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“無意識のバイアス”を明らかにして全社的な意識改革へ!ダイバーシティー推進の極意

女性活躍推進法の施行から2年が経過しました。ダイバーシティーや女性活躍推進の認知は広がる一方、その取り組みの効果が社内になかなか浸透しない、という企業も多いのではないでしょうか?

特に、女性従業員の割合が低い業界や男性中心の組織風土が根付いた会社では、ダイバーシティーの必要性そのものが理解されにくい傾向があります。全社の意識をどう変えていき、結果を出していくか、苦心されている担当者もいらっしゃることでしょう。

今回ご紹介するのは、光ファイバ・電線ケーブル・自動車部品など、暮らしを支えるさまざまな分野に製品や技術を提供する古河電気工業株式会社。従業員の女性比率が低い非鉄金属製造業分野にありながら、2017年度までに女性活躍を後押しする以下の施策を実施しています。

・「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」行動宣言[1]への賛同
・ポジティブ・アクション宣言[2]
・イクボス宣言[3]

しかしながら、ダイバーシティー推進室が発足した2014年度当時を振り返ると、その活動への社内理解は浅かったといいます。

本稿では、古河電気工業(以下、古河電工)のダイバーシティー推進のあゆみを辿りながら、活動の中で見えてきた課題と、解決のための取り組みについてまとめました。お話を伺ったのは、戦略本部 ダイバーシティー推進室、高木室長、鮫島様のお二人です。


1. ダイバーシティー推進活動のはじまり
~女性への配慮がキャリアアップを阻んでいた矛盾や“無意識のバイアス”が浮き彫りに~

―古河電工のダイバーシティー推進活動は、どのようにスタートしたのでしょうか?

鮫島様:2010年から女性活躍を進めるNPOに参画し、さまざまな企業の女性幹部や幹部候補生の方と交流する機会を得ました。他社の状況についての見識も深まる中で、当社でも専門部署を作って進めていった方が良いのではという声があがるようになり、2014年にダイバーシティー推進室設立に至りました。

推進室設立後、本格的に女性活躍推進に取り組む上で、礎となった活動がありました。当社は男女雇用機会均等法の施行前から、少数ながら女性総合職を採用しており、彼女たちの間で自発的に「乙女の会」という非公式ネットワークが生まれました。「乙女の会」の活動は続き、やがて、女性従業員総数の増加に伴い、全社規模の活動としてはいったん自然消滅したものの、その後も拠点毎などのグループ単位での活動は続いていました。この「乙女の会」の素地が、ネットワークを再構築する際に大きな力になりました。ちなみに、当初の「乙女の会」ネットワークの中心であった田中雅子はその後もさまざまなダイバーシティー施策の推進に関わり、2015年に当社初の女性執行役員となっています。

―推進室設置の際は、全社的に「ついに来たか」と歓迎する雰囲気だったのでしょうか?

鮫島様:いえいえ。ダイバーシティー推進室の設置後、201410月に女性活躍推進活動を「Furukawa “V” Challenge」と名付けてスタートし、女性活躍推進のストレッチ目標を掲げたり、社内広報活動や従業員意識調査を実施したり、まずは推進室を知ってもらう機会を増やしました。2015年には社内の女性同士のネットワーキング活動を進め、役員層も出席する全社イベントを実施しましたが、その頃はまだ、社内全体に「ダイバーシティー推進を実施している」という意識は浸透していなかったと思います。

―従業員意識調査は、2014年から実施されていますね。どのような事を重点的に調査しているのでしょうか?

鮫島様:仕事のやりがいや継続的に勤務したいか、出産や育児などのライフイベントに対して経営層・上司や同僚がケアしてくれる風土があるか、などの項目で、経営層も含めた男女の従業員を対象としており、男女の結果に差が出るかどうかを見ています。それに加えて、その時々で実施している施策や重点目標に応じた内容も盛り込んで、取り組みの成果を検証するようにもしています。

高木様毎年調査をするので、施策直後の効果だけでなく、その施策が根付いたか、というようなことも見るようにしています。

―従業員意識調査の結果から、どのような気付きがあったのでしょうか?

