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事例:利用率が12倍に!マイナーな存在だったeラーニングから 成長を後押しするLMSへの転換を成功させた4つの要因〔アサヒビール〕

時間やエリアの制約なく実施可能なeラーニングは、企業における効率的な教育の手法として広く認知されるようになりました。社員3,000人以上の会社での実施率は95%以上にのぼるとも言われています[1]。 しかし、実際の利用率や活用度合いとなるとどうでしょうか? コンプライアンスやハラスメントなど、全社への啓蒙・啓発が必要なものを除けば、イントラネットにeラーニングの教材は置いてあるけれど、多くの社員が知らない/使っていないという企業も少なくないのではないでしょうか。

アサヒビール株式会社でも、社員3,200人に対してeラーニングの閲覧状況が月平均でわずか500PVというような状況が長く続いていました。ところが2018年1月にeラーニングシステムを一新。CAREERSHIP®をベースにしたポータルサイト「Career Palette(キャリアパレット)」をオープンすると、月平均PVは12倍の6,000PVに拡大。さらに、増え続けているといいます。なぜ、そのような利用率の拡大が実現できたのでしょうか。 アサヒビール株式会社 経営創造本部 人事総務部 副課長の村瀬進様に、その成功の秘訣を聞きました。

[1]日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)が2016年4月に発表した調査結果による
https://japan.zdnet.com/article/35081366/


1. 背景と課題:月平均500PVだったアクセス数

―「Career Palette(キャリアパレット)」以前は、どのようにeラーニングを運用され、どういった課題をお持ちだったのでしょうか?

村瀬様:2011年7月のアサヒグループホールディングス設立前後10年に渡って、他のベンダー様のeラーニングシステムを使用していました。受講者管理や教材の登録、履歴の抽出まで全てベンダー様任せにしていたので、eラーニングに関して我々人事部がやっていることといえば、ランニングコストの支払いと社員登用時のコンテンツ登録依頼くらいでした。ただ、eラーニングの利用率の低さや、教材の中身が社員の自己研鑽に耐えうるものか、といったことが度々話題にのぼっている状況がありました。

―その頃の利用率は、どれくらいだったのでしょうか?

村瀬様:当時4,500IDくらいが登録されていたかと思いますが、月平均で500PVほどでした。副主任登用やプロデューサー昇格に必要な“やらざるをえないもの”がある時には一時的にアクセスが上がりましたが、平時はほとんど動きがありませんでした。ログインしてから実際の学習画面に到達するまで、8クリックくらい必要だったのも、社員をeラーニング利用から遠ざけていた要因のひとつかもしれません。


2. 新システムに求めた3つのコンセプト

―新システムへのリニューアル・プロジェクトはどのように進められたのでしょうか?

村瀬様:本格的に取り組もうとなったのは2016年のことで、そこから課題を整理したり、いろいろなベンダー様と会って話を聞いたり、ということを始めました。

―新システムの要件は、どのようなものでしたか?

村瀬様:新システムは、我々の理想と戦略を形にするため、3つのコンセプトを基準に検討していきました。(1)ビュッフェ型からデリバリー型へ、(2)クローズド型からオープン型へ(3)自社固有的から汎用的で柔軟性の高いものへ、の3つです。

―それぞれどのようなことを意図されたコンセプトなのでしょうか?

村瀬様:まず、「(1)ビュッフェ型からデリバリー型へ」ですが、従来のシステムは、「広くあまねく教材を用意しておくから、好きに取りに来てください」というスタンスで教育機会を提供するビュッフェ型でした。それを、個々人に最適化するよう設計し、今の自分にはどんなスキルが必要で、そのための教材のラインナップはこれですよ、というのを職種×ステージごとに明確にし、該当する社員に届けていくようにするのがデリバリー型です。

村瀬様:「(2)クローズド型からオープン型へ」というのは、これも旧システムに起因するのですが、以前のeラーニングシステムでは、コンテンツ(教材)を作りこんでいるために、他の会社のコンテンツを使うことができませんでした。働き方改革が進み、高い生産性が求められる変化の激しい今の時代にあって、eラーニングコンテンツも見直すべきではという問題意識のもと、1社の教材だけで閉じているのではなく、さまざまなベンダー様の、より良い教材をラインナップできる、オープンなシステムが望ましいと考えました。これは、3つめの「汎用的で柔軟性が高い」というのにもつながりますね。また、汎用的というのは当社の場合、アサヒグループホールディングス傘下(以下HD)のグループ企業でも共通の教育基盤として使えるようにという意味もありました。さらに、各部門のニーズに迅速かつ柔軟に対応できることも求められました。

―数あるベンダー様の中から、なぜライトワークスをパートナーとしてお選びいただいたのでしょうか?

