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パワハラ防止法施行前に知りたい!概要と7つのコンプライアンス強化策

「パワハラで自社が新聞ざたになったらどうしよう……」

旧態然とした企業では、そんな可能性が危惧されそうです。企業に初めてパワーハラスメント(パワハラ)の防止対策を義務付けた労働施策総合推進法や女性活躍推進法など5本の法改正(パワハラ防止法)が行われました。これによって大企業は2020年6月以降、中小企業は2022年4月以降に、パワハラ防止対策が義務付けられます。

また、厚生労働省から提示されていたパワハラに該当する例と該当しない例を示した指針案が、労働政策審議会(厚生労働大臣の諮問機関)で承認されました。この指針案によって、今まで明確には定義されていなかったパワハラの基準が具体例として示されました。しかし、実際のビジネスシーンでは、どこまでがパワハラに該当するか判断に迷う事例が多いのが現状です。今後はパワハラ防止法に対するコンプライアンスとして、それぞれの企業が自社でどのように取り組むか基準を決めたうえで、具体的な防止対策を行う必要に迫られています。

今回は、パワハラ防止法の概要として、厚生労働省が示した3要素6類型について、具体例と現在の課題をご紹介します。そのうえで、厚生労働省が企業のパワハラ対策ガイドラインとして明示したパワハラ対策7つのメニューについて、各項目の具体的な取り組み方法をご紹介します。

参考)
職場のパワハラ具体例、指針案を了承 厚労省分科会 (産経ニュース)
https://www.sankei.com/life/news/191120/lif1911200043-n1.html
パワハラ防止 6月から 大企業で義務化、中小は22年4月(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201910/CK2019102902000132.html
パワハラ、企業名公表と違反行為明示 抑止へ法成立(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45393890Y9A520C1EE8000/
パワハラ「該当しない例」示す 厚労省が指針素案(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51238250R21C19A0EE8000/


1. これから施行されるパワハラ防止法の内容とは

大企業の場合は、迫る東京オリンピック・パラリンピックの前にパワハラ防止法への取り組みを明確にしなければなりません。今回の法律の柱となる「3要素と6類型」とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

1-1. パワハラの3要素と6類型

職場のパワハラの定義について、厚生労働省は、次の3つの要素とその具体例を示しています。

◆3要素

 

① 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
例:職務上の地位が上位の者による行為

② 業務の適正な範囲を超えて行われること
例:業務上明らかに必要性のない行為

③ 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
例:何度も大声で怒鳴る、厳しい叱責を執拗に繰り返す等により、恐怖を感じさせる行為

また、職場でパワハラに当たる事例として、次の6つの類型と具体例を示しています。

◆6類型

 

① 身体的な攻撃
例:上司が部下に対して、殴打、足蹴りをする

② 精神的な攻撃
例:上司が部下に対して、人格を否定するような発言をする

③ 人間関係からの切り離し
例:自分の意に沿わない社員に対して、仕事を外し、長期間にわたり、別室に隔離したり、自宅研修させたりする

④ 過大な要求
例:上司が部下に対して、長期間にわたる、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命ずる

⑤ 過小な要求
例:上司が管理職である部下を退職させるため、誰でも遂行可能な受付業務を行わせる

⑥ 個の侵害
例:思想・信条を理由とし、集団で同僚1人に対して、職場内外で継続的に監視したり、他の従業員に接触しないように働きかけたり、私物の写真撮影をしたりする[1]

この指針案により、今まで定義が曖昧なまま問題しされてきたパワハラの基準と具体例が、初めて示されました。これらの基準は、過去の裁判例などに基づき作成されています。

参考)
パワハラの定義とは(労働問題弁護士ナビ)
https://roudou-pro.com/columns/45/

1-2. 指針案の課題とは何か

しかしその内容を見ると、本当に業務の適正な範囲であるか、それともパワハラとして対策すべきかの判断が難しい事例がいろいろとあります。たとえば次のような事例です。

・十分な指導をせず、放置する。(精神的な攻撃)
・仕事を割り振らず、プロジェクトから阻害する。(人間関係からの切り離し)
・十分な指導を行わないまま、過去に経験のない業務に就かせる。(過大な要求)
・プロジェクトに参加させてもらえず、本人から「経営に貢献したい」と相談があった。(過小な要求)[2]