鮫島様:もともと当社は人を大切にする社風があり、これまでも優秀な女性は管理職に登用してきていました。2014年に女性のライン長(部下を持つ管理職)の数を2倍にしようという数値目標を設定しましたが、なかなか数値の伸びがない、優秀と思われる女性従業員が管理職になっていない、という状況がありまして。それはどうしてだろうかと。

高木様:意識調査を見てみると「管理者志向」というところでは男女差がないのに実態はそうなっていない。また、仕事には同程度にやりがいを感じているのに、「成長機会が与えられるかどうか」とか「上位職や他の部門の方との交流があるか」など、成長や育成に関わる項目で分析してみると男女で数値に差があることが見えてきました。

鮫島様:さらに、「配慮されているかどうか」という点では、女性の方が男性よりポイントが高い傾向がありました。自由回答へのコメントなども合わせて見ていくと、配慮をされ過ぎていることが、女性のキャリア育成を阻んでいるのではという仮説をたてたのです。

―配慮され過ぎている、とはどういう事でしょうか?

鮫島様:たとえば出産から5年、10年経って、本人はもっと仕事をしたいと思っていても、育休復帰後と同じようなケアをずっとされている、というような状態ですね。

高木様:もともと「もっと上に行きたいです」というようなキャリアに関する意向をあまり表に出す社風ではないので、上司としても、部下の女性のキャリア志向に気付けないままだったんですね。本人も子育てに配慮してくれる上司や同僚に遠慮があり、伝えづらかったのかも。この業界は特に女性比率が少ないため、上司も女性部下の育成が難しく、本人も上司も意図せずキャリアが停滞してしまっている例があるのではと。

鮫島様:そういう実態がわかってきて、私たちとしても積極的に関与して「この人を管理職にするためにどうするべきか」というようなことを計画的に考え、進めるようになりましたね。

―具体的にはどのような施策を実行されたのでしょうか?

鮫島様:管理職登用については、候補者女性の上司と人事の3者面談を行い、対象者上司への意識付けを行っています。また、当社では年に1回、上司と部下とで今後のキャリアについて面談する機会を設けているのですが、その面談でお互いが遠慮せずに話ができるよう、「ワークライフデザインシート」という仕事のことだけでなく、ライフプランについても話せるツールを導入しました。部下の方は、このシートの項目を記入することで自分の希望を伝えやすくなり、上司の方は、シートの項目に沿って話を進めればよいというものになっています。また、人事部と共同で「ジョブローテーション公式ガイドブック」[4]を作成し、社内の職種への理解を深めるツールになっています。

高木様:その他でいうと、上位職や他部門の従業員と交流したり、関係を築く機会が少ないという状況を受け、「メンター制度」という施策を2015年度から実施しています。通常のメンター制では1対1が一般的ですが、当社では役員がメンター、女性と男性の部課長職1名ずつがメンティーとなる3人1組のチームを作り、年間4~5回、毎回約2時間程度、自由なテーマで活動してもらっています。課題図書を選んでディスカッションをするチームもあれば、別のチームと合流して活動するチームもあったり。また、当初は3人1組の活動が基本ですが、やはり個別のコミュニケーションも必要ということで、平行してメンターとメンティーの1on1も実施しています。これまでにはないネットワークが生まれ、メンティー、メンター双方にとって気付きの多い施策となっています。

―若手女性従業員のネットワーキング活動とは、どのようなものでしょうか?

鮫島様:組織や職種を超えたネットワーク構築を狙いとしたプログラムです。グループ会社も含む全事業所の若手女性従業員約70名を集め、2015年に開始しました。「家庭と仕事の両立」「キャリア形成」「時間創出」「働き方改革」という4つのテーマのチームに分かれ、日ごろやりとりがない従業員同士で、課題や改善案について話し合ってもらいました。

高木様:誰がイニシアチブを取るかなど、最初は戸惑いもありつつのスタートで、難しさもありましたが、結果としてはいろいろな議論を深めることができましたし、20167月に役員や管理職に向けて「Vチャレ!!フォーラム」という活動報告会も実施でき、いったんこの形では成果を出すことができました。

―ネットワーキング活動や活動報告会で印象に残っていることはありますか?

