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オンライン研修だけでは不安な時に ブレンディッドラーニングの勧め

「我が社でも研修をオンライン化していく必要がある。eラーニングももっとうまく活用し、全体の効果を落とさずに必要な研修を進めていくよい方法はないだろうか?」

4月から新年度を迎え、新入社員研修をはじめ多くの研修が実施される時期となりました。しかし、今年は新型コロナウィルスの影響により、従来通りの研修を行うことは難しくなりました。予定されていた研修をどのように構成し直したらしたらよいのか、お悩みの教育管理者の方も多いのではないでしょうか。

多くの企業で当座の代替手段として活用できるのは、eラーニングでしょう。eラーニングなら、集合研修の実施が難しい状況でも教育を提供し続けることができますまた、SCORMという規格に準拠していれば、自社のLMSに別のベンダーが作った教材コンテンツを登録・配信することもできます。

日本能率協会マネジメントセンター(JMAM)が2016年に発表した調査結果によると、従業員規模3000人以上の企業では、eラーニングは95.8%と高い割合で導入されています[1]

また、2018年の「eラーニング活用に関する調査」では、学習時の使用機器は「職場のPC」が90.6%と圧倒的ですが、「個人のスマホ、タブレット」(56.8%)、「職場のスマホ、タブレット」(21.8%)は2016年の調査時より7~8ポイント増加しており、職場以外での学習が定着しつつあることがうかがえます[2]

知識を習得するタイプの学習は、積極的にeラーニングに置き換えていくと良いでしょう。加えて、集合研修とeラーニングそれぞれの長所を最大限に活用し、かつ互いの欠点を補い合えるプログラムを作れれば、相乗効果も期待できます。これが、今回ご紹介するブレンディッドラーニングです。

ブレンディッドラーニングは、集合研修とeラーニング(オンライン研修含む)を組み合わせ、それぞれのメリットは活かしたまま、弱点をカバーできる学習方法です。

本稿では、ブレンディッドラーニングの特長、研修に取り入れるメリット、ブレンドのパターン例、実施のポイントをご紹介します。

[1] 国内企業のeラーニング実施率は80.0%、3000人以上の企業では95.8% –JMAM調査
https://japan.zdnet.com/article/35081366/
[2] eラーニング活用に関する調査 活用目的「福利厚生の一環」が上昇(前回比3倍) 
テーマ「メンタルヘルス、ハラスメント」半数以上 働き方改革に向けた活用模索
https://www.jmam.co.jp/topics/1231765_1893.html


1. 「いいとこどり」が可能なブレンディッドラーニング

ブレンディッドラーニングは、集合研修とeラーニングを組み合わせることにより、それぞれのメリットを活かしたまま弱点をカバーし、研修の効果を高める学習方法です。

代表的なブレンディッドラーニングのパターンでは、事前にeラーニングで基礎知識を修得しておきます。これにより、集合研修の学習内容は集合研修でしかできないものに集約され、学習全体の効果や質が向上します。さらに、eラーニングで復習を行うことにより、集合研修での学びをしっかりと定着させることができます。

日本の教育シーンにブレンディッドラーニングが本格的に取り入れられるきっかけとなったのは、米国教育界でベストセラーとなった書籍「ブレンディッド・ラーニングの衝撃」(原題:Blended)です。著者のマイケル・B・ホーンは、この学習スタイルを「教育界の破壊的イノベーション」と評価しています。

1-1. ブレンディッドラーニングが注目される背景

ブレンディッドラーニングは、インターネットやデジタル機器の発達とともに2000年代からアメリカの学校教育で急速に広まっていきました。日本では、教師のe ラーニングに対する理解不足や、授業での活用方法が定着していないことから事例はまだ少ないようですが、語学の授業などに取り入れられています。

一方企業の人材育成シーンでは、eラーニングの普及とともにブレンディッドラーニングが実施される機会が増えてきました。最近のeラーニングは、スマホやタブレットで学習できるのが当たり前になってきています。個別学習の機会が充実し、動画などの活用によりeラーニングで学べる内容も多様化したことから、「集合研修でなければできない」領域が以前より縮小しています。

その分、「集合研修でしかできない」領域が明確になって来ました。ブレンディッドラーニングは、教育のICT化とともに真価を発揮しつつある教育手法と言えます。

1-2. 2つの学習方法を組み合わせてデメリットをなくす

集合研修とeラーニングのメリットとデメリットを整理すると、以下のようになります。

 

