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ATDとは 人材開発担当者は要チェック!世界最大の人材・組織開発団体

「人材開発部門として把握しておくべき人材開発の世界標準とはどのようなものだろうか?」

ビジネス環境はグローバル化やテクノロジーの急速な進歩によって刻一刻と変化していきます。人材開発の在り方もまた、時のニーズに応じた変革が求められます。

例えば、AIの普及といったデジタル・トランスフォーメーションは、近年様々な業界においてその働き方に大きな転換を迫っています。そのような中、人材・組織開発の世界で昨今話題となっているのがヒューマニティです。AIと共存しながら自信を持ってビジネスを力強く推進できる人材を創出していくには何をすべきか、「信頼」や「エンパシー(共感)」、「心理的安全性」などをキーワードに、世界中で活発な議論が行われています。

また、ビジネスのリモート化は新型コロナウイルスの影響によってにわかに本格化しましたが、世界的に見ると、遠隔によるマネジメント(バーチャルマネジメント)や従業員同士の結びつきを大切にする風土(コネクション・カルチャー)作りの重要性はそれ以前から主張されています。

日本は変化への対応が遅いとよく言われますが、グローバル化の時代、自分たちの業界のグローバル・スタンダードを把握しておくことは重要です。世界の人材・組織開発分野では今何が問題となっていて、どのように解決していこうとしているのか。アンテナを広く張り、小まめに情報をアップデートしていくことで、常に最適な人事戦略を追求し、改善を図っていくことができます。

では、世界の人材開発現場の「今」に遅滞なくアクセスするには、どうすれば良いのでしょうか。

本稿では、人材開発部門がおさえておきたい情報源として、世界の人材・組織開発をリードするアメリカの非営利団体ATD(Association for Talent Development)をご紹介します。ぜひ、参考にして下さい。


1. 世界100か所以上に支部がある人材・組織開発団体、”ATD”とは?

ATD(Association for Talent Development)とは、1944年に設立された世界最大の人材・組織開発に関する会員制組織(NPO)です。より良い世界の創造(Create a World That Works Better)をビジョンに、人材・組織開発に携わる全ての人々の知識習得・スキル向上を支援しています。アメリカヴァージニア州を本拠地に、世界120カ国以上約35,000人の会員を有しています。日本語では「エー・ティー・ディー」と呼ばれます。

1-1. ATDの活動内容

ATDでは、以下の3つの活動を軸に、教育研修・能力開発・パフォーマンス向上等、人材・組織開発に関する様々な情報を世界へ発信しています。

(1) 本・雑誌・研究レポート等の刊行
人材・組織開発に関する実用書や月刊誌、研究レポート等を定期刊行しています。新たな実務知識の習得や、他社のベストプラクティスや各地域・業界の動向(取組みや予算)調査など、ベンチマーキングに役立ちます。価格は数千円~数万円程度で、非会員も購読することができます。

(2) 資格の認定
ATDでは、2種類の資格認定を行っています。1つはAPTD(Associate professional in Talent Development)と呼ばれる資格で、人材開発の専門家がおさえるべき基本的な知識をカバーしています。もう1つがCPTD(Certified Professional in Talent Development)と呼ばれる資格で、APTDの上位資格です。いずれも人材・組織開発従事者が身に付けるべき能力モデルを基に作成されており、プロフェッショナルとして一定の知識・スキルを有していることの国際的な証明となります。

資格レベルについては、ATDの公式サイトで詳しく解説されていますので、ご興味のある方はこちらをご参照ください。(※英語)

ATD’s Stackable Career Development Framework |ATD
(最終閲覧日;2020年6月15日)

(3) カンファレンス・セミナーの開催
年に数回、以下のようなテーマでカンファレンス・セミナーを開催しています。

  • 人材開発(Core 4 Conference)
  • 組織開発(OrgDev Conference)
  • 営業力強化(SELL Conference)
  • e ラーニング等教育テクノロジー(TechKnowledge)
  • 政府機関における人材開発(Government Workforce)
  • ATD 国際会議&EXPO(ATD ICE; ATD International Conference and Exposition)
  •  

