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裁量労働制とは 適正運用でみなし労働時間の長時間労働化に歯止めを

裁量労働制とは、一定の業務に携わる労働者について、労働時間を実労働時間ではなく、あらかじめ企業と労働者間で定めた労働時間(みなし労働時間)で計算することを認める制度です。

国会でも大きな話題となった裁量労働制は、すでに一部の職種において採用されている仕組みですが、この制度には負の側面があり、否定的な意見も多く聞かれます。一方、現代における就業意識の変化や業務内容の多様化に対応するためには、労働者の裁量に委ねる方法が適当であるという考え方もあります。

本稿では、裁量労働制の仕組みや、メリット、デメリット、問題点について解説します。


1. 裁量労働制とは

裁量労働制とは、一定の業務に携わる労働者について、労働時間を実労働時間ではなく、あらかじめ労使協定で定めた「みなし労働時間」で計算することを認める制度です。業務遂行の手段や方法の選択、時間配分の決定については労働者の裁量に委ねられていて企業側は具体的な指示はしません。能力主義・成果主義の考え方に基づき、成果を重視し、業務の効率化や生産性の向上を図ることを目的としています。企業側としては、残業代の削減が期待できるため経済界からは業種拡大の要請が強く出ています

1-1. みなし労働時間とは

みなし労働時間とは、「1日8時間、週40時間」という法定労働時間の例外を認めるものです。

あらかじめ、労使間で「1日にこれだけ働いたこととみなす」という労働時間を定め、実際にはその時間と合致しなくても、定めた労働時間分の賃金が支給されます。

法定労働時間の例外を認める制度には、変形労働時間制やみなし労働時間制がありますが、裁量労働制では対象となる業務が限定されている点で他と異なっています。

(変形労働時間制について、詳しくは「変形労働時間制とは 上限を1年・1カ月単位で定めるメリット・デメリット」を参照

1-2. 専門業務型と企画業務型

裁量労働制には、専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があり、対象となる業務や制度を導入する際の手続きが違います。
それぞれ見ていきましょう。


2. 専門業務型裁量労働制

専門業務型裁量労働制は、1987年の労働基準法改正で導入されました。業務の進め方や、業務にかける時間の配分を労働者に委ねることが必要と認められる業種が対象です。当初の適用範囲は11業務でしたが、現在では19業務にまで拡大しています

2-1. 対象となる業務

専門業務型裁量労働制で対象となる業務は以下のとおりです。

①新商品や新技術の研究開発、人文・自然科学に関する研究
②情報処理システムの分析または設計
③新聞・出版や放送番組制作のための取材・編集
④衣服、工業製品などのデザインの考案
⑤放送番組のプロデューサー、ディレクター
⑥コピーライター
⑦システムコンサルタント
⑧インテリアコーディネーター
⑨ゲーム用ソフトウェアの創作
⑩証券アナリスト
⑪金融商品の開発
⑫大学における教授研究
⑬公認会計士
⑭弁護士
⑮建築士
⑯不動産鑑定士
⑰弁理士
⑱税理士
⑲中小企業診断士

研究開発、クリエイティブ職、資格職など専門性の高い業務は、「時間をかければよい成果が出る」というものでも、上司がやり方を指示すれば達成できるものでもありません。成果と時間や手段が連動しないような、上の19の業務に限定して専門業務型裁量労働制が認められています。

2-2. 制度導入の手続き

専門業務型裁量労働制を企業が導入する場合に必要な手続きは以下の通りです。

労使協定は、労働者の過半数以上によって構成される労働組合、労働組合がなければ労働者の過半数以上を代表する者と行います。
労使協定を締結しただけでは労働者への拘束力はないため、就業規定で規定する必要があります。

参考)東京労働局 労働基準監督署 「専門業務型裁量労働制の適正な導入のために」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/roudou/jikan/pamphlet/4special2.pdf


3. 企画業務型裁量労働制

企画業務型裁量労働制は、1998年の法改正により、企業経営に関わる企画・調査・分析などの業務に携わる一部の職種に認められました。いわゆる「ホワイトカラー」を対象としています。