集合研修

eラーニング

メリット

  • 受講者と講師が直接交流できる

  • その場で質疑応答ができる

  • ディスカッションやロールプレイなどさまざまな形態の学習が可能

  • 他の受講生から刺激を受け、モチベーションを保ちやすい
  • 費用対効果が高く低コスト

  • 学習場所・時間が自由

  • 大勢の受講者に配信できる

  • 教育の質が均一である

  • 学習履歴が確認できる

  • メッセージの配信や掲示板機能の利用でコミュニケーションが楽

デメリット

  • 移動費や交通費などコストが高い

  • 講師・受講者のスケジュール調整が難しい

  • 一度の受講人数が限られる

  • 授業内容が講師の質に左右される
  • 受講者同士の交流が減る

  • その場で質疑応答ができない

  • ディスカッションやロールプレイができない

  • 個人学習のため、モチベーションの維持が難しい

  • すべての学習をeラーニングで賄えるわけではない

上記を見ると、どちらにも多くのデメリットがありますが、ほとんどを互いのメリットでカバーできることがわかります。

ブレンディッドラーニングは、双方のメリットを「いいとこどり」しつつ、デメリットを解消することが可能な、画期的な教育手法というわけです。

なお、eラーニングと集合研修、両方を同時に運用することについて、管理業務が煩雑になるのではとの懸念をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、最近のLMS(Learning Management System;学習管理システム)には集合研修管理機能を搭載しているものも多いので、むしろプログラムと実施履歴の一元管理が可能になり、管理面での手間は軽減が可能です。

例えば、まずeラーニングで事前アセスメントを行い、弱点分野を把握した上で必要な集合研修に参加してもらい、後日事後アセスメントを実施して理解度を測る、この一連の流れをLMS上で実現することができます。

集合研修の予約や受講申請、出欠の履歴や成績の管理などもLMSで可能ですし、これeラーニングの学習履歴と突き合わせて分析を行うといった施策も可能です。

さらに、講師に事前アセスメントの実施データを把握してもらい、集合研修当日の授業をより受講者にフィットした内容に調整する、といった工夫も考えられます。

事務局の負担を軽減しながら、学習の質も高められるわけです。


2. 企業研修にブレンディッドラーニングを取り入れるメリット

企業研修にブレンディッドラーニングを取り入れると、研修の効果を高めたり、運営を効率化できたりします。具体的な内容を以下で見ていきましょう。

・学習効果が高まる
ブレンディッドラーニングの代表的なパターンとして、「eラーニングで予習 → 集合研修で実践 → eラーニングで復習」というスタイルがあります(詳しくは3章(1)参照)。

予習で受講者の知識レベルを一定に揃えて集合研修の下地を作り、集合研修で実践、各自で理解が足りない部分などを復習、という一連のプロセスによって、単発の集合研修よりも学習内容の理解が深まり、確実な知識の定着を促します

・チーム学習と個人学習の相乗効果
昨今、アクティブラーニングをはじめとするチーム学習が、問題解決力や創造力、コミュニケーション力を高められるとして注目されています。これはeラーニング単独では難しい学習スタイルです。一方で、eラーニングには個人のペースで学習を進められるというメリットがあります。

ブレンディッドラーニングでは、eラーニングによる個人で進める学習と、チームによるワーク中心の研修プログラムを組むことで、相乗効果を得ることが可能です。

・手間やコストを抑えられる
集合研修では、一回ごとに講師や会場の手配、受講者のスケジュール調整など様々な手配業務が必要になります。また、講師の外注費やアテンドの人件費、会場の使用料や移動費などがかかり、コストも嵩みがちです。

研修プログラムを部分的にeラーニングに置き換えることで、事務量やコストを抑えることができます。


3. ブレンドのパターン例

ここでは、実際にどのようなブレンドの仕方があるのか、パターン例をご紹介します。その前に、集合研修とeラーニングにはどのような学習形態があるのか整理しておきましょう。

集合研修

eラーニング

  • 一般的な講義形式

  • グループワークやディスカッションなどのチーム学習

  • プレゼンテーションやロールプレイなど技能学習

  • 顔合わせやガイダンスなどオリエンテーション
  • 個人で都合の良い時間・場所にする学習

  • 複数人で同時に掲示板機能やチャットなどを利用する学習・講義のライブ・録画配信、Web会議システムを利用した学習などのオンライン研修

上記の学習形態の組み合わせ例として、以下のようなパターンが考えられます。

(1) 集合研修の前後にeラーニングを実施するパターン

幅広いテーマに活用できる、ブレンディッドラーニングの代表的なパターンといえます。基本的な知識は事前にeラーニングで学習しておくため、すぐに実践的な内容に入ることができます。事後に実践を踏まえた復習をすることで、学習効果をさらに高められます。