鮫島様:私自身も1つのチームに参加していたのですが、活動報告会で「出張などでお土産を買ってきたときに、『これ配っといて』と女性に託すのはどうしてだろう?」という投げかけをしました。本人が配った方が社内のコミュニケーションは深まるだろうし、誰かに託すにしてもなぜ男女問わず例えば一番若手の従業員とかでもなく女性なのか、そこに無意識のバイアスというか性別による役割分担みたいなものが存在しているのではないかと。この話を全社に向けてした時に、「なぜそこまで突き詰めなければいけないのか」、「(男性)役員にそんなことまでさせるのか」など、男女問わず賛否両論含め、さまざまな意見がありました。

―それは、そういう無意識のバイアスに関する象徴的なお話ですよね?

鮫島様:そうなんです。この「お土産をどうすべきか」に対する正解がどうだ、というわけではなく、そういう、“性別と役割分担”に関して、「女性はサポート的な役割」という風に無意識的に刷り込まれていることがさまざまあって、その無意識のバイアスが結果的に男女の成長機会の差や活躍の差を生み出しているのではないか、と。1つの正解があるお話ではありませんが、そういう事を考える機会にはなったのかなと思います。

―そこまで深掘りして話ができたというのが貴重ですね。この、女性のネットワーキングの取り組みは継続して実施されているのでしょうか?

鮫島様:はい。取り組みとしては毎年続けています。ただ、活動の目的も少しずつ変化していて、当初はとにかく女性従業員のネットワークを広げようという事で、実務上の関係性に関わらずグルーピングをしていたのですが、現在は、事業所ごとの状況も踏まえた課題が解決できるように、実務に即したネットワーキングになってきています。


2. 意識改革を実現するために
~「女性だけのもの」という思い込みを払しょくし、全社を巻き込んでいく活動へ~

―冒頭のお話で、2014年、15年あたりは、まだ「ダイバーシティー推進」が全社的に浸透していなかったとのことでしたが、その後はどのように広げていったのでしょうか?

鮫島様:経営層に向けては、外部講師を招いて講演会を開催したりもしましたが、やはり先ほど述べた「Vチャレ!フォーラム」で女性従業員からの生の声を聞いたり、社内の女性の継続勤務の意識がデータとして示されたことがとてもよかったようです。

高木様20代の若手女性従業員が役員にプレゼンする機会なんて通常業務ではほぼありませんから、プレゼンテーションやデータを集めて取りまとめるスキルを目にし、役員たちが「女性活躍」の意義を実感する良い機会にもなったと思います。

鮫島様2016年には会長・社長以下の全役員と、すべての管理職層を対象に「ダイバーシティー&インクルージョンとは何なのか」について腹落ちしてもらうことを目的としてeラーニングを実施しました。それまで、女性の部下のいる管理職とは個別にやりとりをしていたのですが、それ以外の方には全社向けの広報という形でしか発信できていませんでした。eラーニングで対象を全管理職にしたことで、一気に理解が広がった感がありました。

高木様eラーニングだと個別に受講状況が確認できるので、その状況を確認しながら、受講促進を行って、最終的には95%という高い受講率まで到達できましたね。

鮫島様eラーニング施策とあわせて、社長はじめ役員層から積極的にメッセージを発信してもらったり、年度初めの経営方針発表の中に必ずダイバーシティーについて盛り込むようにしたことも大きかったです。

―女性の比率が少ない会社で、意識改革を進めていくには苦労もあったのではないですか?

鮫島様:大多数が男性なので、どうしても「自分事化」しづらいというのはありますね。「若い女性に向けた活動」や「子育て中の人向けのもの」で自分とは関係ない、と感じている方も多くいました。

高木様:女性だけを対象とした活動だとなかなか理解されにくいということで、なぜ女性の活躍を後押しする必要があるのか、本人達のための活動ではなく、多様性を受容し生かす風土醸成や意思決定層の多様化により組織全体の成果を上げることが目的であるということを丁寧に発信していきました。また、推進室の名称も「女性活躍」ではなく、敢えて「ダイバーシティー推進室」としています。

鮫島様:ダイバーシティー推進室のミッションとして、以下の3本柱を掲げています。

  • ダイバーシティー&インクルージョンの意識啓発
  • 女性活躍推進
  • 自律的なワークライフマネジメント

その上で、女性活躍だけでなく男性の育児参画や仕事と介護の両立支援といったテーマも取り上げ、男性従業員にとってもダイバーシティーの重要性を理解してもらえるように活動しています。実際に、男性の育児の座談会を実施してみたところ、共働きが当たり前の時代で男性従業員も育児をしたい・しなければいけないのに、なかなかそれが難しいということがわかりました。そこで、男性向けの育児に関するハンドブックを作成しました。

