手遅れになる前にくい止めろ! 企業が反社会的勢力と関わるリスクと対策

反社会的勢力は、近年の厳格化された昨今の法規制のもと、一見、弱まっているかのように思えます。

しかし、それは表面上のことであり、形態や手口はより不透明で巧妙なものとなっているため、却って対応が難しくなっているのが実情です。

「その道のプロ」である反社会的勢力が近付づいてきた時、「その道の素人」であるあなたの企業の従業員は、まず彼らを反社会的勢力だと認識し、さらに彼らに対して適切な、毅然とした対応を取ることができるでしょうか?

今回は、反社会的勢力と関わることによって生じる企業のリスクから、企業としてどのような対策をとるべきかまで、そのポイントを、遵守すべき法令を踏まえつつ、コンプライアンスの観点からお伝えします。

まず、反社会的勢力から企業と従業員を守るには、組織単位の対策が不可欠です。

彼らに対して企業はどのような対策とるべきなのか、この記事で概要を把握し、より確実に、そしてより迅速に、将来にわたってあなたの企業と従業員を守れるよう備えてください。

1. 進化した反社会的勢力

暴力団対策法をはじめとする法令の強化などにより、反社会的勢力は、従来型の見ヶ〆料(みかじめりょう)の徴収や総会屋としての資金調達が困難になりました。

そこで、法の網の目をくぐる手段として多く生まれたのが、「企業舎弟」または「フロント企業」などと呼ばれる組織です。

1-1. 反社会的勢力の不透明化

かつて反社会的勢力は、「株主総会で体面を保ちたい企業」に対し、「総会を妨害しない見返りとして、金銭を要求する総会屋」のように、その判断が容易なものが多くありました。また、その要求も、機関紙の購読の要求、用心棒代の請求など、分かりやすいものでした。

対して、昨今の反社会的勢力は、組織の実態を隠蔽するとともに、活動形態も企業活動を装ったり、政治活動や社会活動を標榜したりするなど、不透明なものになっています。

また、資金を獲得する方法も、証券取引や不動産取引など、通常の商取引を用いた巧妙なものとなっています。

しかし、アプローチの方法は変化していても、反社会的勢力が企業へ資金を要求する基本的な構図は変わりません。以下に詳しく説明しましょう。

1-2. 反社会勢力が企業から資金を引き出す構図

 一般的に、企業は個人よりも社会的信用を失うことを恐れ、かつ、より多くの資金を持っています。そこで反社会的勢力はこのような企業の隙(すき)につけこみ、「『体面の問題』を『お金』で解決」する提案をおこなうことで、利益を得ようと図るのです。

また、反社会的勢力は、資金を得るため、企業の社会的信用を失墜させるような事実無根のスキャンダルを捏造することもあります。

1-3. 企業に求められる対策の多様化

i.不当な要求に応じずとも責任を追及される

反社会的勢力による被害から社会を守るため、政府は2007619日に「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」(以下「政府指針」)を発表、2011年には全都道府県において暴力団排除条例が施行されるなど、法整備は強化されて来ています。

これら行政の動きに伴い、たとえ正当な取引における、相当な対価であったとしても、企業が反社会的勢力と取引関係を維持することは、それ自体が問題視されるようになりました。

つまり、不当な要求に応じてはいないとしても、取引によって得られる利益は、反社会的勢力の資金源となることに変わりはなく、このような取引行為は企業の社会的責任として許されない、と判断されるようになったのです。

暴力団への融資を放置していたとして、20139月にみずほ銀行が金融庁から業務改善命令を受け、結果、首脳陣合計54人の大量処分につながった事案は記憶に新しいでしょう。

ii.コーポレートガバナンス全般の対策が必要

このみずほ銀行の事件で問題とされた230件のうち、警察により暴力団と認定されていたのは1件のみでした。にもかかわらず、このような大規模な事態に陥ったのは、暴力団との取引行為に加え、事態が発覚した後の当局対応やマスコミ対応といった、コーポレートガバナンス全般での適切な対応がなされていなかったことに起因すると言われています。

つまり、反社会的勢力との取引を未然に防ぐのみでなく、コーポレートガバナンス全般の対策も現代の企業には求められているのです。

1-4. 水際で食い止めるのは難しい

株主総会など、あらかじめ反社会的勢力に狙われやすいと分かっている場面においては、企業もそれなりの対策を採りやすいものです。

しかし、今日の反社会的勢力は、企業の通常の業務の中で、突然、接触して来ます。いつ、どの場面でやって来るか分からない場に、常に反社会的勢力への対応に慣れている従業員を配置し、臨戦態勢でいることはおよそ不可能です。

