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eラーニングで企業の人材育成を成功させるために必要な知識と実践方法の全て

eラーニングで成果を出すためにはどうしたらよいのでしょうか。

私たちは大企業向けのeラーニング/LMSベンダーとして、これまでに数多くの企業の人材育成をサポートしてきました。システムや教材面だけでなく、時には教育そのものの設計や人材育成プランについても意見交換やアドバイジングを行ってきました。

その知見を踏まえて一言でいうと、eラーニングで成果が出ない主な要因は、「目的の曖昧さ」です。

eラーニングは「教材コンテンツ」と思われがちですが、正しくは「教育手法」です。自社の人材育成に関する課題を解決するためには、一つ一つの教材にこだわる前に、明確なゴールの設定と、そこに至るまでのプロセスの定義が不可欠です。eラーニングはそのプロセスの遂行を支援するソリューションであり、活用の仕方次第でその効果は大きく変わって来ます。

・自社の人材育成に関する課題は何か?
・その課題を解決するためにどんな施策が必要か?

人材育成の目的とプロセスが明確になれば、eラーニングの役割が自ずと明らかになってくるでしょう。しかしその際、「eラーニングで何をどこまでできるのか?」を知らなければ、プロセスの効率化に失敗することになります。

eラーニングを真に効果的に活用するためには、eラーニングの特質を押さえ、自社に最適な運用の形を知る必要があるのです。

eラーニングをもっと自由にとらえ、使いこなすことで、ITを活用した人材育成の世界はもっと壮大で、可能性に満ちたものになるでしょう。本稿は、eラーニングの導入を検討している方、またはすでに運用中で、より有効な活用方法を模索している方、運用について改善の必要性を感じていらっしゃる方々に向けて、eラーニングで成果を出すためのポイントを余すことなく解説します。

ぜひ参考にしてください。


1. eラーニング運用においてよくある落とし穴

ここではまずeラーニングの運用においてありがちな問題をご紹介します。eラーニングはすでに企業の人材育成の世界に定着していますが、運用の根幹に関わる部分に問題を抱えていると、仕組みそのものが形骸化してしまったり、新しい施策に挑戦できないといった事態に陥りがちです。

eラーニングを導入している企業の方は、当てはまるものがないか、確認してみてください。
eラーニングを導入していない企業の方は、この章は飛ばし、「2. eラーニング(LMS)導入のポイント」にお進みください。

1-1. 部門ごとに異なる教育ツールを使っている

A部門ではB社のLMSを利用、C部門ではD社の配信サービスを利用、E部門ではF社のアプリを利用、といったように、部門ごとに異なる教育ツールを使っている例です。
部門ごとの教育施策を展開できるのはよいことですが、テーマによっては人事部と業務部門で管理が重複したり、学習履歴が一元管理できないといった問題が生じます。コスト面のロスも無視できません。

タレントマネジメントの観点からも、人材のスキルは一つのシステムで一元管理し、異動や組織変更に対応できる体制を整えておくべきです。なるべく早く、学習管理システム(LMS、Learning Management System)[1]を統一することをおすすめします。

[1] LMSについては「2-1. eラーニングとは何か」で詳述します。

1-2. 複数のベンダーから教育コンテンツの配信を受けている

コンプライアンス教育はA社から、ハラスメント教育はB社から、技術教育はC社から、といったように、教育テーマごとに異なるベンダーから配信を受けている例です。学習者は、教育テーマごとに異なるシステムにログインすることになります。
これでは学習者に無用な手間をかけることになりますし、学習履歴が別々のシステムに保存されるため、全体の学習状況の把握は分析に支障が生じます。
eラーニングには統一規格 [2]があり、基本的にはある会社のLMSに他の会社が開発した教材コンテンツを登録して配信することが可能です。いずれか一つのLMSを採用し、管理を統一することをおすすめします。

[2] eラーニングの規格については「2-1-5. 規格の考え方」で解説します。

1-3. 必要な人に必要な教育を届けられていない

「大は小を兼ねる」の発想で、新人向けの基礎教育コンテンツを全社員に公開したり、学習者にとっての優先順位を考慮せずに大量の教材を公開している例が挙げられます。これは、LMSの公開設定の機能またはその使いこなし方に問題があることも多いようです。
学習者にとっては、負荷の増大や機会損失につながります。課題を抱える集団を特定し、そこに必要な教育を当てていけるよう、施策の設計とLMSの使い方を見直す必要があります。

1-4. LMSの運用サポート機能を使いこなせていない

LMSは教材コンテンツを運用するために必要な、様々な機能を持ち合わせているのが普通です。例えば以下のようなものが挙げられます。

  • メール送信機能:学習者にログインアカウントや研修の開講通知、受講期限のお知らせ、チアアップ(受講の督促)などを行う機能。
  • 掲示板機能:学習者に向けて各種情報を掲示する機能。研修のガイダンス資料や操作マニュアルの配布にも利用可能。
  • 問い合わせ機能:学習者からの質問や相談を受け付けるための機能。パスワードの問い合わせは自動応答のLMSが多い。
  • セキュリティ機能:社外でのLMSへのログインを禁止したり、秘匿性の高い特定の教材へのアクセスを制限したりする機能。
  • シングルサインオン機能:社内ポータルなど別のシステムへのログイン履歴を活用し、LMSへのログイン手続きを省略する仕組み。カスタマイズが必要だが、LMSへのアクセスが容易になる分、受講促進効果が期待できる。
  • 人事データ連携機能:人事データベースが保有する情報をLMSに取り込む仕組み。逆に、LMSから人事データベースに学習履歴を送ることも可能。カスタマイズが必要だが、ユーザ情報を登録、管理する手間がなくなるので、規模の大きな組織ではよく採用される。

1-5. 教育施策の内容が組織の課題に結びついていない

そもそも教育施策の設計に問題がある状況です。どんなに効果でよい教材コンテンツでも、課題に対応していなければ効果に結びつきません。また、重点教材と自己啓発用の教材をただ同じように配信するだけでは、学習者に真意は伝わりません。課題を明確にした上で、対象者を絞り込んだり、強制度を上げたり、上掲のサポート機能を駆使して必要な情報を届けるなど、設計と運用の工夫が必要です。

いかがでしたか?これらの落とし穴は、eラーニングという教育手法の問題ではなく、そもそもの使い方の問題です。該当する項目がある場合は、ぜひ改善をご検討ください。


2. eラーニング(LMS)導入のポイント

ここではeラーニングの導入に必要な予備知識をご紹介します。eラーニング=教材コンテンツだと思っている方、LMSとは何か分からないという方、ベンダーの選定方法を知りたい方は、ぜひお読みください。

2-1. eラーニングとは何か

eラーニングは「教材コンテンツ」ではなく「教育手法」だと述べてきましたが、それはいったいどういうことか、整理しておきたいと思います。

2-1-1. eラーニングの定義

日本イーラーニングコンソシアムの定義によると、eラーニングは「パソコンとインターネットを中心とするIT技術を活用した教育システム」[3]です 。

企業向けeラーニングの最も一般的なスタイルは、LMSを使って教材コンテンツを配信するというものですが、集合研修をライブ配信したり、テレビ会議システムを使った授業などもeラーニングの一種です。

企業向けeラーニングの教材コンテンツは、一昔前だとアニメーションと音声使ったリッチなものが多かったのですが、最近はコストとマルチデバイス対応の観点から、静止画スライドとテキスト、そして動画を使ったものが主流になりつつあります。

また、目的や形態に応じて、様々なeラーニングが現在進行形で生まれています。

  • モバイル・ラーニング:スマートフォンやタブレットを用いたeラーニング
  • マイクロ・ラーニング:短いコンテンツで反復学習を狙うeラーニング
  • ゲーミフィケーション:ゲーム形式で学ぶeラーニング
  • ソーシャル・ラーニング:SNSやメディアを活用したeラーニング

2-1-2. LMSとは?