高木様:男性従業員の関わり、という事でいうと、介護をテーマにしたことは大きかったですね。

鮫島様:今現在、介護休業を取得している従業員というのはほとんどいないんですけど、近い将来、爆発的に「仕事と介護の両立」が問題になる、というのは誰もが感じています。2017年度に実施した「仕事と介護の両立セミナー」には、希望者に自由に参加していただいたのですが、約200人もの参加があり、参加者の満足度も98%という高い数字でした。

高木様:育児や介護という観点で見ても、男性の中にも本当は多様性があるのに、均一さを求められている、強いられているという実態を見えるようにして、最終的には男性女性関わらず多様な人が活躍できる、というところを目指していきたいです。


3. ダイバーシティー推進に取り組む他社に向けて

―これから本格的にダイバーシティー推進を進めていきたい、もしくはなかなかうまくいかずに苦心しているという企業に向けて、アドバイスはありますか?

鮫島様:アドバイスなんて……むしろ教えていただきたいくらいです。私たちも「この施策はうまくいったな」「これはあんまり効かなかったな」ということを繰り返しながら進めていますから。

高木様大切なのは「社内に向き合うこと」だと思います。会社によって状況も課題もさまざまだと思うので、先進企業の取り組みのエッセンスを学びながら、自社の状況や課題に合わせて取り入れることが大切。私たちも他社の取り組みを参考にしながら、とにかく社内に向けてトライ&エラーを繰り返しながら、多様な働き方を支援できるような方向に少しずつ近付けていっています。

―ワークライフバランスについての考え方も年代によって随分違っているのではないでしょうか?

高木様:確かに年代によってご自身が経験されてきたものと違うという事はあるのですが、その経験があるからこそ今の時代はもっと働きやすいようにと考えてくださる人もたくさんいます。ダイバーシティーの重要性について100%理解していただけるというのは現実には難しいのですが、賛同してくださる方を少しずつ巻き込んでいくことで、変化していくというのはあると思います。


4. まとめ

これまでの取り組みについてお話を伺うと、女性従業員たちの声を聴く、実態を浮き彫りにするところから始まって、「ダイバーシティーの重要性」を社内に“腹落ち”させるためのさまざまな施策を丁寧に実行していった様子がよくわかります。

特に、施策を経営層・管理職・全社というレイヤーに分けて、女性従業員からのプレゼンテーション、eラーニング、トップからのメッセージ発信、さまざまなツールづくりや機会提供など、それぞれのレイヤーや目的に合う手法で実施し、意識を変えていったり成果を上げていったという部分は、学ぶところが多いと感じました。

[1]「輝く女性の活躍を加速する男性リーダーの会」行動宣言は、組織のトップを務める男性リーダーが、さまざまな女性の意欲を高め、その持てる能力を最大限発揮できるよう、「自ら行動し、発信する」「現状を打破する」「ネットワーキングを進める」ことを宣言するものです。 <http://www.gender.go.jp/policy/sokushin/male_leaders/index.html>

[2] 厚生労働省が後押しする取り組みで、企業における男女の活躍の差を解消するために、個々の企業が現状分析・取り組み計画の策定・実施、成果の点検と見直しを積極的に行うことを宣言するものです。<http://positiveaction.mhlw.go.jp/>

[3] イクボスとは 「職場で共に働く部下・スタッフのワークライフバランス(仕事と生活の両立)を考え、その人のキャリアと人生を応援しながら、組織の業績も結果を出しつつ、自らも仕事と私生活を楽しむことができる上司(経営者・管理職)」のことを指します。イクボス宣言は、NPO法人ファザーリングジャパンが行っているもので、イクボスとしての宣言を対外的に行うものです。<http://www.mhlw.go.jp/ikubosu/index.html>

[4] 古河電工の多種多様な職種について、その内容やキャリアアップのロードマップを示したガイドブック。2017年9月に発行し、50歳以下の総合職社員に配布された。

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