村瀬様:いろんなベンダー様に会って話をしてみると、何タイプかに分かれることがわかってきました。コンテンツ重視のベンダー様、システム基盤重視のベンダー様など、さまざまです。その中でライトワークスの提案は、3つのコンセプトに最も合致していました。レスポンスの良さや、熱量と遊び心も含めて、我々がやりたいことを具現化するような提案をしてくれたことが、パートナーとしての信頼感や期待にもつながったと思います。


3. 開発過程:社員の今とこれからを見据えたシステム設計

―ライトワークスのLMS(学習管理システム)を採用するのが決まったのが2017年の夏ごろ。そこから翌年1月のカットオーバーまで、かなり短期間でシステム構築を進められました。システムやコンテンツの開発の内容や、そのご苦労などを教えていただけますか?

村瀬様:大変だったのは、グループ各社を巻き込んでいくこと。それから、アサヒビール内のことで苦労したのは、既存のHRシステム(データ)との連携ですね。HDの担当者と一緒に各社を回り、新システムの説明を1社1社やっていきました。グループ会社には、それぞれの育成方針や社員の雇用形態があり、それらとアサヒビールがやりたいことやHDが各社に求めるものとの調整が必要でした。また、全社共通のものを作ろうとしすぎると、それぞれのやりたいことが薄まってしまうので、バランスを見ながら新システムに盛り込む内容を精査していきました。アサヒビール内でのHRシステムとの連携は、どのデータを連携するのがよいのかを見極めつつ、粛々と進めていく作業でしたね。

―コンテンツの開発についてはいかがでしょうか?

村瀬様:アサヒビールでは20数種類の職種に対して、それぞれ3つのステージ(※)を掛け合わせた「ジョブディビジョンスキル表」というものがあり、この職種でこのステージだったら、このスキルが必要というのが体系化されています。ですので、ジョブディビジョンスキル表に合わせて、具体的な教材を当て込んでいき、メニュー化をしていきました。

(※)ジョブディビジョンスキル表の3つのステージ

ステージ1土台形成期入社~3年目くらい
ステージ2強み形成強化期4年目くらい~管理職手前まで
ステージ3強み深耕期管理職以降

例えば、マーケティング系の縦のラインで考えると、強み形成強化期には当然マーケティングやファシリテーションなどの知識が必要、という具合に、横軸(職種)と縦軸(ステージ)で整理していきました。この整理を行う事で、「今あなたはこのスキルを習得する必要がありますよ」と教材を提供(デリバリー)できるようになりました。ジョブディビジョンスキル表に基づくスキルマップの整理は他にも利点があって、今現在のことだけではなく、今後のキャリア形成において、たとえば今は営業だけどマーケティングに行きたいとか、人事だけれども営業に行きたいなどと考えている人にも、漠然と「行きたい」と思うだけではなく、具体的に何を準備すべきか指針を示せるようになりました。これは、キャリアを作っていきたい人をバックアップする、という我々の思想とも合致しています。

―社員を管理したり、ルールに当てはめたりするのではなく、社員の自由な発想を伸ばし支援するという考え方ですよね。

村瀬様:はい。キャリア形成支援の観点では、「シゴト人(にん)」というコンテンツも作成しました。これはアサヒビール内のさまざまな職種の人を紹介するサイトで、「Career Palette」からアクセスできるようになっています。その人がどういう経歴か、今の職種はどんな仕事でどんなスキルを持っているか、業務経験から何を得たのかなどを知ることができます。全国で社員一人ひとりと面談をしてもらっているキャリアアドバイザーの方々にも、面談時に「シゴト人」を紹介してもらっています。

アサヒビール内のさまざまな職種の人を紹介する「シゴト人」


4. 効果:利用率は12倍に!広がる活用の幅

―「Career Palette」導入後の効果はいかがでしょうか?低利用率の問題は解消したのでしょうか?

村瀬様:導入後はアクセス数で月平均6,000PVほどになりました。導入前の12倍ですね。ログイン数は月平均4,090回。社員数が3,200名ですから、全社員が月に1回以上はログインしていることになります。こんなに社員の認知度が高いeラーニングシステムはないんじゃないかと思うくらい、2018年は多くの社員が「キャリパレ(Career Paletteの略称)」を話題にしてくれました。

―そのような成功の秘訣は何だと思いますか?

村瀬様:システムの使い勝手の良さやコンテンツの充実ももちろんですが、それらに加えて、(1)社員のニーズを踏まえた計画的な情報発信をしたこと(2)リアルな学びやキャリア形成と連携した活用方法が広がっていったことも要因として挙げられると思います。

―どのように情報発信をされたのですか?

