS)調査でも良い結果が出るようになりました。具体的にCSスコアを見ていくと「ニーズに沿ったメガネの提案」ではマイナス1.1%から約1年半で3.7%へ、「安心できる視力測定」の項目では5.4%から8.0%へ、「メガネの掛け具合の調整」では6.2%から10.3%へと上昇しています。この結果は店舗のスタッフでも閲覧できるようになっているので、効果を自分たちでも実感しながら、さらに店舗運営に活かしていくという流れが、仕組みとしてできるようになっています。


5. 今後の取り組み:成長が楽しくなる仕掛けを作っていく

―今後はどのような事に取り組んでいきたいと考えていますか?

茂呂様 接客や技術の基準ができ、スキルを習得してもらうための仕組みができたことで、教育としては次のフェーズに入ってきています。私個人の考えではありますが、スタッフの成長を考えた時に、(1)スタンス、(2)スキル、(3)経験の3つの要素が重要だと考えています。

(1)スタンスというのはスタッフのあり方。ジンズでは「Magnify Life(マグニファイ・ライフ)」というビジョンを掲げ、メガネを通してお客様の人生を豊かにしたいと考えています。そのために、個々のスタッフが、まずは「お客様に喜んでいただきたい」「満足していただきたい」というスタンスでサービスを提供できているか、ということが大事です。(2)のスキルの成長支援に関してはこれまでお話ししてきたように、うまく運用できていると思います。

そして(3)経験というのは、さまざまなタイプの店舗を通じて、目の前のお客様にどう接するべきか、店舗全体を見渡していかに多くのお客様の満足度を高められるかなどを学んでいくこと。3つの要素全てに関わってくるのがモチベーションだと思っていて、どのようにしてスタッフのモチベーションを向上・維持できるかというのが次のフェーズの大きな課題であると感じています。

具体的な取り組みとしては、より深い知識や技術の習得と高いサービスを目指してもらえるように、「マイスター」という新たな階層を設け、マイスター取得者にはメガネの一大産地である福井県鯖江市での研修機会を与える、というような取り組みも試しています。これはこれで成果をあげていますが、一方で、じゃあ鯖江に行けない人はどうなるのか、という課題もあるわけです。そう考えた時に、たとえば「CAREERSHIP®」の中で何かを習得するとか他の社員に認められるとポイントが付いたり、画面の中でキャラクターが成長していく様子が見えたりというような、日常の業務の中でモチベーション維持の仕掛けができないかと考えていく必要があると思います。

藤本様 私たちができるのは成長のための環境整備やきっかけづくりまで。あとは個々のスタッフがモチベーションを下げずに取り組んでいってもらう必要があります。とはいえ、楽しめないと本気になれないと思うので、スタッフを後押しするためのワクワクするような仕組みや仕掛けづくりについて今後も考えていきたいと思っています。


まとめ

常に新しいことに挑戦していく変化の多い会社。そんなジンズの中にあって、スタッフ教育の取り組みは5年間同じ仕組みの上に積み重ねられ継続している、社内でも珍しい存在だというお話を伺いました。それは、この仕組みが、「Magnify Life」というビジョンをスタッフがどう体現していけるかというスタンスを軸に構築され、会社の方向性の変化に応じて発展していける仕組みになっているからではないかと感じました。

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