そもそも、6類型のうちの「過小な要求」について、最初の指針案で例示されていた「経営上の理由により一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせること」は、「経営上の理由」の解釈が難しいという理由で、今回の指針案からは削除されています。このように指針をつくる側でさえ解釈困難な要素を削除するような現在の指針案のみをガイドラインとして、企業がパワハラ対策の基準を決めろということ自体が、そもそも難しい提案なのです。

このあたりについては、年内(2019年中)に厚生労働省が策定する予定の指針、および今後公開される違反企業の事例や裁判例などによって少しずつ明らかになると思われます。

参考)
パワハラ防止指針案 了承(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52414260Q9A121C1EE8000/
<働き方改革の死角>受付女性メガネ禁止「パワハラ」 企業ルール規制 あす政府に要望(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201912/CK2019120202000152.html

1-3. 企業に求められる措置

パワハラ防止法により、企業は「パワハラの被害者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備」と「雇用管理上の必要な措置」が義務付けられます。違反に対して、刑事罰の規定はありませんが、悪質な違反企業は、社名が公表されます。

企業に求められる措置について、パワハラやセクハラ問題に詳しいアーカス総合法律事務所[3]の松木俊明弁護士は、次のように述べています。

「現時点では、一応の措置を採れば法律上の義務を果たしたことになります。しかし、CSRの観点に加え、インターネット等の普及により個人による情報発信が容易になった現代社会においては、リスクマネジメントの観点からも、実効性のある具体的な措置が求められます。形式的な措置のみで、実質的な運用がされていなかったために、パワハラにより被害者が精神疾患に陥ってしまった場合には、労災認定される可能性もあります。そのため、企業には、形式的な措置ではなく、実効性のある取り組みが必要なのです。」

参考)
強制わいせつ罪の判例変更、被告の弁護団「従来なら無罪なのに・・・不公平だ」(産経ニュース)
https://www.sankei.com/affairs/news/171129/afr1711290038-n1.html
「白雪姫」を目覚めさせる王子さまの「キス」、準強制わいせつ罪にあたる?(弁護士ドットコムニュース)
https://www.bengo4.com/c_1009/c_1198/n_7214/

「明確な同意のない性行為はレイプ」スウェーデン新法、被害減少の期待と新たなリスク(弁護士ドットコムニュース)
https://www.bengo4.com/c_1009/n_8226/

「30分立たせ叱責」もシロ? パワハラ防止案が波紋(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51300020T21C19A0EE8000/
「辞めてしまえ」はアウト(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45692030U9A600C1EE8000/
就活生・フリーランスも守る パワハラ防止法(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45772260W9A600C1EE8000/
先月成立した<パワハラ防止法>の解説と今後の課題(佐々木亮) (Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20190620-00130804/

 

[1]厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」p.1「職場のパワーハラスメントの概念について」、p.2-3「職場のパワーハラスメントの概念と職場のパワーハラスメントに当たりうる6類型との関係性」<https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000366276.pdf>
[2]厚生労働省「パワーハラスメントの定義について」p.3「企業において実際に生じたパワーハラスメント又はそれが疑われたケースの考え方」<https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000366276.pdf>
[3]アーカス総合法律事務所 パートナー弁護士(http://arcus-law.net/lawyer/index.html):刑事事件、企業法務、知的財産案件を中心に取り扱っている。弁護士業以外にも、ハーバード流交渉学の講師として大学(関西大学非常勤講師)での講義、企業研修講師を数多く担当。関西圏国家戦略特区雇用労働センター相談員を歴任(2017年度、2018年度)。パワハラやセクハラ分野について、強制わいせつ罪に関する最高裁判決事件(平成29年11月29日)の弁護を担当し、関連記事を執筆している。


2. パワハラ対策の取り組み方法

厚生労働省は、企業のパワハラ対策のガイドラインとして、次のような「7つのメニュー」を提示しています。これらは、パワハラ対策に限らず、コンプライアンス全般に対する基本的な取り組みにも有効な方法です。7つの項目について、過去にご紹介したコンプライアンス対策の事例に基づき、パワハラ対策に対する具体的な取り組み方法を順にご紹介しましょう。

参考)
パワハラ対策導入マニュアル7つのメニュー(厚生労働省)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/jinji/measures/

2-1. パワハラ対策7つのメニュー ①トップのメッセージ

トップからの継続的奈メッセージ発信をしましょう。トップのメッセージで重要なことは、「定期的で継続的に、社員に対するトップのコンプライアンスに対する考え方を発信すること」です。社員に対してコンプライアンス意識実態調査を実施したところ、「経営幹部によるコンプライアンス発信」が、「職場が事業推進とコンプライアンスのどちらを優先するか」と「不祥事・違反情報が経営幹部に迅速に伝達するか」という認識に対するアンケート結果に影響しているという事例があります。