3-1. 対象となる業務

企画型裁量労働制で対象となる業務は以下のとおりです。

・事業の運営に関する事項についての業務
・企画、立案、調査および分析業務
・当該業務の性質上、適切に遂行するためには、その遂行の方法を大幅に労働者の裁量に委ねる必要がある業務
・当該業務の遂行手段および時間配分の決定などについて、使用者が具体的な指示をしないこととする業務

具体的な業務については、厚生労働省の「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」に例示されています。
企業全体の計画の策定や企画・立案に関わるような業務が対象であり、部署ではなく個々の労働者の業務で判断します。また、対象となる労働者は、業務を適切に遂行するための知識や経験を有し、常勤であることが必要です。

参考)
厚生労働省 「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」
1999年12月27日労働省告示第149号
https://www.mhlw.go.jp/www2/info/download/19991227/bet3p.pdf
改正:2003年10月22日厚生労働省告示第353号
http://www.joshrc.org/~open/files/20031022-001.pdf

3-2. 企画業務型裁量労働制の導入手続き

制度を導入する場合の流れは以下の通りです。

参考)東京労働局 「労働基準監督署 企画業務型裁量労働制の適正な導入のために」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/201221613571.pdf

 

企画型裁量労働制は、専門業務型裁量労働制と違い、対象となる業務の判断が難しく、対象とならない労働者に濫用される懸念があります。このため導入にあたっては、労使協定ではなく労使委員会を設置するなど、対象となる労働者の同意を得るなど専門業務型裁量労働制よりも手続きが厳格になっています。


4. 裁量労働制のメリット、デメリット

裁量労働制を導入するには煩雑とも思える手続きが必要です。それでも導入するのはどのようなメリットがあるからでしょうか。

メリット
・業務の効率化、生産性の向上
 業務の進め方や時間の使い方を労働者の裁量で決めることができるため、自身の知識や経験を活かし、効率的に業務をこなすことができます。
・ワーク・ライフ・バランスの実現
 時間管理を任されているので、業務の進行や度合いに合わせて時間をうまく使うことができます。
・残業代の削減
 「みなし労働時間」の定めにより、日勤時間帯であれば法定労働時間を超過しても企業側には残業代を支払う必要がなくなります。

企業にとって最も大きなメリットは「残業代の削減」でしょう。しかし、深夜時間帯や休日の勤務については割増賃金の支払いが発生します。労働時間の管理が不要になるわけではありません。

ここで注意しなければならないのは、「業務の効率化、生産性の向上」、「ワーク・ライフ・バランスの実現」は、業務量や内容に合った、みなし労働時間が設定されていることが前提であるという点です。実労働時間とみなし労働時間が乖離している場合、次のようなデメリットを生むことになります。

デメリット
・実労働時間に賃金が見合わない
 みなし労働時間で賃金が設定されているため、日勤時間帯であれば、法定労働時間を超えても超過分の賃金は支払われません。
・長時間労働が常態化する恐れ
 みなし労働時間で設定された労働時間と業務量や内容が見合ったものでないと、これらをこなすために長時間労働が常態化する恐れがあります。
・労働者の健康問題
 長時間労働は、労働者の心身の健康を損ない、うつ病などを引き起こす原因になります。
・残業代への対応
 みなし労働時間であっても、深夜時間帯や休日に勤務した場合は割増賃金が発生します。長時間労働と関連して深夜や休日勤務が増えれば、企業はその分の残業代が増加することになります。

裁量労働制は、導入時に業務内容を見直した上で、実態に合ったみなし労働時間を設定し、適切に運用すればメリットのある制度と言えるでしょう。
一方で、残業代を削減できるからと安易な考えで導入すると、実労働時間とみなし労働時間との乖離から労働者に長時間労働や、超過労働時間分は「ただ働き」という状態を強いることになります。
裁量労働制の実態や問題点を次で見ていきましょう。