その上、一従業員がある日突然、目の前に現れた反社会的勢力に対し、脅しに屈することなく、毅然とした態度で対応するのは、頭で理解するだけでは足りず、それなりの経験がなければかなり難しいといえるでしょう。

また、相手の一見、正しいと思えるが、実は誤っている法律知識や経済知識の説明(すなわち言いがかり)に対し、少なくとも「何か違っているのではないか」、「言いがかりをつけている彼らは反社会的勢力なのではないか」と気が付くことが出来るためには、従業員が事前に相応の正しい知識を持っていることが必要です。

さらに問題が起こったことを隠し、自分だけで処理しようとする従業員もいるかもしれません。その場合、むしろそれを望んでいる反社会的勢力にとって、その従業員は格好の餌食となってしまうのです。

このように、反社会的勢力という脅しのプロが現れた場合、一従業員が適切に対応するのは大変難しいことと言わざるを得ません。

だからこそ、個人の力量にゆだねるのではなく、組織としての対策が求められるのです。

1-5. 既に始まった関係を断つのは難しい

残念ながら既に取引先として反社会的勢力が深く企業に入り込んでいる場合、その関係を断ち切るのは困難を伴います。

しかし、それでも反社会的勢力と関係がある事実を明らかにし、関係を遮断する必要があります。この場合も警察や弁護士、中でも民事介入暴力に積極的に取り組んでいる弁護士や、暴力追放推進センターなどの専門家に相談することも含め、企業として対応するべきでしょう。

2. 企業が反社会的勢力と関わる5つのリスク

このように、反社会的勢力には組織的に対策を行う必要がある訳ですが、そもそも企業が反社会的勢力と関わることでどのようなリスクが生じるのでしょうか。

 政府指針で述べられている反社会的勢力と関係を断つ必要性を、以下にまとめました。

反社勢力との関係遮断の必要性

【社会的責任】
 治安対策上、反社会的勢力の排除は必要である以上、企業にとっても社会的責任がある。

【コンプライアンス】
 法律に則して反社会的勢力に対応や資金提供しないことはコンプライアンスそのものである。

【企業防衛】
 従業員を標的に不当要求をしたり、企業そのものを乗っ取ることで、従業員だけでなく株主や企業すべてに多大な被害を与える。

この指針を参考に、リスクを5つ説明します。

  1.  不当要求や会社乗っ取りのリスク
  2. 条例違反となるリスク 
  3. 契約が解除されるリスク
  4. 監督官庁から指導を受けるリスク
  5. 評判リスク

    それでは一つずつ見ていきましょう。

2-1. 不当要求や会社乗っ取りのリスク

「不当な要求」とは、法的根拠のない要求または、法的根拠があるとしても過大な要求を指します。具体的には、法的根拠のない金銭請求を繰り返し行う、過剰に電話・面談等を強要するなど、様々なケースがあります。

また、会社そのものを乗っ取られるケースもあります。

さらに取締役は、反社会的勢力と関わることで会社に被害が生じた場合、善管注意義務(善良な管理者の注意義務)違反などが問われ、高額の損害賠償請求を受ける可能性もあります。

2-2. 条例違反となるリスク

現在、すべての都道府県において制定されている暴力団排除条例(暴排条例)では、暴力団員などの反社会的勢力に対する利益供与は禁止されています。

取引先の代表者が暴力団の組員である場合、代表者に対して利益を与える取引を継続することは、暴力団に利益を与えているとみなされ、勧告を受けたり、場合によっては社名などが公表される可能性があります。

2-3. 契約が解除されるリスク

 契約書に暴力団排除条項(暴排条項)を記載する企業が増えています。これは、取引相手が暴力団員などの反社会的勢力である場合、契約を解除することが可能となる条項です。

これは既に認可された融資の一括請求や、融資そのものが拒否されるリスクも意味します。

ほとんどの金融機関の預金規定や融資契約書などには、暴排条項が導入されています。反社会的勢力と判断された場合、預金解約や融資において期限の利益を喪失され、直ちに融資額全額の返金を求められるリスクが発生するのです。