(詳しくは「コンプライアンス教育の基本 違反の原因・階層別の教育方法をご紹介」をご参照ください)

定期的で継続的なトップのメッセージは、社員のコンプライアンス意識に強く影響するため、コンプライアンス問題の発生を予防する効果も期待できます。さらに、パワハラ問題のような判断に迷う事例には、特に効果的です。

2-2. パワハラ対策7つのメニュー ②ルールを決める

自社ごとのルールを明確化しましょう。現在の指針案のみから、企業がパワハラ対策の基準を決めるのは難しい状態です。しかし、自社の日常的なビジネスシーンから、「明らかに問題となる事例」と「明らかに問題とならない事例」を具体的に示すことは可能です。そのうえで、判断に迷う事例については、法務部やコンプライアンス部門などの専門部門に相談することをルールにすることができます。法務部やコンプライアンス部門が判断に迷う場合は、外部の弁護士などの専門家の意見を聞いて個別に判断すればよいでしょう。具体的には、次のようなプロセスでルールを明確化することができます。

・Step 1:ビジネスシーンからQ(Question)を作る
厚生労働省の指針案とパワハラに該当する例とパワハラに該当しない例を示したうえで、法務部やコンプライアンス部門に加え、複数の事業部門の幹部や社員に協力を求めて、自社のビジネスシーンにおいて、判断に迷う例をQ(Question)として抽出します。Qの作成方法については、著作権法の解説記事PL法の事例記事に詳述していますので、そちらをご参照ください。

参考)
うかつなコピペも大損害! 著作権侵害を防ぐコンプライアンス教育とは
https://lightworks-blog.com/compliance-edu-copyright 
PL法コンプライアンス教育で品質問題リスクを防ぐ 研修事例をご紹介
https://lightworks-blog.com/compliance-edu-pl-law

・Step 2:各Qに対して、〇×△の基準を決める
抽出した各Qに対して、パワハラに該当しない例を「〇」、該当する例を「×」、判断に迷う例を「△」として、〇×△に分類します。△については弁護士などの専門家の意見を聞き、〇もしくは×と判断します。ただし、それでも、判断に迷う△の事例が残ると思います。そのため、△の事例は、事前に法務部やコンプライアンス部に事前に相談が必要な基準とします。そして、実際に相談があった場合に、今後の厚生労働省の指針や裁判の判例、弁護士に相談するなどにより、個別に判断します。〇×△方式の基準と運用方法については、独占禁止法の解説記事外為法の事例記事に詳述していますので、そちらをご参照ください。

Step 3 :〇×△から、チェックリストを作る
さらに、ビジネスシーンごとに典型的な〇×△の事例を示したチェックリストを作成します。このチェックリストを社員に示すことによって、パワハラ防止法に対する啓発効果が得られるとともに、問題発生の予防効果も期待できます。このチェックリストは、次にご紹介する再発防止のための自主チェックにも活用できます。チェックリストの作り方については、下請法の事例記事に詳述していますので、そちらをご参照ください。

2-3. パワハラ対策7つのメニュー ③社内アンケートなどで実態を把握する

アンケートを実施して、結果を数値化しましょう。パワハラ問題は判断に迷う微妙な事例が多く、社員の実感やパワハラ問題の潜在的なリスクを把握するには、社員に対するアンケート方法にひと工夫が必要です。単に「職場にパワハラがあるかないか」や「上司からパワハラを受けたことがあるか」というストレートな設問を、単純な〇×方式で聞いたとしても、実態や潜在リスクを把握するのは困難です。

そこで取り入れたいのが、心理学の研究から生まれた「セルフ・エフィカシー型のアンケート」です。カナダの心理学者A・バンデューラは、「ある行動を自分自身がうまくやり遂げられるかという自信である“セルフ・エフィカシー”(self-efficacy:自己効力感)」理論を提唱しました。セルフ・エフィカシー理論はもともと、依存症治療の効果を計る場合など、臨床医療の現場で活用されていました。しかし現在では、研修など教育による学習効果の分析にも利用されています。

セルフ・エフィカシー理論は、アンケートの設問に対して、自信があるか否か、回答者がどれだけ同意できるかという同意の度合いを段階的に選択し、その結果を数値化して分析する方法です。(詳しくは「コンプライアンスは「アンケート分析」がカギ 研修に活かすポイントとは」をご参照ください。)

参考)
山本敏幸、田上正範著、「交渉学の授業・ワークショップの成果を可視化する手法の研究 ―学習者の達成度・自信度をセルフ・エフィカシーにより可視化―」、日本説得交渉学会第3回大会発表論文集、2010年11月28日、p.34-36.

