CEOやCHROと同じく、CLOも企業内で重要なポジションを占めます。しかし、日本企業においての認知度は高いとはいえず、CLOという言葉自体に馴染みがない人も多いでしょう。
CLOとは、Chief Learning Officerを略したもので、最高学習責任者・最高教育責任者とも呼ばれます。経営目標を達成するための人材開発や学習プログラムなど、「教育」に特化した責任を負います。
国内の大手企業でもCLOの導入事例が増えており、今後、注目が高まることが予想されます。CLOの意味や必要性、実際の導入事例などをご紹介します。
目次
1. CLO(chief learning officer:最高学習責任者)とは?
CLOとは、Chief Learning Officerの略で、シー・エル・オーと読みます。アメリカ型の経営における執行役員の一つで、日本では「最高学習責任者・最高教育責任者」とも呼ばれます。
CLOは従来の人事担当とは異なり、「教育」に特化した働きをします。経営目標を達成するための人材開発や学習プログラムの構築など、企業の将来性を見通した長期的な社員教育を展開します。
変化の速い日本経済において企業が成長し続けるには、市場の変化に柔軟に対応することや企業価値を高め続けることが重要です。企業資源である「ヒト」をどのように教育するかが経営目標のカギと言えます。
アメリカや欧州では、社員教育の重要性が認知されているため、CLOというポジションも一般です。日本ではCEOやCHROに比べるとCLOの認知度は低いですが、グローバル化が進む日本経済でも、今後注目を集めることが予想されます。
CHROと何か、戦略人事との関係については以下の記事をご参照ください。
2. CLOの役割
人材育成に欠かせない、教育コンテンツの運営や開発は人事部の仕事とされています。しかし、人事部には採用や労務管理、福利厚生などの業務があり、教育体系の開発までは手が回らないという企業も多いようです。
CLOの導入によって、従業員教育に関する責任の所在を明確にできます。社長直属の独立した部門として機能するCLOは、企業の将来性を見通して自社の成長に必要な教育体系の開発を指揮します。
戦略的な社員教育や後継者育成に関して責任を負い、経営目標の達成に必要な教育コンテンツの開発に専念するのがCLOの役割です。
3. CLOを設置するメリット
CLOを設置することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。CLOの働き方は企業によって異なりますが、いくつか例を取り上げます。
- 長期的な視点に立った教育を提供できる
- 個人にカスタマイズされた教育を提供できる
- 教育部門を変革できる
・ 長期的な視点に立った教育を提供できる
CLOは企業目標の達成に必要な教育プログラムを長期的なスパンで検討します。目先のスキルや目標に特化するのはなく、視野を広げて5年、10年後に活かせる教育プランを構築します。
例えば、リーダーシップや自己成長を促すマインドセットなどを教育するには、仮説を立てて検証し、結果が伴わなかった場合は原因の追究が必要になります。短期間では成果が出ないこともありますが、CLOは将来を見据えた人材開発を展開します。
特定のスキルを身に付ける教育だけでなく、先の時代を読んだ教育・学習を提供することで不透明な経済市場に対応できる企業作りが可能になります。
・ 個人にカスタマイズされた教育を提供できる
従来の集合型の研修では、学習スタイルや授業時間が画一化されているため、個人の能力やタレントには対応できませんでした。
そのため、時間と費用をかけて学習体系を構築しても、従業員一人ひとりに真に効果的な教育とならない場合もありました。
CLOの導入によって、個人にカスタマイズした学習プログラムの提供が可能になります。CLOは、教育に特化した施策に専念できるからです。
例えば、集合型の研修だけでなく、eラーニングやアプリケーションなども活用することで、従業員にとって必要な教育を最適、かつ効果的な方法で提供できるようになります。
さらに、上層部やキャリア人材だけでなく、全従業員に高度な教育を受ける機会が開かれます。
会社の中の一組織である人事部が、ここまでのイノベーションを起こすことは容易ではありません。教育の最高責任者であるCLOは、戦略的な人材開発を実現するための最短ルートを切り開く存在になるでしょう。
・ 教育部門を変革できる