【参考事例】 行政上も刑事上も無罪だったが、融資停止により黒字倒産

東証2部上場の不動産開発会社、スルガコーポレーション社の例。

暴力団と関係が深い地上げ屋を利用していたことが明るみになり、行政上も刑事上も罪を問われなかったにも関わらず、金融機関からの資金調達ができなくなり、結果、黒字倒産した。(20086月24日民事再生法適用)

また、金融機関以外の取引先との間においても、暴排条項が契約書に記載されていれば契約解約のリスクが生じるほか、記載されていないケースでも今後の新規取引が成立しなくなるリスクがあります。

【参考事例】 銀行において預金口座を開設したとしても、逮捕・起訴

暴力団員が銀行において、口座を開設し、口座通帳及びキャッシュカードを取得した行為について、詐欺罪が成立。

平成26年4月7日 最高裁判例 ・ 判決全文

2-4. 監督官庁から指導を受けるリスク

金融庁は、金融機関に対し反社会的勢力との関係遮断とその体勢整備に向けて厳格に監督している他、(平成19年改訂の金融検査マニュアル、平成20年に策定した監督指針、検査基本方針など)取組みが不十分な金融機関に対しては、業務改善命令などの処分を行っています。

【参考事例】 銀行が反社会的勢力に対し融資していたことを理由に業務改善命令

1-3で挙げたみずほ銀行の事例です。

金融庁がみずほ銀行に対し、反社会的勢力への融資を放置していたとして業務改善命令を発令。結果、首脳陣合計54人が処分を受けました。

(参考:平成25年9月27日  みずほFG 反社会的勢力との関係遮断に向けた対応について 

また、金融機関以外の企業においても、監督官庁の検査や、所属団体の規則などで処分を受けるリスクも今後増えていくことが考えられます。

2-5. 評判リスク

企業に対する否定的な評価や評判が広まることによって、企業の信用やブランド価値が低下し、損失を被るリスクです。

具体的には、反社会的勢力と関係があると公表されることで、企業イメージが低下、取引先や従業員の離脱など、深刻な打撃を企業に与えるおそれがあります。その結果、企業の存続を脅かすことにもなりかねません。

3. 行政による対策

反社会的勢力への対応について、国や自治体もそれぞれ対策を強めています。反社会的勢力に対応や資金提供しないことは法で定められており、つまりコンプライアンス上も、企業として守る必要があるのです。

まず、国が定めた指針から見ていきましょう

3-1. 政府指針「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」

2-1で述べた政府指針では、5つの基本原則を定めています。

「企業が反社会的勢力による被害を防止するための指針について」
5つの基本原則

1 組織としての対応
2 外部専門機関との連携
3 取引を含めた一切の関係の遮断
4 有事における民事と刑事の法的対応
5 裏取引や資金提供の禁止

基本原則の1番目に、「組織としての対応」と明示されています。従業員個人に任せず、企業組織として対応すべきことはすでに述べたとおりですが、これは担当者レベルではなく、代表取締役など経営トップも含めた組織として対応することが求められているのです。

3-2. 暴力団対策法・暴力団排除条例

また、暴力団対策法(「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」)という法律も制定されました。

さらに他にも、全都道府県で制定された暴力団排除条例や、各業界でも反社勢力排除の様ざまな取組みが行われています。

暴力団排除条例では、事業者の努力義務として、後ほど述べる取引相手および関係者の属性確認や、暴力団排除条項の規定などが含まれています。これらに関しては、4-1 A.およびB.で詳しく説明しますが、表にまとめるとこのようになります。

暴力団排除条例の事業者の義務
義務内容 努力/法的義務
関係者の属性確認,契約書における暴排条項規定 努力義務
不動産の譲渡,貸付における用途確認,暴排条項規定 努力義務
利益供与禁止(※1 法的義務

<※1 利益供与の具体的対象行為例>
・暴力的不法行為
・示威行為
・暴力団活動の助長

4. 企業として行う10個の対策

ここまでは反社会的勢力に対し、企業が対策をする必要性についてお話してきました。
ここからは、具体的にどのような対策があるのか、社外と社内の大きく2つに分けてご説明します。

1.社外への対策(取引)   …対策①~⑥
2.社内への対策(従業員教育)…対策⑦~⑩

1.社外への対策(取引)

A.属性調査
① 属性チェック体制の設置
② 外部への照会
③ 自社データベースの構築

B.関係の切断・解約
④ 反社でないことの表明・確約
⑤ 暴力団排除条項
⑥ 専門家の活用

2. 社内への対策(従業員教育)