このアンケート方法を用いれば、パワハラ問題に対する社員の微妙な心理を数値化することができます。また、部門ごとや職位ごとなどについて、数値を基準とした比較分析や複数年度の数値変化を見ることもできます。そのためには、このアンケートは定期的に行い、比較分析することが重要です。この方法であれば、パワハラ問題についても、社員の実感や潜在的なリスクを把握することが可能です。

2-4. パワハラ対策7つのメニュー ④教育をする ⑤社内での周知・啓蒙

社員教育は法改正時が絶好のタイミングです。コンプライアンス教育には事例型教育が有効であり、パワハラ問題のように判断が微妙な事例には、特に効果的です。パワハラ問題に対する事例型教育は、厚生労働省の指針や、過去の裁判例が他社事例の素材になります。さらに、自社内で受けた相談のうち、判断に迷う事例(△)に対する個別の内容や社員に実施するアンケートの自由記述欄の分析などを通じて、自社事例を蓄積することができます。

事例の伝え方や教材の作成方法、また、他社事例と自社事例の活用方法については、次のブログを参照してください。

参考)
コンプライアンス教育資料の作り方 事例の伝え方で研修効果が変わる
https://lightworks-blog.com/compliance-edu-material
コンプライアンス教育の肝は事例選び!効果を引き出す活用のコツとは
https://lightworks-blog.com/compliance-case-study
コンプライアンス事例の使い方(1) リニア談合に学ぶ他社事例の活用法
https://lightworks-blog.com/compliance-other-company-case-study
コンプライアンス事例の使い方(2) 自社事例を教育に有効活用するには
https://lightworks-blog.com/compliance-edu-in-house-case-study

コンプライアンス教育を効果的に行うには、大幅な法改正があるときが絶好のタイミングであることは、以前ご紹介しました。(詳しくは「コンプライアンス 研修で全社に浸透させる5つの方法 カギは「学習管理」」をご参照ください)

今回のパワハラ防止法の施行は、話題性があるとともに、幹部や社員が普段の業務でどのように対応すべきか迷うことが多い日常的な法律です。したがって、パワハラ防止法の施行に合わせて、重点的にコンプライアンス教育を行うのが良い機会です。またコンプライアンス教育は一過性の取り組みではなく、定期的に継続して実施することによって問題発生の予防効果が期待できます。

2-5. パワハラ対策7つのメニュー ⑥相談や解決の場を提供する

内部通報制度には、社内の窓口と社外の窓口の2種類があります。現在の企業の通報窓口の設置場所は、社内外のいずれにも設置が59.9%、社外のみに設置が7.0%ですが、パワハラ問題は、コンプライアンス問題の中でも社内窓口の担当者には相談しづらいテーマです。そのため、パワハラの相談窓口については、社外の専門機関や弁護士にする方がよいと思います。

参考)
最新版!「内部通報が多い」100社ランキング(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/188974?page=2(2018年版)

また、社外の専門機関や弁護士は、いろいろな会社の微妙な相談事例を蓄積しており、それらと自社の事例を比較分析することでコンプライアンス教育に活用したり、事前の予防策を取ったりすることにより、問題発生の予防効果が期待できます。

内部通報制度の現状と課題、社外弁護士の活用方法については、次の記事を参照してください。

参考)
内部通報制度はコンプライアンス経営の要! 体制づくりと課題とは
https://lightworks-blog.com/whistle-blower-system
組織で取り組むコンプライアンス 法務部の役割と社外弁護士の活用法
https://lightworks-blog.com/compliance-lawyer

2-6. パワハラ対策7つのメニュー ⑦再発防止のための取り組み

パワハラの再発防止を図るためには、コンプライアンス問題が発生した後、迅速に問題を解決することで、企業が受ける損害を最小限にしようとするアプローチ(案件法務)が必要です。それに加えてコンプライアンス問題の背後にある根本的なリスクを分析し、そのリスクに対して適切に対応できる仕組みや仕掛けを準備しておくことによって、今後のコンプライアンス問題の発生を予防しようとするアプローチ(予防法務)の取り組みが必要です。