LMSはLearning Management Systemの略で、日本語で「学習管理システム」とも呼ばれることもあります。従来、eラーニングで使われる教材コンテンツの配信と、その学習履歴の保管・集計を主な役割として来ました。

日本イーラーニングコンソシアムはLMSを「eラーニングの運用に必要な機能を備えた管理システム」と定義し、主な機能として以下を挙げています。[4]

  • 学習者の登録、変更、削除
  • 教材の登録、学習者への教材の割り当て
  • 学習者個人の学習履歴、学習進捗状況、成績の管理
  • 成績集計、統計分析機能
  • 情報共有者の掲示板の設置や、学習者に対するメール送信

これらの項目を基準にすると、LMSというのは「教材コンテンツ」を運用するためのシステムのように思えますが、eラーニング、つまりLearningの部分が多様化して来ているため、現時点ですでにその限りではありません。

集合研修の管理機能を備えたLMS、SNS機能を持ったLMS、スキル体系を登録・管理できるLMSなど、ベンダー各社が様々な機能を搭載し、人材育成のIT化を提案しています。

2-1-3. eラーニングの仕組み

LMSを用いた企業向けeラーニングの基本的な運用イメージは以下の通りです。

◆LMS運用イメージ

現在はクラウドサービスの利用が一般的なので、LMS本体とそのデータベースは通常ベンダーのサーバ上にあります。何らかの理由でクラウドサービスが利用できない場合は、自社サーバにインストールし、オンプレミスの形で利用します。

管理者はLMSにユーザ情報と教材コンテンツを登録し、学習者はこれらを活用してシステム上で学習を行います。その履歴がデータベースに保存され、学習者本人に学習結果として送られます。

個々人の学習履歴は会社にとって人材のスキル情報となります。多くの場合、管理者は学習履歴をLMSから出力し、集計や分析を行います。

2-1-4. eラーニングの歴史

eラーニングが生まれたのは1990年代のアメリカと言われています。
日本では、2000年に政府が発表した「e-japan構想」をきっかけに本格的な普及が始まり、2001年に発足した日本イーラーニングコンソシアムを中心に、普及促進事業が行われてきました。

ここ10年の市場規模をみてみましょう。

◆矢野経済研究所推計によるeラーニング市場規模推移(2017)

(単位:百万円)

リーマンショックの影響で一時的に減少したものの、近年は堅調に伸びています。人材不足が深刻化する中、よりよい人材を育てるために教育予算を増やし、投資をする企業が増えているのです。

ある調査[5]では国内企業360社中80%が「eラーニングを実施している」回答しており、このことからも、eラーニングの定着が進んでいることがわかります。デバイスの普及やIT技術の進化、AIの発達などにより、今後eラーニングの活用シーンはますます広がっていくでしょう。

2-1-5. 規格の考え方

eラーニングにはいくつかの規格があり、教材コンテンツの作りや、LMSの学習履歴データの形式などが規定されています。主な規格は以下の通りです。

・SCORM1.2
・SCORM2004
・xAPI ( Experience API )[6]

今現在流通しているLMS・教材コンテンツで最も多く採用されているのはSCORM1.2です。xAPIは2013年に公開された次期企画で、教材コンテンツの学習履歴だけでなく、様々なシステムを連携することで、オフラインで行われる様々な学習の履歴や人事情報、業務履歴、実績等を総合的に管理するという思想が特徴的です。「学習」だけでなく、そのビジネスパーソンを形成する「あらゆる経験(experience)」を管理・分析し、育成プランのオートメーション化や、個人のキャリア形成の支援を実現しようとするものです。ビッグデータ時代の新しい人材育成の形と言えるでしょう。

2-1-6. eラーニングのメリット・デメリット

導入検討にあたっては、そもそもeラーニングにどのようなことが期待でき、また一方でどのような点に注意が必要なのか、把握しておく必要があります。ここではメリットとデメリットを確認しておきましょう。それぞれ学習者と管理者に分けて挙げておきます。

<学習者にとってのメリット>
・隙間時間など、好きな時間に学習できる
・インターネット環境と端末がどこでも学習できる
・自分のペースで学習を進めることができる

<学習者にとってのデメリット>
・他の受講者との交流機会が減る
・モチベーションや集中力を自己管理する必要がある
・端末がないと利用できない

<管理者にとってのメリット>
・一度に大人数に教育を提供できる
・講師の質に左右されず、全員に均質的な内容を届けられる
・受講状況や実施結果(学習履歴)がシステムで一元管理できるので、確認や分析・レポーティング等の手間が減らせる
・データの活用の仕方次第で新しい軸での管理・分析が可能になる
・コスト削減(運用費、研修の管理に係る人件費など)

<管理者にとってのデメリット>
・学習者のモチベーション喚起・維持のために工夫が必要
・テーマによっては教材を用意しにくい・教育効果が低い(実技など)
・ネットワーク環境の整備が必要

eラーニングの最大のメリットは「利便性」、デメリットは「モチベーション維持」と言えそうです。モチベーション対策としては、LMSのメール配信機能を利用して定期的にチアアップメール(受講促進メール)を送ったり、集合研修と組み合わせて[7]受講者同士の交流を図るなどの工夫を行っている企業が多いようです。他にも、メンタリングの実施や、組織ごとの学習状況をランキング発表する、eラーニングの実施を絡めた社内資格を創設するといった企業もみられます。システムに頼るだけでなく、「学ぶ風土」を作り、その中にeラーニングを組み込んでいくような考え方がよいでしょう。

インターネット環境や端末の問題は、一昔前はよくありましたが、最近はあまりみられません。Webシステムの普及により企業内のIT環境は大幅に改善していますし、多くの企業が個人のデバイス利用を許可しています。

「気付いたら成長している」という未来

 

LMSは従来人材育成領域における「eラーニング」パートのみで利用されていました。そこでは管理者が「教育コンテンツ」を提供し、これを学習者が受け取る(受講する)という形が一般的で、現在も教育コンテンツの運用に関してはこれが基本形となっています。

 

そこでは、学習者の受講によって発生し、システムに保管された学習履歴は主に管理者のためにあり、学習者はその概要だけを「受講結果」として画面上で確認します。管理者は詳細な情報を含めて全ての情報を出力することができ、これを教育施策のために活用します。

 

この点において、LMSというのは学習者にとっては「受講」のためにあり、会社側にとっては「管理」のためにあるという図が成り立ちます。

 

◆LMSが扱う情報とユーザの関係(従来)

 

しかし、今後はAIの発達により、「管理」部分の多くをLMSがやってくれるようになっていくでしょう。情報の管理だけでなく、それを分析し、個々の学習者に必要な情報を提供したり、教育プランを提案したり、といった役割を、LMSが担う様になるのです。

 

学習者には、より日常的かつ自然にそういった情報が入るようになることが予想されます。従来は、研修開始の通知が来たらLMSにログインし、学習を行って出る、という使い方でしたが、未来のLMSは常時ログインの状態でポータルのように常に学習者に寄り添い、学習以外の情報も含めて、自主的な成長を促すための各種の情報を学習者に提供するようになります。

 

管理者たる人事部の役割は、システムの運用や教育施策をゼロから設計して進行管理していくといった従来の内容から、LMSのAIが提案する内容をチェックしたり、状況や結果を確認するといったものにシフトしていくでしょう。

 

◆LMSが扱う情報とユーザの関係(今後)

 

 

LMSで管理される情報も、他のシステムとの連携により、学習履歴だけでなく、保有スキルや職歴、業務成績などに広がっていきます。すると、最終的には個々の従業員の「仕事人生」が全て詰まったビッグデータができあがり、人材の管理や新しいビジネスの創出に活用されるようになっていきます。

 

◆LMSの管理領域の拡大イメージ

 

今はまだ、成長機会は明示的に提供され、これを受け取る形で実現されています。しかしAIの発達により、成長機会は徐々に個人が得る日々の情報や生活の一部に埋め込まれ、より無意識的に学習が行われ、人も組織も「気付いたら成長している」という時代がやってくるかもしれません。
(そのときには、eラーニングという概念も、LMSという概念も、今とは違ったものになっているでしょう。)

[3] 日本イーラーニングコンソシアム (編集)(2004)『eラーニング導入ガイド』p.1, 東京電機大学出版局.
[4] 日本イーラーニングコンソシアム「用語集:LMS(Learning Management System)(lms)」<http://www.elc.or.jp/keyword/detail/id=35>
[5] 株式会社日本能率協会マネジメントセンター「国内企業360社対象 e ラーニングに関する実施状況調査」< https://www.jmam.co.jp/topics/1223801_1893.html >
[6] 開発名「TinCan」で呼ばれることもあります。
[7] ブレンディッド・ラーニングといいます。詳しくは「3-3. eラーニングを活用した教育手法のご紹介」をご参照ください。

2-2. LMSベンダーの選び方

eラーニングを導入しようと思ったら、次に必要なのはLMSベンダーの選定です。eラーニングはLMSと教材コンテンツがあれば実施でき、多くの場合LMSベンダーがコンテンツベンダーを兼ねています。どちらを重視すべきかというと、それはLMSです。

教材コンテンツ自体は、規格に準拠していればいろいろな会社の製品を一つのLMSに登録・運用することができるからです。LMSは、全ての情報を統合管理するシステムとして、慎重に選ぶ必要があります。

ベンダー選定のステップには大きく以下の3つがあります。順番に見ていきましょう。

◆ベンダー選定のステップ

2-2-1. 情報収集

まず情報収集です。以下の2種類に分けて進めるのがよいでしょう。

・社内の情報
導入するLMSに期待される要件や、現状の課題を確認します。情報源は人事部だけとは限りません。業務部門での教育に活用することもできますので、各部署にリサーチを行うのがよいでしょう。

・社外の情報
LMSベンダーに関する情報を集めます。Web調査のほかに、付き合いのあるシステムベンダーに紹介を依頼するのもよいでしょう。

企業向けの主なLMSベンダーを確認しておきましょう。(50音順、コロン以下はLMS名)

  • サバ・ソフトウェア:Saba
  • サムトータル・システムズ:SumTotal
  • デジタル・ナレッジ:KnowledgeDeliver
  • 東芝:Generalist
  • ライトワークス:Careership