中でもATD 国際会議&EXPO(以下、ATD ICE)は、企業の人材・組織開発担当者や行政リーダー、コンサルタント、教育機関など、世界各国から10,000人を超える人材・組織開発のプロフェッショナルが集う、世界最大級の国際イベントです。日本電気株式会社やパナソニック株式会社、凸版印刷株式会社など、例年、日本企業からも多くの参加者がいます。動員数は年々増加傾向にあり、団体としての影響力や存在感は益々強まっています。

1-2. ATDを活用するメリット

ATDを活用するメリットとしては、以下の3つがあげられます。

(1) 世界標準の知見に触れられる

ATDは、世界の人材・組織開発のトレンドの発信源です。各分野の第一線で活躍する有識者やオピニオン・リーダーらの最新の知見を、世界各国へタイムリーに提供しています。例えば、2019年のATD ICE では、近年Google社が効果検証をしたことにより注目を集めている心理的安全性について、その大家であるエイミー・エドモンドソン氏が登壇し、定義や醸成方法について講演を行いました。

このように、ATD ICEなどへの参加を通じて世界標準の知見にアクセスすることは、日本においても、自社の人材育成を検討する際のポイントや効果的な取組方法を知る手掛かりとなります。

(2) 人材・組織開発部門のレベルアップ

ATDが体系化した人材・組織開発の能力モデル[1]では、Performance Improvement(パフォーマンス改善)やData and Analytics(データと分析)、Future Readiness(将来への備え)など、3領域23個の能力が示されています。これらは189個の具体的な知識・スキルで構成されており、グローバル競争の激化やテクノロジーの進化といった社会変化への対応ニーズが常に意識されています。従来の人材・組織開発のイメージとは異なる、戦略人事への参画を前提としたモデルと言えるでしょう。

APTDやCPTDの取得をはじめ、ATDが提供するイベントやプログラムに参加することは、人材・組織開発のプロフェッショナルとして自分がどこに位置しているかを確認することにつながり、今後取り組むべき課題を明確にします。

(3) 情報ネットワークの拡大

ATD会員やカンファレンス等イベント参加者の活躍フィールドは、企業や大学、コンサルタント、トレーニングファーム、教育機関、行政など多岐に渡ります。そのため、幅広い国や地域、業界・業種の人々と繋がることができ、グローバルなマインドセットや知識を得ることができます。

[1] ATD Capability Model [ web ] https://tdcapability.org/#/professional [ pdf ] https://d22bbllmj4tvv8.cloudfront.net/18/5b/1142b292431fb5393f2193211e1b/talent-development-capability-model-definitions.pdf


2. 人材開発の最先端に触れるATD ICE

2019年に開催されたATD ICEでは、世界88カ国から過去最大規模の総勢13,500名の人材・組織開発関係者が集結し、うち227名は日本からの参加者でした。リピーターも多く、開催期には企業や業界団体らによって毎年複数の派遣団が組まれるATD ICEは、ATDの活動の中でも日本で特に注目されているイベントです。本章では、このATD ICEについて、詳しくご紹介します。

2-1. ATD ICEの構成

ATD ICE は、例年、次の4つのプログラムで構成されています。

(1) 基調講演
基調講演は、カンファレンスセッションや展示会などメインイベントが行われる4日間のうち、例年2日目~4日目にかけて行われます。毎年様々な分野から、オピニオン・リーダーや有識者、経営者などが1日1名ずつ、計3名登壇します。2018年はバラク・オバマ元大統領が、2019年は女優でテレビ司会者のオプラ・ウィンフリー氏が登壇するなど、ビッグネームによる講演が話題となりました。

(2) カンファレンスセッション
カンファレンスセッションは4日間にわたって開催され、企業の先行事例や新たな学説、ソリューションなどが紹介されます。1セッションは1時間~1時間30分ほどで、1日3~4コマの時間枠が設定されています。16種類300以上のセッションの中から、興味・関心のあるテーマ・業界を選んで参加します。

■セッションの種類(2019年時点)