CLOは人材教育の責任者として、教育部門をより効果的で戦略的な部門に変革します。
例えば、新たな教育スタイルを生み出すため、UXデザイナー(ユーザーの体験談を分析して、魅力ある製品を開発する専門家)や戦略立案家などを教育部門に採用することもあります。
これら専門家のサポートを受けることで、従業員同士が教師として教え合うピア・ラーニング(Peer learning)の土壌を形成できます。このシステムによって、学習者同士が教育のプロセスを共有して自身の考えを言語化することができ、質の高い教育システムの構築が可能になります。
このように、CLOの導入により企業組織の学習形態の根本的な改革が可能になり、従業員の能力の底上げ、それによる経営目標の達成が見えてきます。
4. CLOの導入事例
国内でもCLOを導入する企業が増えており、良い効果が現れています。いくつか例をご紹介します。
4-1. 邦銀で初めてCLOを導入した新生銀行
邦銀で初めてCLOを導入したのが新生銀行です。「全社的な視点を踏まえながら、良い人材を育て、当行で働き続けてもらえるように徹底的に話し合う(一部編集)」。そう語るのはCLOのトマス・ペダーセン氏です。
当銀行では、人事選考や人材開発の面で公平性に関する認識を強化する必要があり、CLOは人材育成や教育プログラムの変革を行っています。
最近では、CLOの指導により米国の大手証券会社の日本法人に対して、高度な金融商品を学習できる教育プログラムを提供しています。
銀行業界の底上げや日本市場の活性化に関して、CLOの働きに注目が集まっています。
4-2. 顧客やパートナーも育てる日本マイクロソフト
日本マイクロソフトは、日本アイ・ビー・エムなどでフィールドエンジニアやビジネスマネージメントの経験を持つ伊藤かつら氏をCLOに任命しました。伊藤氏は、進化するテクノロジーに対応できる人材を育成するには、自社社員への教育の充実が不可欠と考えています。
具体的には、従業員に対してオンラインやハンズオン、座学などのトレーニングを行い、セールススキルやマネージャースキル、コンプライアンスに関する知識を習得できるようにサポートしています。
多忙を極める社員に教育を受けさせるため、毎週木曜日は1時間を学習に当て、毎月最終木曜日は5時間を学習に費やしています。
CLOの働きによって、従業員が楽しくやりがいを持って学習できる環境が整っています。

上場企業売上高ランキング上位100社のうち47%の導入実績!
19年間にわたって大企業のニーズに応え続けてきたライトワークスが自信を持ってご紹介する高性能LMS「Careership®」。これがあれば、「学習」のみならず人材育成に係る一連のプロセスを簡単に管理することができます。ぜひお試しください。
5. まとめ
本稿では、CLOについて解説しました。CLOとは、Chief Learning Officerを略したもので、最高学習責任者や最高教育責任者とも呼ばれます。従来の人事部とは異なり、従業員の教育に特化した役割を担います。
戦略的な社員教育・人材開発を展開するため、経営陣と直接意見を交わし、将来を担えるリーダー育成を行います。
CLOを設置するメリットには以下のものがあります。
・ 長期的な視点に立った教育を提供できる
・ 個人にカスタマイズされた教育を提供できる
・ 教育部門の変革が可能になる
従業員の能力に合わせた教育プログラムの構築や教育部門の変革は、従来の人事部では達成しにくく、CLOを導入する大きな利点となります。
新生銀行や日本マイクロソフトなどでもCLOが導入されており、CEOやCHROと同じくCLOの重要性が認められつつあります。
企業の将来像に大きく影響を与えるCLO。自社への導入も検討してみてはいかがでしょうか。
参考)
日系BP 新生銀行が「学ぶ組織」を標榜、邦銀初の「CLO」職を設置
https://xtech.nikkei.com/it/article/NEWS/20060425/236270/
マイナビ マイクロソフトのクラウド&AIの人材育成に向けて取組とは
https://news.mynavi.jp/article/20190926-900123/
AMP変化の時代に注目度高まる「最高学習責任者(CLO)」の存在。従業員の学ぶ機会を全面バックアップする、その役割とアプローチとは?
https://ampmedia.jp/2020/06/29/the-role-of-the-transformer-clo/
コメント