まずは3-4社から以下のような情報を取り寄せてみましょう。

  • 製品情報(機能・ユーザビリティ)
  • 事例情報(導入効果・実績)
  • サポート情報(運用代行、ヘルプデスク)
  • 概算費用(価格)

各LMSについてこれらの情報を並べてみると、比較のポイントが見えてきます。社内のリサーチ結果(期待される要件)に照らして、この段階で一次選考ができる場合もあるでしょう。

とはいえ、選定基準が何もない状態で情報収集に入るのも不安かもしれません。そこで、本稿ではLMSの選定時に注目すべき機能をご紹介しています。LMSの比較ポイントについて事前に知りたいという方は「2-4. LMS選定時に注目すべきポイント」をご参照ください。

「情報提供依頼書(Request For Information, RFI)」について

 

RFIは、ベンダーに対して製品や市場に関する情報提供を依頼するための文書です。情報収集段階であれこれ悩む前に、実績のある製品の情報を確認しながら、運用イメージの参考にしたり、要件項目の検討や概算費用の算出に利用したりすることができます。

自社に必要なシステムの要件をどのように検討し、設定すればよいか分からないときは、RFIを発行し、主だったベンダーに送ってみましょう。

別記事「eラーニング業者の選び方 要件定義のポイントを紹介〔資料サンプル付き〕」では、RFIの具体的な項目例をご紹介しています。ぜひそちらもご参照ください。

2-2-2. 企画立案/予算申請

情報収集が終わったら、収集した情報を元に社内手続きを行います。具体的には、予算の申請・確保、そのための企画書作成という作業になります。

LMS導入の企画書では、現状の課題に照らしてLMSを導入する必要性、緊急性や重要性を合理的に説明する必要があります。RFP(下記参照)を作成して情報を整理するのもよいでしょう。

ただ、最近はLMSベンダーのパッケージサービスが以前と比べて充実しているので、その中から選ぶ前提であれば、必ずしもRFPは必要ありません。このあたりは、実現したい内容の複雑さによるでしょう。もしパッケージサービスが利用できそうなら、企画書には主要ベンダーのパッケージサービスに基づいた要件を記載すればよいでしょう。

オプションやカスタマイズが必要な場合は、要件を明確にするためにも、RFPの作成をおすすめします。

提案依頼書(Request For Proposal, RFP)について

 

RFPは、自社が求めるシステム要件をまとめたもので、IT業界ではごく一般的な資料です。発注側は、自社に最適な提案を得るために、RFPを作成してベンダー各社に配布します。ベンダーはRFPを参照しながら、要件への対応状況やプラスアルファの提案をしてくれるというわけです。

発注側も、ベンダー側も、一定の項目に基づいて情報をやりとりできるので効率がよいですし、ベンダー各社からの提案内容を比較評価しやすくなります。

なお、RFPには機能要件のリストを添付するのが一般的です。別記事eラーニング業者の選び方 要件定義のポイントを紹介〔資料サンプル付き〕では、LMSの機能要件リストのサンプルを提供していますので、ぜひそちらもご参照ください。

2-2-3. ベンダー選定

企画が通り、予算を確保したら、ベンダーの選定を本格化します。

ここまでにまとめた要件をベンダー各社に伝え、正式な提案依頼をしましょう。RFPを作成している場合は、それを送付すればOKです。

提案を受ける際は、プレゼンテーションや製品デモを積極的に依頼するとよいでしょう。文書でのやり取りは効率的ではありますが、製品のイメージや操作性、ベンダー各社の強みなどは、なかなか資料だけでは確認しにくいものです。また、社内関係者への情報共有にも役立ちます。

また、ベンダー各社を比較するにあたっては、比較表の作成をおすすめします。自社の要件に合わせて技術点と価格点を設定し、ベンダーの評価を一覧化するイメージです。

技術点には、機能要件のほかに、同業他社での導入実績や、導入後の運用サポートの有無(または手厚さ)、セキュリティ対策の状況、サービスレベルなども含めておくと安心です。

セキュリティ対策については、ISOの取得状況、サービスレベルについてはSLA(Service Level Agreement、サービス品質保証)の開示有無などを指標にするとよいでしょう。

価格点については、ベンダー各社の相対比較でポイントを付けたり、価格項目ごとに評価基準を設けて採点を行うといった方法が考えられます。なお、価格項目は大きく初期費用とランニング費用に分けられ、ランニング費用にはライセンス料やサーバ利用料、サポート費等があります。

オプション利用やカスタマイズが想定される場合は、この段階でスケジュールを確認しておきましょう。

2-3. LMS導入の流れ

ベンダーが決まったら、いよいよ導入のステップに入ります。ここではLMS導入の一般的な流れを解説します。

導入のステップには大きく以下の4つがあります。順番に見ていきましょう。

◆LMS導入のステップ

2-3-1. 契約締結

まずは契約です。契約書の雛形は各ベンダーが用意しているはずですので、提供を依頼しましょう。それ以外にも、自社にクラウドサービスを利用するために必須とされている契約書や同意書がないか、法務に確認しておきましょう。また、契約にあたり、情報セキュリティチェックやクラウドサービスチェック、業務委託チェックなどが必要な場合もあります。情報システム部門やセキュリティ部門に確認を取っておきましょう。

2-3-2. 環境構築

LMSを利用するためのサイトを開設するステップです。サイト利用の要件をベンダーに伝え、セッティングをしてもらいます。サイトのURLや管理者のアカウント情報もこの段階で決定します。

必要日数は要件次第となります。例えば当社の場合、オプションやカスタマイズなしで標準パッケージを利用いただく形であれば、5日程度でサイトをご案内できます。

オプション利用やカスタマイズが必要な場合は、事前に確認したスケジュールに則って、設定や開発を進めます。内容によっては自社の情報セキュリティ部門との連携が必要になりますので、事前に具体的な進め方のイメージを持っておくようにしましょう。

なお、LMSのオプションサービスやカスタマイズの例は、「2-5. よくあるオプションサービス/カスタマイズ要件」で紹介していますので、そちらをご参照ください。

2-3-3. 運用準備

サイトができあがったら、実際に運用するための設計やデータ登録などを進めていきます。
サイト自体は箱のようなものなので、これだけあってもすぐには利用できません。

特に重要なのは運用設計です。運用設計とは、LMSに登録する内容やその管理方法を決め、必要な設定を行う作業です。例えば以下のようなものが挙げられます。

・ユーザの属性情報項目の設定
氏名やメールアドレスなどの基本項目のほかに、管理したい項目があればその内容を決定します。例えば社内資格の種類や職種の名称などが挙げられます。

・各種管理者に付与する権限の設定
LMSの管理者は一名(一アカウント)とは限りません。システム全体を統括するシステム管理者のほかに、eラーニングや集合研修、その他のコンテンツの登録や運用を行う管理者もいます。当社ではこれを「アイテム管理者」と呼んでいますが、例えば研修の種類や部門別教育ごとにアイテム管理者を任命し、研修の管理業務を分担することができます。

この場合、運用設計段階でアイテム管理者に付与する権限の内容を定義しておく必要があります。例えば管理対象をeラーニングだけとするのか、集合研修も含めるのか、アイテム管理者ごとに権限の内容を調整することができます。

◆管理者権限のイメージ

特に大規模な組織で運用する場合、管理業務の分担は必須となってきますので、設計段階でよく検討しておくことが重要です。

・パスワードポリシーの設定
パスワードはセキュリティの要です。パスワードポリシーとは、パスワードの登録ルールに当たります。文字数や文字種、有効期限、更新ルール、再設定を強制する際の条件などを事前に決めておくことで、推測されにくいパスワード設定を促すことができます。

当社の場合、運用設計には2週間から1ヶ月程度を見込んでいます。運用イメージがよく分からない場合は、ベンダーにも相談しながら進めましょう。

設計とそれに基づく設定が終わったら、テストデータを登録して運用イメージを確認した上で、本番データの登録を行います。具体的には以下のような作業を行います。

  • 組織情報の登録
  • ユーザ情報の登録[8]
  • eラーニングや集合研修などの教育素材の登録・配信設定

これでサイトの準備は完了です。次に、用意できたサイトをユーザに使ってもらうための準備を行います。学習者のほかに、上長やシステム上の承認者[9]、各種管理者など、LMSの運用に関わる方々に向けて、マニュアルを提供したり、操作説明会を実施したりする例が多いようです。

2-3-4. 運用開始

システムと人の準備が整ったら、いよいよ運用開始です。LMSのメール配信機能を活用して、ユーザにサイトのURLとアカウント情報を配信しましょう。
マニュアルは、ログイン後画面の掲示板などに添付しておくと、初回ログイン時に確認できて便利です。

なお、運用が本格化すると、学習者から操作方法や研修の内容に関する問い合わせが来る可能性があります。こうした場合に備えた社内のサポート体制の構築も重要です。また、運用開始後も必要充分な支援が受けられるよう、ベンダーのサポート体制もしっかり確認しておきましょう。

