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36協定とは 「違法な長時間労働」は働き方改革でなくせるか?

36(サブロク)協定とは、時間外労働や休日勤務に関する労使協定で、法定労働時間 を超えて労働者を働かせられるようにするものです。この協定なしに残業を行うことはできません。

しかし、2017年度に厚生労働省が全国事業所を立ち入り検査したところ、半数近くの事業所で違法な長時間労働がされているという結果が出ました。さらにその事業所の74%で1カ月当たりの残業時間が80時間超。これは過労死ラインと言われるレベルです。

2018年6月に成立した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(働き方改革関連法)では、時間外労働の上限規制が設けられ、違反すると罰則が科せられます
2019年4月にはこの働き方改革関連法が施行されます(中小企業は2020年4月)。その前に36協定とは何か、企業として何をするべきかを知っておくことは重要です。本稿では、この36協定について解説します。


1.  36協定とは

36協定とは、労働者に時間外労働または休日労働をさせようとする場合に、労使間で締結しなければならない協定のことで、正式には「時間外・休日労働に関する協定届」と言います。労働基準法(労基法)第36条が根拠となっているため36協定と呼ばれています。

労基法36条は時間外及び休日の労働について規定しています。この条文によると、使用者は労働者と書面による協定をし、行政官庁に届け出ることで労働時間の延長や、休日労働をさせることが可能となります

労基法は1947年に制定されてから改正が加えられていますが、限度時間を超える時間外労働を抑えるため、その強化が進められています

2019年4月に施行される改正労基法では、これまでは限度がなかった、「特別な事情がある場合」の時間外労働時間について上限規制が設けられました
  
参考)厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の限度に関する基準」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-4.pdf


2. 36協定で決めること

では、36協定では具体的にどのようなことを定めればよいのでしょうか。一つずつ見ていきましょう。

(1)労働者側の代表の決定
使用者と協定を締結する労働者側の代表を決定します。
ア.労働者の過半数で組織される労働組合がある場合はその労働組合が代表となる イ.労働者の過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者が代表となる(労働者が1人の場合はその人)

なお、代表者は、以下のどちらにも該当する者でなければなりません。
・監督または管理の地位にない者
・労使協定の代表者を選出することを明らかにした上で、投票または挙手などの方法により選出する

 使用者が指名した者を代表として選出した場合や親睦会の幹事などを自動的に代表にした場合、協定は無効です。
 
(2)協定の締結
労使は以下の事項について協定を結ぶ必要があります。

①時間外労働をさせる具体的な事由
 具体的な事由を明確にする必要があります。

②時間外労働をさせる業務の種類
 対象業務を拡大することのないよう、業務を細分化することで範囲を明確にしなければなりません。

③時間外労働者の数

④1日の延長労働時間
 坑内労働など法令で危険有害業務と定められている業務については1日2時間の上限があります。

⑤1日を超える一定の期間についての延長労働時間
 「1日を超えて3カ月以内の期間」および「1年間」の双方について協定します。
 延長労働時間の限度については、一般の労働者と変形労働時間制の労働者の間で違いがあります。 

延長時間の限度

期間

一般の労働者

変形労働時間制の労働者

3カ月を超える1年単位)

1週間

15時間

14時間

2週間

27時間

25時間

4週間

43時間

40時間

1カ月

45時間

42時間

2カ月

81時間

75時間

3カ月

120時間

110時間

1年間

360時間

320時間

一般の労働者の場合、「1カ月45時間、1年360時間」が上限です。上限を超えた時間外労働は「特別条項付き協定」を締結していない限り違法となります。

⑥有効期間(1年間以上)
 通常1年間が望ましいとされています(平 11.3.31 基発第 169 号)。
 有効期間が満了すると協定は失効しますので、再度締結することが必要です。協定の際に自動更新という条項を設けることも可能ですが、労使間で更新について確認し、所轄の労働基準監督署に届け出をする必要があります。