村瀬様:まず「Career Palette」の導入にあたっては、1カ月ほど前から全社通達を行い、2018年1月のオープン時には、「Career Palette」からアクセスできるオンライン英会話やMBA基礎などの有償講座の費用を半額キャッシュバックするというキャンペーンを実施しました。ちょうど1月は人事制度上、年間の個人目標を立て、今年はどんな自己研鑽をしようかと思い描く時期ですから、そういったキャンペーンを実施して、学びたい気持ちを後押しするのに適した時期です。また先ほどの「シゴト人」のサイトも、9月の定期異動に見据えてキャリアデザインシートを記入する5月ごろに合わせてオープンしました。やろうかなという気持ちが高まるタイミングに合わせた情報発信を意識しています。実際に、「シゴト人」を読んでキャリアデザインシートの参考にしたという声も上がってきていて、効果が出ているのを感じています。HRシステムとも連携した「Career Palette」を導入してから、社員の状況をリアルタイムで見ることができるようになったので、迅速な計画立案にも役立っています。

―「リアルと連携した活用方法の広がり」とはどういう事でしょうか?

村瀬様:例えば、営業部門では職種ごとに階層別でスキル研修を行っています。今までは対象者は一律に研修に参加させていましたが、事前に「Career Palette」内に設けられた40問ほどのテストで8割以上正解するまでは参加できないというような運用を導入しました。リアルな場である集合研修に参加する全員がベースの知識を持って臨むことになり、研修の効果も相乗的に高まっています。また、新入社員と、その先輩社員(ブラザー・シスター)とのOJTの場面でも、新入社員の“今”の到達点を「Career Palette」で把握しながら進めることができ、より個々の状況や理解度に応じた指導ができるようになりました。

「Career Palette」の画面。
学習の進捗が一目で把握できるほか、おすすめコンテンツも見られる

―その他、想定外の効果はありましたでしょうか?

村瀬様:いざ「Career Palette」をオープンしてみると、いろいろな部門から「これもCareer Paletteでできないか」という相談がたくさん届いて驚きました。各部門からの反響があって気が付いたのですが、CSRや法務部門などの、全社を対象とした情報啓蒙をしている部署では、それぞれ異なるシステムを導入していたことがわかりました。それらの多くを「Career Palette」という1つのシステムに集約できたので、利用者にとっては使い勝手がよくなり、また管理運用者にとってはコスト削減につながっています。正社員だけなく、契約社員などの異なる雇用形態の社員もカバーできるようになり、利用の幅や導入効果も当初の想定以上に広がってきています。まだまだ、「Career Palette」に載せられるものはたくさんあると思うので、今後も社員のニーズにあわせたコンテンツや機能を増やしていきたいです。


5. 今後の取り組み

―今後は「Career Palette」をどのように発展させていきたいとお考えですか?

村瀬様:「なぜ学ぶのか?」それは、社員が自分自身の成長のために、より自分らしいキャリアを形成するために主体的に学ぶものだと思っています。その意識のもとでやるのと、言われたからやるのでは学習の効果も違ってきます。大きな方向性としては、このようなキャリア意識をさまざまな職種・さまざまな立場の社員が持てるように「Career Palette」を拡充していきたいと思っています。「Career Palette」が単なる“学びの場”を超えて、“キャリアを作っていく場”となることを目指しています。

村瀬様:具体的には、2つの取り組みを準備しています。1つは、学習意欲を駆り立て、積極的に学ぶ人を評価し還元する仕組みです。学習状況に応じてポイントを付与し、更なる学習に利用できるようなものを想定しています。2つ目は、1on1のキャリアカウンセリングや「シゴト人」で紹介したメンバーとのSkype面談などを「Career Palette」上で実現することです。


6. まとめ

アサヒビールの「Career Palette」が、“使われるキャリアポータル”になった秘訣を改めて整理してみると、(1)社員の今とこれからのキャリアを支援するコンテンツやデリバリーの仕組みを構築したこと、(2)多機能で柔軟性が高く運用者・学習者双方にとって使い勝手の良いシステムであること、(3)社員の“学びたい”気持ちの高まりを意識した計画的な情報発信を実施したこと、(4)eラーニングの利便性とリアルの学びの良さをうまく掛け合わせた教育ができていること、の4つが要因として挙げられます。個々の社員がキャリアを考える際にまず開くダッシュボードとして、拡充・進化していく「Career Palette」から学べることは、今後もまだまだ増え続けていくのではないでしょうか。

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