[8] 人事データ連携を行う場合は、ユーザ情報の登録作業は不要です。
[9] 承認機能を利用する場合

2-4. LMS選定時に注目すべきポイント

ここでは、LMSを選ぶ際に注目すべき要素や機能をご紹介します。LMSについてあまりよく知らない方も、この内容を確認いただくと「LMSってこんなことができるのか」というイメージが付いてくると思います。ぜひ参考にしてください。

2-4-1. 操作のしやすさ

いわゆる「ユーザビリティ」です。ユーザにあれこれ考えさせず、「直感的な操作」ができるのが理想的です。操作しやすいほどユーザにポジティブにLMSを使ってもらえますし、問い合わせも減らせます。そのために、次のような点に注目しましょう。

  • 画面の見易さ
  • 情報の配置の合理性
  • 次に必要な操作のわかりやすさ

2-4-2. 組織管理機能の緻密さ・柔軟さ

組織の構造は、規模が大きくなればなるほど複雑さを増します。様々な階層の組織の長、その代理、兼任者など、役職も様々です。また、組織変更への対応も必要です。よって、組織管理機能には、現実の状態をそのまま登録できる緻密さと、柔軟さが求められます。以下のような機能を確認するとよいでしょう。

  • 複雑なツリー構造を反映できること
  • 横断組織を登録できること
  • 兼任者が登録できること
  • 組織長だけでなく、代理者が登録できること
  • 編集が容易であること

2-4-3. 公開設定機能の緻密さ・柔軟さ

公開設定というのは、登録したeラーニングを配信したり、集合研修の情報を公開し、募集を開始したりする機能です。バイネーム(ユーザ単位)で設定することもできますが、個別だと大変なので、通常は所属組織など、属性情報を経由して公開を行います。この属性情報をいかに活用できるかが、公開設定の緻密さを左右します。
例えば、新人に受けてもらいたいコンプライアンス基礎教育を全社員に公開しても無駄が多いだけです。これを入社年という属性情報で指定して公開することができれば、本当に必要な対象者に教育を届けることができるわけです。

◆公開設定の仕組み

LMSの選定時には、
・ユーザの属性情報をいくつ登録できるか
・それらを公開設定にどのように利用できるか
を確認するとよいでしょう。

2-4-4. 学習履歴の見やすさ

LMS上で行われた学習行為の履歴は全てLMSのデータベースに保存されます。また、集合研修やOJTなど、オフラインで行われた研修の結果をLMSに取り込むこともあります。その理由は、学習履歴の一元管理です。個人の学習履歴データは、人材育成や人材のスキル保有状況を企業が把握し、活用するための資産です。このデータへのアクセシビリティや閲覧・出力のしやすさは、LMSの質を左右します。

2-4-5. インポート機能

LMSを利用するためには、組織情報、ユーザ情報など、様々な情報を登録する必要があります。運用中にも、情報を更新したり、オフラインの研修結果を取り込んだりと、情報の入力は続きます。画面上で一つ一つ入力するのではなく、csvファイルなどに一覧化したデータをワンクリックで取り込める機能が必要です。

2-4-6. エクスポート機能

LMSに保存された学習履歴は、評価や傾向分析に活用できます。その結果を次の施策に活かし、教育のPDCAサイクルを回していくことが人材育成の基本です。そのためには、LMSからデータを簡単に取り出せなければいけません。分析や加工を前提とすると、できるだけ深い(詳細な)ログ情報を、ローデータの形で出力することが理想です。一定のフォーマットに落とし込んだり、グラフ表示したいというニーズは当然ありますが、その形式は企業によってまちまちです。出力したローデータをEXCELのマクロで自動変換したり、専用のツールを開発するなど、このあたりはいくらでも方策がありますので、最初から出力形式が規定されていないLMSを選ぶ方が無難です。

2-4-7. 高度な検索機能

一定の条件を満たすデータを表示したりエクスポートしたりするとき、検索機能を使います。例えば、「2018年度版情報セキュリティ教材について、進捗率が50%に満たない第二営業部の新入社員」を確認したいとします。この場合、教材のタイトルや進捗率、組織、入社年といった条件で、データの絞込みを行うことになります。分析用のデータをLMSから出力する際も、事前にある程度の絞込みを行っておけば、加工の手間が省けます。
複雑な検索条件に対応し、目指すデータにたどり着きやすいLMSを選びましょう。

2-4-8. コミュニケーション機能の充実

LMSには通常、掲示板やメール機能を持っています。個別の学習者に連絡をしたい場合は、ユーザ情報に登録されているメールアドレス宛にメールを送ることができます。一定のトリガーで送信するメールは、事前にセットしておき、自動送信することも可能です。例えば以下のようなメールを送信することができるかどうか、確認しておくとよいでしょう。

・アカウント通知メール
学習者にアカウント情報を知らせるためのメール。
※ユーザが設定したパスワードは管理者も確認できない。

・開講通知メール
学習者に研修案内や注意事項、マニュアルなどを案内するためのメール。アカウント通知と同じメールで行うことも多い。

・チアアップメール(受講督促メール)
学習を促すためのメール。タイミングを決め、個々人の学習進捗度合いに応じて、事前にセットすることができる。

・承認依頼メール
LMS上で行った各種の申請について、学習者から承認者に向けて配信する定型メール。受講申請、修了承認依頼などがある。

2-4-9. チアアップメール(受講督促メール)自動配信機能

前項に挙げたメールのうち、チアアップメールは研修施策の推進において特に重要です。開講後、手放しで全員が修了してくれればそれに越したことはないのですが、残念ながらそううまくは行きません。うっかり忘れてしまったり、サボっていたり、何らかの理由で受講が進められない学習者が出てくるものです。そこで、研修期間中に受講を促すための連絡が必要になるのですが、これを手動でやるのは大変です。事前にセットしたメールを自動配信してくれるLMSがよいでしょう。

例えば以下のようなイメージです。
・開講後1週間の時点で、進捗率が30%以下の学習者に送信
・開始後2週間の時点で、進捗率が50%以下の学習者に送信
・修了期限前日に確認テストに合格していない学習者に送信

この機能を応用すれば、修了した学習者に「お疲れ様でした」メールを送信することもできます。

2-4-10. 休職者管理機能

LMSの利用料は通常ユーザID単位のライセンス費用の形を取りますので、ユーザが多いほど請求額は大きくなります。よって、退職者や休職者は早く削除したくなりますが、安易に削除してしまうと、期末のレポーティングに影響が出たり、復職後に学習履歴が復元できなかったりといった問題が生じます。そこで、ユーザIDをライセンスのカウント対象から除外する機能が望まれます。大きな組織ほど影響は大きいので、確認してみるとよいでしょう。

2-4-11. 承認者設定機能

教材コンテンツや集合研修の希望者を募り、申請をしてもらった上で受講を承認する、という機能を持つLMSは珍しくありません。その場合、一般的には学習者の上長が「承認者」であると考えられますが、こと教育施策となると、実際には上長以外の担当者が承認者であることも考えられます。しかし、時に何百人、何千人というユーザについて、管理者が都度確認と設定を行うというのは非現実的です。そこで、ユーザ本人が、受講申請時に自身の承認者を設定できるという機能が望まれます。

2-4-12. 教材管理権限の分担機能

LMSの運用範囲が拡大したり、運用が長期化してくると、教材コンテンツや集合研修の数が増え、管理が大変になってきます。そこで、その管理業務を分担する機能があると便利です。

2-4-13. 教材直リンク機能

「直リンク」というのは、URLをクリックすると目的のページが表示されることを言います。通常、教材コンテンツを表示するには以下の手順が必要ですが、直リンク機能があればこれを省略することができます。

① LMSにログイン
② 教材コンテンツを探す
③ 教材画面を開く

教材数が増えて②が学習者の負担になってしまったり、優先順位の高い教材の受講率を上げるために、直リンク機能があると便利です。

2-4-14. 導入研修(入社時研修)のオートメーション化機能

派遣社員やアルバイトスタッフなどの導入時研修にeラーニングを活用する企業は多くあります。ただ、入社時期がバラバラだと、公開設定や本人への手配、進捗確認などを行うのは大変です。そこで、例えば当社では、ユーザ情報に「入社年月日」という属性情報を設定し、その日付を起点として自動的に研修が開始されるという仕組みを設けています。
別の項目でご紹介しているメールの自動配信機能も活用すれば、ユーザ情報の登録後は手放しで研修の実施・管理が行えます。
派遣会社や、パート・アルバイトスタッフの出入りが多いリテール系の企業では、こうした機能の有無を確認してみると良いと思います。

2-4-15. ダブルブッキング回避機能

ユーザが受講したい集合研修を選び、応募枠に申請するという流れは集合研修管理システムの基本機能です。しかし、ダブルブッキングをしてしまうというトラブルが散見されるようです。LMSを選ぶ際は、これを予防する機能があるかどうか、確認するとよいでしょう。