コンプライアンスが対象とする法分野は幅広く、製造業や商社など、業種によっても重点的に取り組むべきテーマは異なります。しかし、パワハラ問題は業種に関係なく、全ての企業が重点テーマとして取り組むべきコンプライアンスの法分野です。(製造業と商社については、「業種別コンプライアンス研修① 巨大企業が名を連ねる「製造業」での教育方法」、「業種別コンプライアンス教育② 世界展開する「商社」の教育ポイントとは」をご参照ください)

前述のコンプライアンス教育と同様に、社内のコンプライアンス体制が不十分な場合、または現在のコンプライアンス体制の維持や強化を行いたい場合、来年以降のパワハラ防止法の施行はコンプライアンスの取り組みを強化するのに良い機会です。

再発防止の視点から、トップの発信、アンケートの実施、コンプライアンス教育の関係図は、次のようになります。

<コンプライアンス 階層別教育の図>

※この関係図について、無料eBooK「コンプライアンスが面白くなる!~ゲーミフィケーションで実践する教育の仕組みづくり」の第4章で詳しく解説しています。

また、コンプライアンス体制の課題を抽出し、維持し、発展させるためには、定期的なチェックが必要です。チェック方法としては、各組織にチェックシートを提示し、自主チェックによる定期的な監査がお勧めです。この方法であれば、現場の負担が少なく、予防法務の効果も期待できます。さらに、アンケート分析や教育実績などのデータを比較することにより、啓発・教育効果の分析や潜在的なリスク分析を行うこともできます。自主チェックのためのリストには、前述の〇×△ガイドラインに基づき作成するチェックリストが活用できます。

案件法務から予防法務を目指したコンプライアンス体制作りと自主監査を含む、内部監査のPDCAについては、次のブログをご参照ください。

参考)
コンプライアンス体制の作り方 機能的な組織で問題発生をコントロール
https://lightworks-blog.com/compliance-system
コンプライアンス経営を目指す体制づくり 内部監査のPDCAとは
https://lightworks-blog.com/compliance-internal-audit

企業のコンプライアンス経営にとって、パワハラ防止法の施行を契機にコンプライアンス体制を整備し、定期的なアンケートと教育により予防法務に取り組むことは重要です。


3. まとめ

パワハラ防止法が施行されることにより、大企業は2020年6月以降、中小企業は2022年4月以降、企業に初めてパワハラ防止の対策が義務付けられます。パワハラ防止法には、3つの要素6つの類型があります。

◆3要素
①優越的な関係
②業務の適正の範囲を超えている
③身体的、精神的な苦痛、就業環境を害する

◆6類型
①身体的な攻撃
②精神的な攻撃
③人間関係からの切り離し
④過大な要求
⑤過小な要求
⑥個の侵害

6類型それぞれに対して、厚生労働省は、パワハラに該当する例と該当しない例を指針案として明示しています。この指針案によって、今まで不明確であったパワハラの基準と具体例が初めて示されました。しかしながら、その内容を見ると業務の適正な範囲であるか、それともパワハラとして対策すべきかの判断が難しい事例があります。したがって、企業はパワハラ防止法に対する対策について、自社でどのように取り組むかの基準を決めて対応する必要に迫られています。

厚生労働省が明示した企業のパワハラ対策7つのメニューに対して、過去にご紹介したコンプライアンスの取り組み方法から、パワハラ防止対策に有効な具体策をご紹介しました。

◆パワハラ対策7つのメニュー
①トップのメッセージ
②ルールを決める
③社内アンケートなどで実態を把握する
④教育をする
⑤社内での周知・啓蒙
⑥相談や解決の場を提供する
⑦再発防止のための取り組み

今回は、パワハラ防止の概要と現在の課題、そして、パワハラ対策の具体的な方法について取り上げました。これらの事例を参考に、自社の適切なコンプライアンスの実現に取り組んでください。