<テーマ別>

  • Career Development
  • Global Perspectives
  • Instructional Design
  • Leadership Development
  • Learning Technologies
  • Learning Measurement & Analytics
  • Management
  • Managing the Learning Function
  • Sales Enablement
  • Science of Learning
  • Talent Management
  • Training Delivery

 

<業界別>

  • Higher Education
  • Sales Enablement
  • Healthcare
  • Government

 

(3) 展示会
展示会には、例年400を超えるベンダーが出展し、自社の研修プログラムやツールなどを紹介しています。バーチャル・リアリティー(VR)や拡張現実(AR)といったテクノロジーを活用した最先端のソリューションなどもあり、人材・組織開発のトレンドを把握するのに役立ちます。開催期間はカンファレンスセッションと同様の4日間です。

(4) プレカンファレンスセミナー
プレカンファレンスセミナーは、APTDやCPTDの資格取得に向けた準備講座など、人材開発担当者やコンサルタント向けの有料講座です。ATD ICEの参加費とは別途で費用がかかります。カンファレンスセッションや展示会の開幕日前、数日間開講されます。

2-2. ATD ICEへの参加方法

ATD ICEへの参加方法は、個人と団体の2種類から選択することができます。団体の場合は、後述するATD-IMNJ などの視察ツアーへ申し込みます。視察ツアーには、現地集合・解散のものから航空券や宿泊費がセットになったものまで様々なタイプがあります。多くはスケジュールに参加者同士の交流タイムが組み込まれており、受講したセッションについての意見交換や学びの共有を行うことができます。

なお、2020年5月に開催予定だったATD ICEは新型コロナウィルス(COVID-19)の影響により中止となりましたが、代わりに同年6月、ATD VIRTUAL CONFERENCEが開催されました。2021年以降の開催日程については、ATD公式ホームページをご確認ください。

https://www.td.org/events

2-3. ATD ICEに参加する際のポイント

ATD ICEでは、短期間に膨大な量の情報が英語で入ってきます。そのため、参加する際は以下の点を意識しておくと、学びの質をより高めることができるでしょう。

(1) 基調講演は事前に登壇者のプロフィールを調べる

世界の名だたるリーダーや著名人が登場する基調講演では、例年その年のテーマに沿って登壇者それぞれの私見が述べられます。また、回によってはスタンディングベーションが起こるなど、会場全体が大きく盛り上がります。

登壇者の経歴や過去の講演内容などを調べておけば、当日どのような方向性の話がされるのか、ある程度予測することができます。事前情報を持って臨むことで、講演内容が把握しやすくなり、他の参加者と会場の熱気を共有することもできるでしょう。

(2) カンファレンスセッションはテーマを絞って参加する

2章でご紹介した通り、カンファレンスセッションは合計16種類300以上あります。そのため、参加するセッションを決める際は、「Career DevelopmentとGlobal PerspectivesとInstructional Design」など、ある程度テーマを絞っておき、その中から複数セッションを選ぶのが良いでしょう。そうすることで、実際に参加した時に同じテーマについて様々な角度の情報を得ることができ、理解がより一層深まります。

また、幅広いテーマで情報収集をしたい場合は、複数人で参加してテーマを分担すると良いでしょう。

(3) アウトプットの機会を設ける

ATD ICEへ参加するとおのずと膨大な量のインプットがありますが、アウトプットについては意図的に機会を作る必要があります。ブログやレポートにまとめたり、参加者同士で積極的に意見交換を行うことで、知識を定着させたり、自社での活用イメージをより具体化することができます。


3. ATD-IMNJに参加して学びを強化する

ATDには世界各地域に国際ネットワークがあります。ATD-IMNJ(International Member Network Japan、通称ATDジャパン)[2]はその内の1つで、人材・組織開発に関する情報交換の場として、企業や学術団体、コンサルタント、教育界など、分野・業種の垣根を越えた交流の促進を行っています。具体的な活動としては、国内向けのATDに関する情報発信の他、以下のようなイベントや勉強会などを主催しています。