2-4-16. パスワードポリシー設定機能

パスワードポリシーとは、ユーザが設定できるパスワードに関するルールのことです。例えば字数や文字種、有効期限、更新時のルールなどがあります。これを事前に定めておくことで、ユーザが自分で設定するパスワードの強度をコントロールすることができます。
自社の情報セキュリティポリシーや、教育施策の内容に合わせて、自由にパスワードポリシーを設定できるLMSが便利でしょう。

2-4-17. アクセス制限機能

最近は教材作成ツールを使ってeラーニングの教材コンテンツを自社で作成する企業が増えています。それと共に、自社特有の、秘匿性の高い情報を扱う教材も増えています。例えば、社長の訓示を動画コンテンツとして配信するといった例も見られます。いかにeラーニングが時間と場所を選ばないとはいえ、そうした教材を通勤中に閲覧されては困ります。そこで、秘匿性の高い教材にアクセス制限をかける機能があると安心です。

2-4-18. システム稼働率100%

システム稼働率というのは、一定期間中にシステムが正常稼働している割合を示す値で、クラウドサービスの品質を表す指標です。100%に満たない分は、システムダウンなどの傷害が発生していることになります[10]。LMSのクラウドサービスを利用するにあたっては、そのベンダーのシステム稼働率を確認すると良いでしょう。SLA(Service Level Agreement、サービス水準合意)の提示を求めるのも合理的です。

2-4-19. バックグラウンド処理機能

バックグラウンド処理とは、ユーザがシステム上で実行した処理を、システムの背面(バックグラウンド)で進める機能です。LMSの場合、例えば管理者が大量のユーザ情報をインポートしたり、大量の学習履歴を出力したりといった操作が考えられます。データ量が多いほど時間がかかるので、前面で処理が行われるとその間待機しなければなりません。バックグラウンド処理機能はこれを回避する機能で、作業の効率化につながります。

[10] メンテナンス時間は障害時間に含みません。

2-5. よくあるオプションサービス/カスタマイズ要件

LMSを導入するにあたり、どんなオプションサービスやカスタマイズ要件があるのか、事前に確認しておくと検討がしやすいと思います。オプションサービス/カスタマイズ要件は各ベンダーが様々なものを用意していますが、近年代表的といえるのは以下の3つです。

2-5-1. 教材作成ツールの利用

eラーニングの教材コンテンツを自社で制作する(「内製」という言葉がよく使われます)企業が増えています。これはコスト削減の意味もありますが、自社で自由な内容の教材を制作できること、メンテナンスもベンダーの手を借りずに実施できることが大きなメリットです。
特に、集合研修の動画やスライドを流用し、数多くの教材を「内製」することで、これまで集合型で行ってきた研修をどんどんオンライン化していく例が見られます。

2-5-2. 人事データベース連携

既存の人事データベースから、必要な情報をLMSに取り込むサービスです。対象は組織情報やユーザ情報、資格情報など様々です。LMSに手動でユーザ情報を入れる(手入力かインポート作業になります)必要がなくなり、また更新の手間も省けるため、規模の大きな企業ほどメリットが大きいといえます。カスタマイズが必要ですが、当社の感覚では、ユーザ数が2000人を超えたら検討の価値がある(コストとメリットのバランスが取れる)イメージです。

◆人事データ連携のイメージ

2-5-3. シングルサインオン(SSO)

別のシステムへのログイン履歴を活用して、LMSへのログイン手続きを省略する仕組みです。例えば社内ポータルなど、従業員が日常的にログインするシステムを「玄関口」とし、そのシステム内からLMSにアクセスできるようにするものです。この場合、社内ポータル内にLMSのタイトルやアイコンを配置し、これをクリックすれば認証なしでLMSに入れます。
「ログインが面倒」「パスワードを忘れた」といった理由で学習をやめてしまうリスクを減らし、受講を促進させる効果が期待できます。

◆シングルサインオンのイメージ


3. eラーニングの活用方法

LMSを導入すればeラーニングの利用は可能になりますが、より効果的に活用するためには今少し準備が必要です。ここでは、eラーニングという教育手法がどのような施策に向いているのか、また、それを踏まえてどのように施策を設計すればよいか、といった点を確認しておきましょう。

3-1. 代表的な教育施策

eラーニングを導入している企業では、以下のような教育施策にeラーニングを活用しています。

  • 全社教育
    全社員を対象に、eラーニングの教材コンテンツを一括配信します。
    ・施策例:コンプライアンス教育、情報セキュリティ、自己啓発用のラインナップ提供、経営理念の共有など
    ・目的:コスト削減、グループ、海外含む大規模な情報共有、社長メッセージの動画配信など
  • 階層別教育
    階層別に行われる研修に活用します。eラーニングだけで行う場合もありますが、集合研修と組み合わせ、ブレンディッド・ラーニング[11]とする例も多くみられます。
    ・施策例:内定者研修、新人研修、入社4-5年目教育、新任管理職研修、中間管理職研修など
    ・目的:コスト削減、集合研修の予習・復習・確認テストの実施、昇格試験など
  • 語学教育
    英語をはじめとした語学教育に活用します。従業員に求められる英語力は企業によって異なるので、オリジナルのプログラムを用意するか、汎用教材をカスタマイズした活用するケースが多いようです。
    ・施策例:接客スタッフの外国人応対スキルの向上、海外派遣研修の予習、オンラインレッスンの予習など
    ・単語や構文の予習・復習、反復学習、確認テスト、英語のビジネス文書研修など
    ・目的:接客スタッフの外国人応対スキルの向上、海外派遣研修の予習、オンラインレッスンの予習・復習、確認テストなど
  • 商品教育
    店舗スタッフの商品知識向上に活用します。教材作成ツールを導入して自社で教材を作る仕組みを整えれば、新商品がリリースされるタイミングに合わせた、スピーディかつ低コストでの情報共有が可能になります。動画を活用する例も多いようです。
    ・施策例:新商品の情報共有、商品教育、セールストーク教育など
    ・目的:販促、接客レベルの底上げ、顧客満足度の向上な
  • 職種別教育
    部門別教育や、専門分野の知識習得を支援します。体の動きや手元作業を伝えるために、動画を活用する例も多く見られます。
    ・施策例:店舗スタッフの接客マナー研修、技術職向けのオペレーション教育、金融・保険系の基礎教育、資格教育など
    ・目的:知識・スキルの底上げ・標準化、マニュアルの電子化、レベル別教育の最適化など
  • タレントマネジメントへの活用
    タレントマネジメントにeラーニングを活用する例が増えています。
    ・施策例:タレントマネジメントシステムとのデータ連携、LMS単独でのスキル管理の仕組み構築
    ・目的:人材の「能力管理」のうち育成パートの強化、従業員のスキルの見える化など

[11] 詳しくは「3-3. eラーニングを活用した教育手法のご紹介」をご参照ください。

3-2. 教育施策の設計の仕方

前項では、eラーニングがどのような教育施策に活用されているかをご紹介しました。続いて、そうした教育施策をどのように設計すればよいかを解説します。

eラーニングを用いた教育施策を具体化するには、以下の7つのステップを参考にするとよいでしょう。

Step1:eラーニングの利用目的を明確にする―why

eラーニングだけですべての教育を行うことはできません。施策を成功に導くためにも、目的をしっかりと見定め、効果と効率を見込めるパートにeラーニングを当てていく工夫が必要です。

そのためには、自社の経営課題から課題をブレイクダウンしていき、eラーニングをどこにどのように活用するのがよいか検討するのがよいでしょう。

eラーニングには、テキストベースの教材コンテンツから、手順を動画で説明したもの、集合研修を動画化したもの、テストコンテンツまで、様々なスタイルのものがあります。「eラーニングでできること」を把握した上で、設計に当たるのがよいでしょう。

運用の仕方がカギを握る場合もあるので、ベンダーにも相談しながら進めましょう。

Step2:教育施策の対象者を確認する―whom

eラーニングの利用者を確認します。全社員なのか、一部なのか。後者の場合、特定の階層なのか、特定の部門なのか。または雇用形態によるのか、などです。同じ教育テーマでも、別の教材コンテンツを用意する必要があるかもしれません。必要な教育を必要な集団に届けることを意識しましょう。

また、「必要な集団に届ける」ためには、LMSにその集団を割り出すためのユーザ属性項目が登録されている必要があります。例えば組織情報、入社年、雇用形態などです。これも併せて確認しておきましょう。

Step3:教材コンテンツを用意する―what

eラーニングは自己学習を前提としりので、教材コンテンツの質は大変重要です。準備の仕方には以下の4つのパターンがあります。

(1) 既製品を購入する
(2) 既製品をカスタマイズする
(3) 教材をオーダーメイドする
(4) 教材を自社で制作する

最も手軽なのは(1)です。プロが制作したものなので、品質に関しても信頼できるでしょう。規格が合えば様々なベンダーの教材を一つのLMSに登録・運用することができますし、バルク(大量・一括)導入すれば割引が受けられ、コストも抑えられます。

自社オリジナルのテーマや情報を扱いたい場合は、その程度により、(2)(3)(4)を選ぶことになりますが、(3)のオーダーメイドはそれなりにコストがかかりますので、予算を確認しましょう。汎用的な教育内容に、自社のポリシーや表現、事例などを適用/追加したい程度であれば、(2)のカスタマイズが無難です。