<参考情報>
・職場のパワハラ具体例、指針案を了承 厚労省分科会 (産経ニュース)
https://www.sankei.com/life/news/191120/lif1911200043-n1.html
・パワハラ防止 6月から 大企業で義務化、中小は22年4月(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201910/CK2019102902000132.html
・パワハラ防止指針案 了承(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO52414260Q9A121C1EE8000/
・<働き方改革の死角>受付女性メガネ禁止「パワハラ」 企業ルール規制 あす政府に要望
(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/list/201912/CK2019120202000152.html
・パワハラ、企業名公表と違反行為明示 抑止へ法成立(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45393890Y9A520C1EE8000/
・パワハラ「該当しない例」示す 厚労省が指針素案(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51238250R21C19A0EE8000/
・「30分立たせ叱責」もシロ? パワハラ防止案が波紋(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO51300020T21C19A0EE8000/
・「辞めてしまえ」はアウト(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO45692030U9A600C1EE8000/
・就活生・フリーランスも守る パワハラ防止法(日本経済新聞)
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO45772260W9A600C1EE8000/
・先月成立した<パワハラ防止法>の解説と今後の課題(佐々木亮) (Yahoo!ニュース)
https://news.yahoo.co.jp/byline/sasakiryo/20190620-00130804/
・パワハラ対策導入マニュアル7つのメニュー(厚生労働省)
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/jinji/measures/
・最新版!「内部通報が多い」100社ランキング(東洋経済オンライン)
https://toyokeizai.net/articles/-/188974?page=2(2018年版)
・強制わいせつ罪の判例変更、被告の弁護団「従来なら無罪なのに・・・不公平だ」(産経ニュース)
https://www.sankei.com/affairs/news/171129/afr1711290038-n1.html
・「白雪姫」を目覚めさせる王子さまの「キス」、準強制わいせつ罪にあたる?(弁護士ドットコムニュース)
https://www.bengo4.com/c_1009/c_1198/n_7214/

・「明確な同意のない性行為はレイプ」スウェーデン新法、被害減少の期待と新たなリスク(弁護士ドットコムニュース)
https://www.bengo4.com/c_1009/n_8226/

・山本敏幸、田上正範著、「交渉学の授業・ワークショップの成果を可視化する手法の研究 ―学習者の達成度・自信度をセルフ・エフィカシーにより可視化―」、日本説得交渉学会第3回大会発表論文集、2010年11月28日

・年間およそ200社が倒産!会社をつぶさないためのコンプライアンス入門
https://lightworks-blog.com/compliance01
・事例学習が効く!会社をつぶさないためのコンプライアンス教育
https://lightworks-blog.com/compliance-measures
・コンプライアンスならまずはこの本から 専門家が厳選した入門10選タイトル
https://lightworks-blog.com/compliance-book
・コンプライアンスとは 法令だけじゃない、CSRとリスクマネジメントの重要性
https://lightworks-blog.com/compliance-csr-risk-management
・コンプライアンス教育の基本 違反の原因・階層別の教育方法をご紹介
https://lightworks-blog.com/compleance-education-basic
・独占禁止法違反は実例教育で防ぐ 研修事例で学ぶ企画のポイントとは
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https://lightworks-blog.com/compliance-utilize-case-problem
・コンプライアンス教育資料の作り方 事例の伝え方で研修効果が変わる
https://lightworks-blog.com/compliance-edu-material
・コンプライアンス事例の使い方(1) リニア談合に学ぶ他社事例の活用法
https://lightworks-blog.com/compliance-other-company-case-study
・コンプライアンス事例の使い方(2) 自社事例を教育に有効活用するには
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・ブレンディッド・ラーニングとは 研修とeラーニングのうまい組合せ方
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・内部通報制度はコンプライアンス経営の要! 体制づくりと課題とは
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・コンプライアンス経営を目指す体制づくり 内部監査のPDCAとは
https://lightworks-blog.com/compliance-internal-audit
・組織で取り組むコンプライアンス 法務部の役割と社外弁護士の活用法
https://lightworks-blog.com/compliance-lawyer
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これはコンプライアンス担当の方が最も頭を悩ませることの一つではないでしょうか。

コンプライアンス違反によって倒産する企業が年間200社以上に及ぶ中、自社を守るには、社員一人ひとりがコンプライアンス行動を理解し実践できなければなりません。

そこでLightworks BLOG編集部は、大手電機メーカーで実際に行われたコンプライアンス施策をもとに、教育手法にフォーカスした無料eBookを制作。ゲームを攻略するようにコンプライアンス教育に取り組めるよう、整理しました。

以下の内容を収録し、131ページにわたり解説しています。

  • 社員の学習意欲を高める方法
  • コンプライアンスの3要素
  • 原因別・階層別教育の考え方
  • アンケートの有効活用方法
  • 違反事例から教材を自作する方法
  • 最先端の教育手法
  • 使える教育施策一覧
  • 法令分野別教育のエッセンス(独禁法/下請法/PL法/安全保障貿易管理/著作権法)

ぜひお手元に置き、貴社のコンプライアンス教育にご活用ください!

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