 ⑦ 反社会的勢力排除の意識の醸成
 ⑧ 適切な現場対応の周知
 ⑨ 不当要求防止責任講習制度(暴力団対策法第141項)
 ⑩ 反社会的勢力排除の確約

最初に社外活動である取引を行う際の対策について、次に社内活動、つまり従業員をどのように教育し、対策の実行性を担保するかについてご説明します。

4-1. 社外への対策(取引)

企業が社外の利害関係者と取引を行う際、とりうる対策として考えられるものとして、主に「属性調査」と「関係の切断・解約」の2つがあります。

A.属性調査
①社内での属性チェック
②外部への照会
③自社データベースの構築

B.関係の切断・解約
④ 反社でないことの表明・確約
⑤ 暴力団排除条項
⑥ 専門家の活用

まず、属性調査における対策から見ていきます。

A.属性調査

反社会的勢力でないか、取引関係者の属性を確認します。これは第3章で述べた様に、全国の暴力団排除条例において、業者の努力義務として定められています。
具体的には以下の対策が挙げられます。

①社内での属性チェック
②外部への照会
③自社データベースの構築 

以下、順に説明します。

①属性チェック体制の設置

ⅰ. 属性チェック体制の確立
ⅱ. 属性チェック体制の見直し
ⅲ. グレーな取引先の管理

ⅰ. 属性チェック体制の確立

取引先の属性、つまり反社会的勢力か否かは、一見、そうと分からないものも多く、難しい判断を求められるものも少なくありません。

属性の判断は、現場担当者でなく、専門の知見をもった社内の担当部署が行いましょう。また同時に、属性チェックの項目や基準、手順をルール化することも必要です。

属性チェックは新規、既存両方の取引先に対し行うことが求められます。

ⅱ. 属性チェック体制の見直し

運用されているか担当を決めてチェックをおこないます。さらに、チェック方法自体も見直し、実態に沿った業務フローを確立しましょう。

そして確立した業務フローは、全従業員に周知します。せっかく策定したチェック体制も、実行性のあるものでなければ、反社会的勢力との関わりを食い止めることは出来ません。

iii.  グレー取引先の管理の改善

何をもってグレーな取引先とするのか社内で定義づけを行い、継続的な監視を行います。
また、疑いの強弱によって、管理方法を考えるなどの施策が必要です。

②外部への照会

取引相手の属性調査を警察や、暴力追放推進センター、専門の調査会社など、反社会的勢力の情報を豊富に集めている機関に依頼します。専門家の豊富なデータベースを利用できるという点で、合理的といえます。

ただし、警察は暴力団の情報提供について、個人情報保護の観点から基準を定めています。基準を満たしていない場合は、照会することができないので注意が必要です。

参考)「暴力団排除等のための部外への情報提供について」 警察庁刑事局組織犯罪対策部長

③自社データベースの構築

企業が独自に情報データベースを構築します。大量の取引を迅速に行う企業の場合、取引の都度、外部へ照会していては間に合わない場合があります。そこで実務上、自社でデータを持つことが必要になるのです。

尚、データベースの構築の詳細は以下のとおりです。

対象: 自社に対する不当要求者、暴力団員、その共犯者。

手段:  新聞、インターネット検索などキーワードを会社名や個人名と組み合わせて検索する。
                          キーワード例   「暴力団」「反社」「疑い」「詐欺」「違反」「容疑」など

B. 関係の切断・解約

政府指針では、取引を含めた「一切の」関係遮断を明示しています。反社会的勢力とは知らずに関係を有した場合、反社会的勢力と「判明した時点や疑いが生じた時点」で速やかに関係を解消することが要求されています。そのためには以下の施策が有用です。

④ 反社でないことの表明・確約を求める
⑤ 暴力団排除条項
⑥ 専門家の活用

これも順に見ていきましょう。

④ 反社でないことの表明・確約を求める

 取引相手に反社でないことの表明を求めます。また、表明内容と実際が異なる場合の効力についても確約させます。これは新規・既存両方の取引先に対し行います。

ポイントは4つです。

表明の内容
 i.反社会的勢力ではないこと
 ii.反社会的勢力と関係がないこと

表明と実際が異なる(「違背した場合」や「虚偽の申告をした」)場合に、確約させる内容
 iii.催告がなくても解約に応じること
 iv. 解約で生じた損害は取引相手の責任とすること