(3)特別条項付き協定の締結(必要な場合)
 特別な事情により延長時間の限度を超えて労働をさせる場合は、特別条項付協定を結ぶ必要があります。
 特別条項の必要事項としては以下のことを定めなければなりません。

①原則としての延長時間(限度時間以内の時間)

②限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情
 具体的に定める必要があります。
 また、特別の事情は臨時的なものに限られ、具体的には、一時的、突発的であること、全体として1年の半分を超えないことが見込まれることが必要です。

③一定期間途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間を延長する場合に労使がとる手続き

④限度時間を超える一定の時間

⑤限度時間を超えることができる回数

⑥限度時間を超えて働かせる一定の期間(1日を超え3カ月以内、1年間)ごとに、割増賃金率を定めること。

⑦⑥の率は法定割増賃金率(25%)を超えるように努力すること。

⑧延長時間を短くするように努めること。
 大企業については、1カ月60時間を超える場合、割増賃金率を50%以上とする必要があります。

 例)延長時間が1カ月45時間を超えた場合の割増賃金率を30%とし、1年360時間を超えた場合の割増賃金率は35%とする

出典)厚生労働省 改正労働基準法1.「時間外労働の限度に関する基準」の見直し関係(限度時間を超える時間外労働の抑制)
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/091214-2_03.pdf

延長時間については、1カ月45時間、1年360時間という上限はありますが、「特別条項付き規定」では延長時間の上限が設けられていないため、「青天井」になるという問題点があります

それを見直そうというのが働き方改革関連法です。この法律によって何が変わるのかは、3章で解説します。

(4)協定届の作成
 指定の様式に従って協定届を作成します。

 

出典)厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「時間外労働の限度に関する基準」
http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-4.pdf

協定届は事業所ごとに締結する必要があります。本店や支店があれば協定届は両方について作成し、各々管轄する労働基準監督署に届け出なければなりません。

(5)協定届の提出
 作成した協定届を管轄の労働基準監督署に提出します。届け出をもって協定が有効になるため、有効期間開始前に届け出る必要があります。

(6)36協定の周知
 協定の内容を下記の①~③のいずれかの方法を用いて労働者に周知する必要があります。

 ① 労働者の見やすい場所に掲示するまたは書類を備え付けること
 ② 書面を労働者に交付すること
 ③ パソコンなどの記録媒体に記録し、労働者が常時確認できるようにしておくこと

参考)厚生労働省「時間外労働・休日労働に関する協定届 労使協定締結と届出の手引」
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/var/rev0/0145/3504/201417102954.pdf

36協定は、労使間で協定を締結、協定届を作成、労働基準監督署に提出、労働者に周知することで手続きが完了します。

なお、36協定に違反すると、労基法119条が適用され、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられます。しかし、実際には一度の突発的な違反行為で罰則行為が適用されることはほとんどありません。労働基準監督署から是正勧告が出され、改善に向けての措置が求められることになります。コンプライアンスの観点からも、罰則があるかどうかではなく、法律違反にならないような体制を普段から整えておくことが重要です。

コンプライアンスについては「コンプライアンスとは 法令だけじゃない、CSRとリスクマネジメントの重要性


3. 働き方改革関連法で変わる点

働き方改革関連法の目的の一つに、長時間労働の是正があります。これにより、労基法が以下のように改められることになりました。

①時間外労働の上限規制の導入
臨時的な特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間を限度とする

特別条項付き協定では労使間で取り決めるのは「限度時間を超える一定の時間」であり、上限規制のなかった延長時間に限度時間を設け、罰則の対象としました。

②中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%)について、中小企業への猶予措置を廃止する。

2023年4月より中小企業も大企業と同じ50%の割増賃金を支払うことが義務付けられます。

③一定日数の年次有給休暇の確実な取得
年次有給休暇を10日以上与えられている者に対して、毎年、時季を指定して5日間有給休暇を与えることを義務づける。

使用者は、有休休暇の付与に加えて、労働者に消化させる義務を負うことになります。


4. 36協定の現状

実際に36協定がどのくらい行われているのか厚生労働省の調査結果から見てみましょう。
 

調査対象となった事業所の5割近くが36協定の存在すら知らないと回答しています。協定の締結や届け出を失念していたという理由も少なからずあります。

参考)厚生労働省労働基準局「平成25年度労働時間等総合実態調査結果」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/shiryo2-1_1.pdf