5. 裁量労働制のもつ問題点

裁量労働制度の問題点については「定額働かせ放題」という言葉が端的に表しています。
例えば、1日のみなし労働時間を8時間とした場合、日勤帯に9時間仕事をしても残業代は支給されません。10時間でも同じです。使用者側からすれば、何時間残業させても残業代を支払わなくてもよい都合のよいシステムとなってしまいます。使用者がこのシステムを悪用すれば到底8時間では終わらない仕事を労働者に課し、毎日長時間労働を強いることも可能となるわけです。

以下は、1カ月の実労働時間に関する調査結果です。

参考)労働政策研究・研修機構「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果 労働者調査結果」
http://www.jil.go.jp/press/documents/20140630_125.pdf

裁量労働制の労働者の実労働時間は、この制度が適用されない通常の労働者の労働時間と比べて長いことがわかります。 
裁量労働制では、業務の時間配分は労働者の裁量に委ね、使用者は具体的な指示をしないことになっていますが、実態はどうなのでしょうか。それを示しているのが次のグラフです。

参考)労働政策研究・研修機構「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果 労働者調査結果」
http://www.jil.go.jp/press/documents/20140630_125.pdf

出退勤の時間を指示されている労働者は、専門型、企画型どちらの場合でも4割を超えています。皮肉なことに、労働者の裁量で時間配分を決定できるという点で最も自由に時間を使えるはずの裁量労働者よりも、「コアタイム」という制約を伴うフレックスタイム制の方が出退勤については自由であるという結果が出ています。

通常の働き方よりも裁量労働制の方が、裁量労働制では企画型よりも専門型の方が長時間労働、休日・深夜労働をしていることがわかります。
時間超過分の割り増し賃金や、休日・深夜勤務手当がきちんと支給されているのかも注意すべき問題です。

以下は裁量労働制による生活への影響と労働者の不満な点を示したグラフです。

参考)労働政策研究・研修機構「裁量労働制等の労働時間制度に関する調査結果 労働者調査結果」
http://www.jil.go.jp/press/documents/20140630_125.pdf

ワーク・ライフ・バランスの重要性が叫ばれているにも関わらず、正反対の実態が読み取れます。「定額働かせ放題」と言われるゆえんでしょう。業務の効率化と生産性の向上が目的であるはずの裁量労働制は適切に運用されないと労働者に過重な負担を強いることになります。


6. まとめ

裁量労働制とは、一定の業務に携わる労働者について、労働時間を実労働時間ではなく、あらかじめ労使協定で定めた「みなし労働時間」で計算することを認める制度です。

専門業務型裁量労働制と企画業務型裁量労働制の2種類があります。両者のおおまかな違いは以下の通りです。

専門業務型企画業務型
対象業務研究職、クリエイティブ職などの専門性の高い19業務企業経営に関わる企画・調査・分析などの業務
導入手続き労使協定を締結する・労使委員会で決議する
・具体的内容について労使委員会の4/5の決議が必要
労働者に周知 対象労働者の同意を得る

裁量労働制のメリット、問題点には次のようなことがあります。
メリット
・業務の効率化、生産性の向上
・ワーク・ライフ・バランスの実現
・残業代の削減

デメリット
・実労働時間に賃金が見合わない
・長時間労働が常態化する恐れ
・労働者の健康問題
・残業代への対応

労働者への調査で、裁量労働制の方がそうではない通常の働き方の労働者に比べて長時間労働、休日・深夜労働をしているという結果が出ています。
また、不満としては、「業務量が多い」「給与が少ない」が4割超、「労働時間が長い」については5割を超えています。

適切に運用されれば、業務の効率化やワーク・ライフ・バランスの実現が期待できる裁量労働制。導入にあたっては実態に見合ったみなし労働時間を設定し、労働者にとって一方的な不利とならないように十分配慮する必要があります。

企業は時間外労働については残業代を支払うという認識をもつことが重要です。残業代の削減が目的ではなく、労働者の側に立ち、よりよい成果を出すための働きやすい環境づくりの一環として裁量労働制を活用していければ企業・労働者双方にとってよい関係が生まれるのではないでしょうか。

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