(4)の自社制作(内製)の場合は自社に教材を作るだけの情報や知見が必要になります。教材の作り方については「4. eラーニング(教材コンテンツ)の作り方」「5. テスト教材の作り方」でご紹介しますので、そちらもご参照ください。最近は動画の活用がさかんですので、集合研修を自社で動画化したものを配信するといった例も多く見られます。

Step4:システムの利用方法と端末を確認する―where

教育の内容が決定したら、利用環境を確認します。

この段階でeラーニングの利用方法がクラウドサービスかオンプレミスかに決まっていない場合は、 「2-1-3. eラーニングの仕組みを参照のうえ、ベンダーとご相談ください。

次に受講端末です。パソコン、タブレット、スマートフォンなど様々な端末があり得ます。最近のLMSや教材コンテンツはマルチデバイス対応が進んでいますが、念のためミスマッチがないかどうか、確認しておきましょう。

秘匿性の高い教材コンテンツを利用する場合は、アクセス制限の方法も確認しておくとトラブル予防になります。

Step5:利用開始時期を想定する―when

教育内容と手段が整ったら、スケジュールを確認します。LMSが導入済みであれば、教材コンテンツの準備が整い次第、公開設定を行い、配信を開始するイメージです。

既製品教材を利用する場合は早ければ数日で配信が可能でしょう。一方で、カスタマイズやオーダーメイドを行う場合は、教材の仕様にもよりますが数週間から数ヶ月を見込む必要があるでしょう。別途プロジェクトのスケジュールを引き、利用開始時期を見定めましょう。

LMSの導入が同時進行の場合は、「2-2. LMSベンダーの選び方」「2-3. 導入の流れ」をご参照ください。クラウドサービスの場合は1~3ヶ月、オンプレミスの場合はそれ以上を見込む必要があります。

Step6:管理・運用体制を整備する―who

教育施策の運用担当者を決め、設定や問い合わせ対応や進捗確認などに備えましょう。運用にあたり必要となる主な作業は以下の通りです。

・教材コンテンツの登録
・公開設定
・公開通知メールのセット
・チアアップメールのセット
・進捗確認
・施策終了後の分析・評価、レポーティング

運用が複雑な場合は、運用自体をベンダーにアウトソースするのも一手です。

Step7:学習履歴の活用方法をイメージする―how

施策の実施を経てLMSに保存される学習履歴には、「どのユーザが、いつ、どの教材のどのパートを受講したか、テストで何点取得し、合格したのか、不合格だったのか」といった情報が詰まっています。

この履歴情報を活用することで、教材施策をよりよいものにしていくことが可能です。主な例をみてみましょう。

・「教育のエビデンス」としてレポーティングに活用
・テストの実施結果を分析して従業員の保有能力を把握
・施策の進捗状況を確認し、チアアップに活用
・施策の振り返り・評価に活用

教育施策の設計段階で、学習履歴の活用イメージを持っておくとよいでしょう。

3-3. eラーニングを活用した教育手法のご紹介

eラーニングを用いた教育施策を設計するにあたり、ぜひ知っておいていただきたい手法がいくつかありますので、ここではそれをご紹介します。

  • ブレンディッド・ラーニング
    集合研修とeラーニングを併用する研修スタイルです。知識習得やテストはeラーニングで、ディスカッションや実地訓練などは集合研修で、という風に役割分担をさせることで、より効率的な研修が可能になります。
  • 反転教育
    「集団講義で学び、自分で確認する」という従来型の教育を、「自分で学び、集団で確認する」という形に反転させた教育手法です。受講者はeラーニングで学んだ後、講義の場で質疑応答やディスカッションに参加します。ブレンディッド・ラーニングの一種と言えますが、知識の定着・応用に大きな効果が認められ、独立した教育手法として活用・研究されています。
  • アクションラーニング
    アクションラーニングとは、現実の課題をケースとしてその解決に取り組むグループワークの一種で、リーダー育成の手法として知られています。例えば自社のリアルな経営課題について、その解決方法をチームで討議・立案し、採用されれば予算を得て実施まで行います。参加者はその過程で必要な経営知識を学び、思考力や問題解決力、チームワーク力などを養います。
    経営課題の解決とリーダー候補の育成を兼ねた施策と言えるでしょう。
    アクションラーニングには一定の型はありませんが、知識教育やオンライン上での討議にeラーニングを活用する例がみられます[12]
  • 動画配信
    自社で撮影した動画をeラーニングに活用する例が増えています。集合研修を撮影したものをそのまままたは編集を施して1本のeラーニングにすることもあれば、商品説明や手元作業、模範動作などを撮影し、教材の一部に組み込むといった方法も見られます。また、マニュアルを動画化し、LMS上で検索・閲覧できるようにするなど、利用の仕方は様々です。最低限の機材と編集ソフト、そして動画配信[13]の可能なLMSがあれば、低コストで任意の動画教材を作成することができますので、ぜひご検討ください。

[12] この場合のeラーニングは、教材コンテンツだけでなく、社内SNSやテレビ会議システムの利用なども含まれます。
[13] ストリーミング配信用のサーバが用意されていることが理想的です。


4. eラーニング(教材コンテンツ)の作り方

ここでは、eラーニングの教材コンテンツの作り方をご紹介します。
当社では、「よい教材」のポイントを以下のように考えています。

・分かりやすいこと
情報が整理されており、学習者がスムーズに内容を把握・理解できる文章、レイアウト、デザイン、操作性が実現されている。

・学習効果が高いこと
学習者のレベルに合ったテイストと難易度で、順を追った解説がなされている。学習前後の理解度を比較したり、復習するためのアセスメント、理解度を確認するための総合テストなど、学んだ内容の定着や学習者のモチベーションを維持するための工夫がなされている。

・更新(メンテナンス)しやすいこと
定期的に更新が必要な情報(例えば法律や数値データなど)が分かりやすい。更新の際に修正すべき素材ファイルがきちんと管理されている。

これらのポイントを押さえた教材コンテンツを作るには、きちんとした設計と管理体制が必要です。そのためには、一定のプロセスに則って作業を進めるのが効率的です。

■教材コンテンツの作成・運用プロセス

最初のうちは手間に感じるかもしれませんが、PPTのテンプレートと同じで、自社なりの教材の「型」ができてくればむしろ楽に作れるようになります。

それでは、教材制作の具体的なステップを見ていきましょう。

教材作成ツールについて

 

教材コンテンツの制作には、教材作成ツール[14]が必要です。教材作成ツールは、PPTやエクセル、動画などのファイルを取り込み、Webコンテンツに変換してくれるソフトで、通常はLMSとセットで提供されているものを利用します。

 

素材から変換した教材コンテンツをLMSに登録すれば、任意の対象に配信することができます。

 

◆教材作成ツールの運用イメージ

 

多くのLMSベンダーが教材作成ツールを提供していますので、お持ちでない場合は自社のLMSベンダーに問い合わせてみてください。

[14] 内製支援ツールと呼ばれることもあります。

4-1. Phase1:分析

分析フェーズでは、教材の要件を整理します。

Step1:教材の作成目的を整理する

何のために教材を作るのか、を明文化します。そのためにはこの教材の運用によって解決したい課題を明らかにする必要があるでしょう。

  • 直面している課題は何か?
  • その課題の要因は何か?
  • 課題を克服した後、どのような状態になるのが理想的か?

こうした課題意識ことを現場にヒアリングし、教材作成の目的を設定しましょう。

Step2:教材の学習対象者を確認する

次に、教材の利用者像を明らかにします。誰のために教材を作るのか、ということです。例えばアルバイトスタッフと管理職では、提供する情報の難易度から文体、スライドのデザインまで、変わってくるでしょう。ここを明確にしておくことで、必要な人に必要な教育を届けることができるようになります。

Step3:学習者にとっての学習目標を明文化する

次に、教材の学習目標を設定します。学習者に、この教材を通じて「何を」「どのくらい」できるようになってほしいのか。これを明確にしておくことで、目標に対して真に効果的な教材を設計することができます。

Step4:学習環境を洗い出す

学習者が利用する端末やネットワーク環境を確認します。
パソコンかスマートフォンかによって、教材のレイアウトや文字サイズ/量を調整したり、ネットワーク環境によっては動画の利用を控えるなどの工夫があり得ます。最近は個人のデバイス利用を許可する企業も増えていますが、そのあたりの確認もしておくとよいでしょう。

4-2. Phase2:設計

設計フェーズでは、教材の作成要件を整理します。

Step1:教材の仕様書を作成する

仕様書とは、教材の設計書です。まず、この段階では仮でもよいので教材のタイトルを決め、分析の段階で明らかになった情報を全て記載しましょう。次に、修了条件や想定学習時間などを設定します。こうした基本情報を整理しておくことで、誰が見ても「何のための、どんな教材なのか」が分かるようになりますし、引継ぎにも便利です。