労使協定というと使用者と労働組合の間で締結するものという印象があるかもしれませんが、36協定についてはアルバイトやパートを含め、労働者が1人でもいれば協定を結ぶ必要があります。したがって、ほぼすべての事業所について36協定が適用されると言えるでしょう。

派遣労働者などの非正規職員についても協定が必要ですが、派遣労働者は派遣会社と雇用契約を結んでいますので、派遣先ではなく、派遣元と36協定を締結する必要があります。派遣元で36協定が締結されていない場合、派遣先の使用者は派遣労働者に対して残業を命じることはできません。また、出向者は「出向元」ではなく、「出向先」での36協定が適用されることにも注意が必要です。

次に、厚生労働省が2015年4月から6月に、2362事業所に対して実施した監督指導の結果を見てみましょう。

参考)厚生労働省「平成 27 年4月から6月までに実施した監督指導結果」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/0000098614.pdf

多くの事業所で労働基準関係法令の違反があったことが分かります。中でも多かったものが違法な時間外労働で、36協定を締結することなく時間外労働を行わせた、協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせたという事例でした。

法律があるのにも関わらずこれほどまでに違反が多いという現状を軽視することはできません。監督を実施した2,362事業所における時間外・休日労働時間が最長の者の統計結果が以下の表です。

            時間外・休日労働時間が最長の者(月間)

出典)厚生労働省「平成 27 年4月から6月までに実施した監督指導結果」
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11202000-Roudoukijunkyoku-Kantokuka/0000098614.pdf

1,509の事業所で過労死ラインと言われる月80時間を超える時間外・休日労働を行っているという実態がわかります。


5. 36協定の問題点を解決するためには

36協定が締結されずに時間外労働が行われている大きな原因の一つに、労働者が「法令を知らない」ということがあげられます。


出典)日本労働組合総連合会 「36協定に関する調査2017」
https://www.jtuc-rengo.or.jp/info/chousa/data/20170707.pdf

2017年に日本労働組合総連合会(連合)が全国の20歳~65歳の労働者(自営業・自由業、パート・アルバイト除く)1,000名に対して実施した調査では、36協定を締結する必要性を「知らない」という割合が43.5%でした。若い世代ほどこの割合が高くなっています。

今後の36協定の問題解決、その他の労働条件の改善のためには、まず労働者への周知を徹底していくことが重要なポイントであると言えるでしょう。


6. まとめ

36協定とは、法定労働時間を超えて労働者を働かせられるようにするため、時間外・休日労働について定めた労使協定です。たとえ労働者が1人であっても、法定労働時間を超える労働や休日労働が生じる場合は締結しなければなりません
この協定なしに使用者は労働者に残業をさせると法律違反になりますが、多くの事業所で守られていないのが実態です。

政府が掲げる働き方改革において、長時間労働を是正するために、労基法は次のように改正されます(2019年4月から施行)。

① 時間外労働の上限規制の導入
 臨時的に、特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間を限度とする

②中小企業における月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の見直し
 月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率(50%)について、中小企業への猶予措置を廃止する。

③一定日数の年次有給休暇の確実な取得
 年次有給休暇を10日以上与えられている者に対して、毎年、時季を指定して5日間有給休暇を与えることを義務づける。

延長時間の原則は「1カ月45時間、1年360時間」がとされながらも、「特別条項付き規定」では上限が設けられていないため、無制限残業が見逃されているという問題点がありました。今回の改正では上限規制を設け、違反すると罰則の対象となります。
「年720時間、単月100時間未満、複数月平均80時間」という限度時間は、上限いっぱいに労働者を働かせられるということではありません。長時間労働を是正するための第一歩として、さらなる労働環境の改善を図っていくべきでしょう。

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