(2) OJTを挟み、実技面のスキルアップを図るパターン

事前にeラーニングで基礎知識を、集合研修で技能を学び、その内容を元にOJTを行うパターンです。OJTの段階で前提知識を説明する必要がないので、トレーナーの負担が減ります。OJTの後は、eラーニングで復習を行うほか、SNS機能を使って講師やアドバイザーからの評価・フィードバックをもらい、スキルの定着や改善につなげます。接客のスキルや調理、製造ラインなど、実技を伴う業務に向いています。

(3) 事後のeラーニングで発展学習を行うパターン

先に集合研修を実施するパターンでは、事後のeラーニングにおいて、復習だけでなく、集合研修で得た知識を使った発展的な内容の学習や課題と組み合わせる場合も例えば、チームで店舗や工場などの現場を体験した後、改善点の提案レポートを提出する、集合研修でその時点での業務についてのトレンドを学び、その後の知識の更新はeラーニングで随時していく、などが考えられます。

(4) 新入社員研修のパターン

事前に集合し、顔合わせや学習のガイダンスをしておくことで、eラーニングを進めるにあたってのモチベーションアップが期待できます。特に新入社員など、受講者同士の面識が薄い場合、ネットワーキングに役立ちます。その後、個人でeラーニングによる学習を進め、集合研修で質疑応答やワークなどを行い、実践を学びます。

(5) ディスカッションを中心とするパターン

個人で予習をした後、集合研修の前にチームメンバーでテーマについてディスカッション(疑問点の整理など)をしておくパターンです。ディスカッションは、LMS(学習管理システム)に搭載されているSNS機能などで行います。チームメンバーが一か所に集合できる回数が限られている、移動時間が取れないなどの場合に有効です。オンライン議論が中身のあるものになるかどうかは、個人の予習がしっかりできているかが鍵となります。

自社で実施する研修の目的と内容、かけられるコストや時間などを考慮し、ぜひ上記を参考に最適なパターンを検討してみてください。

コラム:反転授業について

 

反転授業とは、授業と宿題の役割を反転させたものです。授業に先立って知識を習得し、習得した知識を授業で使います。インプットとアウトプットの場を逆転させた学習方法で、ブレンディッドラーニングの実践方法のひとつとして知られています。

知識を習得するだけでなく、使って学ぶことに重点が置かれているため、実務で活躍できる人材の育成にも効果が高い手法です。3章のパターン(1)のように、反転授業の後にeラーニングでの復習をプラスすれば、より知識の定着が確かなものになるでしょう。

 


4. 効果的なブレンディッドラーニングを実施するポイント

ブレンディッドラーニングは、単にeラーニングと集合研修を実施すればよいわけではありません。以下で最大限に効果を高めるためのポイントをご紹介します。

・何をどの方法で学ぶのか、よく検討する
例えば、外国語の実践的な会話はeラーニングへの置き換えが難しい分野です。同時に、単語や文法などの反復学習にはeラーニングが有効です。十分なインプットが、実践的な学習をより有意義なものにするでしょう。

研修の設計段階で全体の目的や学習内容をきちんと整理し、それぞれの単元について、集合研修とeラーニングのどちらで、どのタイミングで実施するべきか、よく検討しておくことが大切です。

・スケジュール管理を厳格にする
eラーニングで基礎知識を習得し、集合研修で応用知識を学び実践する、というのはブレンディッドラーニングによくある流れです。この場合、集合研修の実施までに受講者がeラーニングのプログラムを修了しているのが大前提となります。

基礎知識が足りない受講者がいると、集合研修における本人の学習効果が落ちることはもちろん、全体の知識レベルにばらつきが出てしまい、スムーズな授業ができなくなってしまうからです。

そのため、eラーニングの修了期限は厳格に管理する必要があります。LMS(Learning Management System、学習管理システム)に研修をセットする際、未修了者に定期的にリマインドメールが配信されるようにしておくとよいでしょう。