◆教材コンテンツ仕様書の例

Step2:目次・骨子を作成する

目次の作成は、教材制作の肝ともいえる作業です。学習目標をピラミッドのトップに置き、これをブレイクダウンする形で整理していくのがよいでしょう。一つの項目にたくさんの学習要素を入れると、目次タイトルとの整合が取りにくいですし、学習目標が曖昧になってしまうので、一項目=一単元とし、一つの目標が設定できるような粒度に揃えるのが理想です。

目次ができたら、各項目に対して学習内容の要点(骨子)をまとめします。メモ程度でかまいませんので、その項目でどんな内容を教えるのか、明文化してみましょう。

必要に応じてピラミッドに戻り、修正を加えながら全体を整えましょう。この作業は教材の質を左右する大切な作業です。学習する順序に問題はないか、項目にモレはないか、他の項目とダブりはないか、といった点をチェックしながら丁寧に進めましょう。

◆目次・骨子の例

Step3:スケジュールを作成する

最後に教材の制作スケジュールを決めます。想定すべき主な工程は以下の通りです。

  • PowerPointスライド作成
  • テスト原稿の作成
  • ナレーションデータ作成
  • 動画撮影・編集

ナレーションや動画を使うかどうかは任意ですが、確認テストは実施した方がよいでしょう。

専門的な内容については事前調査や有識者の協力が必要になりますし、複数のスタッフで作業を分担することもありえます。また、各工程の成果物をチェックし、修正を行う猶予期間も必要です。計画的に進められるよう、教育の実施時期から逆算したスケジュールをしっかり引いておきましょう。

4-3. Phase3:開発

いよいよ開発です。このフェーズでは、仕様書と目次・骨子に基づいて、パーツごとに制作を進めます。

Step1:PowerPointスライドを作成する

まずはスライドのノート部に、目次・骨子に沿った原稿を入力していきます。事前に決めた目次・骨子との整合を意識し、内容の逸脱やモレ・ダブりのないよう注意しましょう。

このときの作業ポイントは以下の通りです。
① 「読み手は誰か?」を考え、読み手のレベルに合った文章を書く
② 原稿が書けたら、ある程度時間を置き、必ず声に出して読み返す
③ 独りよがりの文章になっていないか、他者のチェックを受ける
④ 誤字や脱字はないか、表記ゆれはないかチェックする(校正ツールを導入すると効率化できる)

次に、スライド部に図表やイラストを入れていきます。PowerPointの図形やクリップアートを利用するのも良いですが、最近はインターネットのフリー画像が充実しているので、そちらを利用するのもよいでしょう。

作業ポイントは以下の通りです。
① 原稿内容や学習対象者にマッチした図表やイラストを用意する
② テキストのフォントやサイズに基準を設ける
③ スライド内に「Zの法則」で情報を配置する

②については、14~16ポイントのゴシック体がおすすめです。スライド内の見出しや強調したい文字列は、サイズを大きくしたり、太字にしたりするとよいでしょう。

Step2:テスト原稿を作成する

学習用のスライドができあがったら、テスト原稿を用意します。テストは必須ではありませんが、学習した内容の定着を図るために有効です。

作業ポイントは以下の通りです。
① 明確かつ率直に問う
② 必ず学習範囲内から出題する
③ 設問文、選択肢、解説などの文章の体裁はできる限り統一する

学習者が回答に集中できるよう、出題の仕方や文体の統一を心がけましょう。
なお、テスト教材の作り方については「5. テスト教材の作り方」により詳しくまとめていますので、そちらもご参照ください。

Step3:ナレーションデータを作成する

学習スライドに音声を付けたい場合は、収録を行います。通常、Step1で作成した原稿を読み上げる形を取ります。ファイル形式はmp3が代表的ですが、教材作成ツールによって異なるので、事前に確認しておきましょう。

なお、音声は、必ずしもある方が良いとは限りません。最近はスマホ文化が定着して、画像とテキストから情報を読み取る能力が一般的に向上していると言われます。これを受けて、静止画とテキストだけでシンプルに構成された教材コンテンツが増えています。

収録や編集、教材への適用にそれなりの手間がかかることも事実ですので、本当に必要かどうか、よく検討しましょう。

Step4:動画を撮影・編集する

教材コンテンツに動画を入れたい場合は、動画を撮影します。よく使われる動画には以下のようなものがあります。

  • 集合研修を撮影した動画
  • 配信用に講義を撮影した動画
  • 営業マンや店舗スタッフ向けに自社の商品・サービスを説明する動画
  • 具体的な作業や体の動きを伝えるためのマニュアル動画
  • 社長や経営幹部から従業員に向けたメッセージ動画

教材用の動画の作り方については、「6. 教材用動画の作り方」に詳しくまとめていますので、そちらご参照ください。

Step5:教材作成ツールを使って教材化する

必要な素材が揃ったら、これを教材作成ツールに取り込んでコンテンツ化します。内製様に提供されているツールであれば、通常、特別な知識や開発環境がなくても操作が可能です。

Step6:できあがった教材の使い勝手(学習のしやすさ等)を確認する

コンテンツが完成したら、必ず表示・動作チェックを行います。教材作成ツールのプレビュー機能か、LMSにテスト登録してみるのがよいでしょう。イメージ通りにできているかどうか、見にくいところはないか、テストの正誤判定は正しいかなどを確認し、必要な修正を行います。(大抵何かあります)

より念を入れる場合は、第三者に実際に受講してみてもらうのが良いでしょう。

4-4. Phase4:運用

運用フェーズは「教材の作り方」と関わりがないように思えるかもしれませんが、実は大変重要なフェーズです。運用の結果が、教材コンテンツの今後の改善方針や教育施策の見直しに結びついていくからです。

Step1:実施

完成した教材コンテンツをLMSに登録し、対象者に向けて配信します。全員が修了するよう、状況を見ながらチアアップを行いましょう。教材に関する問い合わせが来る可能性もありますので、回答する担当者を決めておくと良いでしょう。

Step2:評価

LMSに記録された学習履歴を確認します。まず、どれだけの学習者が修了しているか。また、テストの点数やその分布状況を確認することにより、設計フェーズで設定した学習目標が達成されたかどうか、どの分野の理解が足りていないのか、といったことが見えてきます。

また、実施後のアンケートを行うのも有効です。難易度や実感できた効果などを問い、教材の評価や感想を集めましょう。

こうした情報を元に、次にどんな施策が必要か、来期に向けて教材をどのようにブラッシュアップすべきか、といったことを検討します。

こと人材の育成を目指すだけに、教材コンテンツの作成・運用では、常にPDCAサイクルを回していく姿勢が大変重要です。


5. テスト教材の作り方

学習用の教材のコンテンツに続き、テスト教材の作り方を解説します。
当社が考える「よいテスト」のポイントは以下の通りです。

・テストの実施目的が明確であること
テストは一般的に「知識の習得状況」を確認するために作られます。どんな知識をどれだけ習得していれば目標達成といえるのか。知識の定着を目的とする場合も、理解度の計測を目的とする場合も、ここが明確になっていることが重要です。

・テスト問題に妥当性・信頼性があること
基礎教育の理解度確認テストに発展的な内容が出題されていたら、受験者はどう思うでしょうか。また、対応する学習教材や集合研修で習っていない内容が出題されていたら、どうでしょう。学習した範囲から出題すること、設定した実施目的に適った内容を出題することが大切です。

・ストレスなく解答できること
テストというのはそれだけで一定の緊張を与えるものですが、本来の目的と関係のないところで受験者にストレスを生じさせてしまうこともあります。例えば前項で挙げたように、学範囲外からの出題。また、設問文の意味が分かりにくい、無意味な引っ掛け問題が多いなど、回答のための思案時間を別の要因で取られてしまうような自体は避けるべきです。

それでは、テストの作成ステップを見ていきましょう。PDCAという考え方は、教材コンテンツの作り方と同じです。

Stesp1:テストの目的(何をどのような基準で測るのか)を決める

まずはテストの実施目的をまとめます。整理するポイントは以下の通りです。
① テストと対を成す「学習教材」の目的は何か?
② 学習教材を踏まえたテストの目的は何か?
③ 学習者の理解度を測る基準は?