  • ATD ICE視察ツアー
  • ATD ICE報告会
  • ATD Japan Summit
  • T&Dコンピテンシー基礎講座
  • スタディーグループ

 

なお、基本的には上記活動への参加はATD会員以外も可能となっていますが、スタディーグループについてはATDへの会員登録が必要です。現在日本国内の会員数は300人ほどおり、会員登録をすると、イベント参加費やコンテンツ利用料など各種割引を受けることができます。

[2] ATD​-IMNJ 公式WEBサイトhttps://www.atdj.jp/

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4. まとめ

いかがでしたでしょうか?本稿では、世界の人材・組織開発をリードするアメリカの非営利団体ATD(Association for Talent Development)についてご紹介しました。

ATD(Association for Talent Development)とは、1944年に設立された世界最大の人材・組織開発に関する会員制組織(NPO)であり、世界120カ国以上約35,000人の会員を有しています。

ATDでは、以下の3つの活動を軸に、教育研修・能力開発・パフォーマンス向上等、人材・組織開発に関する様々な情報を世界へ発信しています。

(1) 本・雑誌・研究レポート等の刊行
(2) 資格の認定
(3) カンファレンス・セミナーの開催

ATDを活用するメリットは、以下の3つがあげられます。

(1) 世界標準の知見に触れられる
(2) 人材・組織開発部門のレベルアップ
(3) 情報ネットワークの拡大

ATDの活動の内、ATD ICEは世界各国から総勢1万名以上が参加する世界最大級の国際会議であり、日本で特に注目されているイベントです。

ATD ICE は、例年、次の4つのプログラムで構成されています。

(1) 基調講演
(2) カンファレンスセッション
(3) 展示会
(4) プレカンファレンスセミナー

ATD ICEへの参加方法は、個人参加と団体参加の2種類あります。団体の場合は、ATD-IMNJ などの視察ツアーへ申し込みます。多くはスケジュールに参加者同士の交流タイムが組み込まれており、受講したセッションについての意見交換や学びの共有を行うことができます。

ATD ICEに参加する際は、以下の点を意識しておくと、より学びの質を高めることができます。

(1) 基調講演は事前に登壇者のプロフィールを調べる
(2) カンファレンスセッションはテーマを絞って参加する
(3) アウトプットの機会を設ける

ATD-IMNJ(International Member Network Japan、通称ATDジャパン)はATDの国際ネットワークの1つであり、人材・組織開発に関する情報交換の場として、企業や学術団体、コンサルタント、教育界など、分野・業種の垣根を越えた交流の促進を行っています。国内向けのATDに関する情報発信の他、以下のようなイベントや勉強会などを主催しています。

  • ATD ICE視察ツアー
  • ATD ICE報告会
  • ATD Japan Summit
  • T&Dコンピテンシー基礎講座

将来の予測が困難な時代、より良い戦略人事を実現するためには、グローバルな視野で時代のニーズを迅速かつ的確に捉えていくことが大切です。ぜひこの機会に、ATDを活用してみてはいかがでしょうか。

(参考)
ATD
https://www.td.org/
ATD INTERNATIONAL MEMBER NETWORK JAPAN
https://www.atdj.jp/
日本の人事部 ATDインターナショナルメンバーネットワークジャパン
https://service.jinjibu.jp/hrassoc/group/707/
日本の人事部 ATD 2019 International Conference & Expo 参加報告~ATD2019に見るグローバルの人材開発の動向~
https://jinjibu.jp/article/detl/eventreport/2135/
IDEA DEVELOPMENT株式会社 ATD人材育成国際会議2019の三大キーワードは「ハイテク」「ハイタッチ」「ラーニングジャーニー」(ATD人材育成国際会議2019 帰国報告会【A日程】レポート)
https://ide-development.com/blog/atdice2019/seminar_report_a
株式会社ヒューマンバリュー ATD2019カンファレンス・レポート(2019/05/24)
https://www.humanvalue.co.jp/wwd/research/conference/atd/atd2019/
一般社団法人日本能率協会 ATD 2020-ICE inデンバー視察研修
https://school.jma.or.jp/products/detail.php?product_id=151339

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