・講師の役割と授業への関わり方に注意する
ブレンディッドラーニングでは、eラーニングを使った個人学習が重要になります。個人学習は、自由なペースで進められるというメリットがある一方、個人のモチベーションや自主性によって、進度やレベルに差が出ることがあります。そのため、講師には、受講者のeラーニングの進捗・理解度を把握し、目標レベルに到達できるよう学習をサポートする役割も求められます。

また、集合研修では知識の習得よりもグループワークやディスカッションなど、アクティブラーニングのような実践型の授業の割合が多くなります。そのため、適切なタイミングで討議に介入するファシリテーターとしての役割も求められます。

ブレンディッドラーニングを実施する際は、上記のような点に配慮しながら、事前に綿密なプログラムを設計することが必要不可欠となります。

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5. まとめ

ブレンディッドラーニングは、集合研修とeラーニングを組み合わせることにより、それぞれのメリットを活かしたまま弱点をカバーし、研修の効果を高める学習方法です。

ブレンディッドラーニングは、インターネットやデジタル機器の発達とともに2000年代からアメリカの学校教育で急速に広まっていきました。

日本の企業におけるブレンディッドラーニングは、eラーニングの普及とともに研修で実施される機会が増加してきました。最近ではスマホやタブレットで学習が可能な場合も多くなり、以前より個別学習で賄える内容が幅広くなったのも、ブレンディッドラーニングが注目される理由のひとつと言えます。

集合研修とeラーニングには、どちらにもデメリットがありますが、ほとんどを互いのメリットでカバーできます。

ブレンディッドラーニングは、双方のメリットをそのまま「いいとこどり」しつつ、デメリットを解消することが可能な、画期的な教育手法です。

企業研修にブレンディッドラーニングを取り入れると、以下のようなメリットがあります。
・学習効果が高まる
・チーム学習と個人学習の相乗効果
・手間やコストを抑えられる

集合研修とeラーニングのブレンドの例として、以下のようなパターンが考えられます。
(1) 集合研修の前後にeラーニングを実施するパターン
eラーニング(個人で予習)→ 集合研修(講義、チーム学習、技能の学習) → eラーニング(個人で復習)
(2) OJTを挟み、実技面のスキルアップを図るパターン
eラーニング(個人で予習)→ 集合研修(講義、チーム学習、技能の学習) → OJT(仕事で実践) → eラーニング(個人で復習、講師やアドバイザーが評価・フィードバック)
(3) 事後のeラーニングで発展学習を行うパターン
集合研修(講義、チーム学習、技能の学習)→ eラーニング(個人で復習+発展的な内容の学習)
(4) 新入社員研修のパターン
集合研修(学習の前段階)→ eラーニング(個人で学習) → 集合研修(講義、チーム学習、技能の学習)
(5) ディスカッションを中心とするパターン
eラーニング(個人で予習) → eラーニング(チームでオンライン議論)→ 集合研修(チーム学習、技能の学習)

ブレンディッドラーニングで最大限に効果を高めるポイントとして、以下のようなものがあります。
・何をどの方法で学ぶのか、よく検討する
・スケジュール管理を厳格にする
・講師の役割と授業への関わり方に注意する

受講者同士の交流やリアルタイムで質疑応答ができる集合研修は、今後も企業研修に欠かせないものです。しかし、世の中の状況やコスト面など、思うように実施できない場合もあります。

このような状況のときこそeラーニングをプラスして双方のメリットをフル活用し、必要な教育を従業員に提供し続けられるよう、研修プログラムを検討してみてはいかがでしょうか。

(関連記事)
ブレンディッド・ラーニングとは 研修とeラーニングのうまい組合せ方
https://lightworks-blog.com/blended-learning#1-1

(参考)
ブレンディッドラーニングがもたらす職場での行動変容
https://alue.sg/jp/blended-learning-hr-development/
ブレンディッドラーニングによる授業実践とその効果―外国語学習におけるeラーニングの活用―
http://www.edu-ctr.pref.okayama.jp/chousa/kiyou/h21/09-05.pdf
複数の学習形態を合体!? 「ブレンディッドラーニング」の概要
https://gentosha-go.com/articles/-/11087
定義からみる日本におけるブレンディッドラーニングの概要
https://mu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=893&item_no=1&page_id=13&block_id=21
EdTech 基礎Ⅰ
http://www.dcc-a.com/h30edtechhp/pdf/pdf9.pdf
ブレンディッドラーニングとは?どういう場面で活用できるの?特徴・効果は?
https://edtech-media.com/archives/19523

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