⑤ 暴力団排除条項

取引先との契約書に、暴力団排除条項を挿入することが、すべての都道府県の条例において、事業者の努力義務として定められています。

条項を定める際、抑えるポイントは以下の2つです。

 i.  取引先が暴力団関係者でないことを確認する
 ii. 暴力団関係者であることが判明した場合には、契約を解除できる

暴力団排除条項を挿入することで、企業の「コンプライアンス宣言」となるばかりか、契約相手をけん制することができます。さらに相手方が反社会的勢力と判明した場合、契約解除の根拠となりますので大変重要な条項です。

⑥ 専門家の活用

政府指針には、実際に反社会的勢力からアプローチを受けた、または何らかの関わりが生じた際、警察や弁護士など外部専門機関と連携することが示されています。プロにはプロを。犯罪行為への対応が求められる以上、当然と言えます。
また、取引関係者の属性確認の際にも、データ収集に長けた専門家との連携は大変、有用です。

外部専門機関の例

警察
暴力団追放運動推進都民センター
企業防衛対策協議会
暴力団等排除対策協議会
弁護士など

 

 

ここまでは、企業がとる対策のうち、社外取引、つまり契約に関する対策を述べました。続いて実際に行動すべき従業員に対してどのような施策があるのかを見ていきます。

4-2. 社内への対策(従業員教育)

 従業員に対する施策は4つになります。

⑦ 反社会的勢力排除の意識の醸成
⑧ 適切な現場対応の周知
⑨ 不当要求防止責任講習制度(暴力団対策法第141項)
⑩ 反社会的勢力排除の確約

順に見ていきましょう。

⑦ 反社会的勢力排除の意識の醸成

単に法令遵守を認識するだけでは足りません。いかなる場合においても反社会的勢力に協力しない、利益を供与しないという信念を従業員一人ひとりが持つことが必要です。

そのためには、法令の根底にある「なぜ社会的にそのような法令が必要なのか(社会的規範意識)」、「そのために企業としてどのようにふるまうべきか(企業倫理意識)」を理解していなければなりません。

実際に反社会的勢力と接点を持った時、毅然とした態度で対応させるためには、全役員および全従業員が、相手の脅しに安易に従う必要がないこと、従ってはいけないことを「普段から」「明確に」認識しておく必要があります。

⑧ 適切な現場対応の周知

実際に反社会的勢力が現れたとき、現場が適切な対応を行えるようにするには、全社員・全役員がコンプライアンス意識をしっかりと持つだけでなく、具体的にどのような対応をとるべきなのかを理解している必要があります。具体的には対策マニュアルなどを策定し、有事に備えておくことをお勧めします。

⑨ 不当要求防止責任者講習制度(暴力団対策法第141項)

暴力団対策法では、努力義務として、事業所に以下のことを定めています。

  • 不当要求防止に関する責任者を選任すること
  • 責任者に対し、不当要求に対する対応方法などについて指導を行うため、各種資料の提供や、指導・助言等の援助を行うこと

この援助の一環として「不当要求防止責任者講習制度」があります。
(参考:警視庁HPより)

この講習制度は、警察に責任者選任届を出すと利用することが出来ます。

講習の受講により、責任者を指導できるだけでなく、警察の担当官・暴力団追放運動推進都民センター、弁護士などの専門家と関わる機会を持てることになり、平時・有事の情報収集や相談にも役立てることができます。

⑩ 反社会的勢力排除の表明・確約

従業員・役員に対して暴力団排除の確約書への署名と提出を求めます。

これは従業員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるのみでなく、仮に「適切な内部統制を行っていなかった」と疑いを受けた場合、反証する材料にもなります。

下に確約書の文例を挙げておきます。

確約書文例

「私は,暴力団員ではなく,暴力団又は暴力団員(以下,「暴力団等」という。)を不当に利用し,暴力団の維持・運営に関与し,又は暴力団等と社会的に避難されるべき関係を有するなど暴力団等との密接な関係を有していないことを表明するとともに,採用後も暴力団等と密接な関係を持ちません。」

入社時の提出書類へ表明・確約書を提出させる規定を入れる、会社への報告義務や虚偽申告への懲戒を定めることも有用です。

さらに毎年行われるコンプライアンス施策の一つに加えるのもお勧めです。

次の節では「⑦反社会的勢力排除の意識の醸成」、「⑧有事の際の適切な現場対応の周知」の場で行われる従業員教育の具体的な手法について説明します。

4-3. 従業員教育の手法

従業員に「普段から」認識させるためには、日常の業務に支障ない方法で、周知することが求められます。また「正確に」認識するためには、繰り返し周知することが有効です。

i.eラーニング
業務のすき間時間を利用し、PCやタブレット端末で手軽に受講できるeラーニングはコンプライアンス意識を醸成するには大変有効な方法といえるでしょう。