これらを確認することで、出題の範囲、ポイント(何を問うか)、深度、難易度などが決まってきます。

Step2:テストの仕様(種類、出題形式、解説の要否、合格基準など)を決める

・テストの種類
テストには様々な種類があります。代表的なものは以下の通りです。
今回作るテストはどれなのか、決めておきましょう。

◆主なテストの種類

・出題形式
代表的な出題形式には以下のようなものがあります。

  • ○×式
  • 択一式
  • 複数選択式
  • 記述式

これはこのまま、大まかに難易度を示すものでもあります。記述式は単語を書かせるか文章を書かせるかでまた難易度が変わって来ます。しかし、その分採点の手間も増えますので、注意が必要です。

難易度の調整について原稿段階でできることは少ないですが、教材作成ツールでコンテンツ化する段階で、「ランダム出題」や「選択肢シャッフル」といった機能が使える可能性がありますので、事前に機能を確認しておきましょう。

・解説の要否
採点後に表示される解説は、そのまま学習機会にもなります。テストの実施目的に合わせて検討しましょう。能力測定さえできればよい、または「なぜその解答になるのか」を自分で考えさせるため、教材コンテンツの再受講を促す方がよいと判断されれば、解答は不要となります。
一方で、端的に理解を促したい場合や、正解への道筋が複数ある場合(例えば計算の仕方など)、関連/参考情報を知らせたい場合などは、解説が必要になるでしょう。

・合格基準
合格基準点を決めます。実施目的やテストの難易度にもよるので、よく検討しましょう。例えば情報セキュリティに関する必須知識を問う場合は、合格基準点が100点ということもあり得ます。毎年同じテストを実施する場合は、前年の平均点なども参考にできるでしょう。

また、そもそも正解チェックができればよく、合格基準点、または採点自体が必要ないということもあり得ます。このあたりは教材作成ツールの機能によって実現の可否が変わってくるので、事前に確認しておきましょう。

Step3:仕様に合わせて原稿を作成する

テストの仕様を決めたら、いよいよ原稿の作成です。
テスト原稿の文章を作成する際のポイントは以下の通りです。

① 設問文の仕様統一
② 文章の調子を整える

細かいお話ですが、例えば「正しいものはどれですか」と「適切なものはどれですか」はほぼ同じ意味の文章です。「正しくないものはどれですか」「間違っているものはどれですか」「不適切なものはどれですか」も同様です。一つのテストの中でこれらが混じって使われていると、学習者は読み取りに余計な労力を割くことになります。
文章はなるべくパターン化し、文体も揃えるようにしましょう。

Step4:教材化する

原稿が完成したら、学習用の教材コンテンツと同様に、教材作成ツールを使ってコンテンツ化します。

まず、教材作成ツールで指定されているフォーマットに原稿の内容を反映させます。ファイル形式はエクセルまたはCSVファイルであることが多いです。
次に、これを教材作成ツールに読み込み、コンテンツに変換します。

◆テスト原稿のイメージ

◆変換後のコンテンツイメージ

Step5:テスト結果を分析して改善する

こちらも教材コンテンツ同様、実施後に結果を分析します。確認ポイントは以下です。

  • テストの目的を達成することができたか
  • テスト問題と学習者のレベルは合っていたか
  • 合格基準は適切だったか
  • 学習者はストレスを感じていなかったか etc.

分析結果は、次回の教育施策や教材の改善に活かします。


6. 教材用動画の作り方

ここでは教材に使う動画ファイルの作り方を解説します。

カメラやスマートフォンの普及により、動画の撮影や閲覧は大変身近になりましたが、こと学習が目的なだけに、最後まで見てもらえるコンテンツを用意するのは簡単ではありません。

例えば集合研修を動画化するといっても、1日がかり、6時間かけて行われる集合研修の映像をそのまま見てもらうわけにはいきません。教材用の動画の作成には、事前設計と編集が必要だということです。

◆動画ファイル作成のステップ

では、具体的な手順を見ていきましょう。

Step1:企画

誰に向けて、どんなテーマの動画を作るのか、を整理します。自社での撮影が本当に可能かどうか、も確認しておきましょう。

なお、eラーニングで動画を使う場合、教材コンテンツの一部として使うのか、教材そのものを一本の動画で作るのか、二種類のパターンがあります。前者の場合は教材コンテンツの他のパートとの整合が必要になります。後者の場合は動画自体にストーリーや起承転結が必要になります。

◆動画の適用パターン

制作の難易度は、前者の方が低いといえます。今回作るのがどちらのタイプの動画なのか、確認しておきましょう。

Step2:絵コンテ(ストーリーボード)・脚本作成

撮影を行うには関係者間で「どんな動画を撮るか」を共有しておく必要があります。絵コンテや脚本を用意し、以下のような情報を記載しておきましょう。

  • 画面のレイアウト
  • 出演者の動き
  • 出演者のセリフ
  • 撮影に関する指示
  • 演技に関する指示
  • 編集想定事項(後からテロップや効果を入れる場合)

◆絵コンテの例

なお、講義風景など、単調になりがちな題材を扱う場合は、講師に動いてもらう、アイスブレイクを挟む、ホワイトボードや関連資料など小物を活用する、アングルを変える、講義スライドや他の動画を挟む、効果音を入れるなどの工夫をするとよいでしょう。

Step3:ロケハン・撮影

ロケハンとは事前に撮影現場をチェックしておくことです。大げさに感じるかもしれませんが、たった5分の動画でも、撮影には何時間もかかったりします。事前に現場を見て、撮影の運びをイメージしておくことはとても大切です。

主なチェックポイントは以下のとおりです。

  • 撮影可能な場所かどうか(特に屋外の場合)
  • 照明は確保できるか(時間帯による明るさの確認、照明器具の要否など)
  • 撮影関係スタッフを配置するだけのスペースがあるかどうか
  • 想定どおりの導線が引けるかどうか(出演者やカメラマンが動く導線を確認)
  • 休憩や飲食のための場所・手段はあるか

特に照明には注意が必要です。「照明1つで画質の良し悪しが決まる」と言っても過言ではありません。素人が撮る映像は、暗くなりがちです。十分な光を当てられるよう、照明器具を用意しておくことをおすすめします。

また、サブカメラの配置もぜひご検討ください。万が一メインカメラの映像に問題があった場合、再度撮影をセッティングするのは大変です。アングルの切り替えにも使えます。高額な機材でなくとも、最近は一定品質の動画撮影が可能ですから、複数台のカメラで撮っておくに越したことはありません。

実際の撮影では、雑音や影の混入に注意しましょう。出演者以外のスタッフの声や影が入ってしまうというのはありがちですが、これは小手先の編集ではどうにもなりません。事前にしっかりリハーサルを行うことをおすすめします。

Step4:編集

編集の段階では、絵コンテを参照しながら、主に以下のような作業を行います。

  • 不要な部分をカットする
  • アングルの切り替えなどの工夫をする(サブカメラの映像があることが前提)
  • テロップを入れる
  • ナレーションを付ける(別収録の場合)
  • 効果音を入れる
  • 光や色合いなどを調整する

同じシーンでも、複数のアングルを使うことで品質が上がり、視聴者の集中力維持に役立ちます。また、学習のポイントを文字列で表示したり、間にクイズを挟んだりすることで、単調さを軽減したり、学習効果を高める効果も期待できます。色々工夫をしてみましょう。

なお、編集ツールとしては、アドビ社のPremierが使いやすく値段も手ごろで、おすすめです。

Step5:圧縮

編集後の動画ファイルを、配信するために圧縮します。
企業向けの一般的な映像サイズは以下の通りです。

  • 画面サイズ:横853ピクセル×高さ480ピクセル 前後
  • ビットレート:500Kbps 前後
  • フレームレート:30

上記の基準で圧縮した場合、動画1ファイルあたりの容量は、10分程度のもので38MBくらいになります。YouTubeで採用されている自動圧縮基準はもっと高画質ですが、企業のネットワークを使用することを考えると妥当なところです。


7. まとめ

eラーニングの導入に際しては、eラーニングを活用する目的(人材育成上の課題)を明確にし、必要な施策の内容を検討することが大切です。

そのためには、eラーニングの特質を把握し、自社に最適な運用の形を知る必要があります。

本稿では、eラーニングの導入を検討している方、またはすでに利用中で、より有効な活用方法を模索している方、運用について改善の必要性を感じていらっしゃる方々に向けて、以下のような内容を解説しました。

・eラーニングの運用上の落とし穴
・eラーニング(LMS)とは何か
・LMSベンダーの選び方
・LMS導入の流れ
・LMS選定時に注目すべきポイント(機能)
・よくあるオプションサービス/カスタマイズ
・eラーニングを活用した代表的な教育施策
・教育施策の設計方法
・教材コンテンツの作り方
・テスト教材の作り方
・教材用動画の作り方

これらを一通りお読みいただくと、eラーニングでどんなことができるのか、導入時・運用中にどんな点に注意が必要か、教材コンテンツを含めた教育施策の作り方などについて、具体的なイメージをつかんでいただけると思います。

ビジネスでものを考えるときには問題発見と問題解決の視点が不可欠です。eラーニングの導入においても、まずは現状と「あるべき姿」のギャップを洗い出して課題を明確にし、原因を追究した上で対策を講じる必要があります。その中でeラーニングをどう有効に活用できるか?を考えるのです。

eラーニングの導入自体は目的ではありません。eラーニングはあくまで「手法」であることを念頭に置き、まずは自社の人材育成上の課題を明確にしましょう。課題解決のために必要なのはeラーニングではないかもしれません。あるいは運用を工夫したり、他の手法と組み合わせることで、より効果的な施策が実施できるかもしれません。

ありものを限られた形/範囲で利用するのではなく、あくまで自社の視点・課題に起点に、より自由にeラーニングを活用いただけるよう、私たちも協力を惜しみません。本稿でeラーニングについて知り、その可能性に期待を抱かれた方は、ぜひ当社にご連絡ください。ご一緒に、より効果的でチャレンジングな人材育成プランを構築しましょう。

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