講義形式からケーススタディ、確認テスト、レポートやアンケートの提出など、様々な内容を盛り込むことが可能です。

また、受講履歴の管理、対象者グループに合わせた通知機能など、受講の管理という面からも、eラーニングは有用であり、さらにコンプライアンス教育の実施という企業の責任を果たしていることを周知させる際にも役立ちます。

ii.集合研修
集合研修でロールプレイを行うなど、より実践的な経験を積ませることが可能です。避難訓練のように、実際に身体を動かし、せりふを声に出すことは、有事の訓練として大変有効です。

iii.マニュアル・小冊子の配布
eラーニングや集合研修は、受講時には理解したつもりでも、時間がたつとどうしても記憶がおぼろげになるものです。要点をすばやく見直せる手段があれば、記憶の定着に便利です。
例)「不当要求対策マニュアル」

iv. 組み合わせ
i.iii.の方法を組み合わせることで、相乗効果を得、正確な知識の定着を図ると同時に、現場での実行性を担保します。

例えば、「eラーニングで予習→集合研修でロールプレイ→マニュアル・小冊子で確認→eラーニング(確認テスト)で記憶の定着」といった一連の流れの中で組み合わせることで、無理なく従業員を教育することが可能となります。

最初は導入しやすいものから始め、年次を重ねるに従い、手法を増やし、相乗効果を狙うなど、各企業の事情に合わせて判断するのがよいでしょう。

5. まとめ

近年の反社会的勢力はより不透明な形態をとりつつ、より巧妙な手口を用います。また、企業に求められる責任やそのための対策も多様化しています。にもかかわらず彼らが企業や従業員へもたらす被害は甚大です。

記事では5つのリスクについて説明しました。

1.不当要求や会社乗っ取りのリスク
2. 条例違反となるリスク
3. 契約が解除されるリスク
4. 監督官庁から指導を受けるリスク
5. 評判リスク

これらのリスクから企業や一般市民である従業員を守るため、企業がとるべき対策を10個ご紹介しました。うち6つは社外取引、つまり契約に関するもの、他の4つは社内的なもの、つまり従業員に対するものになります。

社外への対策(取引)

属性調査

① 社内での属性チェック
② 外部への照会
③ 自社データベースの構築

 2 関係の切断・解約

④ 反社でないことの表明・確約
⑤ 暴力団排除条項
⑥ 専門家の活用

社内への対策(従業員教育)

⑦ 反社の排除の意識の醸成
⑧ 有事の際の適切な現場対応の周知
⑨ 不当要求防止責任講習制度(暴力団対策法第141項)
⑩ 反社会的勢力排除の確約

コンプライアンスは、どれもマニュアルで正論を述べるだけでは不十分であり、より具体的な施策が必要です。

特に、反社会的勢力に関しては、急に目の前にいわば「その道のプロ」が現れるケースも少なくありません。そのような輩(やから)に威圧的な態度で脅迫された場合、うわべだけの知識などは頭から飛んでいってしまうことでしょう。

有事の際に備え、企業が普段から注力すべきなのは、現場の従業員をサポートする体制の構築であり、そして何よりも日々の業務レベルまで落とし込んだ個々の具体的な対策を各従業員にしっかりと定着させることなのです。

これらの知識やノウハウをより正確に、より深く習得・定着させるには、普段から繰り返し学習させることが不可欠です。

そしてそれは、eラーニングや集合研修、小冊子の配布など、内容や環境に合った適切な手法により可能となるのです。

反社会的勢力による被害は甚大であり、かつ、いつでも、誰にでも起こりうるものです。従業員一人一人がとっさの対応を適切に行えるようにするために、今一度、あなたの企業の対策を見直されることを強くお勧めします。

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  1節 パラダイムシフト
  2節 暴力団排除条例
  3節 反社会的勢力の捉え方
2章 反社会的勢力と企業の接点
  1節 反社会的勢力の本質と行動様式
  2節 反社会的勢力の侵入の手口
3章 日常業務における反社チェックのポイント
  1節 反社チェック
  2節 日常業務における端緒の把握
  3節 実体・実態確認
4章 総括(まとめ)
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